レミリアは今、大変困っていた。4人のフランドールが自分をめぐって争っているのである。
激しい弾幕音とグレイズ音に比例するように紅魔館が壊れていく。
どうやら、フランドールは4人になり、99年設定で桃鉄をしていたらしい。
だが、順位に納得いかなかった1人が
「もう、私知らない!お姉様と遊ぶもん!」
と、言ったのが引き金。
そのまま、ずるずると移動しながら喧嘩の規模が大きくなっていき、喧嘩の目的も誰が姉に一番愛されているかに置き換わっていた。
ふむ、フォーオブアカインドのフランドール達は元が1人なのに性格が違うのかしら?
まぁ、4人の取り合いになるのは乙女冥利につきるのだが、これは、よくないわね。
そんなことを悠々と考えながら、欠けたティーカップで紅茶を啜る。
ああそうだ、止めなければな。
「やめてー私の為に争わないでー」
取りあえず言ってみたが、いかんせん、ガッツが足りない。フランドールの耳には届いていないようだ。
・・・はぁ、やれやれ。
正直に言えば、レミリアはこの状況を堪能していた。4人の妹が自分を取り争う状況など、なかなか無いだろう。
だが、このままでは紅魔館が砂塵になるのも時間の問題。
既に図書館は壊滅状態にあった。
・・・パチェ、私が妹に愛されてるが故に、貴女を犠牲にした私を許してね。
レミリアは今は亡き親友に語りかける。
・・・助けに行かなかった私の所為なんだけど。パチェ、貴女の事は忘れないわ。
自身が最も信頼している親友に対してこの扱い。レミリアは少し友情に薄情な面があるようだ。
「あてっ」
天井が降ってきた。この部屋も限界か。
ちなみに、この部屋というのは自分の部屋、つまりレミリアの私室であった。
お気に入りの家具や調度品、愛用の万年筆や装飾品などの細かい品まで、既にフランドール達の争いによって霧散してしまっている。
・・・全く、しょうがない子達なんだから。お尻ペンペンの刑ね。
自身の部屋を半壊させた妹達に対してこの扱い。レミリアは妹に寛容すぎる面があるようだ。
・・・さて、そろそろ本気で止めないとパチェだけじゃなくて、咲夜や美鈴まで死んじゃうかもね。
ようやく重い腰をあげる。
先ほど止めようとした時からだいぶ時間が経っていた。
ちなみにパチュリーは死んでいないと思います。
ここで、レミリアはスペルカードを取り出す。
果たして、レミリア自身より強大な力を持つとされる4人の妹を力で止めようと言うのか。
だが、紅魔館の当主レミリアは瞳を妖しく輝かせ、不敵に笑う。
「残念だったわねフラン。今日の私はNormalやHardなんて生温いものじゃないわ。今日の私はLunaticよ。Extraより強いんじゃないのか、と、一部で囁かれた私の力をとくと見なさい」
レミリアの実力は日替わりだった。
「行くわ!『紅色の幻想郷』!!」
轟音と共に紅魔館が灰燼と化した。
□ □ □
博霊神社。
ここは駆け込み寺ではない。そもそも、寺ではなく神社である。また、神社は住むところを失った者を受け入れる施設ではない。神社は難民を受け入れる施設ではない。
しかし。
「いい?貴女達。もうあんな事しちゃ駄目よ」
「だって~」「こいつが悪いの」「ごめんなさい」「・・・う、うるさいっ」
レミリア一行は当然のように、居座っているのだった。
パチュリー含め、大半は永遠亭のお世話になっているが、かなりの大所帯。しかも、レミリア達は紅魔館が直るまでの約束で、置いてもらっている身分なのだが、もはや自分の家のように過ごしていた。
これに対し、霊夢は何かを悟ったように、見て見ぬ振りをして、枕を濡らしていた。今日の霊夢はeasyシューターらしい。
「もう、ちゃんと反省してる?あなたのせいで、こんな寂れたところに居なきゃいけないのよ?」
「う~」「私はお姉さまと一緒ならどこでも」「ごめんなさい・・・」「し、知らないもん」
自分の事は棚に置くレミリア。
フランドール達は、どうやら今、心がバラバラで元の一人に戻る事が出来ないようだ。仲直りし、心をシンクロさせない事には元に戻れないらしい。
これに対し、姉レミリアは事態を重く受け止めていた。
フランドールは強い。この幻想郷でも5指には入るだろう。それが今は4人。4人になっても力自体は変わらぬ。私もずっと、Lunaticで居られる訳ではないし・・・。もし、この子が暴れ出したらどうする?そんな事はないと信じているが、それではスキマ妖怪が黙ってはいまい。幻想郷の勇士が総力を挙げたとしても、無傷ではすまない、死傷者が確実に出る。これは運命にも出ている。だったら、どうする?簡単だ、仲直りさせて1人に戻せば良い。幸い、フランは真面目でおとなしい子。私の言う事は聞いてくれる事が・・・・・・・・・・・・・・・・・・多い?うん、多いわね。私の言う事は素直に従ってくれる。ではここで、フラン達の喧嘩の原因はなんだ?言うまでもない、私だ。では私の方から、フラン達を平等に愛している事を伝えねばならない。どうすればそれが伝わる?私ならこうだ。フラン達に同じ贈り物をして平等を訴える。
そして、そのマストアイテム。紅魔館が崩れゆく中でも私が死守して見せたわ。
「貴女達、私からプレゼントがあるわ。これは私から貴女達を平等に愛している証。さぁ、これを着けて仲直りして、そうしてから、いつもみたいになでなでしてあげるからね~」
「え」「え」「え」「え」
はい、こちら、4組の犬なりきりセット。犬耳、犬尻尾、紅い首輪の計3点!
首輪にはプラチナ製のスカーレット家の家紋も記され、フランドールという名前が彫ってあります!
耳にも尻尾にも最高級で本物の毛が使われており、触り心地も本物と全く変わりません!
4点セット。これだけでお値段なんと時価!!これは安い!!
(※尻尾のつけ方はフュージョン式です。あらかじめご了承下さい。)
じりじりと犬セットを持って、フランドール達に近づくレミリア。
まったく同じ距離を保ちつつ後ずさるフランドール達。
「ど、どうしよう・・・」「・・・・・・」「その・・・それはちょっと・・・」「変態・・・」
何故か、フランドール達は受け入れてくれないようだ。
ここで、短気なレミリアは早くも痺れを切らした。
「あっ、そ。もういいわ、着けなくて。せっかく貴女達が仲良く出来るように身を挺して、これを死守したのに。ふん、貴女達なんて大嫌い。もう顔も見たくない」
「えっ!?うそっ!」「やだやだっ!!」「ご、ごめんなさい!今着けるから嫌いにならないでっ!」「わ、わかったよ!着ければいいんでしょ!?」
世界で一番愛している人からの拒絶発言。フランドール達の心に衝撃が走る。
そんなの嫌だ。嫌われたくない!
というわけで装着。
金色の髪になじむ耳が、ぴんと立っているものから、タレ耳まで。
尻尾もスカートの中で落ち着きなく揺れている。
首輪から繋がれたリードが地面にたれていた。
レミリアの顔は先ほどまでの厳しい顔から反転。目も向けられないほどの緩みきった顔に。
「うん、いい子ね~。んああ~か~わ~い~い~!!そうね、じゃあ次は、わんっ!って鳴いてみようか~」
「え」「え」「え」「え」
「あっ!いいのよ、別にやらなくても。霊夢~~。一緒にジョグレス進化しましょう?」
「ああ!まってぇ!!」「そんなの駄目ぇ!!」「やる!やるよ!」「うう~~わかったよ!!」
フランドール達は必死にレミリアを喰い止める。
振り向いたレミリアの顔は、かつて見たことないほどの輝かしい笑顔だった。
それぞれのフランドールが顔を赤らめながら、姉に気に入られたい一心で犬の声マネをする。耳がプルプルしているのがなんとも可愛らしい。
「さ、順番に」
「・・・・・・わ、わん・・・」「わんわん!!」「わん・・・・・・・・・」「う~・・・わん」
それぞれの反応の違いを楽しみながら確実に本来の目的を確実に忘れつつあるレミリア。恍惚の表情で、カメラを回し始めた。
「な、なに?そのカメラ。ど、どこから持ってきたの?」
360°からカメラを連射するレミリアに、耐え難い恥ずかしさを堪えながら、1人のフランが尋ねた。
「ん?そこに居た天狗から、かっさらって来た」
縁側に涙を流している、烏天狗が1人。
「これは、easyシューターで弱ってる霊夢さんを撮ろうと思っていたのに・・・」
「まぁ、気にしないでよ」
「気にしますよ・・・」
はぁ。溜め息をついて、撮ったら返してくださいよ、とだけ呟き、予備のカメラを持って来ようと、射命丸は飛び立った。
そんな事は露知れず。レミリアは既に居なくなった射命丸に背を向け、フランドール達に声をかける。
今までの行為でようやく満足したようだ。
「うん、よし、ほら、おいで。皆仲良くね?」
そう言って両手を広げ、抱きしめるポーズをとる。
その姿を見て、目を輝かせるフランドール達。尻尾を揺らし、いっせいに抱きつく。
「お姉様!」「お姉様ぁ!」「わ~い!!」「や、やったぁ!」
4人のフランドール達の抱きしめられ、ご満悦のレミリア。腕に2人抱え、膝に1人乗せ、背中に1人を負ぶさる。
フランドールの目は爛爛と光る。
「お~よしよし。ふふ、そんなに強く抱きしめなくていいから・・・。って苦しいわ。あの、苦しいわ、貴女達?首が絞まってるからね?ゴホッ・・・っちょ、痛!痛い!え?なになに?あーあの、あのね?ストップね?ちょっと、あの、いったん離れようか、うん。無理無理無理、これ以上は、いくら私でも愛が重いわ!?痛あぁ!ああ、あああああ!!あああああああああああああああああああ!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、骨っ」
ボキンッ
かなり、折れてはいけない部分が折れたような音がする。
そのまま、レミリアは地に臥せた。
フランドールに悪気はない。ただ、姉への愛が溢れ出ただけなのだ。
さらに、姉に甘えたいという皆の気持ちが1つになったフランドールは再び1人に戻る事が出来たのであった。
あっぱれ、レミリア。妹を1人に戻すために自らの身体を張ったのだ。断じて、自らの欲望のためではなかったのであろう。たぶん。
「お姉様。大好きだよ」
ほほ笑みを浮かべるフランドール。
動かなくなったレミリアを肩に担ぎ、奥の部屋へ運んでいった。
「あれ、お姉様、随分身体柔らかいんだね。さ、私も寝よう。添い寝、添い寝。えへへへ・・・」
フランドールの思考は姉と違い、健全そのものだった。姉に何をされても、さらっと忘れて甘える彼女は、ある意味においてレミリアより大人かもしれない。
しかし、耳や尻尾は長い時間つけていたせいか、身体に馴染み、フランドール自身もそれを着けている事を忘れてしまっているようだ。
尻尾をふりふり。上機嫌でフランドールは寝室のふすまを閉めた。
フランドールはガラス細工を扱うように、レミリアを布団の上に降ろす。
「紅魔館じゃ私はいつも地下室で、お姉様とあんまり一緒に居られないけど、ここならずっとお姉様に構ってもらえるのが凄く嬉しいんだ。・・・・・・こんな毎日がずっと続くなら紅魔館は直らなくてもいいかも」
寝てるから、聞いてないと思うけど。
そうしてフランドールはレミリアに頬ずりをして、腕にすっぽりと納まる。
・・・何故だろう、寝ているはずのお姉さまが背中を撫でてくれている気がする。
「お休みなさい、世界で一番愛しいお姉様」
レミリアの体温の温かさと、大好きな姉の匂いに包まれて、フランドールは眠りについた。
幸せにまどろむフランドール。この先も彼女に幸があるだろう。
「・・・・・・・・・お休み、世界で一番愛しいフラン」
□ □ □
ばさばさと、大きな羽音をたてて、射命丸が戻ってきた。
「ああ、やっとカメラが戻ってきました」
射命丸は愛用のポロライドカメラを手にして、状態のチェックを行なう。
「ほ、よかった。問題ないですね」
ほっと一安心。
これなら、予備を持ってくる必要はなかったかも知れない。
さて、仕事、仕事。
目的の被写体の霊夢を探して勝手に、部屋を闊歩する。
奥の部屋の襖を開くと、2人の吸血鬼が仲良く寝ていた。
射命丸は枕元に立って、2人を見下ろす。
「はあぁ。こんな表情も出来たのですね。私からカメラを奪う時は、確実に狩る側の目でしたのに」
今眠る、先ほどの吸血鬼はただの姉の顔をしていた。
「油断しているあなたが悪いんですよ。これはさっきの仕返しです」
ぱしゃりっ。
シャッターを切る。しばらくして現像が終了し、一枚の写真が姉妹の枕元に落ちる。
『幸せな2人』。これからの未来を約束しているような、一枚だった。
レミフラとあやれいむ、ひゃっほい!!!
でも、面白くてしんみり出来るなあ。良いお話でした。
カオスwww
でもアマー。
日替わり難易度で態度が変わるというのは新しいかもしれない
文様のことだ。犬妹様×4の写真も実は撮ってあるにちがいない。
まりまりさ神の信仰は可能ですか?
今の流行はこの二組で決まり!
でも、純粋にフランが可愛かったからいいや。
それぞれのフランも可愛かったです。
そして弱った霊夢もなかなか良い。
レミフラもあやれいむもごちそうさまでした。
ありがとうございます。