おなかが空いた 腹減った 腹ぺったん子 最中が浮いた。
あまりに空腹、切な過ぎて 霊夢は最後に残った最中の生地を ぺたぺたぺろぺろ舐めて薄めた
舌のざらりをぺたりとはりつけ そぎ落としたなら羽衣のよう ひらりと吐息に誘われて
浮いた最中は風に乗る 流れて水場へ誘われ 神社の裏手の小さな池に ぽとりと落ちて沈み逝く。
巫女の飛法は浮遊である。
ふわふわと 浮かび漂い追いかけた しかして霊夢が手を伸ばすほど 間に挟まる大気はうねて
羽に似た最中は 空間を跳ねるように逃げ行く 無重力の巫女が流体力学に負けた瞬間だった。
池に落ちて、沈み逝く 水染み侵され、溶けてゆく
最中に混ざった池は、ふやける水の澱みだが 池に混ざった最中は それは つまり なんだ?
巫女をして、世界は重力とは無縁だけれど 最中は普通の最中であった
つまり、落ちて沈んで溶けたのだった
消得た最中を瞳に浮かべ 茫然自失とした霊夢は 世の理に宣戦布告
最中への罪とお腹の恨み 追求しようと誰にも誓う
ポジティブにー アクティブにー それが私の心なの? 忘れた。
アホーとカラスが鳴いたから いつの間にか日も暮れて 夕火が水面に燃えている
とりとめも無い事考えて 時間をつぶした理由とは、もう他には無いという 食料たちへの哀歌 忘れたくて。
池に背を向けて 口笛を吹いて歩み去る 音なんて出なくても 気分は荒野のデンドリマー
雰囲気とノリを集めて囲む やがて肥大化した巫女の イメージはとても、重くて 口笛の吐息と共に視線は下を向いた。
単に落ち込んだ訳ではないんだからね!
霊夢はそこに 気分の底に 田螺を見つけた
あぁこの瞬間こそ たにしのえにし 絵にした西日の田舎の小川に 重い馳せ遣ば 縁の田螺
さほど意味無く見せかけて 道端の変わった形の小石を掴むよに
小石様して田螺に恋し 欲しいと腋から袖口に入れた
一つそれは貝である
食べられる
結論を急いだのは焦りじゃなくて 最早喪中の最中の無念 それが切な 過ぎたから
霊夢A「でも、ちょっとまって、田螺なんて食べて大丈夫!? 病気とか、虫とか平気?」
霊夢B「そもそも、美味しいの? 小さいし、ホントに食べる気?」
霊夢C「やめて! 田螺の心を分かってあげて! 最中の代わりにされる田螺の 寂寥の念 感じてあげて!」
霊夢D「うるさい黙れ」
目をつぶり、涼やかに閉じられた澄ました口元 くいと美的に吊り上げる
己が自虐の クールなビューティー 状況に酔う 妖艶に妖 シュールに ビールが 空腹に良い
ならば、もう、迷い在りなどしないのか
腋に抱えた 山盛り田螺 台処にて丼に盛る 井戸水に、初逢う田螺の様見れば
うねりて くねりて のろそと もろそと
これから食され 溶け相変わりて 美味しく消化 結界の巫女の血肉と昇華し 幻の想いを守りゆく
その、詩的死的に耽美な運命 己の身の変わり行く様を 田螺はまるで分かっていなかった。
あいも変わらず うねりて くねりて のろそと もろそと ゆるゆると
その危機感感じえぬ ゆとり往く時の流れに 己が運命をまるで解しない優雅で鷹揚な様に
霊夢は確かな縁を感じた
田螺を食みて 命をつなぐ 田螺を血肉に 世界を見やる 体は田螺で出来て行く
田螺巫女と呼ばれるまでに 自認するまで誇りもつ
そうなれば、霊夢の意思は 体を作る田螺の意思と 混ざり得て それは既に今の自分ではなく
変わるる自我は何を想うか
ゆるゆるとした田螺の意思ならば きっと傍目には分かるまい
今の己と 田螺の己 似て非なるものが 合い成るのだから!
ああ、 霊夢は思った そうなる運命は変えられぬ 食物を 生き物を 内に取り込まずしては生きられぬ
せめて、身に綴じた生き物たちの想いが より豊かな精神を 形作る事を願う!
最中霊夢 になるはずだった 平行世界への未練を消すには 田螺を完全なものとせよ!
巫女の秘法飛法は浮遊である
もし、田螺が飛べたなら うねりて くねりて ふわふわと 宙を舞う事が出来たなら!
最中に出来て 田螺に出来ない この業を 克服させたとしたならば!
秘法受け継ぐ似たもの同士 合い成り受け継ぐ未来の自分は どれほどまでに巫女々々しくあろうことか!
霊夢は 丼いっぱいの田螺を 両手で抱え上げ 耐え切れなかった思いをぶちまけるように
強く 強く 力強く 想い慟哭 やりきれなさを これでもかと力を込めて
えいと 田螺を空にぶちまけてみたのだった。
...まさか!? ちょっ まt.....
それが霊夢クオリティ。
霊×田?田×霊?
ごめんなさい。
入手難度高いけどな。
美味しいとは意外でした。
田=霊です
巫女っぽい?
きっと、たぶん、だいj……
家の近所には一杯…。