霧のかかったようなぼんやりとした視界。
普段触れているのとは違った冷たい空気。
「…ここは?」
自分がここにどうして立っているのか、どうやってきたのかなどは覚えて居ない。
目の前にあるのは長い長い階段。
振り返ると天を突き抜けるほど大きな大きな扉。
…徐々に思考がクリアになってくる。見覚えがある。ここは…
考える間も無く手にした箒にまたがり一気に長い階段を飛び上がる。
自分の足で歩くとなれば半日はかかるであろうその階段を抜けた先。
「…何、またきたの?」
広い庭に立つ、銀色の髪に黒いリボンをつけた少女。
両手に持った刀が、彼女の仕事中だったことを容易に想像させる。
「…」
目の前の少女…庭師の妖夢の表情が呆れ顔から、何か不思議な疑問を思いついたような表情へ変化していった。
「…ついてきて。」
最初の明らかに邪険にした雰囲気とは違ったその雰囲気に気圧され、ゆっくりと後を追う。
お互い無言で歩くこと数分。
大きな塀に囲まれた屋敷の前についた。
見覚えがあるどころか、随分来慣れた感じがする。
大きな門をくぐり、中庭へ抜ける。
「あら、妖夢。お客さん?」
「あ、幽々子様こちらに見えましたか。」
縁側でのんびりとお茶を飲みながら日向ぼっこをしている幽々子が居た。
右手を上げて軽く挨拶をする。
幽々子は朗らかな笑顔をそのままに多少首を傾けた。
「…あら。あらあら?」
さっきからどうしたのだろう。二人の感じがいつもと違う。
一瞬、背筋がぞくっとした。嫌な予感がする。
「幽々子様…。」
「…」
そのままの笑顔でたっぷり数十秒固まってから、幽々子が立ち上がった。
「あらら…。こっちの世界の住人になりにきたのかしら?」
こっちの世界?ここはどこ?ここは冥界。死者の魂の住まう場所。
つまり…?
「でも、ここも良いところよ?私も嬉しいわ、あなた見たいな人がいてくれると。」
一歩、近づいてくる。何故だか分からないが一歩、距離をとるように後ろに下がる。
「…ふふ、冗談よ。…多分ね?」
少し残念そうな、悪戯っぽい笑み。
ずきっ。
頭に一瞬鋭い痛みが走り顔をしかめた。
今のは…?
「残念、また遊びに着てね。いつでも歓迎するわ。」
きんっ。
頭の中で何かが弾けて火花が散った。
目の前が霞んでいく。
心配そうな表情の妖夢。
「今度は、本当の貴女でね。」
全てを理解しているのかわかって居ないのか、相変わらず心の読めない表情の幽々子。
何がなんだか分からぬまま、意識は混沌の白の中に吸われていった。
「…!…っ!」
ゆっくりと感じる自分の体の感覚。
「…さっ!ちょっと、大丈夫なの!?」
体が揺すられている。耳元で大声。
「んっ…」
まだ体が動かず、思考も混濁して何がなんだか分からない。
徐々に戻る体の感覚と共に、頭の痛みが重くのしかかってきた。
「あ…」
聞きなれた声。これは現。さっきのは…よく覚えている、さっきの光景は…夢?
「よかった、気がついた…ちょっと、魔理沙大丈夫?」
薄く目を開けると真っ青な空が半分。もう半分は心配そうな霊夢の顔。
「あー…?」
未だ混乱を続ける思考が、現実を視野にいれる事で少しずつはっきりとしてきた。
確か…霊夢と弾幕戦をしていて…おりからの体調不良が災いしたのか符を構えて魔法を打とうとしたら暴走して。
押さえ込むために一瞬注意を逸らした時に霊夢の弾幕に直撃して…。
森の木々がクッションになってどうやら墜落の衝撃はたいした物にはならなかったらしい。
体の方も、衝撃で吹き飛んだだけで防御魔法のおかげで怪我は無かった。
目を閉じ、ははっと笑って。
「冥界で…幽々子達が楽しそうにお茶飲んでた…ぜ。」
「は…?」
あっけに取られた霊夢の表情。
「死後の世界っていうのもいいものかも知れないなぁ。」
「…大変、頭でも打ったのかしら。」
言葉とは裏腹に安心したような口調と表情。
「ま。風邪を治してからにすることね。」
「珍しいな、心配してくれてるのか?」
立ち上がった霊夢につられて上半身を起こす。
「私にうつされたらたまったものじゃないからね。」
「ふふ、そうか…。」
小さく笑い、立ち上がる。
今度、手土産でも持って顔を見に行くか。
青い空のさらに先に向かって、澄み渡る蒼を見上げた。
普段触れているのとは違った冷たい空気。
「…ここは?」
自分がここにどうして立っているのか、どうやってきたのかなどは覚えて居ない。
目の前にあるのは長い長い階段。
振り返ると天を突き抜けるほど大きな大きな扉。
…徐々に思考がクリアになってくる。見覚えがある。ここは…
考える間も無く手にした箒にまたがり一気に長い階段を飛び上がる。
自分の足で歩くとなれば半日はかかるであろうその階段を抜けた先。
「…何、またきたの?」
広い庭に立つ、銀色の髪に黒いリボンをつけた少女。
両手に持った刀が、彼女の仕事中だったことを容易に想像させる。
「…」
目の前の少女…庭師の妖夢の表情が呆れ顔から、何か不思議な疑問を思いついたような表情へ変化していった。
「…ついてきて。」
最初の明らかに邪険にした雰囲気とは違ったその雰囲気に気圧され、ゆっくりと後を追う。
お互い無言で歩くこと数分。
大きな塀に囲まれた屋敷の前についた。
見覚えがあるどころか、随分来慣れた感じがする。
大きな門をくぐり、中庭へ抜ける。
「あら、妖夢。お客さん?」
「あ、幽々子様こちらに見えましたか。」
縁側でのんびりとお茶を飲みながら日向ぼっこをしている幽々子が居た。
右手を上げて軽く挨拶をする。
幽々子は朗らかな笑顔をそのままに多少首を傾けた。
「…あら。あらあら?」
さっきからどうしたのだろう。二人の感じがいつもと違う。
一瞬、背筋がぞくっとした。嫌な予感がする。
「幽々子様…。」
「…」
そのままの笑顔でたっぷり数十秒固まってから、幽々子が立ち上がった。
「あらら…。こっちの世界の住人になりにきたのかしら?」
こっちの世界?ここはどこ?ここは冥界。死者の魂の住まう場所。
つまり…?
「でも、ここも良いところよ?私も嬉しいわ、あなた見たいな人がいてくれると。」
一歩、近づいてくる。何故だか分からないが一歩、距離をとるように後ろに下がる。
「…ふふ、冗談よ。…多分ね?」
少し残念そうな、悪戯っぽい笑み。
ずきっ。
頭に一瞬鋭い痛みが走り顔をしかめた。
今のは…?
「残念、また遊びに着てね。いつでも歓迎するわ。」
きんっ。
頭の中で何かが弾けて火花が散った。
目の前が霞んでいく。
心配そうな表情の妖夢。
「今度は、本当の貴女でね。」
全てを理解しているのかわかって居ないのか、相変わらず心の読めない表情の幽々子。
何がなんだか分からぬまま、意識は混沌の白の中に吸われていった。
「…!…っ!」
ゆっくりと感じる自分の体の感覚。
「…さっ!ちょっと、大丈夫なの!?」
体が揺すられている。耳元で大声。
「んっ…」
まだ体が動かず、思考も混濁して何がなんだか分からない。
徐々に戻る体の感覚と共に、頭の痛みが重くのしかかってきた。
「あ…」
聞きなれた声。これは現。さっきのは…よく覚えている、さっきの光景は…夢?
「よかった、気がついた…ちょっと、魔理沙大丈夫?」
薄く目を開けると真っ青な空が半分。もう半分は心配そうな霊夢の顔。
「あー…?」
未だ混乱を続ける思考が、現実を視野にいれる事で少しずつはっきりとしてきた。
確か…霊夢と弾幕戦をしていて…おりからの体調不良が災いしたのか符を構えて魔法を打とうとしたら暴走して。
押さえ込むために一瞬注意を逸らした時に霊夢の弾幕に直撃して…。
森の木々がクッションになってどうやら墜落の衝撃はたいした物にはならなかったらしい。
体の方も、衝撃で吹き飛んだだけで防御魔法のおかげで怪我は無かった。
目を閉じ、ははっと笑って。
「冥界で…幽々子達が楽しそうにお茶飲んでた…ぜ。」
「は…?」
あっけに取られた霊夢の表情。
「死後の世界っていうのもいいものかも知れないなぁ。」
「…大変、頭でも打ったのかしら。」
言葉とは裏腹に安心したような口調と表情。
「ま。風邪を治してからにすることね。」
「珍しいな、心配してくれてるのか?」
立ち上がった霊夢につられて上半身を起こす。
「私にうつされたらたまったものじゃないからね。」
「ふふ、そうか…。」
小さく笑い、立ち上がる。
今度、手土産でも持って顔を見に行くか。
青い空のさらに先に向かって、澄み渡る蒼を見上げた。