―――恋とか愛なんて、私は分からない。
某日、博麗神社
「でさ……リス…奴、そ…上海を……」
「…へー…そうい……幽香………」
その鳥居の上
「うーん、やっぱり良く聞こえないなぁ、何か聞こえる?文」
「…何で私まで来なきゃいけないのよ」
「いいじゃない、どうせ暇だったんでしょ?」
「いや、別に?というか無理やり連れてこられた気がするんだけど。『協力して!!』なんて言われて私はハイとも言ってないのに引っ張られてここまで連れてこられたんだけど?あんた引き籠ってる癖に力強いのね」
「んー、もうチョイ近づいた方がいいかな?うーん…」
「聞いてないし…、これだったらさっさと取材に行けば良かった…」
「ん?何かいいネタがあったの?」
「何か紅魔館の主とかが暇で仕方がなかったから逆刃の鎌使いや金髪メイドから虎っ子毘沙門天とか月の姫まで武器使いを集めて鬼兵隊なんて名前までつけて店主と戦わせたそうよ。勿論スペルカードなし」
「ふーん、結果は?」
「見事に圧勝」
「へー」
「店主が」
「まじで!?」
「ホント」
「あの人そんなに強k…って、あ!!いない!!!」
「おろ?えーっと…霊夢はまだいるから魔理沙?」
「そうよ!全く何処行ったのかs」
ガシッ
「…詳しく聞かせてもらえますでしょうか?」
そう言う文の顔はとても面白い物を見つけたといったキラキラ輝いた顔をしていた。口調も記者モードになっている。
「ナ、ナンノコトデセウ…」
「とぼけても無駄ですよ、何故こそこそ魔理沙さんを追っているのか話してもらいましょうか?はたてさん?」
「べ、別に特に何も無いわよ」
「へー?…椛」
「ハイ」
「!?どっから沸いて出たのよ!!」
「?鳥居の柱に陰になる様に剣刺してぶら下がってましたが?」
「メチャクチャするわね…。で、文、この子呼んでどうするのよ」
「椛」
「ハイ、どうぞ」
「うむ」
そう言って椛は文に一冊のノートを渡す、表面には『かんさつのーと は行』と書かれていた。
「で、一体何なのよ」
「このノートには椛が暇な時に私が頼んでおいた事について書いてもらったノートです」
「で?」
「例えばスクープを狙いたいときは対象を絞るんですけどいつもは大まかに名のあるいろんな人を見て何をしていたかを記録してもらったものです」
「だからそれが…!!」
はたては気付いた、つまり自分も見られている可能性があるということに。
「さてどれどれ…」
「ちょ、ちょっと待って!!」
●月▲日
魔理沙の後ろを付けている姿を目認。
●月×日
同上
●月□日
同上
●月◇日
ど(ry
●月▽日
(ry、…前に文様が言ってたラルティザン・ドゥ・サヴェールのドボシュトルテ食べたい。
「…椛、これから暇?」
「はい、暇です」
「ちょっと人里に言ってドボシュトルテ食べに行こうか」
「ハイ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
「「…何(ですか)?」」
うわお!!何その憐れむような視線!!
「いや人に色々聞いといてその対応は何なのよ」
「「うるさいストーカー」」
「いや違うからね!!?」
「じゃあ何なのよ、この報告書を見るとただのストーカーなんだけど」
「こっちは見るたびまたかよって思ってたんですからね?」
「違うんだって…、こっちだって色々あったのよ…」
「その色々って何よ」
「それは…」
一週間前、某所
彗星「ブレイジングスター」
「ほらほら!!撮れるものなら撮ってみな!!!」
「くっ!!!」
あまりの輝きに色を失った極光の外套を纏い特攻する魔理沙に避けるのが精一杯のはたて。
一回目、失敗
「タイミングが早すぎた…!」
すぐに離れカメラを高速で再装填。
「次行くぜ!!!」
「!!」
再び特攻してくる魔理沙。
二回目、安定した場所を確保できず失敗
「くそ!!」
またも外しはたては焦りながら距離を取りカメラを高速で再装填――
「あ!!!」
――しようとした時に手を滑らせてしまいカメラを落としてしまった。かなりの間使ってきた愛用のカメラを壊さんと手を伸ばすがカメラにかすりもしなかった。
このまま落ちたらあとかたも無く壊れるだろう。その時――
「……まったく」
「…え?」
はたてのすぐ脇をかすめる暴風。
そこには彗星の如きスピードでカメラを回収する魔理沙の姿があった。
魔理沙がスペルを解除しはたての傍まで寄ってカメラを渡す。
「全く…、ほら、もう落とすなよ、カメラ」
「あっ…りがとう…」
「おう、さすがに今回は私の勝ちだな。今日は疲れたから帰るぜ」
(顔!!近い近い近い近い!!!)
「え、あ、うん…」
「じゃあな!」
こうして魔理沙は帰って行った。
はたてはそのまま半刻ほどそのままぼーっとしていた。
これが魔理沙とはたての出会いである。
あの後、はたてにとって理解不明な感情が暴走しはたてを苦しめた。
「…うー、何なのよ…何なのよ…何なのよーーー!!!うにゃぁぁぁぁ…」
(なんかここら辺がギュッとしてうぅってなって、でもほなぁってしてて…はぁぁぁぁ…)
「うー…、何これ…絶対あの魔法使いのせいよ…」
「…で、魔理沙に問い詰めようとしても何故か急に体や顔が熱くなったり胸がきゅぅっとしたりして結局何も出来ず仕舞いだと言いたいわけ?」
「文って第三の目でも持ってるの…?その通りよ、全く…、一体何なのかしら…」
「はたて」
「…何よ」
「「惚気なら帰って蝿取り草とでも話してろ」」
「酷!!って惚気?今のどこがのろk「椛」…え?」
椛が持っていた大剣を目にも止まらぬ速さで振ると、落ちて行ったのは退魔針。
「あんたら、こんなところで何やってるの…?」
そこには笑顔で両手に大量の札を構える霊夢の姿があった。
「まずいわね」
「まずいですね」
「ちょっ…!」
二人が体に少し力を入れる。
「そりゃこんなところで騒いでればそりゃイラっときますよねぇ、鳥居も傷付けたし」
「すいませんでした」
「どうするのよ!!こっちに来るわよ!!?」
「「逃げましょう」」
「へ…!?」
文が私を脇に抱えて高く、速く、飛ぶ。椛も遅れて飛んでくる。
この二人を見ているとさっきから胸の辺りがもやもやする。
気持ちの名前は分かる、これは嫉妬だ。
別に二人の事が好きってわけじゃない。
きっと多分『羨ましい』のだと思う。
でも今の私には何が羨ましいか分からない。
夕刻、人里、喫茶店
何とか巫女から逃げ切った私達は人里の喫茶店に来ていた。
「すいませーん、ラルティザ(ryえ?無い?うーん…それじゃあお勧めのお茶と向日葵ビスケット下さい」
「私はブラックで」
「幽香さん、私は…って風見幽香!!?」
カウンターには笑顔で商売をしている姿が在った。
「何よ五月蝿いわね、誰が何をしようと勝手じゃない。てかあんた誰よ」
「あ、すいません。私は花菓子念報を書いている姫海棠はたてです」
「ああ、あの最近出てきた新聞記者ね。で、何を頼むの?」
「あー…、私はカプチーノで」
「はい、喜んで。アリスー、私が飲み物用意するから向日葵ビスケット一つお願い」
「分かったー」
多分厨房にアリスがいるのだろう。という事はここは二人で経営しているのか。
「ええ、その通りよ」
「心を読まないで下さいよ、そう言えば何故店を?」
「んー?何となくかしらね」
「そんなものですか」
「そんなものよ」
会話しながらもどんどん飲み物が出来ていく、さすが手慣れている。
「そう言えばさっき文が私の話を惚気って言ってたけど何処が惚気なのよ」
「だって貴方が一目惚れをしたって話を聞かされただけじゃない」
「一目惚れ?」
「そう一目惚れ」
「何か面白そうな話をしてるわね。ハイはたて、カプチーノ。椛はブラックだったわね、ハイ。文には水晶果(スジョンガ)のカルピス原液2:1の特性スイーツ(笑)ティーよ。クッキーはもう少しで出来るはずだからもうちょっと待ってて」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「…何か私悪いことしました?幽香さん、これクソ甘ったるいにおいがするんですけど」
「ええ、大体何よラルティザ(ryって。んなもんあるわけ無いでしょ、このパパパラッチが。毎回盗撮ばっかしやがって」
「ええー、いいじゃないですか。それに向こうのスイーツ(笑)専門店、東風屋にはいろいろありましたよ?」
「こっちは落ち着いた雰囲気を大事にしてるから甘すぎたりするものは置いてないのよ。てかそんなに食べたいなら最初っからそっち行きなさいよ」
「…じゃあこれは?」
「例外」
「頑張ってください」
「どんまい…」
「分かりましたよ…、飲みますよ…」
グイッ、グパァ!!!!??
「「「………………」」」
「幽香~、クッキー出来たよーって何これ…」
そこには店の床でビクビクと体を痙攣させながら口の端からジュースを流す文の姿があった。
「えーっと大丈夫?水いる?」
「…タバスコを下さい、舌の感覚が無いんです」
「…水晶果って此処まで酷かったっけ?」
「甘いわね、作者はこの兵器を下上右左さんに飲ませようとしたとき(この時は水晶果単品)下上さんは匂いだけで拒否、その時同席していた別のノリのいい友人Sに飲ませた時(この時スイーツ(笑)に調合)なんて『この恨み…晴らさいでりか』とか『覚えてろよこの野郎』とか言わせるほどだったんだから」
「うわぁお…」
「これでいい?文」
「ありがとうございます…、辛い!!!」
「アリスー、紅茶二杯頂戴、こっちで一緒に話しましょう」
「はーい」
「んー、そう言えば二人って付き合ってるの?」
はたての質問に吹きだすアリス、それとは対照的に頬笑みながら文を蹴ってはたての横に移動している幽香。
「え、ええ、そのあっと、その…」
「ええ、付き合ってるわよ」
「ふーん」
「あら自分から聞いておいて興味無さそうね」
「んー、そういうわけじゃないんだけど」
「だけど?」
「恋とか愛とか解らないのよね」
「…へえ?でもさっき一目惚れだとかなんとか言ってなかった?」
「あー、それは…」
「私にも話聞かせてくれない?」
「んー…、うん」
そう言って先程文に話した魔理沙との一件を話す。
「……ブン屋」
「ハイハイ」
「相変わらずのしぶとさね。まあいいわ、こっちに来なさい」
「なんでしょう」
(この子、感情が抜け落ちてるのかしら?)
(いえ、そこまで心配はないです、恋した時の反応はしっかり出ているので)
(それじゃあ、意識させてしっかりと自覚させた方がいいかしら、私は魔理沙が好きだーって)
(それがいいかも知れませんねぇ、まあずっと引き籠ってたからまだ子供みたいな奴なんで)
(まあそうね、私に対して砕けた口調だし)
(大天狗様をバシバシと叩くほど怖い物知らずですからねぇ)
「ねえ、二人とも何話してるの?ハイ、お茶。文にも」
「いえ、何でもないわ。ありがとう、アリス」
「あ、ありがとうございます!!!」
「ねえ、この時間、霖に…」
「はい?そうですねぇ…多分もう少しかと」
「「「??」」」
「なるほどね、はたて、少し用事を頼みたいのだけど」
「何?幽香」
「このクッキーを香霖堂に持って行ってくれない?」
「これ?…まあいいけど。それじゃあ取材ついでに行ってくる」
「いってらしゃい」
「さてと、お一つ聞きたいのですが」
「何かしら?」
「はたてに何故協力的だったのですか」
「何となくよ」
「では二つ目」
「一つじゃないの?」
「言葉のあやです。それで質問ですが、…アリスさんと付き合うようになったのは何故ですか?」
「ん?それはね…」
「わっ!!?」
幽香が急に胸元にアリスを抱き込んだ。まるで自分のモノだと主張するかのように。
「アリスの事がだーい好きだからよ、アリスがまだ私の腰くらいの背の時から」
「~~~~!!!??………////」
アリスからしてみればいきなり抱かれ耳元で愛の言葉を囁かれたりと落ち着ける状態ではないがあえて割愛する。
「ふふ、羨ましいですね」
「ふふ、そうかしら」
そう言って幽香はさりげなく文にお茶を渡す、それを何のためらいもなく飲み干す文。そしてテーブルの上には七つのティーカップが!!
「あっまーーーーーーい!!??」
「…気付きましょうよ文様」
魔法の森、香霖堂
カランカラン
「こんにちはー」
「いらっしゃい、…君は?」
「花菓子念報を書いている姫海棠はたてです」
「そうか、はたて、今日は何の用だい?」
「あの、幽香さんからこれを」
「お?それはクッキーかな?」
「はい」
「そうかそれではいただくとしよう」
「あとすいません、えーっと」
「あー…、僕は森近霖之助。この香霖堂の店主だ」
「それでは霖之助さん、鬼兵隊?と戦い見事勝利を収めたそうですがどのようにして勝ったのでしょうか」
「それは簡単、困った時の飛天ピー剣流、天●龍閃で何とかなるものさ」
「…なんかすごいですね」
「他に何かあるかい?」
「ここは何のお店なんですか?」
「ここは外界の品やその他の物を扱う店さ、君も天狗ならカメラを持っているのかい?出来れば見せて欲しいのだが」
「ええ、どうぞ」
「!!??」
明らかに雰囲気が変わる霖之助
「…携帯電話、用途は離れた相手との意思の疎通や生活の補助…」
震える声を霖之助は何とか紡ぐ。
「まさか実際に動いている外界の物を見れるとは…」
その時―――
「おーっす、香霖居るか?」
件の人物、霧雨魔理沙が現れた。
「!!!??」
「お!はたてじゃないか、元気か?」
「あ、あう、えうあうひぃぅ…」
「…?顔が赤いぞ?大丈夫か?」
ピトッ
「!?~~~~~~!!!」
バッ、ダダダダダダダ………。はたては逃げ出した。
「…何なんだ?一体」
「魔理沙は鈍感だからな」
「お前が言うな」
その頃――
やっぱり何かおかしいよ…触れられただけでムヤムヤしてヌフーってなって胸が苦しくて暖かくて…駄目だ上手く考えられないよ。あ、そういえば
「カメラ、置いてきちゃった…ま、いっか、今度取りに行けば」
別にはたては口実が出来たとは思ってはいない、ただ『何となく』どうでも良くなったのである。
「はあぁ、帰ろう」
そう言ってはたては空を飛んだ。
恋のさいしょのためいきこそ、知恵の終わり。 アントワーヌ・ブレ
恋と咳は隠す事が出来ない。 G・ハーバード
恋は結局『何となく』がいいのかも知れない。
理性なんかはとっくに消し飛んでいる中で行動するためには残った無意識で戦うしかない。
何となく、それこそ無意識の塊である。
結果、それが最高のハッピーエンドになれば私はいいと思う。
続きが楽しみです!
ならメタは止めておいた方がいい。入れるだけで作品が大きく崩れる可能性ががが
もし星さんが槍で戦っていたとすると(つまり接近戦)
飛び道具を駆使するエリーや夢子こそが最大の敵になっちゃう.....
特にエリーの大鎌は危険で厄介だぜ、色々と。