紅い霧が幻想郷を覆った。
後の紅霧異変だ。
これを解決するため、博霊の巫女と普通の魔法使いは立ち上がった。
互いに別行動を取り、競うように解決にあたる。これが今までの彼女達のやり方だったし、互いに不満不平はない。
深い夜の中、霧雨魔理沙は一条の流れ星のように駆ける。
「こういう気持ち、なんというか、あいつだったら『気持ちいいわね』とかいいそうだな」
しかし、ふと、今日の霊夢は、平生に比べ、異変解決に乗り気じゃなかったな、と魔理沙は思った。
(なんか、おどおどしてたし、随分弱気だったし。あいつらしくないっつーか、今日の霊夢は変だったなぁ)
そこで、しまった、という顔をする魔理沙。
「あっ!今日の霊夢はEasyシューターだ!!」
Stage1
夢幻夜行絵巻 ~ Mystic Flier
同じ頃、霊夢も暗い夜の中を、手探りするように、ちんたら進んでいた。
「ぐすっ…暗いよ~怖いよ~。うう…見栄張って、異変解決するわ、なんて言わなきゃよかった…。どこも真っ暗だし、夜の境内裏がこんな薄気味悪い所だとは思ってなかったわ…(←よわき)」
お札と針をを握り締め、縮こまりながらゆっくりと進む。
射命丸から貰った、天狗の大団扇をお守り代わりに抱きしめ、不安げに辺りを見渡す。
「なんで?なんでeasyなんてプレイするかな?どうせ、どう頑張っても5面までしか進めないのに~」
若干涙目になりながら、弱気とも取れる、愚痴をこぼす。
その時、前方から気配が近づいてきた。微量だが、妖力を感じ取れる。
霊夢は回れ右して逃げ出した。
しかし、途中で木にぶつかり、強制停止。縦スクロールには逆らえない。
顔面を強打した霊夢。しかし、今の衝撃で目が覚めた。
(これでは博霊の巫女としてあまりに情けない…)
今の彼女は、すでにどうしようもなく情けないのだが、可愛いので許されている事に、霊夢は気づいていなかった。
気を強く持って、改めて妖怪のほうに振り向く。
振り向いたその目と鼻の先に妖怪がいた。その距離30cm
妖怪の爛々とした瞳に、自分の瞳が写る。
「き、きゃああああぁぁぁああ!!」
霊夢はわたわたと慌てて距離を取ろうと、後ろに跳ぶ。
しかし、足をもつらせ派手に転倒する。
「あ、文~!早く来てぇ、文~!うわ~ん!!」
無意識に霊夢は心の中に居座っている射命丸の名を呼ぶ。最初涙目だったのが、今はもう流涙になっている。
宵闇に映える、金の髪を持つ妖怪、ルーミアが口を開く。
「あなたは取って食べれる人類?」
尻餅をついたまま、後ずさる霊夢。どうやら腰が抜けたらしい。
「た、食べられません!食べられません!たたた食べても美味しくないです!…あ、あああ文は、きっと美味しいですよって言ってるけど、絶対嘘だからっ!絶対美味しくないからっ!だから、お願いたから食べないで~……」
カチカチと歯を鳴らしながら、手を突き出し、来ないでっ、と意思表示をする。
「ほう、そうなのか」
ルーミアは今の言葉を理解したのか、していないのか。一旦霊夢から離れ、スペルカード、夜符「ナイトバード」を取り出す。easy向けに簡略化されたものだ。
「えっ……ああ…。良かった~、弾幕勝負ね」
これならば死ぬことはない。なんとか気を持ち直した霊夢。
「言っとくけど、弾幕勝負は私の分野よ。私を甘く見たことを悔いなさい。ふふんっ」
「ほう、そうなのか」
得意げに鼻を鳴らし、いきなり強気になる霊夢。弾幕なら今までの経験から十分勝ち目がある。
涙を拭い、こちらもスペルカードを取り出そうとポケットに手を遣る。
(…………あれ?)
霊夢はガサゴソとポケットをまさぐる。しかし、いつまで経っても目的の物にたどり着く様子がない。
(……ない)
霊夢は頭をフル回転させる。『霊符「夢想封印」』、はどこにあるのか?
(昨日は確か、お風呂入った後に団扇替わりに扇いでて…その後どうしたっけ?)
その時、天啓が下りたように霊夢に電流が流れる。
(あ!…枕元に置きっぱなし…)
霊夢は血の気が急速にひいてきた。そもそも置いてきた場所を思い出しても、事態は変わらない。
(まずい、まずい、まずい。どうしよう……)
冷や汗が額を伝う。その間にルーミアのスペルカードが発動する。
お世辞にも、豪華とは言えないしょぼくれた弾幕だ。弾と弾の間隔が広く、霊夢は線香花火を連想した。
「な、なによ、驚かして。この程度なら片足でも余裕ね」
「そうなのか。では、言ったとおりかわしてみるがよい」
「ふっ、えらく挑戦的ね。いいわ、その勝負乗ったわ」
不敵に笑い、言ったとおりに片足立ちになる霊夢。いつもの調子を取り戻したようだ。
「飛べ」という突っ込みはご遠慮願いたい。
「はぁ、弾速も随分のろまね。これなら目を閉じても余裕なんじゃない?」
さらに挑発的な言動を重ねる霊夢。
それに対しルーミアは義務的に弾幕を放ち続ける。
(さーて、ようやく弾幕が近づいてきたわね。遅いったらありゃしない。隙間も多いし、2、3歩移動すれば余裕ね。せーの、けん、けん、パッあっ?)
転んだ。
霊夢は再び顔面を強打する。慌てて立ち上がろうとしたが、足がもつれて再び倒れ込む。
「ちょっ!ちょっと待って!ストップ!ストップ!これは違う!ちょっとしたドジだって!これは無しだって!」
そして、霊夢の言う、のろまでスカスカな弾幕が迫って来ていた。
□ □ □
その頃、射命丸は自宅でばりばり作業をしていた。
射命丸が紅い霧に気づいたのは、夕方。慌ててシャッターを下ろすも紅い霧は夕焼け空には写真映えしない。
試しに夜にも撮ってみたが、余計に見栄えが悪い。
射命丸は仕方なく、写真は早朝に撮り、先に記事を仕上げようと考え、現在に至る。
一言で言うなら『忙しい』。
食事もシャワーも後にして、仕事に没頭していた。
「あああああああああ、忙しい!手があと、何本か生えてきませんかね!」
書いては修正し、書いては修正し、書いては修正する。
こう見えてそういうところは細かいようだ。
しかし、やがてその手も止まる。文面に行き詰まったらしい。
「はぁ、少し休憩しましょう」
一度、頭を冷やし整理すればいい案が浮かぶと考えたようだ。
席を立ち、シャワーを浴びようと服を脱ぐ。
「最近、独り言が増えた気がしますねぇ。…一人暮らしが長いからですかね」
ガターン!!
「あ、文ぁ~!!」
「ひゃあっ!れっ霊夢さん!」
突然、ドアを突き破るように霊夢が闖入して来た。
突然の事に驚く射命丸。
また、涙で、ぐしょぐしょの霊夢の顔を見て、さらに驚く。
射命丸は急いで服を着直す。
「ど、どうしました?霊夢さん」
「うえ~~ん!る、ルーミアに負けた~!!」
「ルーミアに?…はぁ、ご冗談を。ルーミアに負ける人の方が少ない位じゃありませんか」
「え~ん!だってぇ…だってぇ…」
「ああ、とにかく落ち着いてください、霊夢さん。今お茶を淹れてきますから」
「あ、あやぁ~行っちゃやだぁ…」
「…ああもう!可愛いな、畜生!!」
射命丸は思わず心の叫びが口に出る。しかし、霊夢はそんなことも気にせず射命丸に抱きつく。
霊夢は射命丸の胸に顔を埋め、涙を拭く。
「うう…あやぁ…」
「は…はい…」
射命丸は頬を朱に染め、しどろもどろに応える。 上目づかいの霊夢にノックアウト寸前だった。
「あやぁ…」
射命丸は、ただ自分の名前を繰り返し呼ばれているだけだ。しかし、それがなんとも愛おしい。
射命丸はそろそろと霊夢の背中に手を回す。
「ど、どうしちゃったんです?今日は随分と霊夢さんらしくありませんね」
いつもは、強気で不敵で凛としている、クールな霊夢が今はこの通りである。
射命丸は月一度ある、霊夢のeasyシューターモードを知らなかった。
(普段のギャップと相まって、ものすごく可愛い…!)
「あう…ぐすん…」
「大丈夫ですよ。気が済むまでこうしてますから!」
理由を話さない霊夢を見て、射命丸はそれ以上の追及を止めた。
記者である、彼女らしからぬ行動だった。
射命丸は、しゃくりを上げる霊夢の背中をさする。
「よしよし。誰だって失敗はありますよ。河童の川流れって、にとりさんも仰っていましたし」
「うん…」
「だから、気にすることなんてありません。今日はもう、お茶飲んで寝てしまいましょう」
「うん…」
そこで、霊夢は今日初めて笑顔になる。気の許した人しか見せない、とっておきの笑みだった。
(う…どうしてそんな顔をするのですかね。益々甘やかしてしまうじゃないですか)
射命丸はどうもこの顔に弱い。
照れ隠しで、霊夢をおいてキッチンへお茶を淹れに行く。
置いて行かれたのが気に食わない霊夢。急いで射命丸の後を追い、背中に抱きついた。
「あー…霊夢さん?そんなにくっつかれるとお茶が淹れにくいですよ?」
「いいの」
「え~と、霊夢さんはいいかも知れませんが…私は少々緊張して、しまいますよ?」
「いいのっ」
射命丸は涼しい顔をして、急須でお茶を注ぐ。ただし、湯呑みには全く入っていない。だだ零れだ。
射命丸の動揺の原因は霊夢との密着度にある。
…霊夢のささやかな胸が背中に当たっているのだ。
射命丸は背中に意識を集中させる。
(こ、これはまずい。理性が…と、とぶ!はやくこの状態から離脱しなければ!)
これ以上、誘惑されると自制がきかなくなりそうだ。
「あ~霊夢さん?私まだシャワーを浴びていないので、ちょっと今浴びてきますね」
(そうだ、そうしましょう。一度頭を冷やしてクールダウンしなければ。邪念を取り払いましょう)
射命丸は、ほとんど空の湯呑みを霊夢に押しつけるように預け、足早にシャワールームに向かおうとする。
「ねぇ、文」
「はい?」
途中で呼び止められた射命丸。反射的に返事をする。
「私もまだシャワー浴びてない」
「えっ?」
「一緒に…入ろ?」
射命丸の理性は巣立ちした。
□ □ □
チュン、チュン
………。
射命丸は、今、一言で言うなら『忙しい』。
食事もシャワーも後にして、仕事に没頭していた。
「あああああああああ、忙しい!手があと、何十本か生えてきませんかね!」
書いては修正し、書いては修正し、書いては修正する。
こう見えてそういうところは細かいようだ。
何せ、今朝になって、記事の全面差し替えである。忙しいのも無理はない。
紅い霧は既に消え、いつもの青空が顔をのぞかせている。人々も日常を取り戻しているようだ。魔理沙、お疲れさん。
やがて、射命丸の手が止まる。記事が完成したようだ。
「よ、よし!出来ました!では、急ぎ印刷に回しましょう!」
射命丸はできた記事を高々と掲げる。
「あはははは!これは凄いビッグニュースですよ!何せあの博麗の巫女が電撃入籍ですからねっ!!」
子供のように、はしゃぐ射命丸の喜びは計り知れない。
射命丸は、ひとまず完成した原稿を置いて、霊夢の元へ向う。
「霊夢ー。おはようございます」
しかし、霊夢はベッドにの中に入ったまま顔を見せない。
夜が明け、Normalシューターに持ち直した霊夢。いつもの思考回路に戻る事が出来た。
それと、同時に昨夜の自分の行動を思い出し、赤面しているのだ。
平生、自身に高い矜持を持っている霊夢。彼女にとって、昨夜は恥ずかしいどころの騒ぎではない。
「ほら、霊夢。ねぼすけなのですね。おはようのキスでもいかがですか?」
「うううっさい。ば、馬鹿。一人で起きられるわよ」
霊夢は布団を押しのけ、強がりで起き上がる。
「おや、いつもの霊夢に戻ったのですね。残念です」
「……文句ある?」
「いえ、もちろん今の霊夢も大好きですよ」
「なら、いい」
霊夢は射命丸にキスを交わしてから、そっぽを向いた。
ルーミアに負けた霊夢を俺は知ってる…
霊夢可愛いよ!
ただ、毎回のようにまりまりさ氏がと後書きやタグで騒ぎ続けるのがあざとく見えて仕方ないです。
ま、私は嫌いじゃあないですけどね。
再開発さんとまりまりささんの掛け合い、なかなか面白いですし。
けど、タグにまで書くのは流石に自重なさったほうがよろしいかと。
あやれいむ美味しいです。
ってかルーミア妙にかっけぇwww
とりあえずギャップが可愛いです。あと文が調子乗りすぎてて笑った。
あとルーミアから哲学の香りがするw
1~3ボス全員に最低一回は抱きついて、
盛大に抱え落ちを決めている。
とりあえずおめでとう!
末永くお幸せに。
誰もが一度は通る道だよね…
そしてどんな霊夢もすべからく愛している文が素敵ですね。
楽しませていただきました。感謝です。