床に橋姫が転がってた。
「……ん?」
状況確認。
ベット、薄くて体痛い。ギィギィうるさい。
床、橋姫含めて服とか適度に散らかってる。きちゃない。
壁、変な服が引っ掛かってる。センスわかんない。
「んん~~?」
しん、としていた。時計がやかましかった。隙間風が冷たかった。
結論、ここは地霊殿じゃあない。
記憶を辿ってみようと思ったけど、やめた。
きっと地霊殿まで帰るのが面倒で、道すがらにあるこの家に転がり込んだ。
どうせそんなとこ。
ギィ。ベットを鳴かせながら立ってみる。
やっぱり。私は出かけた時の服のままだった。
帽子だけ、ベットのふちに引っ掛かってる。
抜き足差し足。
爪先立ちで近づいてみると、どうやら寝ているみたいだった。
いつもの服は床に散らばってて、灰色の無地の浴衣姿。
向こうを向いてて表情は見えないけど、ウンウン唸ってるからきっと寝苦しいんだろうな。
あんな安物のベットでも、この人にとってはちゃんとした寝具だろうし。
そっとまたいで、しゃがみこんで正面から向き合ってみた。
金色の髪、呼吸と一緒に上下する身体。
僅かに肌蹴た浴衣から見える、病気みたいに白い肌がなんだかえっちぃ。
隙間風はこんなに寒いのに、じっとりと汗ばんでいた。
「……幸せそうな顔しちゃって」
いい夢でも見てるのか、笑い始めた。
いつも「自分には似合わない」って気取ってる口も、少し開いてるだけ。
そこから漏れるのは吐息だけ。
もったいないって、いつも思う。
自分にはこれは出来ない。こんなの似合わない。
自分はこう在りたい。こうならなくちゃ。
自分で自分を縛って、押さえつけちゃってる。
そのくせ誰かを妬んでばっかり。意味わかんない。
「自分は橋姫だから」って。
ほんと、もったいない。
もっと自由に生きればいいのに。
目を開けてる時だって、素直に望めば何でも手に入るのに。
「ばっかだよね」
それをしちゃいけないって思ってる。
まったく……この人はいったいどれだけのものを背負ってるんだろ。
幸せそうに眠るその表情からはそれをまったく感じない。
何かを背負うことを止めた私には、そんなのは理解できない。
きっとそれを知ってるのは、私のお姉ちゃんだけ。
理解してるかは別として。
頬を引っ張ってみる。
全然動じない。ってか笑ってる。むかつく。
でもスリッパはベットの下に滑り込んでて、手が届かなかった。
「こんにゃろー」
喉元をキュッと。
全部が止まる。
キュッキュッキュッ。
苦しそう。
キュ~。
笑って、苦しんで。でも。
「……起きてるんでしょ?」
うっそマジで。
まさかの反応なし。
抵抗もなし。
やっぱりわかんない。
一歩間違ったら絞殺ものなのに。
「そーゆーこと、か」
着物を直してあげてから、ぴょいと立ち上がる。
それにしたって寒い。
予備の掛け布団を床に投げつけた。
私はベットに入った。
ここだけ、あったかい。
私はゴロンと寝返りうって、ギュって抱きしめた。
「ごめんね」
わたしなら、って思ってくれたんだよね。
でも、駄目だよ。
私じゃ駄目。
私は一回捨てちゃったから。
後悔はしてないけどさ。めっちゃ妬ましい。
でもやっぱり、私だって好きだよ。
「おやすみ~」
お姉ちゃん、あったかいから。
こいしがねたんだものとはいったい。
最後の二人の会話の意味は。
ところどころに難しい表現を入れているため俺には分からず現在解読中。
分かった人がいたら教えて。疑問もあるけど楽しいssでした。