ほの暗い部屋の中で勢い良くキーボードに怒りをぶつける音が聞こえる……。
ここは輝夜姫の寝室。
近頃はネットゲームにはまっているのでずっとキーボードを叩いていることが多い彼女はいつに無く荒れていた。
人気投票ぅ??人気なんて所詮まやかしなのよ。ざけんじゃないわよ。
酒を煽りながらキーボードを叩く音。
キーボードの幾つかが吹っ飛ぶがそんなことは気にしない。
前回の人気投票との結果の差を見比べつつ、やけになってネットゲームを続ける姫の姿を見ていられなくなったのか、永琳、鈴仙が声をかける。
「姫、私達は姫のためなら一肌脱ぐことすら惜しみません」
だが、人気投票の結果に業を煮やす姫には逆効果。
「何よ!!媚びちゃって!! そんなに人気が欲しいのね。 そうよ。私の今の姿が滑稽で楽しいんでしょう。笑いなさいよ」
今の姫の姿は酔っ払いの不良親父に似ている。もう人生なんてどうでも良いとか言いながら酒を煽る姿なんかそっくりだ……とか思ったとか思わなかったとかわからないがどうやってもてがつけられそうもない。
そこに、人気投票永遠亭ランキングで最下位だったてゐが酌をはじめ、永琳、鈴仙に対して罵詈雑言を言い連ねる……。
「人気投票なんて媚びた奴が勝つことになってるのよ」
「プロポーションでは私だって負けてないわよ」
「そうよ、昔は輝夜姫と言えば都から求婚者がひっきりなしに現れて、求婚しに来るほどの人気だったんだから」
「私だって部下からは良い親分だって慕われてるんだから」
「ネットでしか人気がもらえないのとは違うわよね」
「そうよそうよ」
……永遠に続くかと思われる時間、酒を浴び罵詈雑言を吐き続ける姫とてゐの姿をみて、いたたまれなくなったのか永琳と鈴仙は部屋を後にした。
次の日。
「……うう~頭痛い~」
酒を浴びるほどかっくらった輝夜。
いつもは絶対に酒によって頭痛になったりしないのだが、流石に体のほぼ全部が酒になっているほど飲んではどうしようもない。
そうやって、痛い頭を押さえてキーボードに突っ伏している姫の元にそっと薬とティーカップが置かれる。
「姫様、お体は大丈夫ですか?」
実はこういう気遣いが出来たり、つらいことがあってもめげないことが鈴仙や永琳の人気の一部でもあるのだが、そんなことは気にしない様子で輝夜は永琳の薬をいただく。
「ありがとう、永琳。 あなたたちが悪いわけじゃないのよ、ただ今より人気が欲しいだけ。大体紅魔館のレミリアも冥界のゆゆこも私よりも人気があるじゃない。だからちょっと人気が欲しいなって思っただけなのよ、だから昨日のことは忘れて欲しいの」
昨日の醜態からはうって変わって急に気弱になる姫の姿を見て、意を決した永琳は姫に話し出す……。
それは、人気獲得の秘術。
「姫様、人気獲得のための方法を昨日一晩考えました」
永琳の言葉に俄然目を輝かせる輝夜。
「その方法を身につければ私もレミリアやゆゆこに勝る人気を手に入れられるの?」
「ええ、勿論です、姫。この方法を身につければネットの人気者になれること間違い無しです」
「わかったわ、多少辛くても我慢する。 だから教えて頂戴、永琳」
「『萌』と言う言葉を知っていますか? 姫」
「ネットでしょっちゅう聞かれる言葉ね。詳しい意味はわからないけれど確か可愛らしい娘や綺麗な娘に対する褒め言葉の一つだったと思うわ」
「大体合っています。 今回の目標はズバリ『萌』、そこで今の流行の『萌』を調べて、姫様に似合う衣装を用意いたしました」
言葉と共に、後ろに隠し持っていた物を取り出す。それは、首元は水色で赤いリボンが真ん中に付けられている上着。真ん中に結わえられた赤いリボンがチャームポイントの一枚で、他の部分は白い。目を移してスカートを見るとこちらは普通に水色のスカートそれに黄色いカチューシャの3点セットだ。
「何? この衣装? セーラー服??? 鈴仙が身につけているものに近いわね」
「ええ、これは今大流行の『涼宮ハルヒ』なる者が身につけている衣装だそうです」
「『萌』というものは服装からまずはじめるわけね」
「言葉遣いにも気をつけていただきます。涼宮ハルヒは勝ち気で傲慢な口調、人を人とも思わないような喋りの中、時々見せる優しい表情が男どもの視線を集めております、コレをネットの世界では『ツンデレ』というそうで、姫にもそのようにふるまっていただこうと思います」
「なるほどね。傲慢な態度を見せておいて時々崩れると言う手法。昔、宮廷官女の一部がそのように振舞っていたのはそういうわけがあったのですね」
「そのとうりです」
「『ツンデレ』に『涼宮ハルヒ』、これで私も明日のネットの立役者ね……」
「はい、これで皆の視線は姫様に集中。『ツンデレ姫』の名がネットに広まれば自ずとキャラクター人気投票での順位も上がることでしょう」
……こうして、輝夜姫の毎日は始まった。
元来人の上に立っており、ツンとした態度を見せることにはなれている姫。
時々崩れるといったデレの部分も完全装備するように振舞う姫の姿はたちまちネット上で広がり、大人気になるような気がしたのだが……。
「姫様、大変です」
「どうしました、永琳」
「掲示板には中傷が山のように書かれております」
「何故です、『ツンデレ』と『涼宮ハルヒ』を備えた私にそのようなものが書かれるはずはありません。永琳、内容を見せなさい」
「姫様、中身は見ないほうが宜しいかと」
「良いから見せなさい」
「判りました……」
書いてあったのは罵詈雑言の嵐。
曰く、人気取りに必死だな姫とうとう落ち目か……とか、涼宮コスは似合わない……とか、引きこもりはうっとーしいから出てくるなや……とか散々な内容だ。
その内容を見て、自分の計画が失敗したことを悟った姫、その怒りモードはMAX状態。
怒りモードでとっとと服を破り捨てると元の服に戻って永琳に酒を買ってくるように命じ、キーボードに向かってネットゲームを開始する。
やけになった姫にネットゲームでの勝利が確約されるはずも無く、ネットゲームも惨敗。
……その数秒後、パソコンごとキーボードを破壊する姫の姿は涙なくしては見れたものではなかったと言う。
輝夜姫が人気投票上位を取るのはいつかそのうちに……できたら良いね。
(終)
ここは輝夜姫の寝室。
近頃はネットゲームにはまっているのでずっとキーボードを叩いていることが多い彼女はいつに無く荒れていた。
人気投票ぅ??人気なんて所詮まやかしなのよ。ざけんじゃないわよ。
酒を煽りながらキーボードを叩く音。
キーボードの幾つかが吹っ飛ぶがそんなことは気にしない。
前回の人気投票との結果の差を見比べつつ、やけになってネットゲームを続ける姫の姿を見ていられなくなったのか、永琳、鈴仙が声をかける。
「姫、私達は姫のためなら一肌脱ぐことすら惜しみません」
だが、人気投票の結果に業を煮やす姫には逆効果。
「何よ!!媚びちゃって!! そんなに人気が欲しいのね。 そうよ。私の今の姿が滑稽で楽しいんでしょう。笑いなさいよ」
今の姫の姿は酔っ払いの不良親父に似ている。もう人生なんてどうでも良いとか言いながら酒を煽る姿なんかそっくりだ……とか思ったとか思わなかったとかわからないがどうやってもてがつけられそうもない。
そこに、人気投票永遠亭ランキングで最下位だったてゐが酌をはじめ、永琳、鈴仙に対して罵詈雑言を言い連ねる……。
「人気投票なんて媚びた奴が勝つことになってるのよ」
「プロポーションでは私だって負けてないわよ」
「そうよ、昔は輝夜姫と言えば都から求婚者がひっきりなしに現れて、求婚しに来るほどの人気だったんだから」
「私だって部下からは良い親分だって慕われてるんだから」
「ネットでしか人気がもらえないのとは違うわよね」
「そうよそうよ」
……永遠に続くかと思われる時間、酒を浴び罵詈雑言を吐き続ける姫とてゐの姿をみて、いたたまれなくなったのか永琳と鈴仙は部屋を後にした。
次の日。
「……うう~頭痛い~」
酒を浴びるほどかっくらった輝夜。
いつもは絶対に酒によって頭痛になったりしないのだが、流石に体のほぼ全部が酒になっているほど飲んではどうしようもない。
そうやって、痛い頭を押さえてキーボードに突っ伏している姫の元にそっと薬とティーカップが置かれる。
「姫様、お体は大丈夫ですか?」
実はこういう気遣いが出来たり、つらいことがあってもめげないことが鈴仙や永琳の人気の一部でもあるのだが、そんなことは気にしない様子で輝夜は永琳の薬をいただく。
「ありがとう、永琳。 あなたたちが悪いわけじゃないのよ、ただ今より人気が欲しいだけ。大体紅魔館のレミリアも冥界のゆゆこも私よりも人気があるじゃない。だからちょっと人気が欲しいなって思っただけなのよ、だから昨日のことは忘れて欲しいの」
昨日の醜態からはうって変わって急に気弱になる姫の姿を見て、意を決した永琳は姫に話し出す……。
それは、人気獲得の秘術。
「姫様、人気獲得のための方法を昨日一晩考えました」
永琳の言葉に俄然目を輝かせる輝夜。
「その方法を身につければ私もレミリアやゆゆこに勝る人気を手に入れられるの?」
「ええ、勿論です、姫。この方法を身につければネットの人気者になれること間違い無しです」
「わかったわ、多少辛くても我慢する。 だから教えて頂戴、永琳」
「『萌』と言う言葉を知っていますか? 姫」
「ネットでしょっちゅう聞かれる言葉ね。詳しい意味はわからないけれど確か可愛らしい娘や綺麗な娘に対する褒め言葉の一つだったと思うわ」
「大体合っています。 今回の目標はズバリ『萌』、そこで今の流行の『萌』を調べて、姫様に似合う衣装を用意いたしました」
言葉と共に、後ろに隠し持っていた物を取り出す。それは、首元は水色で赤いリボンが真ん中に付けられている上着。真ん中に結わえられた赤いリボンがチャームポイントの一枚で、他の部分は白い。目を移してスカートを見るとこちらは普通に水色のスカートそれに黄色いカチューシャの3点セットだ。
「何? この衣装? セーラー服??? 鈴仙が身につけているものに近いわね」
「ええ、これは今大流行の『涼宮ハルヒ』なる者が身につけている衣装だそうです」
「『萌』というものは服装からまずはじめるわけね」
「言葉遣いにも気をつけていただきます。涼宮ハルヒは勝ち気で傲慢な口調、人を人とも思わないような喋りの中、時々見せる優しい表情が男どもの視線を集めております、コレをネットの世界では『ツンデレ』というそうで、姫にもそのようにふるまっていただこうと思います」
「なるほどね。傲慢な態度を見せておいて時々崩れると言う手法。昔、宮廷官女の一部がそのように振舞っていたのはそういうわけがあったのですね」
「そのとうりです」
「『ツンデレ』に『涼宮ハルヒ』、これで私も明日のネットの立役者ね……」
「はい、これで皆の視線は姫様に集中。『ツンデレ姫』の名がネットに広まれば自ずとキャラクター人気投票での順位も上がることでしょう」
……こうして、輝夜姫の毎日は始まった。
元来人の上に立っており、ツンとした態度を見せることにはなれている姫。
時々崩れるといったデレの部分も完全装備するように振舞う姫の姿はたちまちネット上で広がり、大人気になるような気がしたのだが……。
「姫様、大変です」
「どうしました、永琳」
「掲示板には中傷が山のように書かれております」
「何故です、『ツンデレ』と『涼宮ハルヒ』を備えた私にそのようなものが書かれるはずはありません。永琳、内容を見せなさい」
「姫様、中身は見ないほうが宜しいかと」
「良いから見せなさい」
「判りました……」
書いてあったのは罵詈雑言の嵐。
曰く、人気取りに必死だな姫とうとう落ち目か……とか、涼宮コスは似合わない……とか、引きこもりはうっとーしいから出てくるなや……とか散々な内容だ。
その内容を見て、自分の計画が失敗したことを悟った姫、その怒りモードはMAX状態。
怒りモードでとっとと服を破り捨てると元の服に戻って永琳に酒を買ってくるように命じ、キーボードに向かってネットゲームを開始する。
やけになった姫にネットゲームでの勝利が確約されるはずも無く、ネットゲームも惨敗。
……その数秒後、パソコンごとキーボードを破壊する姫の姿は涙なくしては見れたものではなかったと言う。
輝夜姫が人気投票上位を取るのはいつかそのうちに……できたら良いね。
(終)
だけど、ハルヒな姫様ならちょっと見たいかも
姫様にハルヒ、後は鈴仙にみくる、永琳に長門役をやらせればきっといけそうな予感♪
どうかなと思いました
どう見ても師匠やうどんげに人気喰われそうな悪寒。がんばれてるよ。