鵺の御仕事

　いらっしゃ～い『ぬえの仕事場』へようこそ

　えっ？こんな路地裏に占いのような御店出してなにやってるかって？

　いやだな～、この私『鵺』がする仕事って言ったら

『正体不明』にする事にきまってるじゃない

　お兄さんも解って言ってるんでしょ？



　……家への近道探ししてたら迷ったって？

　あ～それは災難だったね……この辺の道

　迷惑な人が来ないように正体不明の種まいてあるから道に迷うんだよね

　この道を曲がってまっすぐ行けば寺子屋に出られるよ

　
　ん？どうしたの？私の仕事が具体的に気になるって　

　良くぞ聞いてくれました！

　いや、実はね大きな声では言えないけどさ……

　私の力って目の前にある物を正体不明にする事が出来るんだ

　どんなのかって？

　ん～……しょうがない、今回は未来の顧客にタダでサービス！

　とりあえず、正体不明にして欲しい物だしてよ

　……わかった足元の小石でも良いよ

　はあ、出来たらもっとまともな物にしたかったんだけど……

『ぬえぬえぬえぬえ～～～！』


　はい、これでよし……って何故逃げるの？

　私が手に持っているもの？

　ああ、貴方の目にはこれが別の何かに見えるのか

　……そう、これがさっきの小石

　貴方の目には何に見えるのかな？

　えっ？ムキムキマッチョのポージング像？

　なにそれ！？凄い怖い！

　

　はぁ……はぁ……思わず全力で放り投げちゃったけどまあ良いか

　と、とりあえずこんな感じの仕事してるって訳

　……需要はあるのかって？

　ぬっふふ……実はそこそこ有るんだよね♪

　例えばカモフラージュしたい物とか……

　あんまり大きな声では言えないけどさ

　ある魔法使いは自分の昔の服を正体不明にして黒歴史を隠してたし

　とあるメイドさんは大切にしている人形がばれない様に
　
　それを隠す宝箱を正体不明にして隠してたりとか

　……あ、あと……あんまりやりたくないんだけど
　　
　え、え～と……し、思春期の男性から……ま、まあつまりその……

　よ、夜のオカズってやつを捨てられる前に正体不明にしたりとかも！

　……や、やっぱり私も女の子だからそんな本渡されると
　　
　少し恥ずかしいんだけど……これも仕事だしね



　……うん、まあそんな感じでそこそこ稼いではいるんだよ

　あ、そろそろ帰る？はいはい、気をつけて帰ってね

　


　なに？最後にもう一つだけ聞きたいって？

　……『なんで御金を稼いでるのかって？』

　……

　…………

　誰にも言わないのなら、教えてあげても良いかな

　約束できる？

　わかった、今日は未来の御客さんが出世払してくれると信じて

　……私が居る命蓮寺ってさ……実はあんまりお金無いんだよね

　まあ、質素倹約を主にしているからその辺は一種の修行みたいだけど

　やっぱり、たまには皆贅沢したいんじゃないかなって思ってさ

　でも私が普通に働ける場所って殆ど無いし
　
　……それで稼いだ御金で贅沢しようって言っても皆優しいから拒否するしね

　だから、私は此処で『鵺』の御仕事をしてるの

　嘘はついてないからね？物を正体不明にして迷惑かけてるんだから

　……これで納得してくれたかな

　ん？またくる時には御仕事頼むって？

　はははっ、任せておいて！お兄さんには少し割引してあげるよ

　はいはいまたね～！












　
　……あ～あ少し話しすぎちゃったな……

　さて、今日はもう店仕舞いするかな？

　今日の売り上げは……こんなもんか

　さあ、今日はムラサのカレーの日だから

　この売り上げで悪戯のふりをして
　
　正体不明にした牛肉を入れてあげようっと

　
　

ぬえ「今だ！くらえ正体不明の素材！」
ムラサ「あ～！？私の作っているカレーに謎の素材が！」
ぬえ「あっはっは！少しは贅沢になったんじゃない？」
ムラサ「ぬえ！待て～！」
ぬえ「待たないよ～だ♪」


星「ナズ、今日のカレーに肉の匂いがします！」
ナズ「鼻まで鈍ったのかい？御主人」
一輪「そうよ星……肉なんて高価な物が……」
聖「さあ、皆晩御飯ですよ」




　ぬえは良い子……

　たまには健気なぬえを書いてみた


　後、ベッドの下の本を頬を染めて恥ずかしがりながら
　正体不明にしていただいて誠にありがとうございます！
　おかげで、母親の追撃を逃れる事が出来ましたOTL