※タイトルはシリアスっぽいですが、ギャグです。
「ねぇ、ちゅっちゅしない?」
「はぁ?」
今日の天気は快晴で、曇りなんて何一つない気持ちのいい日だ。お嬢様が不機嫌になるほどのお出かけ日和。こんな気持ちのいい日にはバスケットを持って野原へとピクニックしに行きたくなる。
そんな雲が何一つない綺麗な青空の日に、幽香さんが突然紅魔館に訪問してきたのだ。『一緒にお茶しない?貴方と私だけで』という私目的でわざわざここへと訪れたらしい。
幽香さん曰く『こんな天気のいい日にはどこかお出かけしたくなるでしょ?』とのことで。幽香さんもお嬢様と並ぶくらい気まぐれなんだろうなーとこの時実感した。『それから外でお茶をするよりも貴方の部屋でしたいわ』とも言っていたので仕方なく私の部屋へと幽香さんを招き入れる。
これから先使うことはないだろうなぁと思って、部屋の隅っこに放置していた小さなテーブルを窓の近くに移動させ、違う部屋から椅子を二つ持ってきて一つを幽香さんに座らせる。その幽香さんの反対側に私も用意していた椅子に腰掛ける。それからテーブルの上にレースがたくさんついた咲夜さんお手製のテーブルクロスをつけた後、幽香さんが用意していたティーセットをテーブル上に広げる。
そうして準備が終わると幽香さんから他愛もない話題を持ちかけられた。『私があげた種、ちゃんと育ててる?』とか『あそこの庭においてある植木鉢、あれ凄く育ちにくいのよ。特に環境とかが大切なの』などなど。
そんな談笑をしながら紅茶を飲み、ほわほわした雰囲気が流れ出たところで、この幽香さんの発言。唐突すぎて、意味がわからなかった。
「だから、ちゅっちゅしましょうって言ってるのよ」
「いやだから意味分かりませんってば。何で花の話からそんな不潔な話になったんですか」
「そんなことはどうでもいいの、とにかくちゅっちゅしましょ」
「どうでもよくないですし!私にとっては凄く重要なことなんですけどっ!?」
「いいからいいから」
「よくないですってばっ!ちょ、ま、顔を近づけないでぇぇぇ!」
指を絡めながら幽香さんの顔がどんどん近づいてくる。後ずさろうにも後ろには壁があって出来ないし、だんだん幽香さんの顔は近づいてくる。
あと一歩、二歩、三歩というところで『ちょっとまったぁぁぁああ!!』という大声と共に扉が何者かによって勢いよく開き、出てきた人物は紅魔館の誰もが知っている人だった。
その人物を見て、幽香さんは大きく『ちっ』と舌打ちをする。
「美鈴は渡さないわよ!美鈴の全ては私のものなんだから!」
「さくやさ・・・・ぇ?」
よかった、助かったぁ、と胸を撫で下ろしていたら咲夜さん、貴方もですか。貴方も幽香さんと同じなんですか。
貴方も幽香さんと同じく私に不埒なことさせる気だったんですか。
今度から咲夜さんか幽香さんと二人っきりの時はなるべく二人に近づかないようにしよう、うん、そうしよう。と心に誓う美鈴であった。
「美鈴は私のものだから、ちゅっちゅも私が先よ!」
「えぇー!?」
何ですかそのジャイアニズム、聞いたことありませんしっ!と嘆きたくなってきた美鈴であった。
「なら中間をとって二人で美鈴にちゅっちゅ、というのはどうかしら?」
「あ、それならいいわよ」
「えぇぇぇ!?それでいいんですか咲夜さんっ!?」
「ええ」
と、あっさり頷く咲夜さん。
もう駄目だ、色々と。誰か私を助けてくれないかな。
「じゃ、一致団結ということで早速二人でちゅっちゅしましょう美鈴に」
「そうね」
くるりとこちらに顔を戻すと、二人共終始顔がにやけていた。それでいて手をわきわきさせながら、じりじりと近づいてきて結構怖い。
前にも言ったようだが後ろには壁、私の逃げ道はない。本当にもう駄目だ、と思った瞬間に私と迫る咲夜さんの間にグングニルが。
「待ちなさい変態パーフェクトメイドと変態フラワーマスター!美鈴にちゅっちゅするのはこの私達よ!」
「そうよ!めーりんを返しなさい!」
と、ドアを蹴破って登場するのはスカーレット姉妹。いい加減ドアが可哀想に見えてきた。
そんなお嬢様方を見て溜め息を吐く幽香さんと咲夜さん。
「はいはい、少なくとも私は変態フラワーマスターではないわよ。隣のメイドは完璧で変態なメイドであってるけど」
「私は変態メイドであってるけど隣は変態フラワーマスターよ。ここ、テストに出るから覚えておきなさい」
と、二人の食い違った意見に呆れながらもお嬢様は言葉を続ける。
「そんなことはどうでもいいからともかく美鈴を渡しなさいよ。そもそも幽香、貴女は紅魔館とは関係ないでしょう。自分の星に帰りなさいよ自分の星に。自分の星に帰って農作物でも作ってなさいよこののうかりん。
それに咲夜、貴女もよ。いっつもいっつも私達を抜け駆けして美鈴の所に行って・・・・私達がどんな思いで指を咥えて部屋から見てると思ってるのよ。私達だって美鈴の所に行きたいのよ。咲夜一人で行くなんてずるいのよ。大体貴女達は・・・・・」
「! お姉様危ない!」
悪戯をした子供を叱る親のように熱弁していたお嬢様を妹様が突き飛ばすとお嬢様の居た場所には数本のナイフとマスタースパークの焼け跡が。
「黙って聞いてればごちゃごちゃと・・・・最初から貴女達に美鈴をあげる資格なんてないのよ」
「そうね、激しく幽香に同意するわ。
そうですよ、お嬢様と妹様のお二方には美鈴は相応しくなんかないですわ。私達にこそが美鈴に相応しいのです。お嬢様はお嬢様らしくうーうー言って妹様はプリン食べててくださいよ」
「あ、じゃあ私咲夜の言うとおりプリン食べてくるねお姉様。咲夜ー、プリンどこにおいてあるー?」
「冷蔵庫の中ですよ妹様。お嬢様の分も食べちゃってもいいです」
「わーい、んじゃお姉様の分も食べてくる~」
「ちょ、ふらぁぁぁぁぁぁん!?」
ばいばーいと手を可愛らしく振り、軽やかに去っていく妹様。お嬢様の叫び声は月まで届いたが、妹様にまでは届かなかったらしい。
お嬢様は妹様に裏切られた事に隠しきれずショックを受けていたが、すぐに開き直って『・・・・フランがプリン食べるなら私も食べるもん!待ってよフラン!』といって妹様の後を追い駆けていった。
それを、少しだけ複雑な心境だったけれど暖かく見届け、もう見えなくなった辺りで『・・・・・邪魔者は消えたわ幽香』と咲夜さんが言った直後に幽香さんに後ろを取られ、羽交い絞めにされた。
一瞬の出来事にびっくりして眼を白黒させていたが、この状況は凄く不味いと思った。何故なら、身動きが取れないから。身動きが取れないと逃げられない、だからこの状況は凄く不味い。
羽交い絞めをしてきた相手が咲夜さんだったら良かったのに、相手は幽香さんだから振り解くことが出来ない。出来たとしてもきっと、今度は植物で拘束される。
どうしよう、どうしようとか考えていたら咲夜さんの顔がぁぁぁぁ!近いっ!近いよ咲夜さん!近すぎるよっ!?幽香さんも『ふふふ、これで身動きとれないでしょう?』とか我に勝利ありみたいな顔しないでくださいよぉぉ!吐息が、吐息がぁぁぁぁぁ!
「それじゃさっきの続き、しましょうか美鈴」
「いやだあぁぁぁぁ!!!」
私の叫び声が、虚しく空へと鳴り響いた。
話自体は面白かった。GJ!
自覚あったんかいwwwww
ちゅっちゅは素晴らしいもの!!