ある日、古明地さとりが自室で枕を抱いてベッドの上でごろごろしているときのことだった。
ばたん、と唐突に開け放たれる扉。
さとりの妹であるこいしだ。
手に鉛筆と紙と下敷きを持ち、にこにこ笑顔で入ってきた。
「お姉ちゃん、いるー? いるよね? ほらいた」
「はいはい、いますよー」
ぐだー、と手をあげて答えるさとり。
こいしはそんな気だるげな様子も気にせずに、ベッドに腰をおろした。
「なんなんですか、いったい。私は眠いんですよー」
「眠れてないくせに」
「今から眠るのです」
「うそつけー。眠たくても寝れなかったんじゃんかよ」
「よくあることです」
「わたしはないもん」
「……ところで、なんの用ですか?」
「お姉ちゃん、これなにに見える?」
ひょい、と手の中の物を掲げるこいし。
さとりはじっとそれを見ると、
「紙と鉛筆と下敷きに見えますが……」
と言った。
「ぴんぽーん。今からこれを使ってこいしちゃんはすごいことをします」
「ほほぅ。どんなことですか?」
少し。ほんの少し興味を持ったさとりは、のっそりとベッドから半身を起こした。
こいしはベッドの上に下敷きを敷いて、その上に紙を乗せた。
「んじゃあいくよ」
まず始めに「5」と書いた。
そうして続けて式を書いていく。
さとりはそれを見つめていた。
さらさら、と書いていく妹の手を追って。
さらには上下に揺れる髪の毛を無性にひっぱりたくなるのを我慢しながら。
式は完成し「5+5+5=550」となった。
「ふぅ。さてお姉ちゃん。これはどういうことでしょうか?」
なぞなぞ?
と頭を傾げながら式を見るさとり。
さていったいどういうことだろうか。
普通に答えればこれは「15」が答えだ。
こんな数になるはずがない。
むー、と顎に手をあてて考える。
そのまま、うぐー、と枕に頭を埋める。
うにー、と妹の頬っぺたをひっぱった。
こいしは気にしてなかったのでそのまま考えた。
しかし、まあ、なんでしょうか。
つまりのところ、さとりには分からなかった。
「降参? こうさん? こ・お・さ・ん?」
こいしがにやにや笑いながら聞いてくる。
ああ、もうどうしましょう、と、さとりは考える。
しかしこれ以上考えても答えは出そうになかった。
「ああ、もう降参します。こーうーさーんでーす。答えはなんですか?」
「あ、わかんなかったんだ」
「はいはいそうですそうです。ですからちゃっちゃと教えなさい」
「態度がでかいなぁ」
「仕方ないです。眠いのですから」
「さいですか」
これはねー、と鉛筆を動かすこいし。
そして「5+5+5=550」の式に一本の斜線を付け加えた。
「ね?」
「!」
さとりはびっくりして、思わず服が脱げた。
一瞬の無意識であった。
[おしまい]
ばたん、と唐突に開け放たれる扉。
さとりの妹であるこいしだ。
手に鉛筆と紙と下敷きを持ち、にこにこ笑顔で入ってきた。
「お姉ちゃん、いるー? いるよね? ほらいた」
「はいはい、いますよー」
ぐだー、と手をあげて答えるさとり。
こいしはそんな気だるげな様子も気にせずに、ベッドに腰をおろした。
「なんなんですか、いったい。私は眠いんですよー」
「眠れてないくせに」
「今から眠るのです」
「うそつけー。眠たくても寝れなかったんじゃんかよ」
「よくあることです」
「わたしはないもん」
「……ところで、なんの用ですか?」
「お姉ちゃん、これなにに見える?」
ひょい、と手の中の物を掲げるこいし。
さとりはじっとそれを見ると、
「紙と鉛筆と下敷きに見えますが……」
と言った。
「ぴんぽーん。今からこれを使ってこいしちゃんはすごいことをします」
「ほほぅ。どんなことですか?」
少し。ほんの少し興味を持ったさとりは、のっそりとベッドから半身を起こした。
こいしはベッドの上に下敷きを敷いて、その上に紙を乗せた。
「んじゃあいくよ」
まず始めに「5」と書いた。
そうして続けて式を書いていく。
さとりはそれを見つめていた。
さらさら、と書いていく妹の手を追って。
さらには上下に揺れる髪の毛を無性にひっぱりたくなるのを我慢しながら。
式は完成し「5+5+5=550」となった。
「ふぅ。さてお姉ちゃん。これはどういうことでしょうか?」
なぞなぞ?
と頭を傾げながら式を見るさとり。
さていったいどういうことだろうか。
普通に答えればこれは「15」が答えだ。
こんな数になるはずがない。
むー、と顎に手をあてて考える。
そのまま、うぐー、と枕に頭を埋める。
うにー、と妹の頬っぺたをひっぱった。
こいしは気にしてなかったのでそのまま考えた。
しかし、まあ、なんでしょうか。
つまりのところ、さとりには分からなかった。
「降参? こうさん? こ・お・さ・ん?」
こいしがにやにや笑いながら聞いてくる。
ああ、もうどうしましょう、と、さとりは考える。
しかしこれ以上考えても答えは出そうになかった。
「ああ、もう降参します。こーうーさーんでーす。答えはなんですか?」
「あ、わかんなかったんだ」
「はいはいそうですそうです。ですからちゃっちゃと教えなさい」
「態度がでかいなぁ」
「仕方ないです。眠いのですから」
「さいですか」
これはねー、と鉛筆を動かすこいし。
そして「5+5+5=550」の式に一本の斜線を付け加えた。
「ね?」
「!」
さとりはびっくりして、思わず服が脱げた。
一瞬の無意識であった。
[おしまい]
後脱げた後について続きを……
あとその後を詳しく