※『食べてもいい魔理沙』の続きかもしれません。
「で、あんたたちは朝っぱらから何をしてるのよ」
「おお、アリス、助けてくれ~」
ベッドの上、ルーミアにのしかかられて情けない悲鳴をあげる魔理沙に、私は思わず呆れ混じりの息を吐いた。
はぐはぐ、とその魔理沙の頬にかじりつくルーミアに歩み寄ると、首根っこを掴まえる。
魔理沙の頬から引きはがされて、「おー?」とルーミアはこちらを見上げた。
「アリス、おはよー」
「はいはい、おはよう。で、食べるならちゃんとした朝ご飯にしなさいってば」
「全くだぜ」
頬にルーミアの歯形とよだれを残したまま、頭を掻いて魔理沙は身を起こす。
元々だらしない顔がますます酷いことになっている。
「魔理沙、美味しいのに」
「だから私を食うなっての」
「そうよ、魔理沙なんか食べたら魔理沙菌が伝染って大変なことになるわよ」
「まりさきん?」
「頭にキノコが生えるわ。魔理沙の髪って実は全部細いキノコなのよ」
「そ、そーなのかー」
「人を胞子みたいに言うな! ルーミアも信じるな!」
たじろいで魔理沙を見やるルーミアに、魔理沙が吠える。
「ともかく魔理沙、貴女は顔洗ってきなさいよ。べたべたよ?」
「ん、ああ……そうするぜ」
頬に触れて、魔理沙はひとつ息をついて立ち上がる。
その背中をぼんやり見送っていると、不意に「アリス」とルーミアが声をあげた。
「何よ?」
「アリスは、魔理沙たべないの?」
純真無垢な顔で何を急に――って、ああ、意味が違うのか。
私はひとつ咳払い。全く、何を考えているのだ自分。
「食べないわよ。そんな野蛮じゃないの」
「美味しいよ? ほっぺたむにむにだし、指とか二の腕とか」
「……貴女とは違うの。私は魔法使い。人間は食べ物じゃないのよ」
捨食の法を身につけている私は、食事を必要とはしていない。
だから、個人的な嗜好で食事は摂るけれども、人間を食べたいとは思わない。
「食べ物じゃないよ」
けれど、人間を食べるはずの目の前の少女は、不意に真剣な顔でそう言った。
「魔理沙は、ともだち」
にっ、と八重歯を見せて笑うルーミアに、私は何と答えていいか解らず、
「今、食べようとしてたじゃない」
「味わってたの。食べたら、魔理沙、いなくなっちゃうもん」
「――――」
「美味しいよ?」
「……だからって、私に何をどうしろって言うのよ」
無垢な顔で笑うルーミアに、私はこめかみを押さえて息を吐く。
「アリスも、魔理沙のことはぐはぐすればいいのに」
「――何で私が、そんなこと」
「アリス、魔理沙のともだちでしょ?」
ひどく直截な言葉で問いかけられて、口ごもった私に。
ルーミアは、満面の笑みを浮かべて両手を広げる。
「魔理沙のこと、大好きなの、アリスも一緒だよね?」
――こんな風に、何のてらいも無く、真っ直ぐに好意を誰かに向けられたら。
たぶん私は、こんな風に森の奥に引きこもったりはしていなかった。
「……そうでもないわよ」
「そーなのかー?」
「そうなの」
不思議そうに、ルーミアは首を傾げる。
そこへ、「ふぅ、さっぱりしたぜ」と魔理沙が顔を拭いながら戻ってきた。
「あ、魔理沙、おかえりー」
「おう。で、お前らはそこで何やってんだ?」
「アリスにね、魔理沙のこと一緒にはぐはぐしよーって言ったの」
おお? と魔理沙が変な声をあげる。
私が何か言い返そうとすると、ルーミアはひとつ首を傾げて、
「でも、アリスは魔理沙のことはぐはぐしないって」
「当たり前でしょ!」
「だからねー、魔理沙」
と、ルーミアは両手を広げて、魔理沙にそのまま抱きつく。
受け止めた魔理沙と一緒に、ルーミアはこちらを振り向いて。
「アリスのこと、私と魔理沙ではぐはぐしよ?」
「おー、そいつは名案だな」
「ちょっ、あんたたち何を――」
にやりと危険な笑みを浮かべて、ルーミアと魔理沙がにじりよって来る。
思わず後じさった私は、しかしベッドに足をぶつけてそのまま尻餅をついた。
「アリスー」
「ふふふ、逃がさんぜ?」
「ま、待っ、止め――ひゃあああああああっ!? た、助けて上海ー!」
がばっとのしかかってくるふたつの黒い影に、私は情けない悲鳴をあげた。
「で、あんたたちは朝っぱらから何をしてるのよ」
「おお、アリス、助けてくれ~」
ベッドの上、ルーミアにのしかかられて情けない悲鳴をあげる魔理沙に、私は思わず呆れ混じりの息を吐いた。
はぐはぐ、とその魔理沙の頬にかじりつくルーミアに歩み寄ると、首根っこを掴まえる。
魔理沙の頬から引きはがされて、「おー?」とルーミアはこちらを見上げた。
「アリス、おはよー」
「はいはい、おはよう。で、食べるならちゃんとした朝ご飯にしなさいってば」
「全くだぜ」
頬にルーミアの歯形とよだれを残したまま、頭を掻いて魔理沙は身を起こす。
元々だらしない顔がますます酷いことになっている。
「魔理沙、美味しいのに」
「だから私を食うなっての」
「そうよ、魔理沙なんか食べたら魔理沙菌が伝染って大変なことになるわよ」
「まりさきん?」
「頭にキノコが生えるわ。魔理沙の髪って実は全部細いキノコなのよ」
「そ、そーなのかー」
「人を胞子みたいに言うな! ルーミアも信じるな!」
たじろいで魔理沙を見やるルーミアに、魔理沙が吠える。
「ともかく魔理沙、貴女は顔洗ってきなさいよ。べたべたよ?」
「ん、ああ……そうするぜ」
頬に触れて、魔理沙はひとつ息をついて立ち上がる。
その背中をぼんやり見送っていると、不意に「アリス」とルーミアが声をあげた。
「何よ?」
「アリスは、魔理沙たべないの?」
純真無垢な顔で何を急に――って、ああ、意味が違うのか。
私はひとつ咳払い。全く、何を考えているのだ自分。
「食べないわよ。そんな野蛮じゃないの」
「美味しいよ? ほっぺたむにむにだし、指とか二の腕とか」
「……貴女とは違うの。私は魔法使い。人間は食べ物じゃないのよ」
捨食の法を身につけている私は、食事を必要とはしていない。
だから、個人的な嗜好で食事は摂るけれども、人間を食べたいとは思わない。
「食べ物じゃないよ」
けれど、人間を食べるはずの目の前の少女は、不意に真剣な顔でそう言った。
「魔理沙は、ともだち」
にっ、と八重歯を見せて笑うルーミアに、私は何と答えていいか解らず、
「今、食べようとしてたじゃない」
「味わってたの。食べたら、魔理沙、いなくなっちゃうもん」
「――――」
「美味しいよ?」
「……だからって、私に何をどうしろって言うのよ」
無垢な顔で笑うルーミアに、私はこめかみを押さえて息を吐く。
「アリスも、魔理沙のことはぐはぐすればいいのに」
「――何で私が、そんなこと」
「アリス、魔理沙のともだちでしょ?」
ひどく直截な言葉で問いかけられて、口ごもった私に。
ルーミアは、満面の笑みを浮かべて両手を広げる。
「魔理沙のこと、大好きなの、アリスも一緒だよね?」
――こんな風に、何のてらいも無く、真っ直ぐに好意を誰かに向けられたら。
たぶん私は、こんな風に森の奥に引きこもったりはしていなかった。
「……そうでもないわよ」
「そーなのかー?」
「そうなの」
不思議そうに、ルーミアは首を傾げる。
そこへ、「ふぅ、さっぱりしたぜ」と魔理沙が顔を拭いながら戻ってきた。
「あ、魔理沙、おかえりー」
「おう。で、お前らはそこで何やってんだ?」
「アリスにね、魔理沙のこと一緒にはぐはぐしよーって言ったの」
おお? と魔理沙が変な声をあげる。
私が何か言い返そうとすると、ルーミアはひとつ首を傾げて、
「でも、アリスは魔理沙のことはぐはぐしないって」
「当たり前でしょ!」
「だからねー、魔理沙」
と、ルーミアは両手を広げて、魔理沙にそのまま抱きつく。
受け止めた魔理沙と一緒に、ルーミアはこちらを振り向いて。
「アリスのこと、私と魔理沙ではぐはぐしよ?」
「おー、そいつは名案だな」
「ちょっ、あんたたち何を――」
にやりと危険な笑みを浮かべて、ルーミアと魔理沙がにじりよって来る。
思わず後じさった私は、しかしベッドに足をぶつけてそのまま尻餅をついた。
「アリスー」
「ふふふ、逃がさんぜ?」
「ま、待っ、止め――ひゃあああああああっ!? た、助けて上海ー!」
がばっとのしかかってくるふたつの黒い影に、私は情けない悲鳴をあげた。
「流れ星」や「天の川」を読んだあとだと、ほほえましいと同時に切なくなります…。
もし間に合ってたら、こんな光景もあったのかなぁ。
なにはともあれ、ありがとうございました。