この作品は偉大なる まりまりさ 様の著作『告白』をもとに作らせていただいたものです。許可を取ってあります。
本家には劣りますが、それでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ねぇ、フランドール」
「?」
呼ばれた。
ここは私の部屋。地下室。
今日は親友のこいしが遊びに来ていたので退屈しない日だった。
ただ、今日は湿気が酷いのか、紅い霧のようなものが見える始末。
私はベッドに寝転がり、こいしはソファに座っている。
客人の前でだらしなくするんじゃないの。と、あいつなら言うかもしれない。
まったく、威厳やら家名やら大切にしすぎなんだよ。そんなんじゃ、親友が来ても楽しめないじゃない。
「何?こいし」
「あのさぁ・・・今日もフランドールのお姉さんに会ったよ」
「はぁ・・・またその話?」
こいしが来てもそればっか。その話は好きじゃない。
「だってカッコイイじゃない、あの人」
「そ、そうかなぁ・・・」
「そうだよ。昨日私が家に帰る時、『手ぶらじゃ寂しいわ。咲夜、手土産を持たせてやって』だってぇ~、カッコイイだけじゃなく、優しい人なんだなぁって思うもん」
「今日はいつになく、あいつの事褒めるね・・・」
「えっ?そうかな~?いつもこんなもんじゃない?」
ソファに座ったまま、カラカラと笑う親友。今日はやけに突っかかってくるじゃない。
「ねぇ、フランドール」
呼ばれた。
「何?こいし」
「・・・フランドールはお姉さんの事どう思ってるの?」
「はああっ!?」
何を言ってるんだこいつは。私があいつの事をどう思ってるかだと?
そんなの、
「決まってるじゃない。憎いし、心の底から殺したいわ」
「だよねぇ・・・」
だよねぇ、じゃないよ。じゃあ聞くなよ。
心臓に悪いじゃないか。
「でも、それ聞いて安心したよ」
「どういう意味さ?」
「私ねぇ、今日レミリアさんに気持ちを伝えようと思ってるんだ~」
「は?」
今、こいつはなんて言った?・・・あいつに、気持ちを伝える?
・・・気持ちを伝える?どういう事だ?どういう事なんだ?
というか、なんでそんな事をちょっと散歩行こ、みたいに気軽に言えるんだ。
「でも、その様子だとレミリアさんの事、好きじゃないみたいだね」
「・・・・・・そ、そうよ・・・」
何を考えているんだ、こいつは。何を考えているんだ、こいつは。
そういえば一体いつから、こいしはあいつの事をレミリアさん、と呼ぶようになったんだ?
最初に来た時は、フランドールのお姉ちゃん、だったじゃないか。
なんか腹立たしい・・・。
「あ、あいつの何がいいのさ!?」
「え?だからさっき言ったじゃん。カッコイイし、優しい所」
再びカラカラと笑い始めるこいし。
だから、なんでそんなにはっきりと、恥ずかしげもなくさらっと言えるのさ。
私なんか何年たっても・・・・・・なんでもない。
「あ、あいつなんか一人じゃ、なんも出来ないし、馬鹿だし、口ばっかだし、態度でかいし、やかましいし、良い所なんて何ひとつないよ!だから、こいし!止めたほうが良いよ!そっちのほうがこいしのためだよ!うん、そうしよう!止めよう!止めましょう!止めてください・・・・・・」
「え?最後よく聞こえない」
「止めないと後悔するって言ったんだよ!!!」
「あ、そう・・・。でも、私、決めたから。絶対、この気持ちを伝えてみせるよ!」
「え・・・」
「フランドール。私の事、応援してよね?」
「や、やめたほうが・・・」
「もう、まだ言ってるの?こういう時、親友は素直に応援するものだよ?」
「・・・・・・」
胸が、痛い。目頭が、熱い。
頭がどうしてか真っ白だ・・・。
「・・・ねぇ、フランドール。本当にレミリアさんの事なんにも思ってないんだよね?」
「・・・・・・」
こいしが何故か、同じ質問を繰り返してきた。
決まってるじゃない。そんなの、
「・・・・・・」
「フランドール?」
嫌いだ、という台詞が喉を通らない。
おまけに目線が定まらない。嫌な汗も出てきた。私はこんな落ち着きのない子だったっけ?
はやく、言わなきゃ。
「・・・・・・き、きら・・・い・・・・・・」
「ふ~ん?そうならいいけど」
ようやく、こいしは納得してくれたようだ。
・・・あれ?これで、いいのかな・・・?
・・・なんか、違う。胸が、苦しい。
「見て見て!フランドール!・・・じゃーん!紅い薔薇!」
「あ・・・それが、どうかしたの・・・?」
頭の中が真っ白で、どうすればいいかわからない。
「ん?知らないの?これはレミリアさんが一番好きな花」
「え?」
思わず、気の抜けた声が出た。
そんなの、知らない。聞いた事ない。
どうして私が知らなくて、こいしが知ってるの?どうして?
お姉様とこいしは私とお姉様より、仲が良い。
こいしがお姉様に薔薇をプレゼントして、お姉様が笑顔で受け取っているところを思い浮かべた。
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
「・・・・・・だ・・・め・・・」
「え?」
「・・・・・・だ、めぇ・・・」
「フランドール?」
絶対、嫌だ。お姉様が私を見てくれなくなるなんて、嫌だ。
私は自分でも気づかないうちに、恥も外聞もなく、泣き叫ぶ。
「私のお姉様、とっちゃダメぇ!!」
「!!」
「やだやだやだ、ダメ、ダメなの!フランのお姉様はフランのものなの!!だから、こいしはとっちゃダメなの!!」
「・・・・・・フランドール」
私自身、何を言っているのかよくわからなかった。ただ、お姉様をとられたくない一心で、叫び続けていた。
「だから、ダメ・・・・・・ひくっ・・・・お願いだから・・・ひくっ・・・フランのお姉様・・・とらないで・・・」
「わかってるよ」
「・・・え?」
こいしは笑っていた。ただ明るく、私を元気付けるように笑っていた。
「フランドール、やっと自分の気持ちに素直になれたね」
「・・・・・・?」
「私、知ってたよ。フランドールはずっと前からレミリアさんが好きなんだって。私よりずっとレミリアさんを必要としているって。そして、レミリアさんも・・・・・・だから、私は身を引くよ」
お姉様も私を必要としてる?そんなの初めて聞いた・・・
「こいし・・・・・・」
「そんな顔しないで」
「だって、これじゃあ・・・」
「いいの」
そう言うと、こいしは私を抱きしめた。
私も甘えるように、こいしにすがりつく。
「ごめん・・・ごめんなさい・・・」
「いいって、親友。そんなに謝らないで」
「でも・・・私の我侭で・・・。こいしもお姉様が好きなのに・・・」
「2人が両想いだって知りながら、惚れた私が悪いの。それに、親友にそんなに謝られても嬉しくないよ。でも、フランドールが素直になってくれたのが嬉しい。私、フランドールとレミリアさんを応援してるよ」
「・・・・・・こいし・・・・・・」
「さ、顔を上げて、親友」
「・・・うん・・・ありがとう、親友」
私はこいしの胸で涙を拭い、こいしの顔を見た。
その表情はとてもカッコよくて、優しくて・・・・・・まるで、お姉様みたいだった。
私は鼻をすすりながら、こいしに言った。
「・・・・・・あのね、こいし」
「ん?」
「・・・・・・その、この事、まだ、お姉様には・・・・・・」
「ああ、大丈夫。きちんと報告しておくね」
「・・・・・・ありがと、う?」
・・・・・・・・?
って、え?今なんつった?
報告しておくね、って言った?
涙が急速に収まってきた。こんな冷や汗、初めてだ。
聞き間違い?
豊国、報国、方谷、奉告、ホーコク・・・
・・・ああ、こいしの『ほうこく』は私の知ってる『ほうこく』と意味が違うんだね。きっと、そう。親友がそんな事言うはずないもん。
頭の中で無理やり納得させてみた。
「それじゃ、ちょっとレミリアの所に用事出来たから行くね」
「はっ?えっ?ちょ、ちょっと待って」
そそくさと、扉に向うこいしを止めるため、扉の前に先回りした。
扉を背に、大きく手と翼を広げ、ここは通さない、と意思表示する。
「す、少し待って。あ、あのーこいしは何の為にお姉様のとこに行くの?」
いやな予感しかしない・・・
こいしはカラカラと笑った。
「ん?だから、報告」
やっぱり、聞き間違いじゃなかった。
やべぇ、すごい汗の量だ・・・
「だから、なんの、報告!?」
「フランドールが私にレミリアをとられまいと必死に私を止めようとした事。頭が真っ白になって幼児退行しながら『お姉様をとらないで~』って叫んでた事くらいかな」
「くらいかなって、何言ってんの!!言っちゃ駄目に決まってるでしょ!!!」
「いやまあ、これも仕事だから」
仕事?こいつは本当に何を言ってるんだ?気が狂ってるんじゃないのか?
怒ってるよ、絶対こいし怒ってるんだ。
ガターン!!
「あううっ!!」
次の瞬間、私が背にしていた扉が勢いよく開いた。扉の開く勢いで、私は壁と扉に挟まれてしまった。
「報告の必要はないわ。扉の外で紅霧になって全部見てたから」
扉を開いた主の声は、聞きなれた声。私のお姉様ではないか。何故ここに来たのだろう。
いや、待て。そんなことは問題ではない。今なんと言った。
『全部見てた』だと?しかも霧になって、だと?
霧が見えていたのは朝起きたときからずっと。その時から私の部屋を覗いていたというのか!?そういうことなのか!?
しかし、ここまで来ても、状況がいまいち掴めない。一体どういう事なんだ・・・
「あ、レミリアさん」
「はい、これ。今回の報酬。また頼むわね」
「はい、助かります。また次も宜しくお願いします」
「ご苦労様」
「よし、これでまた服とか買おう。うふふ」
・・・・・・・・・。
扉の隙間を通して、私の目に飛び込んできた光の情報。これをまとめると、
・お姉様は現在、こいしに分厚い封筒を渡している
・こいしは、先ほど仕事とか言っていた
なるほどね、そういう事ね。
お姉様はこいしを買収していたと、そして一度や二度ではない、と。
全てのピースが今、合致した。ピース少ねぇ!
ギギギギギギギギギギギギギギギ・・・・・・
私を挟んでいる、扉を押し戻す。2人とも私に注目する。
「フラン!私も同じ気持ちよ!さあ、2人で愛し合いましょう!」
「よかったね~フランドール。応援してるよ!」
呆れたことに2人とも私の様子に気づいていない。
あはは。どうやら両者とも状況を理解していないんじゃないか?
「ありがとう、こいし、お姉様」
にっこりと微笑む私。
じりじりと、にじり寄る。
「そして、しねええええええええええええぇぇぇぇっっ!!」
2人とも、脱兎の如く部屋を飛び出ていった。
って、うっわあ!!!逃げるのはやぁっ!!!くっそう、油断した!!!
意地でも捕まえてぼこぼこにしてやるぅ!!!!!
□ □ □
───その日の夕刻。
ここは私の部屋。地下室。
現在、私は落ち着きを取り戻し、静かに読書をしている。
あの後、こいしは逃がしてしまったが、あいつは逃げる場所が紅魔館しかなく、私は気の済むまで、殴り続けた。
マウントポジションで顔面を殴り続けたその姿は、後に悪魔のようだ、と、言われたらしい。悪魔ですから。
それであいつは、顔が一時的に変形するほどの大怪我を負ったのだ。
なのに、
「ねぇ、フラン、ごめんなさい。少し行き過ぎてしまったわ。反省してる」
なのに、コイツと来たら、懲りずにまた、私の部屋に居るのだった。
馴れ馴れしく私の背中に、コアラの子供のようにくっついている。
「ねぇ、フラン、許して頂戴?貴女の気持ちが知りたかっただけなの」
「やだ。暑苦しいから離れて」
私の肩にあごを乗っけて、耳元に話しかけてくる。
だが、どんなに謝っても許してやらん。私がこいしの前で気持ちをさらけ出すのにどれだけ勇気を振り絞ったことか。
そんなわけで私はコイツを冷たく引き離す。それでコイツが傷つこうとも知った事ではない。
なのに、
「嫌、フランが許してくれるまで、絶っ対離さない」
なのに、どうしてこいつは私の事を諦めないのだろう。どうして私を・・・愛してくれるのだろう。
「・・・・・・。・・・じゃ、じゃあ、ずっとそうしていればいいさ!!!」
「・・・・・・・・・そうさせてもらうわ」
そう言って、お姉様は私の後頭部に頬ずりをし始めた。
・・・・・・身体が熱い。今日はいつもより蒸し暑いせいだな、きっと、たぶん。
「フラン、顔、真っ赤」
「う、うるさいっ!本に集中してるんだから邪魔しないでっ」
「・・・本、逆様よ?」
「!!! ば、ばかっ。あっちいけっ」あわてて直す。
「嫌、フランが許してくれるまで、絶っ対離さない」
・・・もう、絶っ対許してやらん。
マジで素晴らしかったです!!
良かったです そしてこいしちゃんはオレの(ry
レミフラちゅっちゅ
流れをぶった切って控えめにしとく。
最後の二行に集約されてますね。「許してくれるまで離さない」と言ってるのに「絶対許してやらん」とは。
レミフラちゅっちゅ
こいしはさとりんの元に向かったんですねわかります