長い長い長い長い長い長い長い坂道を、アリスは独りで進んでいる。
坂はどこまでも続いている。ゆるやかに伸びる坂は、幻想郷の遠くまで続いている。
この道をどこまでもゆけば、どこに辿りつくかを、アリスは知っていた。
魔法の森に続いているのだ。
魔法の森の外れの、霧雨 魔理沙の家に続いているのだ。
坂は魔理沙へと続く道だ、アリスはそんな気がして、少しだけ嬉しかった。
魔界から幻想郷へ来たとき、アリスは一人だった。
そして、独りだった。
アリスは常に独りぼっちだったのだ。
そして、独りであることを、アリスは恐れなかった。
それこそが、自分だと思っていたから。
独りで生きる。
怖れずに。
それこそが強さだと夢見ていた。
寂しさを押し込めて、強い自分として生きていこうと、そう思っていた。
――けれど、それは無理だった。
この坂道の続く先に居る少女。
霧雨 魔理沙に出会ったとき、その強さは、もろくも崩れ去った。
独りでいることの寂しさを、アリスは知ってしまったのだ。
一度知ってしまえば、独りでなんていられなかった。
だから、アリスはこの道を進んでいる。
この道の先。
魔法の森の果てには、霧雨 魔理沙がいるから。
独りではないと教えてくれた、黒白の魔法使いがいるから。
魔理沙のところへと続いている道を、アリスは、ゆっくりと、ゆっくりと進む。
道は長く、魔理沙は遠い。
進みつかれたアリスは、少しだけ休んだ。
止まって、あたりを見回す。
空にかかる太陽はゆっくりと動いている。
坂を進んでいる間にも、少しずつ、少しずつ太陽は動いている。
太陽よりも、アリスの歩みは遅かった。
けれど、坂の先を見ていると、力がわいてきた。
この先に、魔理沙がいる。
そこで魔理沙が待っていると思うと、進む体に力が入った。
アリスは進む。
長い長い坂道を、アリスは独りで進む。
どこまでも続く道を。
ただただ、魔理沙に会うために。
けれど、坂は長くて、いつまでたってもたどり着かない。
くじけそうになる心を奮い立たせる。
くじけそうになる身体を奮い起こす。
アリスは活をいれて、ゆっくりと、ゆっくりと進む。
魔理沙の顔を思い浮かべながら、歩きつづける。
長い長い長い長い坂道。
アリスは、魔理沙へと続く道を、ゆっくりと歩きつづける。
道は長い。
そして、その道を、アリスは歩きつづける。
『何処か』にたどりつくことは、決してない。