Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

さとりのはこ

2010/07/09 00:11:12
最終更新
サイズ
4.52KB
ページ数
1

分類タグ

※この作品は、ひらがなのみで構成されています。
 あらかじめ、覚悟を決めてお読みください。






































むかしむかし、あるところ。
そしていま、いたるところ。
ひとびとやようかいは、そのみにはこをやどしていました。
いやなものをつめこんで、かたくふたをして、じぶんでかぎをかけて。
わすれようと、していました。







むかしむかし、ふたりのさとりのようかいがいました。
ひとりは、ももいろにそまるかみのいろ。
もうひとりは、しろくぬけたかみのいろ。
ふたりは、いつもなかのいいしまい。
たがいのこころをよむ、さとりのしまい。
かわいいらしいふくをきて、うたうわらうおんなのこ。
ふたりは、いつもいっしょにいました。
いつも、ふたりだけでした。







おんなのこには、ふしぎなちからがありました。
だれかのこころはこを、あけるちからです。
どんなにかぎをかけようと。
どんなにふかくうめようと。
はこは、かってにひらきます。
きづかぬままに、ひらきます。
さとりのしまいが、のぞまなくても。







やさしいおんなのこは、はこのなかみをおしえてあげました。
みたままに、つたえました。
わすれていたことを、おもいだせるように。
そうすると、あるひとはおこり、あるひとはなきだしました。
おんなのこたちは、なぜなのかわかりません。
わすれたことを、おしえてあげただけなのに。
どうして、おこられるのだろう。
ふたりのさとりは、さいごまでわかりませんでした。







やがて、さとりのいちぞくはじめんのしたにひっこすことになりました。
えらいようかいたちの、めいれいです。
さとりだけではなく、おにをはじめとしたおおくのようかいもいっしょです。
そのなかでも、さとりはえんまさまからじごくのばんをまかされました。
ごうかなおやしきも、もらいました。
ちていのまちからもはなれた、はじっこのおやしきです。
もえさかる、じごくだけがありました。

「ねえ、おねえちゃん」

いもうとのさとりが、いいました。

「なあに?」

あねのさとりが、こたえます。

「わたしたちは、どうしてきらわれてるの?」
「こころのはこを、あけてしまうからよ」
「さとりなのに?」
「さとりだから」
「なかよくしたいのにね」
「そうね。そのとおりね」

いつしか、いもうとのさとりははこをすててしまいました。
ひらくための、ちからさえもすててしまいました。
あねのさとりにも、あけることはできません。
いもうとのさとりは、いつのまにかたびにでました。
だれよりもなかのよかった、だれよりもとおいしまい。
もう、たがいにこころをよむことはできません。
のこったさとりは、ただひとり。







おやしきには、たくさんのどうぶつがいます。
もとからいたもの、ながれてきたもの。
さとりは、それらをうけいれました。
どうぶつたちは、さとりをおそれずはなれなかったからです。
すこしだけ、さとりはさびしさをわすれました。
かたときも、わすれぬいもうとをおもいながら。
どうぶつのなかには、とくべつちからをもつものもいました。
じごくがらすに、かしゃのねこ。
さとりのてつだいをしてくれます。
ちからのよわいこも、さとりによくなつきました。
やましいことがないから、こころをとじないのです。
どうぶつたちは、さとりをこころからしたっていました。
ちていの、かぞくになりました。

「さとりさま、さとりさま」

ねこがいいました。

「さみしいですか?」

さとりがこたえました。

「あなたたちがいるから、だいじょうぶ」

「さとりさま、さとりさま」

からすがいいました。

「なにか、できることはありますか?」

また、さとりがこたえました。

「だいじょうぶよ。あなたたちが、いつもてつだってくれるから」

うそのない、こころからのことば。
でも、すこしだけかけたことば。
さとりをりかいできる、もうひとりのさとり。
かえらないいもうとが、いつもしんぱいでした。
さとりのはこが、それであふれるほどに。








「ただいま!」

それからしばらくして。
みことまほうつかいが、ちていをおとずれたころ。
ひがたえたじごくに、いっぴきのからすによってねつがもどったころ。
いもうとのさとりが、いえにかえってきました。
なによりおどろいたのは、あねのさとり。
あしどりかるく、いもうとのさとりはまくしたてます。
ちじょうであったこと、であったにんげんとかみさま。
いままで、どんなことがあったのか。
たのしそうに、とてもたのしそうに。
そんないもうとをみて、あねのさとりはみつけました。
すてたはずの、いもうとのはこのかけらを。
ちらりと、すこしだけ。







いま、このせかいにさとりはふたりだけ。
はこをあけられるのは、ふたりだけ。
かぞくのどうぶつでさえも、はこをひらくことはできません。
あねといもうと、ちぐはぐすぎたかなしいしまい。
いもうとは、むじゃきにわらいます。
はこのことなど、わすれたようにわらいます。
あねのさとりは、それをおだやかにみつめます。
あふれるほどのしんぱいは、あんしんにかわりました。
だれにもわからない、ちいさなへんか。
ひとりのさとりの、かくしたはこ。

「おかえりなさい、こいし」
「ただいま、おねえちゃん」

ふたりのさとりは、むかしのようにわらいました。
いつのひか、またこころのはこをみせあうひをゆめみて。
絵本っぽい感じで古明地姉妹でした。
小難しく考えずにつらつらと書いてみました。
テンポもロジックもありませんが、雰囲気を感じていただけたら幸いです。
タ々ル
http://hitchone.blog62.fc2.com/
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
少し読み辛かったけど、良いお話でした
2.名前が無い程度の能力削除
たしかに平仮名オンリーでは少し目がチカチカしますが
それもまた作品の雰囲気になったと思います。
むしろ読み難さはかえって速度を操作し
読後感のとてもよいお話になったのではとも。
テンポもリズムも常のまま、お話の形も綺麗に
それこそ箱をたたむように落ち着きました。
さとりのはこが、ひとつ、ふたつ
またある日にでも綺麗なもので満たされるのを祈ってやみません。

ちょっぴり苦く、しかしかわいらしい姉妹でした。
次作もたのしみにしています。
3.名前が無い程度の能力削除
堪能させていただきました。こういう雰囲気って、結構好きです。

自分の想起した絵本のノリに間違いがなければ、
文章に積極的にスペースを盛り込むともっとそれらしく、且つ読みやすくなるかなと思いました。