「今日から、私は紅をすてるわ」
ある日ある時ある場所で、唐突にレミリアが口を開いた。
その場にいたのはレミリアの他には咲夜とパチュリーのみ。レミリアとパチュリーが向かい合って座る側で、咲夜が紅茶をいつでも注げるように立っている。
「――それは、なんで?」
「霊夢を手に入れるためよ」
咲夜が何も言わないのを見てパチュリーが尋ね、返ってきた言葉に眉をひそめた。ちらりと咲夜に目で問いかけると、咲夜は首を微かに横に振った。背もたれに体重を預け、パチュリーは嘆息した。
「レミィ、説明をお願いするわ」
「この間聞いたんだけど、あの人形遣いがこんなことを言ったそうね、”二色では七色に勝てない”」
「勝ってましたけど」
現場を見てきたメイドの呟きを、主人は華麗に聞き流した。
「それを踏まえて私は考えた。そして気づいたの。私が霊夢を手に入れられない究極の理論を!」
この時点で、すでにパチュリーの興味はほぼ失せていた。咲夜が新たに淹れた紅茶を一口啜り、「それは?」と投げやりな口調で続きを促す。
「パチェ、貴方霊夢のことをなんて言ったか覚えているかしら?」
「? 紅白のこと?」
「そう! 紅白よ紅白! 咲夜、私は誰だか言ってみなさい!」
「永遠に紅い幼い月、レミリア・スカーレット様です」
「そう! 紅いよ紅い! 分かるパチェ? ここから導き出される結論が!」
「まず理論式がわからない」
「紅と白を支配する霊夢に、紅いだけの私が敵うわけがない! 私は紅でいる限り、霊夢を手に入れることはできないのよ!」
気の昂りに頬を高潮させ拳を握るレミリアは、どう? とそこにいた二人に意見を求める。そうね、とパチュリーはぞんざいに同意し、咲夜は問いを返した。
「それで、お嬢様はこれから何色になるのですか?」
それを待っていたレミリアの口元が、鋭く笑みを形作る。「あれよ!」と勢いよく窓を指し示し、吼えた。
「私は今日から、青を名乗ることにするわ!」
レミリアの指を追って窓を見つめたままレミリアの宣言を聞いた二人は、しばしその体勢で考えをまとめ、
「……なんで青なの?」
「青の色は空の色。空は霊夢がよく見上げている色。つまり、霊夢は空という名の青を支配できていない! だから私は青を名乗ることにした!」
パチュリーは理論の理解を即行で諦め、そう、と形だけ同意しておいた。興奮してパチュリーの声の機微に全く気づかないレミリアは、意気揚々と計画を練っていった。
その夜、レミリアは手始めに血の色を青に変えてみた。
そして翌朝目覚めたレミリアは、体を起こしてみて違和感を覚えた。頭に妙な重さを感じたレミリアは、なんだろうと両手を重さを感じた辺りにもっていった。
「……なにこれ?」
先端をひっぱりおろしてそれの半分ほどを視界に収めたレミリアは、おもむろに呼び鈴を鳴らした。
数秒してノックがあったので入室を許可する。
「どうなさいましたお嬢様?」
尋ねてくる咲夜に、レミリアは無言で頭にくっついている緑色した触覚を指差した。
「――触覚ですわね。しかも願い事を三つかなえてくれる星人のものですね」
「所詮神と融合しておきながらやられ役のものじゃない……」
「しかしピミリアお嬢様」
「誰がピミリアか!」
「頭に触覚なので、名前も頭だけ変えてみました」
「次言ったら殺す」
「ではそれまでにボールを七個集めて延命願いをしておきます、ピミリアお嬢様」
かすかに残った理性で咲夜をさがらせたレミリアは、即座に血の色を元に戻した。
その夜、レミリアは今度は性格を青くしてみた。
翌日、咲夜は困惑していた。朝、血を見たレミリアは、突然涙を流しながら、
「すまない……っ。私はこれがないと生きていけないから。ああ、なぜ妖怪と人間は争うようにできてしまったのか! 人と妖怪は、本当に分かり合えないのか!?」
とか青臭い理想を語りだして、やたら大切そうに血を飲んでいた。さらにレミリアはパチュリーの元へ行き、爽やかな笑顔を見せつけながら、
「さあパチェ、外へ出ましょう! 外はとってもいい陽気なんだから、外で思いっきり体を動かして、すかっとしましょう!」
とかハツラツ青春ボーイを演出して、傘を差さずに外に飛び出ようとした。さらにさらにレミリアは、午後のティータイムの時間に、顔を俯かせ人差し指をつつき合わせながら、
「ね、ねえ、咲夜? 霊夢って、ほんとは私のこと、嫌いだったりとか、行く度に煩がられてるとか、ない、かな」
とか青春してる女の子みたいに顔を真っ赤にして言い出した。さらにさらにさらにレミリアがなにかしようとするのを察した咲夜は、
「返して! あの我が侭だけど時々可愛かったり優しかったりした私のお嬢様を返してよ! 私には、私達には、あのお嬢様が必要なの!」
とか青春を砕かれた女のように崩れ落ちながら叫びだした。
それにひどく胸打たれたレミリアは、何度も謝りながら性格を元に戻した。
その夜、レミリアはこりずに名前を青くしてみた。
翌日、レミリアは皆を集め、高らかに宣言した。
「今日から私はレミリア・ブルーレッ――」
「お嬢様、同名にこんな商品が」
置くだけ。レミリアはその場で話をなかったことにした。
試行錯誤を重ねても一向に成果が出てこない。レミリアは打ちひしがれていた。
「やっぱり、私に青なんて向いてなかったのかもね」
「やはりお嬢様には紅が一番似合っているということでしょう」
「そうね。今思えば馬鹿馬鹿しい考えをしたものだわ。色を変えたぐらいで霊夢が手に入るわけないじゃない」
紅に戻すわ、というレミリアに、咲夜は恭しく頭を垂れた。
と、そこに現れたのはパチュリー。レミリアを見て、意外そうに声をあげた。
「あら? まだ青実験続けていたの?」
「ん? もう止めたわ」
「何言ってるの。まだ続いてるじゃない」
パチュリーの言っている意味が分からず、レミリアは咲夜を見る。しかし咲夜も分からず、目を伏せることしかできなかった。しかたなくレミリアはパチュリーに視線を戻し、率直に聞いた。
「いったい、何が続いてるの?」
「雰囲気よ」
雰囲気? と首を傾げるレミリアに、パチュリーはほら、とレミリアを指差した。
「ずいぶんとブルーな雰囲気を醸し出しているでしょう?」
ある日ある時ある場所で、唐突にレミリアが口を開いた。
その場にいたのはレミリアの他には咲夜とパチュリーのみ。レミリアとパチュリーが向かい合って座る側で、咲夜が紅茶をいつでも注げるように立っている。
「――それは、なんで?」
「霊夢を手に入れるためよ」
咲夜が何も言わないのを見てパチュリーが尋ね、返ってきた言葉に眉をひそめた。ちらりと咲夜に目で問いかけると、咲夜は首を微かに横に振った。背もたれに体重を預け、パチュリーは嘆息した。
「レミィ、説明をお願いするわ」
「この間聞いたんだけど、あの人形遣いがこんなことを言ったそうね、”二色では七色に勝てない”」
「勝ってましたけど」
現場を見てきたメイドの呟きを、主人は華麗に聞き流した。
「それを踏まえて私は考えた。そして気づいたの。私が霊夢を手に入れられない究極の理論を!」
この時点で、すでにパチュリーの興味はほぼ失せていた。咲夜が新たに淹れた紅茶を一口啜り、「それは?」と投げやりな口調で続きを促す。
「パチェ、貴方霊夢のことをなんて言ったか覚えているかしら?」
「? 紅白のこと?」
「そう! 紅白よ紅白! 咲夜、私は誰だか言ってみなさい!」
「永遠に紅い幼い月、レミリア・スカーレット様です」
「そう! 紅いよ紅い! 分かるパチェ? ここから導き出される結論が!」
「まず理論式がわからない」
「紅と白を支配する霊夢に、紅いだけの私が敵うわけがない! 私は紅でいる限り、霊夢を手に入れることはできないのよ!」
気の昂りに頬を高潮させ拳を握るレミリアは、どう? とそこにいた二人に意見を求める。そうね、とパチュリーはぞんざいに同意し、咲夜は問いを返した。
「それで、お嬢様はこれから何色になるのですか?」
それを待っていたレミリアの口元が、鋭く笑みを形作る。「あれよ!」と勢いよく窓を指し示し、吼えた。
「私は今日から、青を名乗ることにするわ!」
レミリアの指を追って窓を見つめたままレミリアの宣言を聞いた二人は、しばしその体勢で考えをまとめ、
「……なんで青なの?」
「青の色は空の色。空は霊夢がよく見上げている色。つまり、霊夢は空という名の青を支配できていない! だから私は青を名乗ることにした!」
パチュリーは理論の理解を即行で諦め、そう、と形だけ同意しておいた。興奮してパチュリーの声の機微に全く気づかないレミリアは、意気揚々と計画を練っていった。
その夜、レミリアは手始めに血の色を青に変えてみた。
そして翌朝目覚めたレミリアは、体を起こしてみて違和感を覚えた。頭に妙な重さを感じたレミリアは、なんだろうと両手を重さを感じた辺りにもっていった。
「……なにこれ?」
先端をひっぱりおろしてそれの半分ほどを視界に収めたレミリアは、おもむろに呼び鈴を鳴らした。
数秒してノックがあったので入室を許可する。
「どうなさいましたお嬢様?」
尋ねてくる咲夜に、レミリアは無言で頭にくっついている緑色した触覚を指差した。
「――触覚ですわね。しかも願い事を三つかなえてくれる星人のものですね」
「所詮神と融合しておきながらやられ役のものじゃない……」
「しかしピミリアお嬢様」
「誰がピミリアか!」
「頭に触覚なので、名前も頭だけ変えてみました」
「次言ったら殺す」
「ではそれまでにボールを七個集めて延命願いをしておきます、ピミリアお嬢様」
かすかに残った理性で咲夜をさがらせたレミリアは、即座に血の色を元に戻した。
その夜、レミリアは今度は性格を青くしてみた。
翌日、咲夜は困惑していた。朝、血を見たレミリアは、突然涙を流しながら、
「すまない……っ。私はこれがないと生きていけないから。ああ、なぜ妖怪と人間は争うようにできてしまったのか! 人と妖怪は、本当に分かり合えないのか!?」
とか青臭い理想を語りだして、やたら大切そうに血を飲んでいた。さらにレミリアはパチュリーの元へ行き、爽やかな笑顔を見せつけながら、
「さあパチェ、外へ出ましょう! 外はとってもいい陽気なんだから、外で思いっきり体を動かして、すかっとしましょう!」
とかハツラツ青春ボーイを演出して、傘を差さずに外に飛び出ようとした。さらにさらにレミリアは、午後のティータイムの時間に、顔を俯かせ人差し指をつつき合わせながら、
「ね、ねえ、咲夜? 霊夢って、ほんとは私のこと、嫌いだったりとか、行く度に煩がられてるとか、ない、かな」
とか青春してる女の子みたいに顔を真っ赤にして言い出した。さらにさらにさらにレミリアがなにかしようとするのを察した咲夜は、
「返して! あの我が侭だけど時々可愛かったり優しかったりした私のお嬢様を返してよ! 私には、私達には、あのお嬢様が必要なの!」
とか青春を砕かれた女のように崩れ落ちながら叫びだした。
それにひどく胸打たれたレミリアは、何度も謝りながら性格を元に戻した。
その夜、レミリアはこりずに名前を青くしてみた。
翌日、レミリアは皆を集め、高らかに宣言した。
「今日から私はレミリア・ブルーレッ――」
「お嬢様、同名にこんな商品が」
置くだけ。レミリアはその場で話をなかったことにした。
試行錯誤を重ねても一向に成果が出てこない。レミリアは打ちひしがれていた。
「やっぱり、私に青なんて向いてなかったのかもね」
「やはりお嬢様には紅が一番似合っているということでしょう」
「そうね。今思えば馬鹿馬鹿しい考えをしたものだわ。色を変えたぐらいで霊夢が手に入るわけないじゃない」
紅に戻すわ、というレミリアに、咲夜は恭しく頭を垂れた。
と、そこに現れたのはパチュリー。レミリアを見て、意外そうに声をあげた。
「あら? まだ青実験続けていたの?」
「ん? もう止めたわ」
「何言ってるの。まだ続いてるじゃない」
パチュリーの言っている意味が分からず、レミリアは咲夜を見る。しかし咲夜も分からず、目を伏せることしかできなかった。しかたなくレミリアはパチュリーに視線を戻し、率直に聞いた。
「いったい、何が続いてるの?」
「雰囲気よ」
雰囲気? と首を傾げるレミリアに、パチュリーはほら、とレミリアを指差した。
「ずいぶんとブルーな雰囲気を醸し出しているでしょう?」
とりあえず
っ「NaOHaq」
っ「リトマス液」
BTB溶液は黄色・緑色・青色で紅色が無いしね
青臭いレミリア様にときめいたのはここだけの秘密です。
マジ吹いたww
いやはや、置くだけネタは凄いでござる……。
笑ったww最高ですw
そしてブルーレッ(略式)に万歳(w
スカーブルーでいいじゃまいかwwwwwwww