あらすじ
エロスはほどほどに
――――――咲夜さんなんか―――――――
「咲夜さんのうそつき…」
「め、美鈴、これはね?」
「うそつき…」
「め、美鈴……」
「約束したのに…」
「え、えと、その…」
「しないって言ったのに…」
「……あの……」
「…ばか」
「え?」
「咲夜さんのばかぁぁぁぁぁ!!!」
―――――――だいっきらい―――――――
東の空から陽が昇る。
幻想郷の夜が明ける。
レミリアさまにしかられて。
やっと戻った自分のお部屋。
広いベッドに一人で眠り。
あの日のことを、夢に見る。
「美鈴…」
美鈴。紅 美鈴。
小さく名前を呟いて。
ぎゅっと枕を胸に抱く。
耳に残ったあの叫び。
今も心にこだまする。
まぶたの裏には焼きついた。
泣き顔ばかりがリフレイン。
「……着替えなきゃ」
重いため息ひとつつき。
今日も始まるメイドの時間。
心を痛める思い出に。
そっとフタして着替えてく。
―――――――美鈴、美鈴――――――――
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴、ねぇ待って」
「お時間ですよ、咲夜さん!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴、話を聞いて」
「おことわりです!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴」
「なんですか!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴……」
「う、撃ちますよ!?」
「撃つの?」
「撃ちます!」
「……私を撃つの?」
「う、撃っちゃいます!
お仕事しないでついてくるなら
さ、咲夜さんでも撃ちますよ!?」
「…なにで撃つの?」
「ドルオーラ!」
「よりにもよってドルオーラ…」
「分かったんなら行きますよ!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「……」
「………っ」
タッタッタ
―――――――置いてかないで―――――――
喧嘩してから一週間。
咲夜の仕事を美鈴見てた。
「じー」
じー。
柱の影から顔だけ出して。
それはじぃっと見つめてた。
視線に気づいて十六夜 咲夜。
どうしようかと迷いに迷い。
勇気を出して、振り向いた。
二人の視線が絡み合い。
そっと逸れてくその前に。
しどろもどろになりながら。
口を開くよ、メイド長。
「じー」
じー。
「ナズェミテルンディス?」
やっちゃった。
大事な場面でこの台詞。
うつむく顔は耳まで赤く。
顔から湯気がたちのぼる。
短い丈のスカートの。
裾を握ってだまり込む。
小さく震える手の平に。
泣き出す気配を感じ取り。
美鈴、あわてて言葉を探し。
しどろもどろにしゃべりだす。
「お、おんどぅる、るらぎったん、でぃすかー」
ぎゅっと眉よせ「へ」の字口。
怒った顔して、この台詞。
まったくホントにかわいいったら。
「……………」
「……………」
ずっとしょんぼり元気がない。
その上今度は泣きそうで。
そんな咲夜を見るに見かねて。
とっさにしゃべったオンドゥル語。
ぽかんと思わず呆気にとられ。
美鈴見つめるメイド長。
美鈴つーんとそっぽ向き。
たまらず咲夜が、吹き出した。
「あははは、美鈴、なによそれ」
「わ、笑うなんて、ひどいです!」
「だって美鈴、ぷっ、くくっ」
「咲夜さんこそ!」
「あ、あれは…」
「なずぇみてるんでぃすぅー」
「もう、美鈴!」
喧嘩してから一週間。
やっと二人の、笑い声。
ぽっかり空いた休憩時間。
久しぶりに、二人で話す。
紅魔の館の前の湖。
ほとりに座って、二人で話す。
「……咲夜さん」
「……なに、美鈴?」
風に揺れてる静かな湖面。
靴を脱いで、浸ける足。
風に揺れてる銀と紅。
三つ編みにした、おそろいの髪。
「どうして約束、破ったんです?」
素足で水面をかき混ぜながら。
たった一言、零す声。
互いに視線は合わさずに。
心の裡を、紡いでく。
「あまりにあなたがかわいくて。
けれども、それが全部じゃないの」
素直に話す、その気持ち。
「信じてくれる?」と呟いて。
ちらりと覗いた横顔が。
こくりと小さく頷いた。
「あのね、美鈴」
「なんですか?」
「あなたが好きよ」
「咲夜さん…」
「あなたが誰より大好きで
そして私は人間で
流れる時間は一緒でも
持てる時間は大違い
あなたに初めてキスをしたとき
背伸びをしても届かなかった
今では背伸びをしなくても
あなたにキスをしてあげられる
それは素敵で残酷で
くつがえせない時間の摂理
永遠すらも及ばない 短く尊い人の生」
静かに語る横顔は。
とても、とても、眩しくて。
彼女は彼女に恋をする。
激しく、強く、もう一度。
「吸血鬼には…」
「ならないわ。
薬も丹も無用のもの。
命短し恋せよ乙女。
短いからこそ咲く花よ」
胸の高鳴り知らぬまま。
彼女は言葉を紡いでく。
白い素足で水面を揺らし。
眩しい笑顔に心が揺れる。
「話が逸れたわ
戻すわね?
こういう酷くわがままで
勝手な理屈で生きてるの
だから一分一秒だって
離れたくない
傍にいたい
あなたにずっと触れていたい
だから思わず気がつけば――あなたを求めてしまってる」
それは真摯な告白で。
なにより求めた告白で。
勝手な人ね、と怒る気持ちも。
ずるい人ね、と拗ねる気持ちも。
なにもかもが、消えていく。
そして彼女は理解する。
彼女の感じたその気持ち。
短いからこそ激しく強い。
抑えられない、その気持ち。
「きちんと治すわ、これからは
あなたを傷つけたくないの
ごめんね、美鈴、怒らせて
ゆるしてなんて言えないわよね」
答えの代わりに手が伸びて。
華奢な両肩抱き寄せて。
自然と唇、触れ合った。
そのまま二人、草の上。
そっと重なり、倒れてく。
「咲夜さんは、ずるいです」
「美鈴、待って…」
「待ちません」
「や…」
「咲夜さんはずるくて、ひどくて
びっくりするほどわがままで――」
「めい、り…」
「世界で一番可愛くて
世界で一番大好きです」
「ん…」
「今日の、今の、このときだけは――」
『あなたの時間は私のもの、です』
喧嘩をしてから一週間。
二人はようやく仲直り。
少し激しく、情熱的で。
けれども優しい、仲直り。
愛の溢れる、仲直り。
エロスはほどほどに
――――――咲夜さんなんか―――――――
「咲夜さんのうそつき…」
「め、美鈴、これはね?」
「うそつき…」
「め、美鈴……」
「約束したのに…」
「え、えと、その…」
「しないって言ったのに…」
「……あの……」
「…ばか」
「え?」
「咲夜さんのばかぁぁぁぁぁ!!!」
―――――――だいっきらい―――――――
東の空から陽が昇る。
幻想郷の夜が明ける。
レミリアさまにしかられて。
やっと戻った自分のお部屋。
広いベッドに一人で眠り。
あの日のことを、夢に見る。
「美鈴…」
美鈴。紅 美鈴。
小さく名前を呟いて。
ぎゅっと枕を胸に抱く。
耳に残ったあの叫び。
今も心にこだまする。
まぶたの裏には焼きついた。
泣き顔ばかりがリフレイン。
「……着替えなきゃ」
重いため息ひとつつき。
今日も始まるメイドの時間。
心を痛める思い出に。
そっとフタして着替えてく。
―――――――美鈴、美鈴――――――――
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴、ねぇ待って」
「お時間ですよ、咲夜さん!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴、話を聞いて」
「おことわりです!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴」
「なんですか!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「美鈴、美鈴……」
「う、撃ちますよ!?」
「撃つの?」
「撃ちます!」
「……私を撃つの?」
「う、撃っちゃいます!
お仕事しないでついてくるなら
さ、咲夜さんでも撃ちますよ!?」
「…なにで撃つの?」
「ドルオーラ!」
「よりにもよってドルオーラ…」
「分かったんなら行きますよ!」
タッタッタ
タッタッタッタ
「……」
「………っ」
タッタッタ
―――――――置いてかないで―――――――
喧嘩してから一週間。
咲夜の仕事を美鈴見てた。
「じー」
じー。
柱の影から顔だけ出して。
それはじぃっと見つめてた。
視線に気づいて十六夜 咲夜。
どうしようかと迷いに迷い。
勇気を出して、振り向いた。
二人の視線が絡み合い。
そっと逸れてくその前に。
しどろもどろになりながら。
口を開くよ、メイド長。
「じー」
じー。
「ナズェミテルンディス?」
やっちゃった。
大事な場面でこの台詞。
うつむく顔は耳まで赤く。
顔から湯気がたちのぼる。
短い丈のスカートの。
裾を握ってだまり込む。
小さく震える手の平に。
泣き出す気配を感じ取り。
美鈴、あわてて言葉を探し。
しどろもどろにしゃべりだす。
「お、おんどぅる、るらぎったん、でぃすかー」
ぎゅっと眉よせ「へ」の字口。
怒った顔して、この台詞。
まったくホントにかわいいったら。
「……………」
「……………」
ずっとしょんぼり元気がない。
その上今度は泣きそうで。
そんな咲夜を見るに見かねて。
とっさにしゃべったオンドゥル語。
ぽかんと思わず呆気にとられ。
美鈴見つめるメイド長。
美鈴つーんとそっぽ向き。
たまらず咲夜が、吹き出した。
「あははは、美鈴、なによそれ」
「わ、笑うなんて、ひどいです!」
「だって美鈴、ぷっ、くくっ」
「咲夜さんこそ!」
「あ、あれは…」
「なずぇみてるんでぃすぅー」
「もう、美鈴!」
喧嘩してから一週間。
やっと二人の、笑い声。
ぽっかり空いた休憩時間。
久しぶりに、二人で話す。
紅魔の館の前の湖。
ほとりに座って、二人で話す。
「……咲夜さん」
「……なに、美鈴?」
風に揺れてる静かな湖面。
靴を脱いで、浸ける足。
風に揺れてる銀と紅。
三つ編みにした、おそろいの髪。
「どうして約束、破ったんです?」
素足で水面をかき混ぜながら。
たった一言、零す声。
互いに視線は合わさずに。
心の裡を、紡いでく。
「あまりにあなたがかわいくて。
けれども、それが全部じゃないの」
素直に話す、その気持ち。
「信じてくれる?」と呟いて。
ちらりと覗いた横顔が。
こくりと小さく頷いた。
「あのね、美鈴」
「なんですか?」
「あなたが好きよ」
「咲夜さん…」
「あなたが誰より大好きで
そして私は人間で
流れる時間は一緒でも
持てる時間は大違い
あなたに初めてキスをしたとき
背伸びをしても届かなかった
今では背伸びをしなくても
あなたにキスをしてあげられる
それは素敵で残酷で
くつがえせない時間の摂理
永遠すらも及ばない 短く尊い人の生」
静かに語る横顔は。
とても、とても、眩しくて。
彼女は彼女に恋をする。
激しく、強く、もう一度。
「吸血鬼には…」
「ならないわ。
薬も丹も無用のもの。
命短し恋せよ乙女。
短いからこそ咲く花よ」
胸の高鳴り知らぬまま。
彼女は言葉を紡いでく。
白い素足で水面を揺らし。
眩しい笑顔に心が揺れる。
「話が逸れたわ
戻すわね?
こういう酷くわがままで
勝手な理屈で生きてるの
だから一分一秒だって
離れたくない
傍にいたい
あなたにずっと触れていたい
だから思わず気がつけば――あなたを求めてしまってる」
それは真摯な告白で。
なにより求めた告白で。
勝手な人ね、と怒る気持ちも。
ずるい人ね、と拗ねる気持ちも。
なにもかもが、消えていく。
そして彼女は理解する。
彼女の感じたその気持ち。
短いからこそ激しく強い。
抑えられない、その気持ち。
「きちんと治すわ、これからは
あなたを傷つけたくないの
ごめんね、美鈴、怒らせて
ゆるしてなんて言えないわよね」
答えの代わりに手が伸びて。
華奢な両肩抱き寄せて。
自然と唇、触れ合った。
そのまま二人、草の上。
そっと重なり、倒れてく。
「咲夜さんは、ずるいです」
「美鈴、待って…」
「待ちません」
「や…」
「咲夜さんはずるくて、ひどくて
びっくりするほどわがままで――」
「めい、り…」
「世界で一番可愛くて
世界で一番大好きです」
「ん…」
「今日の、今の、このときだけは――」
『あなたの時間は私のもの、です』
喧嘩をしてから一週間。
二人はようやく仲直り。
少し激しく、情熱的で。
けれども優しい、仲直り。
愛の溢れる、仲直り。
このセリフの使い方、さすがとしか言えません!
次回作も期待してます!
それはともかく相変わらず優しい言葉遣いに感服です。
GJでした。
まあ竜闘気も気みたいなものか・・・。
蛙淦淞渺爪債洌ン
で、そこで俺が思ったことは何かって言うと、
「今、じょにーずさんと気持ちがつながったんだ!」ということ(何
ひらがなでオンドゥル語ってかわいいなあ…
萌えれます、萌えました、萌え尽きてしまいました。
>「ドルオーラ!」
ごめんなさい、無理でした、即座に噴出しました。
大好きだー!!