Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

不純喫茶小悪魔

2006/06/23 09:15:21
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※はたらく少女の物語。
※着想元のネタがかなり旧い(推定17~8年前)。











 専門的なものから一般常識、果ては日常の雑学に至るまで、
ありとあらゆる知識(もちろん無駄知識を含む)の殿堂『紅魔館付属大図書館』。
前年度決算等でいろいろと忙しいこの時期に、図書館の一室ではある秘密の儀式が執り行われていた。
 薄暗い部屋の中央におかれたテーブルには髑髏の燭台が灯り、乱雑に積み重ねられた書類の谷間で
一心不乱に呪文(のようなもの)を唱える2つの影を妖しく揺らめかせている。

「~~以上、古よりの約款に基づき、我が名(以下甲)を以て、汝(以下乙)との契約を締結する――」
 2つの影の一方は図書館長、紫の魔女パチュリー・ノーレッジ。
「~~旧き約款に新しき条項を加え、汝(甲)と我(乙)の署名を以て承認となし契約は完成する――」
 そして、もう一方は図書館司書、通称小悪魔であった。
 それぞれ冊子を携えて合い、今まさに妖艶な儀式はクライマックスを迎えようとしている。
それぞれの詠唱(?)は徐々に調和してゆき、最後の一文に至ると完全にシンクロする。



「「――押印を!!」」

ぽん! ポン! POM!! っと、広大な図書館にハンコを捺す軽快な音が響き渡った。


















                      東方幻想狂
                    【不純喫茶小悪魔】












「それじゃ署名印と割印と証紙に消印……っと。はい、これ館長の控えです」
「チェック、チェック、チェック、OK。これで契約完了ね」
 小悪魔から渡された書類にパチュリーが目を通し、最後の署名と捺印が為され、
秘密の儀式――いわゆる契約の更新は完了した。
「それじゃあまた10年間、よろしくお願いしま~す♪」
「…………」
 ところが、いつもならここでやる気のない生返事をよこすだろうパチュリーは、
何やら思い詰めたような表情で契約書を見つめている。
いつもと違う契約主の反応に小悪魔は漠然とした不安を禁じ得なかった。
「あのー、何か間違いでもありましたか?」
「え?……な、何でもないわ」
「そうですか。それじゃあ仕事も一段落つきましたし、お茶にでもしましょうか?」
 歯切れの悪い返答に不安は募るばかりだが、契約主が何でもないと言うのならば、
これ以上の追求は無駄である。そう割り切った小悪魔は、気分転換にお茶にでもしようと提案する。
「そうね。ちょうど喉が渇いたところだわ」
 そう言ってパチュリーが山のような書類をザッと脇にどかすと、小悪魔がすかさずティーセットを設える。
温かな紅茶がカップに注がれると、豊かな香りが辺りに漂いはじめた。


「ふぅ……。しっかし館長。なんでもかんでも印鑑印鑑って、印鑑代だって莫迦になりませんよぉ。
署名だけでどうにかならないものですかねぇ?」
 実印,銀行印,認印。世間という大海を渡るためには最低3種の印鑑が必要と言われる印鑑認証制度社会。
それなりに権威のある物を拵えようと思えば、それなりの品質が求められるのも世の常で、
希少価値の高い素材などが用いられる事も少なくない。
そして、それら経済活動の犠牲となって消えてゆくものも少なくない。
 最近幻想郷で毛の無いマンモスが多数目撃されているが、氾濫する印鑑との因果関係が囁かれている。
「郷に入っては郷に従え。幻想郷は日本にあるのだからそこのルールに従うのが道理。
……そう、ルールには従わなきゃならないのよね」
 パチュリーは最後の一文を自分に言い聞かせるように呟くと、意を決した様に話を切りだした。
「――実はね小悪魔。今回の契約が最後になってしまうかもしれないよ」


「………。えぇっ!? わ、私、何かマズイ事でもやっちゃいましたかゥギ!? コァ―――ッ!!」
 漠然としていた不安が現実となって襲いかかる。ショックのあまり一瞬呆然とした小悪魔は、
思わず詰め寄ろうとした拍子に天板の角に膝頭を打ち付けて悶絶する。
 あまりの慌てっぷりに半ば呆れながらも、パチュリーはその問いを即座に否定する。
「そうじゃないわ。ほら、最近『随意契約』がらみで色々と問題になってるでしょう?
天下り先の温床ととかなんとか言ってね。一応ウチも図書館の端くれみたいだから、
上からも下からも色々と突かれちゃってねぇ」
 そう言って、やや自嘲気味に薄く嗤う。
「アレレ? ウチの図書館って公的機関だったんですか? 初耳ですよぉ」
「コイツ(作者欄を指さして)の話じゃそう云う設定みたいね。――ま、そんな理由で次回の契約から
公平を期して一般競争入札になるのよ」
「――うぅっ、資本の小さい個人経営者には世知辛い話ですねぇ」
 どういった理由にせよ、ほぼ解雇予告を通達される形となった小悪魔の表情は暗く沈んでいった。


「まあ、そうは言うけれどね。ウチの業務は特殊な知識と経験が必要不可欠だし、
その辺りを考慮してもらえば随契に持ち込む事も可能だわ。それに取りあえずあと10年は契約が残ってるから、
その間に情勢が変わる可能性だって充分にあるし」
 制度上しかたないとはいえ、有能な人材を手放すのは口惜しいし、
それなりに長い付き合いでもあるから『ハイ、ゴクロウサン』と放り出すのも忍びない。
パチュリーはなるべく明るい展望を語って聞かせるが、絶望の淵にどっぷり浸かって
『このご時世、中途採用は絶望的だぁ』だとか『組んじゃったローン、どうしよう?』てな事を、
頭を抱えてブツブツ言ってる小悪魔の耳には届かない。
「――えーっと、小悪魔? 参考程度に聞くけれど、此処を解約された場合、その後のあてはあるの?」
 さすがに可哀相に見えたのか、『もしも』の場合に備えた保険を用意することで、
若干でも希望を与えようと試みる。
「え? あ、はい、そうですねぇ。故郷ならともかく、喚ばれてこのかたここ以外は知りませんので、
その手のコネは全く無いです。……でもまぁ、そうなったら折角の機会ですし、喫茶店でも始めてみようかと思います」
「そう。それじゃ魔理沙かアリスあたりに頼んで……って、喫茶店?」
 予想通りの返事と『脱サラしてラーメン屋始める』的ノリを含くむ展望に、パチュリーは思わず聞き返した。


「はい。実は従姉が人間世界で『Magical-Pot』っていう喫茶店を営んでて、そこでアルバイトをしてた事が
あるんです。その時にいつか私もやってみたいなぁって思いまして」
「そう。貴方お茶の入れ方とか上手だものね」
 なんだかんだ言ってもそれなりに将来のことを見据えてたりするのねぇと感慨深げに頷く。
考えてみれば、今回の騒動に関係なく、ここでの契約も何時かは終わりを迎えるのだから。
「えへへー。実はお店のデザインとかメニューだとか、その他いろいろ考えてあるんですよぉ♪」
 灰色の敗北街道から一気にバラ色世界へと跳び上がったような笑顔を浮かべ、
聞いてもないのに冊子やら図面らしき書類を取り出してテーブルに並べる。
 それらはメニューの草案であったり、ユニフォームのデザインや店舗の設計書や内装見取り図等々、
かなり具体的な計画資料の数々であった。
「あら、随分と気が早いじゃない。なんだったら今すぐにでも辞めさせてあげるわよ?」
「そ、そんなこと言わないでくださいよー! 私はただ、遠い将来を見据えたライフプランをですねー」
「冗談よ。でも、本気で考えてるならお茶や珈琲だけじゃダメね。喫茶店にはお茶請けや
ちょっとした食事の類も求められるのよ?」
「ふっふっふ。大丈夫、抜かりありません。休暇の合間を見て紅魔館の使用人さん達に料理を教わってるんです。
そちらのメニューの案に載ってるものは一通り作れるんですから!」
 パチュリーの意地悪に両手両翼をワタワタ振って抗議していたと思ったら、
今度は『エッヘン』と胸を張って答える。コロコロと表情や仕草が変わるのは実に愛らしく(そして面白い)、
この『予想の付かない判りやすさ』という矛盾が小悪魔が小悪魔たる所以なのだろう。


「ふ~ん、随分と大きく出たわね。それじゃあちょうど小腹も空いた所だし……コレをお願いしようかしら?」
 そう言いながら手に取ったメニュー案をパラパラとランダムに捲って指を差す。
「えーと、『甘口メ○ンパンスパ』ですか? かしこまりまし――」
「待ってー、承らないでーっ!!」
 致死レベルの激メニューがさらっと載ってる辺り、なかなか侮れない喫茶店になりそうだった。
早々と人生を投了するつもりがないパチュリーは、今度はもっと慎重にメニューを捲る。
(ええっと、無難そうなもの、無難そうなもの……コスモスパ? ローズピラフ? ダメだわ。
名前だけじゃ判らない物が多すぎる。とすればやはり定番中の定番かしらね……)
「『たまごサンド』をお願いするわ」
「ハイ、かしこまりましたぁ♪」
 いささか安直な選択だが、得体の知れないものを頼んで地獄を見るのは真っ平ゴメンなのだろう。
そもそも、紅魔館の使用人達が何故こんな料理を習得しているのか?
 厨房へと向かう小悪魔を見送りながらそんなことを考えるが、これまでに様々な知識を得た経験が
『知らない方が身のため』と警鐘を鳴らしたので、それ以上の追求は止めておいた。

「おまちどーさまでーす」
 しばらくして、小悪魔は様々な機材を満載したワゴンを押して戻ってくる。
「『たまごサンド』程度でやけに仰々しいわね?」
「ええ。折角ですからプレゼン用に色々と持って来たんです。はい、ご注文の『たまごサンド』でーす」
 カットした食パンにタマゴサラダを挟んだだけというサンドイッチの定番。
しかし、定番中の定番ゆえにその良否が店の評判に直接繋がるとも言われている(……なんか違う)。
「へぇ。美味しそうにできてるじゃない?」
 タネを挟んで着るだけなので単純と言えば単純だが、形が崩れない程度に加減して切るのは割と難しい。
自分が食べるだけならそれほど気にすることは無いが、人様にお出しする、ましてやお客様相手の商売ともなれば、
見栄えの善し悪しも味覚に対する一因となってくる。その点でも小悪魔の『たまごサンド』は及第点と言えた。
「どれどれ、味の方は……『ガキンッ☆』 ッ――――!!」
 リンゴを囓ると歯茎から血がでませんか? それは歯槽膿漏の合図です。
しかし、サンドイッチで歯が欠けそうになる話なんてのは聞いたことが無い。


「――って、何なのよコレは!?」
 予期しない歯応えに意識が飛びかけたパチュリーは猛然と抗議の声を上げる。
「ああ!? 食べちゃダメですよ、それは蝋で拵えた食品サンプルなんですから!
見た目や感触、そして香りなんかを限りなく本物っぽく造り上げた逸品なんですよ。
で、こっちが本物の『たまごサンド』でーす。どうですか? サンプルと遜色ないでしょう?」
 サンプルを基準に本物を作るのは手順が真逆な気がしないでもないが、それが小悪魔クオリティなのだろう。
「無駄に凝った事をするのね?」
「そりゃそうですよぉ。食品サンプルってのはいわば外食の基本中の基本なんです!
例えばフォークが浮いてるスパゲッティとか、不自然な位に彩り鮮やかなお子様ランチだとか、
視覚的にうったえるこれらにドッキドキワークワク(はぁと)の夢やロマンを感じるでしょう?
そういった所に手を抜くなんてのは経営者として論外なんです!!」
「いや、あの、そうじゃなくって……」
 真剣に語る小悪魔に悪意の類は一切感じられず、逆にその口調に気圧されるように抗議の言葉は尻すぼみになる。
そもそも喫茶店のプレゼンをすると言われたのだから、この程度のトラブルは想定しておくべきだった。
そう考える事で、パチュリーは色々吐き出しそうなモノをどうにか下すことに成功する。  
「ですからより解りやすいサンプルを造ることが、より良い料理を作り出す絶対条件なんです!
……って館長、聞いてますか!?」
「解ったわ。解ったから貴女はもう少し、会話の流れと言うものを把握するように努めなさいね?」
 血の付いたサンプルを皿に戻すと、ステキにマイペースな小悪魔にニッコリと、
(うっすらと脂汗と青筋を浮かべた笑顔で)微笑みかけた。
 

「さあて、ジャンジャン行きますよ~♪」
 『たまごサンド』のプレゼンが終了すると(ちなみにボリューム及び味ともに普通に美味しいかったらしい)、
小悪魔はワゴンから次なる品物を取り出す。
「やはり喫茶店を名乗るなら、コレを外すわけにいきません!」
 取り出されたのはティーポットとカップ。魔法で以て保温措置が為された紅魔館特注のそれは、
しかしながらいつも図書館で使っているものと全く同じありきたりの物だった。
「確かに紅茶あっての喫茶店だものね。でも、普段飲んでるものならわざわざ紹介する必要無いでしょう?」
「チッチッチ。甘いですね、館長。コレは商売としてお出しする、小悪魔特製のスペシャルなヤツなんです!」
 そう力説しながらお茶と一緒にいくつかの小瓶をテーブルに並べる。
「これは……ジャム? なるほど、ロシアンティーってわけね」
「はい。苺にリンゴにブルーベリーからオレンジに蜂蜜等々、どうぞお好きなものでお召し上がり下さい♪」
 聞けば、小悪魔が半ば趣味でやっている菜園で採れた物を使った、100%手作りの品々であるとの事だ。
なるほど、確かに小悪魔特製のスペシャルなヤツである。
「それじゃあ折角だから、私は紅い(苺)ジャムを選ぶわ」
 何が折角なのかは判らないが、パチュリーは苺ジャムを手に取って、それを紅茶に溶かし込んだ。
ちなみにジャムは摘みとして頂くのが本来の楽しみ方なんだそうだ(情報提供:アリスさん所の露西亜人形)。


「うん、良い香り。それじゃ、頂きます………ブプゥーーーッ!」
 作法に沿って一通り香りを楽しんだ後、一口含むと舌先から痺れる様な苦みがいっぱいに広がって――
次の瞬間、薄暗い図書館に七色の虹が架かる。
「如何ですか? ズバリ『ロシアン・ルーレット・ティー』。ハズレのジャムは農薬なんですよぉ。
香りをジャムに似せるために、どれほど苦労したことか……」
 遠い目をしながら、しみじみとんでも無い事を暴露する小悪魔。
「ガハッ、ゲヘッ、ゴホッ……。な、なんちゅーものを……グフッ……の、飲ませるのよっ!!」
「アレですよ。『カラシ入りたこ焼きで運試し』みたいなお茶会に華を添えるジョークメニューです。面白いでしょう?」
「お、面白いとかそれ以前に、そう言う事は先に説明しなさい!! 少し胃に入っちゃったじゃない……ゴフゥ」
 小悪魔に物理的な突っ込みを入れたいのもやまやまだが、すでに身体が色々と言うことを利かない状態のパチュリー。
しかし、そんな状況お構いなしに小悪魔は次から次へとステキメニュー(案)の披露を続ける。


「ジョークといえば定番、バッタもんだけど材料はオリジナルに忠実な『ソイレント・緑』!」
 言いながらカ○リーメイトのような、薄黄緑色をしたビスケットを取り出して並べる。紅魔館ではもちろん、
幻想郷全域においても割とよく見られる食品だが、人間相手や結界のあっちで出すのは止めてもらいたい代物だ。
「変わり種としては『イエロー・ケーキ』なんてのもありますよー」
 今度は黄色地に三つ葉マークが物々しい容器を取り出す。それを見たパチュリーの血の気が更に引く。
「ちょ、ちょっと! 前者はともかく、ソレは人外相手でも色々とヤヴァイから!!」 
「でもでも、栄養価はとっても高いみたいですよぉ? とある『G』さんって方は50mを超える巨体を支える為、
これに属するものを常食としてらっしゃるみたいですし、それにホラ、そばに置いたら蒲公英の葉っぱがこんなに大きk」
「止めなさいっ!!」
 小悪魔が50㎝はあろうかという葉っぱを取りだしかけた所、パチュリーの魔法弾がそれを消し炭に変える。
結局、その剣幕に押し切られる形で物々しい容器はワゴンに戻され事なきを得た。
そう言えば最近、何人かの本館使用人達が原因不明の体調不良をうったえていると聞くがまさか……。


「ところで館長。先程からずいぶん具合が悪るそうですけど、大丈夫ですか?」
「ゼェ……誰の所為だと……ハァ……思ってるのよ?」
 相変わらず邪気の欠片すら見せない小悪魔。悪魔という種族の特性なのか、それとも小悪魔個人の資質なのか?
残念ながら今のパチュリーにそれを判断するだけの余裕は無かった。
「それじゃあ、コレで最後にしますね?」
 農薬のダメージでぐったりしているパチュリーを余所に、小悪魔はさらなるプレゼンを取り出す。
「じゃじゃ~ん! 喫茶店に於いて『紅茶』と並ぶ二大巨頭、珈琲の『コウスケくん』でーす」
「こ、『コウスケくん』?」
 取り出されたモノは珈琲が満たされた、どうってことないサーバーだ。
少し変わった所があるとすれば、『こうすけ』と記されたネームラベルが貼ってある事くらいだ。
いくらボケボケの小悪魔でも、流石に持ち物に記名するほどお子様でもあるまいし、どう聞いても男性名である。
 疑問符が顔に貼り付いたパチュリーに小悪魔は応える。
「コウスケくんはコーヒーの『コータローくん』とアイスコーヒーの『アイコちゃん』とのブレンド、
文字通り愛の滴なんです。随分無理言って従姉から分けて貰ったんですよぉ。ほぉら、コウスケくん。館長にご挨拶なさい」
 突如、サーバーから珈琲が吹き出した。そして、まるで触手の様に迸って、
ぐったりとしているパチュリーにまとわりつく。すでに体力が限界のパチュリーは為すがままに翻弄される。
「にゃっ!? こ、珈琲が絡み付いて……っていうか、熱っ!!」
「あらあら、コウスケくんってば館長が気に入ったのね。こーんなに懐いちゃって」
 きゅるるる~♪ っと嬉しそうな鳴き声を上げ、珈琲はより強く蠢くように絡み付く。
「グエッ!? ……き、極まってる、極まってる!!」
「コウスケくんの最高の愛情表現ですよ。いいなー、私にだって滅多にしてくれないのに……」
 小悪魔は実に残念そうに呟くが、やられている側は堪ったものではない。
なけなしの体力を投げ打って脱出を試みるが、完全に極まった珈琲を解くことはできず、悪戯に体力を消耗するばかりだ。


「……こ、小悪魔ぁ。あなた、その従姉ってのに何を教え込まれ……ウギッ……たのよ?」
「モチロン、喫茶店経営のハウツーですけよぉ?」
 何を今更? とばかりに真顔で答える小悪魔にやはり悪意は感じられない。天然物だった。
混じりっけ無しの総天然120%! これが天使ならまだ可愛げがあるものの、どうしてまた悪魔何かに?
ああ愚問だ。だから悪魔なのか。
 パチュリーは一通りの結論を得ると、これまでに溜まった色々なものを吐き出そうと試みる。
しかし、残された時間はあまりにも少い。だからこそ、これだけは言っておきたかった。
「……ゴフッ……。これの何処が喫茶店なのよ!? つーか、いい加減放して……」
「えー? でも従姉は『これこそ喫茶店勤務の醍醐味よ!』って涙流しながら豪語してましたけど?」
「まったく……なんて従姉なの……」
「それなりに力のある悪魔で、人間界では『パスタ』って名乗ってましたよ。あ、そうだ。私はアルデンテって名乗ろうかなぁ?」
「ああ、そう……。そりゃ……ぁ、よかった……わ………ムキュ~~…………」
 そんな旧いネタ、今の若い子は知るわけないわ……。そう思考したのを最後にパチュリーは意識を手放した。
「わぁ!? か、館長!? しっかりしてください、館長ぉぉぉぉーーー!!」
 小悪魔のむなしい叫び声が広大な図書館に響き渡る。
 もし、10年後、可愛い悪魔の様な少女が働く喫茶店(それが空を飛ぶ店舗なら尚更である)を見かけても
関わらないことをお奨めする。命が惜しくないのなら話は別だが……。







 なお、その後『てめぇの親戚が私の従姉をバカにしやがってくれましたねー?』と、
ある鬼が図書館に乗り込んで来るが、それはまた別のお話。
『喫茶』といえば『登山』の季節。
紅いアイツにも遭えた事だし、今度は夏本番に向けて辛い氷壁攻略でも検討するか。

あ、たまごサンドは普通にたまごサンドでしたよ。
ぎゃあ
コメント



1.名無し妖怪削除
パスタとは懐かしい。
2.名無し妖怪削除
イチゴパスタは結構きつかった。
カルボナーラは美味しかった。
たらい氷は無理だった。
3.名無し妖怪削除
こんなところであの悪魔の名前を見ることになろうとは…
4.名無し妖怪削除
ラジオマンネタかね?<イエローケーキ