1.複雑
「ふぅ……さて、少し休憩しましょう」
「お疲れ様、阿求」
「わぁっ!? ゆ、紫さんですか。突然現れるのはやめてください、っていつも言っているじゃないですか」
阿求が幻想郷縁起を編纂する手を止め、ぽつりと呟いた独り言は、紫の出現で会話へと変化した。
全く気配を感じさせずに、突然現れるのは紫にとってはいつものこと。そして大多数の者が、紫はそういう奴だと知っている。もはや、紫の知り合いで一々驚くのは阿求くらいだ。
その驚く姿が面白くて、紫はこの現れ方をやめるつもりは一切ない。
「あなたくらいよ? 未だに驚いてくれるのは」
「わ、私は集中力が途切れたときは無防備になるんです。だから、仕方ないこと」
「ふーん……ま、いいわ。そんなことより阿求」
「なんですか? 私この後、今日から体力付けようかと42.195キロ走り込みするつもりなので、忙しいのですが」
「やめときなさい、絶対倒れるから。今日はね、普段頑張っているあなたにお土産を持ってきたの」
「お土産?」
阿求が頭に疑問符を浮かべ、軽く首を傾げる。紫の笑顔が、いつも以上にうさんくさい。なんとなく、身構えてしまう。
いざとなったら文鎮で殴ろう、と心に決める阿求。
「そんなに警戒しなくても良いじゃない。ほら、これよ」
「……これは?」
「外の世界の漫画というものね」
渡されたものが本だったので、阿求は興味津々だ。ぱらぱらと捲ってみると、中にはたくさんのイラストと文字。そして、多いページ数に加えてカラー印刷。これらは、阿求にとって衝撃的だった。
ほわーと呆けながら、まだぱらぱらと捲っている。
そんな阿求を見て、紫はクスッと笑った。
「気に入ってもらえたかしら?」
「はい、これは興味深いです。あの、ありがとうございますっ!」
「っ!?」
えへっ、と純粋な笑顔。いつもはうさんくさいなどと言われてるせいか、こんな笑顔を向けられたことはほとんどなかった紫にとって、それは強烈だった。
また、来るときにお土産を持ってこよう。そう、心に決めた瞬間だった。
「それじゃあ、今日は帰りますわ」
「あ、はい。さようなら。それと、本当にありがとうございます」
そして一週間後には、外の紅茶。貰った阿求は、それはそれはとても喜んだ。
さらに一週間。今度は外の小説。阿求は感謝のあまりに抱き付いた。
そんなことが、何度も何度も続いたある日、紫がまた阿求の元へと訪れた。
阿求は、紫の姿を確認すると、ぱぁっと太陽のように眩しい笑みを浮かべて、即座に抱きついた。
「えへへ~紫さん、いらっしゃい」
「あぁ、もう、一々抱きつかないの」
紫には、阿求に犬耳と尻尾が見えるように思えた。
「今日は外の絵本よ」
「わぁ! 凄いです!」
きゃあきゃあと嬉しそうな阿求を見て、そして最近の阿求の懐き具合を見て、紫は思った。
「好かれるのは嫌じゃないけど、なんか餌付けしたみたいで複雑ですわ……」
2.やりすぎ注意
「今日は趣向を凝らして、爆発音もプラスしてみましょう。あの子、ただでさえ驚くのに、ここまでしたらどれだけ驚くかしらね」
スキマから阿求の様子をうかがいながら、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる紫。
いつも通り、阿求が休憩に入った気の緩む瞬間を狙う。阿求は紫に見られているなんて、気付いていない。
「んー……このくらいにしておきましょう。さて、ひとまずは休憩を――」
阿求が休憩に入ろうとした瞬間、大きな爆発音。屋敷が軽く揺れるほどの、爆音だ。
体をビクッと震わせ、驚きのあまりに口をぱくぱくさせるだけで声も出ない阿求。
「こんにちは、阿求」
「ひゃあああああああああああああ!?」
さらにとどめに、紫が耳元でそっと挨拶。
阿求はやっと大声を出した。そして、その場にぱたりと倒れた。紫にとっては、大成功だ。
「あー面白かった。ひゃあ、ですって。可愛らしい悲鳴をありがとう、阿求」
紫は悪戯成功といった表情で話しかけるが、阿求は動かない。
「あら、怒った?」
訊ねるが、やはり反応はない。
倒れたまま、ぴくりとも動かない阿求に近づく。
「あれ? えーと、そんなに怒っちゃったかしら? 阿求~って、死んでる!?」
呼吸をしていない。
心音が確実にストップしていた。
「医者ー!?」
やりすぎた、と反省したそうな。
※この後、紫さんが小町さんに事情を説明した後に軽くボコボコにし、魂回収をして阿求さんは復活しました。
3.もしかして?
「阿求、あなたちょっと太ったんじゃない?」
「っ!?」
その一言で、阿求は雷があたったかのような衝撃を受けた。
ぷるぷると肩を震わしている。
「確かにあんまり外に出ないですし、甘いもの大好きですけどっ! そんなストレートに言わなくてもいいじゃないですか!」
「たまには外で運動したらいかがかしら?」
「え? 嫌ですよ。太陽の光とか怖いですもの。こう部屋に閉じこもって、一人本を読んだり書いたりするのが好きなんです。なるべく部屋出たくないです。本当なら、食事とかも全て自室で済ませたいくらいなのに」
「……あれ? もしかして引きこもり街道まっしぐら?」
4.本音
「胸って、その人の性格を表しているのですよ」
「は? 意味が分からないわね」
阿求はまず、自分の胸を指さす。
「ほら、私はこう、なんていうか、胸が小さいです」
「そうね。とってもとっても貧乳ね」
「くっ……しかし! これは私の性格を表しています! 控え目でおしとやかで、決してでしゃばろうとはしない。あぁ、なんて素晴らしいのでしょう。まさに女性の鏡です」
「で? 何が言いたいの?」
次に、紫の胸を指さした。
「紫さんの胸は大きいです」
「そうね。あなたよりは断然」
「ぐぁ……しかし! それはあなたの性格を表しています! 図々しくて、でしゃばりで、ふてぶてしい態度。あぁ、なんて酷い。全てその大きい胸がいけないんです。あー見ていて腹が立ってきました。半分くらい私に寄こせこんちくしょうめ!」
「言ってること滅茶苦茶よ、阿求」
結局は、スタイルが良いことに嫉妬しているだけだった。
阿求だって女の子だもん。
5.過度の接触は嫌がられる恐れがあります
「あらあら、嫌われたものねぇ」
阿求が眠っている間に、こっそりと幻想郷縁起の八雲紫の項目を見る。そこには『まず相手にしたくない妖怪である』と書かれていた。
そんなに印象悪いかしら、と少し考える。
「ちょっと接触方法を変えて、印象を良くしてみようかしら」
そう考えた紫は、次から変わった。
「阿求~可愛い可愛い」
「わっ!? な、なんですか突然。もう、やめてくださいよぉ」
ますは、軽いスキンシップとして抱きついて頭を撫でる。
「阿求、肩凝っていない? 揉んであげるわ」
「ゃ、別に良いですってばぁ……んっ」
次に、疲れているであろう阿求を労う。
「阿求、たまには添い寝なんていかが?」
「いやもう、慧音か霊夢さん呼びますよ? 退治してもらいますよ?」
最終的には、寂しいであろう一人の夜に添い寝(無理矢理)してあげた。
そんな日がしばらく続いたある日、紫は再び幻想郷縁起を開いてみた。予想通り、紫の項目が微妙に変わっていた。
『八雲紫:なんか気持ち悪い。この一言に尽きる。』
紫は泣いた。割と本気で。
面白かったです!この二人も良い!
この二人の組み合わせ好きです^p^
しかし、何食べたらこんな甘々なお話を書けるんですか?教えてください。(割と本気
ふってるんだろうなぁ……かわいすぎですね。
なんだかとってもなごみました。
という感じで和みました。
しかし進むにつれてだんだんとあきゅんがおかしな方向にw
さすがです喉飴さん
感謝感激飴あられ(あれ、これ前にやったかな)
阿求が純粋でいいw
…ふむ。
阿求はなんか100mも走れないイメージがありますw
>>2様
割と思い付くけど、少ない組み合わせですよねー。
>>唯様
甘いですかね?これ糖分0なんですがw
>>4様
ぶんぶんぱたぱたと可愛らしく振ってそうですねw
>>5様
あわわ、ありがとうございます!
阿求可愛いですよね!
>>6様
和んでいただけたとは、嬉しい限りです。
>>7様
いえいえ、楽しんでもらえてなによりですー。
>>ケトゥアン様
純粋な阿求も可愛いですよねw
>>9様
あまり阿求書いたこと無かったですが、そう言ってくださるとありがたいです。
ちょっとえっちなゆかりんがいっぱい描かれた同人誌あきゅんにプレゼントしたらどういう反応するだろうか。
ちょっとあきゅんのところに逝って来る。