※登場キャラ全員が泥酔しています。地の文を頼りにお読みください。
今はもう夜中も過ぎて明け方近い頃。
明け方が近いと言っても、まだまだ外は真っ暗である。
博麗神社で行われていた宴会も、一人、また一人と帰っていき、神社に残されたのは霊夢、魔理沙、アリスだけとなった。
恐らく今頃は、他の人妖達は各々の住処に帰って二次会でもやっているのだろう。
上記の三人だけが残されたのは、ただ単に酔いつぶれて動けなくなったからである。
―――しかし、この平穏なはずの宴会後の神社で、恐るべき二次会が始まろうとは、誰が予想できただろうか・・・
「む・・・なんだ、寝ていたのか私は・・・」
だらしなく縁側で寝そべっていた魔理沙が徐に起き上がる。
「うぁ゛~、頭が痛い・・・呑み過ぎた・・・」
およそ乙女とは思えない声を出して神社の中を歩き回る魔理沙。
何かを探しているようだ。
「あれ?私のドロワがないんだぜ?」
※穿いています
「なんで~私のオ゛ッ、ドロワが置いてないんだ」
途中途中にえづくのがなんとも生々しくて嫌である。
どうやら彼女はここが自分の家だと思っているようだ。
「もういい!なんだってんだ一体・・・」
不貞腐れながらゾンビの如く徘徊していると、アリスがうつ伏せに倒れているのを発見した魔理沙。
ニタァ、と笑うと起こさないようにそっと近づく。
「しっかりしろ、こんな所で寝たらスカートの中身を確認するぜ」
酔いつぶれているアリスは起きない。
躊躇うことなく、魔理沙はアリスのロングスカートを思いっきりめくった。
「スカートの中は限りなく続く銀河・・・なんだ、ドロワか」
魔理沙は衝撃の事実に戸惑いを隠せなかった。
『ロングスカートで見えないからって、際どい下着とか穿いてるんじゃね?』という彼女の淡い乙女心は見事に灰塵に帰したのであった。
「許せないぞアリス・・・許さないぞアリス・・・」
再び立ち上がって何かを物色し始める魔理沙。
繰り返すが彼女はここを自分の家だと勘違いしている。
「うぇ゛ぇ゛~ッッ?・・・机の上に置いてあったライトセーバーがない・・・」
そんなもので一体何をしようというのか。
そんな彼女が手に取ったのは霊夢のお祓い棒であった。
「あった!ビームサーベル・・・じゃなくてライトセーバー」
※お祓い棒です
「アリス待ってろよ・・・このライトセーバーでお前を倒す・・・魔法使いの掟に従ってな!」
恐るべき笑顔でアリスの元にすり足で近づく魔理沙。
どこからどうみても不審者だ。
「さらばだアリスッ!」
そのままうつ伏せに倒れているドロワを穿いたアリスのお尻にお祓い棒を突きたてる魔理沙。
鬼畜というのはこのことを言うのであろう。
「見たのね・・・」
「アリス!?生きていたのか!」
いつの間にか目を覚まして魔理沙をジト目で睨んでいたアリス。
魔理沙はアリスの生還(?)を喜びつつも、得体のしれない恐怖を感じていた。
「私のスカートの中・・・見たのね・・・」
「すまんアリス・・・後学のためなんだ・・・」
恐ろしい波動を放ちつつ、アリスは立ち上がった。
その目は100人に聞けば100人が『この人、いつか新聞の事件欄の一面に載りそう!』と答える程の殺意の籠った目だった。
「そう・・・後学ねぇ・・・」
突然アリスはスカートの中から包丁を取り出した。
「おいアリス、一体それを何に使うっていうんだ」
「え・・・刺す為だけど・・・」
「その『当たり前でしょ?』みたいな顔をして言うのはやめろ!怖いから!」
「『あたりめでしょ』って何よ・・・スルメ?」
「お前、酔ってるだろ」
「酔ってないわよ」
※どちらも酔っています
「さあ魔理沙!血塗られた戦いの始まりよ!」
「そんな頼りない包丁、私のミニ八卦炉で明日の朝食のおかずにしてやるぜ!」
何故かバトル展開にまで発展してしまったこの状況で魔理沙は気づいてしまった。
ミニ八卦炉がないことに・・・
(そうか・・・ミニ八卦炉は香霖堂に修理に出したんだったな。失敗失敗☆)
三十六計逃げるに如かず。
ここに魔理沙の華麗なる逃走劇の火蓋が切って落とされたのであった。
逃げて逃げて、神社の神棚に収まった魔理沙。
『体の柔軟性には自信があるんだぜ(ニタァ』と彼女がいつも語っていたのが思い出される。
「魔理沙ー、そんな所で何やってんの」
「ハッ・・・アリスが二人・・・最早ここまでか」
神棚に収まっている魔理沙を眠そうな目で見つめる霊夢。
普段の霊夢なら、神棚に悪戯しようものなら、〇した後に〇して〇した上に〇するのだが、彼女もまた泥酔しているので頭がうまく回っていない。
「ねぇ、今アンタ私に向かってアリスって言ったでしょ」
「お、お前・・・霊夢!霊夢じゃないか!生きていたのか!」
「どうでもいいけど、そんな所で何やってんの」
「聞いてくれ霊夢。アリスのスカートの中にビームサーベルが仕込まれていて、私は今アイツに命を狙われているんだ」
深刻な顔で話す魔理沙。
これで酔ってさえいなければ、シリアスな場面なのに。
「ビールサーバーがスカートの中で暴発?怖いわね・・・」
「お前酔ってるだろ」
「酔ってないと思うわよ」
※完全に酔っています
「そんなことより私のお祓い棒知らない?」
「アリスの尻に優しく刺しておいたぜ」
「あらそう、わかったわ」
霊夢は事も無げな表情で去っていった。
魔理沙はそろそろ体制がきつくなってきたので神棚から出た。
「さて・・・どうするかな」
その時、霊夢の怒声が隣の部屋から聞こえてきた。
「私のお祓い棒がアリスの尻にッッ!?許さんッッ!!許さないわよ魔理沙ッッ!!」
魔理沙はその場から脱兎のごとく逃げ出した。
酔っている時の霊夢は頭の回転が異常に遅くなる為、『賽銭箱(笑)』などと言われても最初はあっけらかんとしているが、30秒ぐらい遅れた後にいきなり怒りだすので大変怖いのだ。
これこそが、霊夢が『博麗の時限爆弾』と呼ばれる所以である。
所変わってこちらはアリス。
危ない目つきで、包丁を手に歩き回る彼女の姿は、明らかに危険人物である。
「ウフフ・・・魔理沙~?出てきてくれないかな~♪」
猫なで声を出しながら魔理沙の捜索を続けるアリス。
尻に刺さっていたお祓い棒はへし折った。
「いないわね・・・」
神社の屋外にまで探しに出たアリス。
丁度、八雲さん達がこちらに向かってくるのを見つけた。
「いや~、紫様ったら神社で3次会やろうだなんて、ホントおかしいですよねハハハ」
「藍ったらハハハ」
上機嫌なのか殺伐としてるのか、全く分からないムードだ。
ご多分に漏れず、彼女たちも相当酔っぱらっている。
「ところで橙はどうしたの」
「家に帰らせました」
「アハハハハ」
「ハハハハハ」
乾いた笑い声を上げていると、どうやら八雲ズもアリスの存在に気が付いたようだ。
途端に慌てた表情を浮かべる二人。
「紫様、外人ですよ。ここは紫様の語学力の出番です」
「ちょ、ちょっと!私はあんまりネイティブな人と話したことないし・・・」
「大丈夫!いけますって!」
「そ、そう?」
※酔っぱらっている為、アリスのことを忘れているようです
「G・・・Good evening !(こ、こんばんは☆)」
「・・・Good evening .(今晩は)」
「Oh ! The knife you have is very cool !(あら、貴方のその得物、最高にイカしてるわね!)」
「Go away .(あのう、すみませんが帰って頂いてもよろしいでしょうか?)」
「Bieeeen !(びええええん!)」
八雲ズはしょんぼりとして帰っていった。(藍は久しぶりに良い笑顔だった)
アリスは二人の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、魔理沙を探すために再び本殿に入っていこうとした。
ところが彼女の目が賽銭箱の中に留まる。
その中には彼女が探し求めた白黒の魔法使いが潜んでいたのだ。
「こんばんは魔理沙」
「あ・・・アリス・・・」
魔理沙は観念したかのような顔で賽銭箱から出てきた。
「ようアリス。月が綺麗だな」
「何言ってるのかしら。貴方もここで終わりよ」
魔理沙はアリスの手に光る包丁を確認すると全力で本殿の中に逃げ込んだ。
もちろん、それを追いかけるアリス。
「冗談じゃないッッ!なんで私だけ・・・なんで私だけこんな夜中にこんな所で・・・ファンタジックホラーをッッ」
泣きそうな顔で逃げ続ける魔理沙。だがそこは建物の中。すぐに行き止まりに当たってしまう。
「やっと見つけたわ!」
そこに現れたのは我らが英雄、博麗霊夢であった。
血走った目で睨みつける様は圧巻の一言である。
「さあ魔理沙、まずはお祓い棒を返してもらいましょうか。お仕置きはその後よ」
「私は知らん!アリスに聞け!」
「お祓い棒なら、いつの間にか私のお尻に刺さってたからへし折ったわよ」
「"へし折った"・・・?」
「ええ、これでもかってぐらい折ってやったわ」
その時、霊夢の怒りが有頂天に達した。
霊夢はアリスに飛びかかって組みつき、そのまま放り投げた。
「出た!霊夢の阿蘇山投げだ!」
阿蘇山投げというのは、なんだか凄い投げ技のことである。
「お祓い棒はアンタの下着を売り飛ばした金で修理しておくわ」
さり気無く非道なことを言って自分の寝室に戻っていく霊夢。
彼女もまた、この狂気の宴会の被害者なのであった。
「アリス!おい!大丈夫かアリス!」
「ま・・・魔理沙・・・」
霊夢の阿蘇山投げによるダメージで息も絶え絶えなアリス。
魔理沙はアリスに、頻りに声をかけて意識を失わせないようにする。
「魔理沙・・・過程がどうあれ貴方の勝ちよ・・・トドメを刺して・・・」
「そんな・・・一緒にRPGとかやった仲じゃないか・・・間欠泉の異変の時もRPGネタで盛り上がったじゃないか・・・」
「もう・・・いいの・・・」
目を瞑ってしまったアリスを揺り動かす魔理沙。
魔理沙の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「なぁ、アリス・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・何か言ってくれよ!アリス!」
「眠いんだから起こさないでくれる?」
この空気の読めない発言には流石の魔理沙も怒った。
「・・・お望み通り、眠らせてやるよ・・・」
魔理沙が怒りのままに放った手刀によって、アリスは意識を手放した。
朝になると、皆二日酔いで宴会の時のことなんて既に覚えていなかったという。
くれぐれもこうはならないように、お酒の呑み過ぎには注意しましょう。
聴いた…だろ?