Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

帰郷

2006/07/06 11:45:37
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Part1 兎はやって来た


近頃来客が増えました。

「こんにちはー」
「いらっしゃい」

今では「いらっしゃい」と出迎える関係にまで発展。遠くでは幽々子様が扇子の裏でほくそ笑んでいます。

「もう完治したのですから定期健診なんて」
「医者は医者屋に任せなさい。貴方は庭師なんだから庭師屋よ」

いや剣士なんですが。と、私は頭を軽く抑えながら反論・・・・・・するところなのですが、面倒なので反論しません。というか庭師屋って何だろう?語呂悪いなあ。ニワシヤ。

「どうかしたの?」
「いえ別に」

目の前の兎は耳をぴこぴこ動かしながら顔を覗き込んできた。うーん、何だろうこのもやもやした気持ちは。

「ふんふん、充血してるわね。駄目よ睡眠をしっかりとらないと」
「本当ですか?今日はしっかり6時間寝たのに・・・・・・」

彼女、うどんげさんの診断はよく当たります。師匠譲りの眼光と洞察力を持っているようです。羨ましいなあ。

ちらり。

「・・・・・・」

幽々子様は「うふふ」といった様子で私たちのやりとりを観察している。私にもまだ主から学ぶべきことがあるのだろうか・・・・・・。


Part2 アイアンストマック


うどんげさんは私の診断を終えるといつもお茶を飲んでいきます。

「妖夢。私の為に兎を生け捕りにするなんてやるじゃない」
「相変わらず冗談に聞こえません」

こんなデンジャラスな会話も日常茶飯事になり、うどんげさんもいちいち反応しなくなりました。

「ところでこんな所で油売ってて良いのですか?永遠亭の家計は火の車で、地に足が付かぬほど忙しいと聞きましたが」
「この程度の休息も許されぬのならば、今此処で私は絶命いたします」
「んまあっ。私の空腹を満たしてくれるのね?」

ぐるぐるきゅ~。
幽々子様の腹の虫の声と共に、うどんげさん身構えました。目がにわかに赤く光ります。

「と、兎に角私はこれから買い物に行かねばなりませぬ故」
「あら?」

私は流れが悪くなると、こうして流れを一刀両断します。そしてもっともな理由をこじ付けるのです。

「今日はスーパーコーリンの特売日ですから」
「あらあらあら」
「そういえば私も買出しに行かなきゃ」
「ではどうぞごゆっくり。来客中に失礼かと思いますが、何分命が掛かっておりますので」

幽々子様はにこにこと笑いながら私を見送る。既に私は買い物袋を下げて、外へ飛びたてる準備を整えていた。

「あ、じゃあ私も行きます。お茶、ご馳走様でした」
「今度は食用兎を連れて来て頂戴」
「お断りします」


Part3 スーパーコーリンの決斗


「いらっしゃいませ~!本日は特売日につき、此方のワゴンの品全てレジにて半額・・・全てレジにて半額にてご提供しておりま~す!」

メガホン片手に店員が叫ぶ。それと同時に人の波が押し寄せる。
・・・・・・体の小さい私には正直堪える。

「うう、この肉だけは渡せません・・・・・・!」
「妖夢!後ろから刺客の手が伸びて来てるわ!」
「くっ、この程度で!」

正に戦争。弾幕勝負とは比べ物にならない程の戦いが此処にはある。

「取れた?」
「はい。我が半身を用いれば、一度に二倍の肉を手に出来ます」

私の手の中には、大量の国産高級黒毛和牛・レジにて半額赤丸値札付のパックが収まっていた。半身は揉みくちゃにされていびつな形に変形している。

「うどんげさんはもう他に何も?」
「うん。人参も買い占めたし、必要な物も揃ったわ」

何でもうどんげさんは箱買いした人参を宅配して貰っているらしい。会計は「えーりんのツケで」と言えばどんな額でも通ってしまう。うーん、流石は天才。
・・・・・・まあいいや。レジに行こう。


Part4 西行寺幽々子と家計の境界


チーン☆

「レシートのお返しでーす」
「どうも」

私はカートをガラガラと押しながら、不審な目つきでこちらを伺ううどんげさんを横目で見る。

「えっと、私の顔に何か付いてます?」
「・・・・・・あの、毎日買い物するのよね」
「そうですが、それが何か?」
「あの、毎日1万使うの?」
「今日はまだマシな方です。特売日でなければ2万に達してもおかしくはありません」
「・・・・・・そ、そうなんだ」

・・・・・・わかっています。
うどんげさんは我が家の家計を気にして下さっているのです。
ですが、お願いです。それ以上は聞かないで下さい。

・・・・・・それだけが、私の望みです。


Part5 門を開けたら二秒でラスボス


「あらあらまあまあ」
「只今戻りました」
「すいません。戻って来てしまいました」

両手一杯にスーパーの袋を抱えた私とうどんげさんは、同時に我が家の門を潜った。
実はあまりに荷物が多いので、うどんげさんも手を貸してくれたのです。
・・・・・・そしてそれを涎を垂らして迎える我が主。天才の爪の垢を煎じて、少し飲ませて差し上げたい。

「妖夢」
「・・・・・・何でしょうか幽々子様」
「今日は兎なb「うどんげさん重いでしょうからここに置いてくだされば結構ですよ。ささ、今冷たい麦茶でも用意しますので、私の部屋にでも避難しておいて下さい」

私はうどんげさんの手を引いて家の内部へと逃げた。


Part6 西行寺幽々子の食いしん坊万歳


「おかわり~」
「はい。うどんげさんもどうですか?」
「いえ、私はもう肉体的にも精神的にもいっぱいいっぱいです」
「ほんらにおいひいのひ?(こんなにおいしいのに?)」
「幽々子様は特別です」
「うう、お腹いっぱい。また体重が・・・・・・」
「太りたいの?」
「んなわけ無いでしょう」

気付けばあれだけあった肉も半分以下にまで減ってしまいました。
うどんげさんも久しぶりに肉を食せて満足気な表情です。人参以外も食べるのですね・・・・・・。


Part7 貫禄


酒も入って少々宴会ムードとなりつつある白玉楼の居間。
夜も大分更けていた。

「それにしても永遠亭は大丈夫なのですか?貴方が居ないと永琳さんも困るのでは?」

何気ない一言を私は何も無い空間に向かって放った。
それと同時に酒が入って少々ナーバスになっていたうどんげさんは、俯いて呟くように言いました。

「・・・・・・師匠には本来私の手など必要無いんです」
「え?」
「それなのに師匠は私の事を必要としてくれているように振舞ってくれています」
「・・・・・・」
「それが嬉しくて・・・・・・。少し悲しいんです」

・・・・・・しまった。
軽率なり魂魄妖夢。

「ふふ。主は本当の気持ちを従者には伝えないものなのよ」
「・・・・・・え?」

幽々子様は重い口を開いた。
私は滅多に聞けない幽々子様の本物の意見に耳を傾ける。

「八意永琳は確かにある面では天才かもしれないわ。でも私から見れば凡人」
「そ、そんな事はっ!」
「私に言わせれば貴方も妖夢も永琳もみーんな同じ」
「・・・・・・幽々子様」
「ほら、妖夢までそんな顔しないで頂戴。折角のデザートが台無しだわ」

幽々子様はうどんげさんが作ってくれたキャロットゼリーをもぐもぐと頬張りながら私をなだめた。

「永琳とは時々杯を交わすけど、貴方のことを心配しつつもとても頼りにしているわ」
「えっ!?」
「ゆ、幽々子様一体それは・・・・・・」
「それは企業秘密。もしかしたらレミリアや閻魔にも通ずるかもね」

・・・・・・呆気に取られてしまった。どうやら私は幽々子様のことを一から十まで分かったつもりでいたらしい。

「まあ、これ以上の発言は無粋ね。おかわり」
「はいどうぞ。・・・・・・って、納得行きません」
「私もです」
「ああ、この微妙な甘さ加減が良いわねえ。今度レシピを教わりなさい妖夢」
「みょん」
「・・・・・・」

・・・・・・やっぱり幽々子様には敵わない。


Part8 愛しの我が家


「・・・・・・只今戻りました」
「あ、今頃帰ってきた!」
「てゐ。ちゃんと師匠には伝言してあるわ」
「姫が『イナバは何処に行ったの?主を置いて何処かで肉を食したりしていないでしょうね!?』って怒ってたわよ」
「ふ、ふ~ん。そうなんだ」

私はてゐと目を合わさぬ様、靴を脱いで一日ぶりに我が家の土を踏んだ。たった一日なのに、酷く長く感じたのは気のせいだろうか。

「ウドンゲ、お帰りなさい」
「あ・・・・・・」

そして奥から現れるは愛しき師匠、八意永琳。


赤い目から、何故か涙が零れた。
妖夢×うどんげとか良いと思う!
フォボス
コメント



1.狩人A削除
妖夢×うどんげとかすごく良いと思う!!
2.黒うさぎ削除
妖夢×うどんげも良いけど。
ゆゆ様の内に秘めたカリスマに惚れる!
3.名無し妖怪削除
うどみょんは大好物だ!!
4.翔菜削除
最高ですよ!