※この作品は、ひらがなのみで構成されています。
あらかじめ、覚悟を決めてお読みください。
むかしむかし、あるところ。
そしていま、いたるところ。
ひとびとやようかいは、そのみにはこをやどしていました。
いやなものをつめこんで、かたくふたをして、じぶんでかぎをかけて。
わすれようと、していました。
むかしむかし、ふたりのさとりのようかいがいました。
ひとりは、ももいろにそまるかみのいろ。
もうひとりは、しろくぬけたかみのいろ。
ふたりは、いつもなかのいいしまい。
たがいのこころをよむ、さとりのしまい。
かわいいらしいふくをきて、うたうわらうおんなのこ。
ふたりは、いつもいっしょにいました。
いつも、ふたりだけでした。
おんなのこには、ふしぎなちからがありました。
だれかのこころはこを、あけるちからです。
どんなにかぎをかけようと。
どんなにふかくうめようと。
はこは、かってにひらきます。
きづかぬままに、ひらきます。
さとりのしまいが、のぞまなくても。
やさしいおんなのこは、はこのなかみをおしえてあげました。
みたままに、つたえました。
わすれていたことを、おもいだせるように。
そうすると、あるひとはおこり、あるひとはなきだしました。
おんなのこたちは、なぜなのかわかりません。
わすれたことを、おしえてあげただけなのに。
どうして、おこられるのだろう。
ふたりのさとりは、さいごまでわかりませんでした。
やがて、さとりのいちぞくはじめんのしたにひっこすことになりました。
えらいようかいたちの、めいれいです。
さとりだけではなく、おにをはじめとしたおおくのようかいもいっしょです。
そのなかでも、さとりはえんまさまからじごくのばんをまかされました。
ごうかなおやしきも、もらいました。
ちていのまちからもはなれた、はじっこのおやしきです。
もえさかる、じごくだけがありました。
「ねえ、おねえちゃん」
いもうとのさとりが、いいました。
「なあに?」
あねのさとりが、こたえます。
「わたしたちは、どうしてきらわれてるの?」
「こころのはこを、あけてしまうからよ」
「さとりなのに?」
「さとりだから」
「なかよくしたいのにね」
「そうね。そのとおりね」
いつしか、いもうとのさとりははこをすててしまいました。
ひらくための、ちからさえもすててしまいました。
あねのさとりにも、あけることはできません。
いもうとのさとりは、いつのまにかたびにでました。
だれよりもなかのよかった、だれよりもとおいしまい。
もう、たがいにこころをよむことはできません。
のこったさとりは、ただひとり。
おやしきには、たくさんのどうぶつがいます。
もとからいたもの、ながれてきたもの。
さとりは、それらをうけいれました。
どうぶつたちは、さとりをおそれずはなれなかったからです。
すこしだけ、さとりはさびしさをわすれました。
かたときも、わすれぬいもうとをおもいながら。
どうぶつのなかには、とくべつちからをもつものもいました。
じごくがらすに、かしゃのねこ。
さとりのてつだいをしてくれます。
ちからのよわいこも、さとりによくなつきました。
やましいことがないから、こころをとじないのです。
どうぶつたちは、さとりをこころからしたっていました。
ちていの、かぞくになりました。
「さとりさま、さとりさま」
ねこがいいました。
「さみしいですか?」
さとりがこたえました。
「あなたたちがいるから、だいじょうぶ」
「さとりさま、さとりさま」
からすがいいました。
「なにか、できることはありますか?」
また、さとりがこたえました。
「だいじょうぶよ。あなたたちが、いつもてつだってくれるから」
うそのない、こころからのことば。
でも、すこしだけかけたことば。
さとりをりかいできる、もうひとりのさとり。
かえらないいもうとが、いつもしんぱいでした。
さとりのはこが、それであふれるほどに。
「ただいま!」
それからしばらくして。
みことまほうつかいが、ちていをおとずれたころ。
ひがたえたじごくに、いっぴきのからすによってねつがもどったころ。
いもうとのさとりが、いえにかえってきました。
なによりおどろいたのは、あねのさとり。
あしどりかるく、いもうとのさとりはまくしたてます。
ちじょうであったこと、であったにんげんとかみさま。
いままで、どんなことがあったのか。
たのしそうに、とてもたのしそうに。
そんないもうとをみて、あねのさとりはみつけました。
すてたはずの、いもうとのはこのかけらを。
ちらりと、すこしだけ。
いま、このせかいにさとりはふたりだけ。
はこをあけられるのは、ふたりだけ。
かぞくのどうぶつでさえも、はこをひらくことはできません。
あねといもうと、ちぐはぐすぎたかなしいしまい。
いもうとは、むじゃきにわらいます。
はこのことなど、わすれたようにわらいます。
あねのさとりは、それをおだやかにみつめます。
あふれるほどのしんぱいは、あんしんにかわりました。
だれにもわからない、ちいさなへんか。
ひとりのさとりの、かくしたはこ。
「おかえりなさい、こいし」
「ただいま、おねえちゃん」
ふたりのさとりは、むかしのようにわらいました。
いつのひか、またこころのはこをみせあうひをゆめみて。
あらかじめ、覚悟を決めてお読みください。
むかしむかし、あるところ。
そしていま、いたるところ。
ひとびとやようかいは、そのみにはこをやどしていました。
いやなものをつめこんで、かたくふたをして、じぶんでかぎをかけて。
わすれようと、していました。
むかしむかし、ふたりのさとりのようかいがいました。
ひとりは、ももいろにそまるかみのいろ。
もうひとりは、しろくぬけたかみのいろ。
ふたりは、いつもなかのいいしまい。
たがいのこころをよむ、さとりのしまい。
かわいいらしいふくをきて、うたうわらうおんなのこ。
ふたりは、いつもいっしょにいました。
いつも、ふたりだけでした。
おんなのこには、ふしぎなちからがありました。
だれかのこころはこを、あけるちからです。
どんなにかぎをかけようと。
どんなにふかくうめようと。
はこは、かってにひらきます。
きづかぬままに、ひらきます。
さとりのしまいが、のぞまなくても。
やさしいおんなのこは、はこのなかみをおしえてあげました。
みたままに、つたえました。
わすれていたことを、おもいだせるように。
そうすると、あるひとはおこり、あるひとはなきだしました。
おんなのこたちは、なぜなのかわかりません。
わすれたことを、おしえてあげただけなのに。
どうして、おこられるのだろう。
ふたりのさとりは、さいごまでわかりませんでした。
やがて、さとりのいちぞくはじめんのしたにひっこすことになりました。
えらいようかいたちの、めいれいです。
さとりだけではなく、おにをはじめとしたおおくのようかいもいっしょです。
そのなかでも、さとりはえんまさまからじごくのばんをまかされました。
ごうかなおやしきも、もらいました。
ちていのまちからもはなれた、はじっこのおやしきです。
もえさかる、じごくだけがありました。
「ねえ、おねえちゃん」
いもうとのさとりが、いいました。
「なあに?」
あねのさとりが、こたえます。
「わたしたちは、どうしてきらわれてるの?」
「こころのはこを、あけてしまうからよ」
「さとりなのに?」
「さとりだから」
「なかよくしたいのにね」
「そうね。そのとおりね」
いつしか、いもうとのさとりははこをすててしまいました。
ひらくための、ちからさえもすててしまいました。
あねのさとりにも、あけることはできません。
いもうとのさとりは、いつのまにかたびにでました。
だれよりもなかのよかった、だれよりもとおいしまい。
もう、たがいにこころをよむことはできません。
のこったさとりは、ただひとり。
おやしきには、たくさんのどうぶつがいます。
もとからいたもの、ながれてきたもの。
さとりは、それらをうけいれました。
どうぶつたちは、さとりをおそれずはなれなかったからです。
すこしだけ、さとりはさびしさをわすれました。
かたときも、わすれぬいもうとをおもいながら。
どうぶつのなかには、とくべつちからをもつものもいました。
じごくがらすに、かしゃのねこ。
さとりのてつだいをしてくれます。
ちからのよわいこも、さとりによくなつきました。
やましいことがないから、こころをとじないのです。
どうぶつたちは、さとりをこころからしたっていました。
ちていの、かぞくになりました。
「さとりさま、さとりさま」
ねこがいいました。
「さみしいですか?」
さとりがこたえました。
「あなたたちがいるから、だいじょうぶ」
「さとりさま、さとりさま」
からすがいいました。
「なにか、できることはありますか?」
また、さとりがこたえました。
「だいじょうぶよ。あなたたちが、いつもてつだってくれるから」
うそのない、こころからのことば。
でも、すこしだけかけたことば。
さとりをりかいできる、もうひとりのさとり。
かえらないいもうとが、いつもしんぱいでした。
さとりのはこが、それであふれるほどに。
「ただいま!」
それからしばらくして。
みことまほうつかいが、ちていをおとずれたころ。
ひがたえたじごくに、いっぴきのからすによってねつがもどったころ。
いもうとのさとりが、いえにかえってきました。
なによりおどろいたのは、あねのさとり。
あしどりかるく、いもうとのさとりはまくしたてます。
ちじょうであったこと、であったにんげんとかみさま。
いままで、どんなことがあったのか。
たのしそうに、とてもたのしそうに。
そんないもうとをみて、あねのさとりはみつけました。
すてたはずの、いもうとのはこのかけらを。
ちらりと、すこしだけ。
いま、このせかいにさとりはふたりだけ。
はこをあけられるのは、ふたりだけ。
かぞくのどうぶつでさえも、はこをひらくことはできません。
あねといもうと、ちぐはぐすぎたかなしいしまい。
いもうとは、むじゃきにわらいます。
はこのことなど、わすれたようにわらいます。
あねのさとりは、それをおだやかにみつめます。
あふれるほどのしんぱいは、あんしんにかわりました。
だれにもわからない、ちいさなへんか。
ひとりのさとりの、かくしたはこ。
「おかえりなさい、こいし」
「ただいま、おねえちゃん」
ふたりのさとりは、むかしのようにわらいました。
いつのひか、またこころのはこをみせあうひをゆめみて。
それもまた作品の雰囲気になったと思います。
むしろ読み難さはかえって速度を操作し
読後感のとてもよいお話になったのではとも。
テンポもリズムも常のまま、お話の形も綺麗に
それこそ箱をたたむように落ち着きました。
さとりのはこが、ひとつ、ふたつ
またある日にでも綺麗なもので満たされるのを祈ってやみません。
ちょっぴり苦く、しかしかわいらしい姉妹でした。
次作もたのしみにしています。
自分の想起した絵本のノリに間違いがなければ、
文章に積極的にスペースを盛り込むともっとそれらしく、且つ読みやすくなるかなと思いました。