※捏造設定だらけです。
※キャラクターもおかしいです
それでも大丈夫という優しい方はどうぞ。
ついうっかり覚りを拾ってしまった。
頭上を覆う灰色の雲をうんざりと見上げる。
左手に持つ傘が重い。雨は叩きつけるように降り注いでいる。
地底にも梅雨がきた。豊富な地下水が灼熱地獄の熱で温められ、ときおり大量に雨を降らすことがある。
じめじめとした天気はどうしても気分を憂鬱にさせる。唐風の閻魔服の中が汗で蒸す感覚も気持ち悪い。
仕事に疲れていた。
慣れない獄吏研修で身も心もくたくただった私は動かない身を引きずるようにして冥官専用の寮に帰ってきた。
髪からも服からも体からも染みついた血と硫黄の匂いがする。ほとんど麻痺しかかった私の鼻にはわずかしか感じられないが、きっと周囲にはむせ返るほどたちこめているだろう。
案の定、見知らぬ住人がすれ違い様ハンカチで鼻を覆っていた。気持ちはわかるがそう露骨に毛嫌いしなくてもいいだろうに。
同じ地獄の仲間じゃないのか。畜生。
心のなかで毒づきながら自分の玄関前にたどり着く。鞄から鍵を取り出そうと探すが、中々見つからない。こういう物は焦っている時ほど見つからないものだ。
ようやく奥底に埋まっていたのを引っ張り出して、鍵穴に差し込みひねろうとしたとき、視界の隅に、見慣れないものが入った。
なんだろう。
雨に打たれて、なに黒ずんだものがある。
いや、動物がうずくまっているようにも見える。
動物のようなものはぴくりと動いて白い腕が見えた。どうやら妖怪か何かであるらしい。
是非曲直庁の新任閻魔専用寮は、普通の地底の妖怪の住む場所からは遠く離れて建てられている。
しかもその性質上妖怪たちが好き好んでくるような場所ではない。
では、あそこにぐったりと倒れているのはなにかやむを得ない理由でここまで来た妖怪ということになる。
それも見るからにやつれ、誰かの助けを必要としている状態だ。
私は考えた。正直面倒事には関わりたくない。それに今は身も心も疲れきっている。
私はたっぷり考えた。
考えた末、止まったままだった動作を再開して鍵を開けた。
家の明かりをつけて風呂をわかす。
ふたり分の着替えを準備したところで、私は表の妖怪を助けに再び家を出た。
我ながらお人好しだと思う。
小さな妖怪少女の体は冷え切っていた。幸い目立つ怪我は無かったので、水を含んで肌に吸い付いた服を脱がせて、有無を言わさずお風呂に入れた。妖怪少女は抵抗する力も無いようで、されるがままだった。途中、体から数本伸びた管と、それにつながる眼球部で覚り妖怪だとわかった。
まだとても幼い。背も低く、抱えると驚くほど軽かった。
ちょうどいいので覚り少女と一緒に風呂に入ることにした。湯船に浸かっていることをきちんと確認してから自分も服を脱ぐ。風呂場の空気がまだ冷たかったのでお湯をたっぷりと流して温めた。灼熱地獄が近いおかげで熱だけは豊富にある。
覚り少女の体も赤みを取り戻してきた。疲れきっていたのだろう、うつらうつらして目は今にも閉じそうだ。しかし第三の眼だけはゆるむことなくこちらを見つめていた。
改めて見ると、少女の幼い身体は華奢だった。肉というものが殆どなく全身から骨が浮き出ている。ろくなものを食べていないのは明らかだった。もしこの子が地獄の外れでうずくまり眼をつぶっていたら餓死者と見分けるのは難しいだろう。背は私の腰の上辺りまでしかなくて、本当に幼いのだと分かる。少女というより幼女だ。体中から弱々しい壊れ物のような気配を漂わせていた。
体を洗ってあげようと思って、はたと困った。彼女をどう呼べばいいのかわからない。名前を尋ねてみたが返事はなかった。きっとまだ口をきけるほどの力が無いのだろう。仕方ない。当座でいいから呼び名が欲しかった。始めは彼女の紫色のクセッ毛からゆかりとでも呼ぼうかと思ったが嫌な知り合いを思い出すのでやめた。いろいろ悩んだ末結局そのまま「さとり」と呼ぶことにした。
「さとりちゃん、体を洗いたいのだけど、いいですか?」
少女はコクンと頷いた。この家につれてきて初めての反応らしい反応だった。
全身を洗い、風呂で温めるとさとりの体はいくらか健康的な色を取り戻した。
困ったのは服だった。一人暮らしだから余分な子供用の服など持ってないし、そもそも私はあまり服にこだわらない。大きさは合わないが私の普段着で我慢してもらうしかなかった。
身なりを整えると、さとりはなかなかの美少女だった。今は痩せこけているが、きちんと食事をとればもっと可愛らしくなるだろう。
蜂蜜入りの紅茶を与えると、さとりは特に嫌がることもなくそれを飲み始めた。もっと警戒するかと思ったが、そもそも心を読めるさとりに警戒など無用なのかも知れない。ちびちびと紅茶を飲むさとりを眺めながら、私はこれからのことを考えた。
こんな地獄の外れで倒れていたのだから、他に頼れるものなどいないのだろう。当面はこの子の面倒を見なければなるまい。この時すでに私はさとりを一人で生きていける目処がつくまでは放り出さないつもりでいた。理由はよくわからない。理屈ではない、何か直感的な部分でさとりに惹かれたのだ。だが後で振り返ると、このとき本当に助けて良かったと思う。
さしあたっては、服、食料、日用品に薬も必要だ。
幸い休暇はたっぷりある。研修中は二八日働いたあと同じだけ休みが取れることになっている。さらに今度の休みは一日増えていた。閏月に感謝だ。
研修前に保存のきかないものは全て処分していたので、家には食料と呼べる物がなかった。食欲よりも睡眠欲を満たすことで頭がいっぱいで、買出しは次の日にしようと考えていたのだ。地獄の繁華街ならまだ空いている店もあるだろうがそこまで行くには疲れきっている今の私には骨だ。ただ飛んで行くのではなくて弾幕戦を必ず覚悟しなければならない。地底の住人は、手強くしつこい。
どうしようかと悩んでいたら、小さな寝息が聞こえてきた。見ると、さとりが机にもたれかかって眠っている。
疲れていたのだろう。私は食べ物よりも先に休ませてあげることにした。半分も飲み干せてない紅茶を片付け、布団を敷く。一人分しか無いのでさとりとともに寝るしか無かった。無駄を好まない私の性格が、その日は災いしてばかりだった。
灯りを消し、さとりをだき抱えて布団をかぶるとすぐに私にも睡魔が襲ってきた。静かな夜だった。繁華街の喧騒もここまでは届かない。鍾乳洞を抜ける風の音だけが、海鳴りのように響いていた。
すっきりと目が覚めた。
さとりはまだ寝ている。私は先に起きて身支度を整えた。顔を洗い服を着替える。
一杯だけ水を飲んで、すぐに出かける準備をした。外は、昨日の雨が嘘のように晴れていて外出日和だ。
さとりは一緒に連れて行くか迷ったが、ぐっすりと眠る様子を見て、好きなだけ寝かせることにした。去り際に、ちょっと考えて、『出かけてきます』と書きおいた。
地底の繁華街は賑わっている。喧嘩と笑い声の耐えない街。どこを向いても、地底とは思えないほど華やかで騒がしい。鬼が仕切っているここは、妖怪たちにとっては楽園だろう。
必要なものを買い揃えるのに意外と時間がかかった。日ごろ必要最低限の行動しかしてないためだろう。しかたない。まさか突然覚りの子供を拾うなんておもわないだろう。考えてみれば自分もずいぶん簡単に、まるで犬猫でも拾うように覚りを家に招いてしまったと思う。
子供なんて育てたことも無いのに、これから大丈夫だろうか。
さとりは私が帰ると一人で静かに部屋の壁を眺めていた。それは本当に絵のような静けさで、まるで起きてからずっとそのままの姿勢だったのじゃないかと錯覚させた。さとりがいるだけで部屋の中は不思議な静謐さに守られるような気がした。
「ただいま」
声をかけるとさとりはこちらを向いた。返事はない。しかしその瞳はきちんと私の姿を映している。
とりあえず買ってきた子供服に、さとりを着替させることにした。手伝おうとしたら自分でかってに着始めたので、そのまま任せることにする。さとりも昨日よりは少し元気が出てきたらしい。
久方ぶりにエプロンを取り出しつつ、私は尋ねた。
「さとりちゃん、何か食べたいものありますか?」
ぽやん、とした瞳が私を見上げる。
相変わらず返事はないので適当に作ることにした。
さとりはよく食べた。その小さい体のどこに入るのかと思うほどよく食べた。さとりは幼い体なのにどこか子供らしくないところがあって、実際の年齢をわかりにくくさせていたが、料理を目の前にするとあっという間に子供の顔になった。私の作る、お世辞にも上手とは言えない料理を、眼を輝かせて食べてくれた。
作る料理を次々と平らげてくれるその光景には一種感動すら覚えた。もちろんそれだけお腹がすいていたのだとも思ったが、誰かのために料理をつくるという経験の無かった私にとってそれはとても嬉しい光景で、ついつい自分の分もあげてしまった。
私は安心もした。正直、食事を食べてくれないことを一番恐れていたのだ。食べたがらない子に無理にでも栄養をとらせることほど、大変なことはない。
唯一難点として、さとりは箸が使えず食べるときは全て手づかみだったが、それはまあこれからおいおい教えていけばいいだろう。
最後に私の作ったケーキを(これもあまりよい見た目ではない)きれいに残さず胃におさめると、さとりは満足そうに息を漏らした。
食器を片付け、食後のお茶を煎れて私が戻ってくると、さとりはもう寝息を立てていた。行儀が悪い、マナーがなっていない。もし私がこの子の母親だったらそう言って叱ったかも知れない。しかし私はそれをしなかった。さとりが疲れているであろうことはよくわかっていたし、それを言うのがためらわれるほど、幼いこの覚り妖怪の寝顔は可愛かったからだ。
さとりの気ままな性格が伝染したのか、私もねむーくなってきた。私はめったに昼寝をしない。しても、一五分と決めて寝る。だが、今日はなんとなく、このままだらだらとさとりと一緒にお昼寝をしてもいいような気がした。
布団をしいて、さとりをお姫様抱っこで抱え寝かせてあげると、私もその隣に寝転がった。
さとりを抱えるようにして丸くなる。幼子はくうくうと寝息を立てている。
「……おやすみなさい、さとりちゃん」
そうして私も目をつぶった。
寝すぎた。
目覚めるともう夕方だった。いや、地底に夕方はないが、地上で言うそんな時間だった。むくりと体を起こす。頭がまだぼんやりする。さとりはと見ると相変わらずよく寝ていた。布団をかけ直してやる。
胸から腹の辺りに温かみが残っていた。人肌の温もりをそばに感じて眠るのはずいぶんと久しぶりのことだった。二人で寝た布団からは、遠い遠い甘い思い出のにおいがする。
「夕飯つくらないと」
起きて台所に向かった。
「んー」
さとりが眠そうに眼をこすりながらでてきた。私の野菜を刻む音で目を覚ましたらしい。しかし、さとりが寝ぼけ眼で半目になっているのに胸の瞳がギンギンに覚醒しているのはちょっと不気味だった。
「おはよう、さとりちゃん」
さとりはぼんやりとした顔を上げる。
「おはよう」
危うく包丁を取り落とすところだった。
「しゃべれるようになったの」
勢い込んで訊くと、さとりはぺこりとあたまを下げる。
「おかげさまで、元気になりました」
それから恥ずかしそうに付け加えた。
「ありがとう、ございました」
「それは、別にいいですけど」
膝を折って目線をさとりに合わせる。
「そう、元気になったのですか、よかった」
思わず笑顔になった。
さとりは私の笑顔を見ると、急にもじもじしだして視線をさまよわせる。顔を赤くして、恥ずかしそうにうつむいていく。
さとりのその反応はよくわからなかったが、私は先に気になっていたことを質問することにした。
「あなたはどうして私の家の近くで倒れていたんですか? あなたはどこの誰なのでしょう?」
さとりはつっかえつっかえ言葉を紡ぐ。寮の近くで倒れていたのは偶然らしい。何日もなにも食べずに放浪中の妹を探しているうちに力尽きたのだそうだ。
自分がどこの誰かと言う質問については、答えられなかった。
「どこの誰かわからないの? 名前は?」
沈黙。
「お父さんやお母さんは?」
沈黙。
空気が重くなったので話題を変えた。
「探している妹ちゃんは、見つかりそうだったの?」
さとりは首を振る。
地雷だった。
私がなんと言葉をかけようか探すうちに、今度はさとりが質問してきた。
「あの、わからないんだけど」
「はい」
「どうしてわたしを助けてくれたの?」
難しい質問だった。私はしばらく考え、そのまま答えた。
「なんとなく、ですかね」
「なんとなく?」
さとりは驚いたようだった。
「だってあなた、私の心が見えるのならわかっているはずでしょう」
「いや、そうだけど、いくら読んでもちゃんとした理由がわからなくて訊いてみたの。そしたら本当になんとなくなの?」
「ええ」
「なんで? わからない」
「べつに理由なんてたいした意味はありませんよ。いうなれば、さとりちゃんが私の家の前に倒れていたから、ですかね」
さとりは混乱しているようだった。私は彼女に尋ねる。
「じゃあ、とにかくさとりちゃんは、妹を探してこんなところまで来ちゃったわけですね」
コクンとうなずく。
「私としては、さとりちゃんが満足するまでか、きちんと一人で生きていけるまで、ここで一緒に暮らしてもいいと思っているのだけど、どうでしょう?」
さとりは戸惑っていた。
「なんで、そんな親切にしてくれるの」
「さっきも言ったとおり、特に理由はありませんが」
「うそよ」
「うそ、ついていますか?」
沈黙。第三の目が私を見つめる。
「……ううん」
「じゃあ、いいじゃないですか」
「…………本当に、ここにいてもいいの」
「ええ、好きなだけどうぞ」
さとりはなおも迷うようにもじもじしていたが、やがてあたまを縦に振った。
「わかった」
続けて。
「ありがとう」
「気にしないでください」
最後にもう一つ質問があった。
「さとりちゃん、食べたいものありますか?」
「………ハンバーグ」
さとりは洋食派らしかった。
金属と木がぶつかる音がする。
「……あっ」
床に落ちたスプーンは、カラカラと軽い音をたてる。
これで三度目だ。
さとりに行儀とマナーを教えることを、私は早速始めていた。
といってもいきなり厳しくはせず、まずは食べる前に手を洗うことと、スプーンとフォークを使うことから始めてみた。
しかしこれがなかなか難しいらしい。どうやらさとりは今まで一度も食器をつかうと言う生活をしたことが無いらしかった。顔立ちも纏う雰囲気も上品なのに、育ちは粗野らしい。さとりはスプーンを持って食べることにもなかなか慣れなかった。さとりの小さな手に大きいスプーンが余っているのもある。
どうしたものかと考えた。
「……困りましたね」
スプーンを持つさとりの手に、そっと自分の手を添えてみた。スプーンを一緒に持つ。
「あーん」
さとりが首を傾げる。
「あーーーん」
口を開けて、そうイメージで伝えると、さとりもわかってくれたらしかった。
「……ぁーん」
小さな唇に一口大に切ったハンバーグを入れる。
「んむ」
「どうですか?」
さとりは嬉しそうに頬張って、
「おいしい」
と言ってくれた。
「それはよかった。今のイメージで今度は一人でやってみてください」
「あーん」
「…………」
「あーーん」
「いや、だからねさとりちゃん、今度は自分で」
「あーーーーん」
「…………」
仕方なく、もう一度スプーンで掬ってやる。
「はい、あーん、これで最後ですよ」
しかしそのおかずを美味しそうに食べた後、さとりはまたも。
「あーーん」
「…………」
結局その日はさとりに全部食べさせてあげることになった。
夕食のあとはさとりと一緒にお風呂に入った。
「目をつむって」
「ん」
わしゃわしゃ。
「流しますよ。耳を押さえて」
ザバー―ッ。
「はい、それじゃあ先にお湯に入っていてください」
「うん」
洗い終わったさとりの髪をタオルでまとめて、浴槽に向けて送り出す。
さとりは湯船につかると気持ちよさそうにした。それを見ながら、私も自分の体を洗う。
「さとりちゃんの妹はどんな子なんですか?」
さとりはなにかを思い出すように宙を見る。
「とても、やさしい子です」
「やさしい子」
「うん」
お風呂場に湯気が白く立ち込めている。
「だれにでもやさしいの、それで、だれにも嫌われたくなくて、でもわたしたちには、『眼』があるからいっつも嫌われて。それで、いっつもどこかに逃げちゃうの」
だから、お姉ちゃんのわたしがいつも探してあげるの。さとりはそう言った。
「わたしたちの眼を見て、嫌わなかったのしきさまが初めて」
「きれいな眼ですよ。私は好きです」
体を流して湯船に浸かる。
「妹ちゃんが好きなんですね」
「うん、大好き。この世で一番大事だもの」
「いつもすぐに見つけられるんですか」
「わたしは、あの子のお姉ちゃんだから。なんとなく行きたいところとか、わかるし」
「早く、見つかるといいですね」
「うん」
「もう少し元気になったら、いっしょに探しに行きましょう」
「しきさま、一緒に探してくれる?」
「ええ、もちろん」
「ありがとう、ございます」
「気にしないで。さあ、のぼせる前に出ましょうか」
「うん」
髪を乾かしたり、紅茶を飲んだりしてだらだら過ごしていると、あっという間にさとりを寝かせる時間になった。
布団を敷き、パジャマに着替えさせ、歯磨きをする。
小さな布団からはみ出さないように、身を寄せ合って一緒に横になった。
「ん……ねむれないですか?」
「うん……」
しかし、さとりはなかなか寝つかなかった。
明らかに昼間寝すぎたせいだろう。
困った。
どうすればさとりは寝てくれるだろうか。
「うん、そうだ」
私はさとりの方を向く。
「なにか、お話でもしましょうか」
「うん、聞きたい」
「そうですか? じゃあ――」
といっても、すぐに思いつく童話もない。
これからは絵本も買ってこないといけないかも知れない。
いろいろ頭の中を探って、一番話しやすい話をすることにした。
「それじゃあ…………、むかーしむかしあるところに、お地蔵さまがいました」
昔見た人間の母親を真似て、声を出す。
「そのお地蔵さまはちょっと変わっていて、ほかに六体の兄弟がいました。けれど、そのお地蔵様には笠がありませんでした」
「……………………………………こうして、お爺さんとお婆さんは、お地蔵様の贈り物でたのしくお正月を迎えることができました。めでたしめでたし」
話を終えると、隣から寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃいましたか」
やわらかな、あどけない寝顔がそばにある。
「おやすみ、さとり」
その安らかな寝顔に安心しながら、私も静かに目を閉じた。
※キャラクターもおかしいです
それでも大丈夫という優しい方はどうぞ。
ついうっかり覚りを拾ってしまった。
頭上を覆う灰色の雲をうんざりと見上げる。
左手に持つ傘が重い。雨は叩きつけるように降り注いでいる。
地底にも梅雨がきた。豊富な地下水が灼熱地獄の熱で温められ、ときおり大量に雨を降らすことがある。
じめじめとした天気はどうしても気分を憂鬱にさせる。唐風の閻魔服の中が汗で蒸す感覚も気持ち悪い。
仕事に疲れていた。
慣れない獄吏研修で身も心もくたくただった私は動かない身を引きずるようにして冥官専用の寮に帰ってきた。
髪からも服からも体からも染みついた血と硫黄の匂いがする。ほとんど麻痺しかかった私の鼻にはわずかしか感じられないが、きっと周囲にはむせ返るほどたちこめているだろう。
案の定、見知らぬ住人がすれ違い様ハンカチで鼻を覆っていた。気持ちはわかるがそう露骨に毛嫌いしなくてもいいだろうに。
同じ地獄の仲間じゃないのか。畜生。
心のなかで毒づきながら自分の玄関前にたどり着く。鞄から鍵を取り出そうと探すが、中々見つからない。こういう物は焦っている時ほど見つからないものだ。
ようやく奥底に埋まっていたのを引っ張り出して、鍵穴に差し込みひねろうとしたとき、視界の隅に、見慣れないものが入った。
なんだろう。
雨に打たれて、なに黒ずんだものがある。
いや、動物がうずくまっているようにも見える。
動物のようなものはぴくりと動いて白い腕が見えた。どうやら妖怪か何かであるらしい。
是非曲直庁の新任閻魔専用寮は、普通の地底の妖怪の住む場所からは遠く離れて建てられている。
しかもその性質上妖怪たちが好き好んでくるような場所ではない。
では、あそこにぐったりと倒れているのはなにかやむを得ない理由でここまで来た妖怪ということになる。
それも見るからにやつれ、誰かの助けを必要としている状態だ。
私は考えた。正直面倒事には関わりたくない。それに今は身も心も疲れきっている。
私はたっぷり考えた。
考えた末、止まったままだった動作を再開して鍵を開けた。
家の明かりをつけて風呂をわかす。
ふたり分の着替えを準備したところで、私は表の妖怪を助けに再び家を出た。
我ながらお人好しだと思う。
小さな妖怪少女の体は冷え切っていた。幸い目立つ怪我は無かったので、水を含んで肌に吸い付いた服を脱がせて、有無を言わさずお風呂に入れた。妖怪少女は抵抗する力も無いようで、されるがままだった。途中、体から数本伸びた管と、それにつながる眼球部で覚り妖怪だとわかった。
まだとても幼い。背も低く、抱えると驚くほど軽かった。
ちょうどいいので覚り少女と一緒に風呂に入ることにした。湯船に浸かっていることをきちんと確認してから自分も服を脱ぐ。風呂場の空気がまだ冷たかったのでお湯をたっぷりと流して温めた。灼熱地獄が近いおかげで熱だけは豊富にある。
覚り少女の体も赤みを取り戻してきた。疲れきっていたのだろう、うつらうつらして目は今にも閉じそうだ。しかし第三の眼だけはゆるむことなくこちらを見つめていた。
改めて見ると、少女の幼い身体は華奢だった。肉というものが殆どなく全身から骨が浮き出ている。ろくなものを食べていないのは明らかだった。もしこの子が地獄の外れでうずくまり眼をつぶっていたら餓死者と見分けるのは難しいだろう。背は私の腰の上辺りまでしかなくて、本当に幼いのだと分かる。少女というより幼女だ。体中から弱々しい壊れ物のような気配を漂わせていた。
体を洗ってあげようと思って、はたと困った。彼女をどう呼べばいいのかわからない。名前を尋ねてみたが返事はなかった。きっとまだ口をきけるほどの力が無いのだろう。仕方ない。当座でいいから呼び名が欲しかった。始めは彼女の紫色のクセッ毛からゆかりとでも呼ぼうかと思ったが嫌な知り合いを思い出すのでやめた。いろいろ悩んだ末結局そのまま「さとり」と呼ぶことにした。
「さとりちゃん、体を洗いたいのだけど、いいですか?」
少女はコクンと頷いた。この家につれてきて初めての反応らしい反応だった。
全身を洗い、風呂で温めるとさとりの体はいくらか健康的な色を取り戻した。
困ったのは服だった。一人暮らしだから余分な子供用の服など持ってないし、そもそも私はあまり服にこだわらない。大きさは合わないが私の普段着で我慢してもらうしかなかった。
身なりを整えると、さとりはなかなかの美少女だった。今は痩せこけているが、きちんと食事をとればもっと可愛らしくなるだろう。
蜂蜜入りの紅茶を与えると、さとりは特に嫌がることもなくそれを飲み始めた。もっと警戒するかと思ったが、そもそも心を読めるさとりに警戒など無用なのかも知れない。ちびちびと紅茶を飲むさとりを眺めながら、私はこれからのことを考えた。
こんな地獄の外れで倒れていたのだから、他に頼れるものなどいないのだろう。当面はこの子の面倒を見なければなるまい。この時すでに私はさとりを一人で生きていける目処がつくまでは放り出さないつもりでいた。理由はよくわからない。理屈ではない、何か直感的な部分でさとりに惹かれたのだ。だが後で振り返ると、このとき本当に助けて良かったと思う。
さしあたっては、服、食料、日用品に薬も必要だ。
幸い休暇はたっぷりある。研修中は二八日働いたあと同じだけ休みが取れることになっている。さらに今度の休みは一日増えていた。閏月に感謝だ。
研修前に保存のきかないものは全て処分していたので、家には食料と呼べる物がなかった。食欲よりも睡眠欲を満たすことで頭がいっぱいで、買出しは次の日にしようと考えていたのだ。地獄の繁華街ならまだ空いている店もあるだろうがそこまで行くには疲れきっている今の私には骨だ。ただ飛んで行くのではなくて弾幕戦を必ず覚悟しなければならない。地底の住人は、手強くしつこい。
どうしようかと悩んでいたら、小さな寝息が聞こえてきた。見ると、さとりが机にもたれかかって眠っている。
疲れていたのだろう。私は食べ物よりも先に休ませてあげることにした。半分も飲み干せてない紅茶を片付け、布団を敷く。一人分しか無いのでさとりとともに寝るしか無かった。無駄を好まない私の性格が、その日は災いしてばかりだった。
灯りを消し、さとりをだき抱えて布団をかぶるとすぐに私にも睡魔が襲ってきた。静かな夜だった。繁華街の喧騒もここまでは届かない。鍾乳洞を抜ける風の音だけが、海鳴りのように響いていた。
すっきりと目が覚めた。
さとりはまだ寝ている。私は先に起きて身支度を整えた。顔を洗い服を着替える。
一杯だけ水を飲んで、すぐに出かける準備をした。外は、昨日の雨が嘘のように晴れていて外出日和だ。
さとりは一緒に連れて行くか迷ったが、ぐっすりと眠る様子を見て、好きなだけ寝かせることにした。去り際に、ちょっと考えて、『出かけてきます』と書きおいた。
地底の繁華街は賑わっている。喧嘩と笑い声の耐えない街。どこを向いても、地底とは思えないほど華やかで騒がしい。鬼が仕切っているここは、妖怪たちにとっては楽園だろう。
必要なものを買い揃えるのに意外と時間がかかった。日ごろ必要最低限の行動しかしてないためだろう。しかたない。まさか突然覚りの子供を拾うなんておもわないだろう。考えてみれば自分もずいぶん簡単に、まるで犬猫でも拾うように覚りを家に招いてしまったと思う。
子供なんて育てたことも無いのに、これから大丈夫だろうか。
さとりは私が帰ると一人で静かに部屋の壁を眺めていた。それは本当に絵のような静けさで、まるで起きてからずっとそのままの姿勢だったのじゃないかと錯覚させた。さとりがいるだけで部屋の中は不思議な静謐さに守られるような気がした。
「ただいま」
声をかけるとさとりはこちらを向いた。返事はない。しかしその瞳はきちんと私の姿を映している。
とりあえず買ってきた子供服に、さとりを着替させることにした。手伝おうとしたら自分でかってに着始めたので、そのまま任せることにする。さとりも昨日よりは少し元気が出てきたらしい。
久方ぶりにエプロンを取り出しつつ、私は尋ねた。
「さとりちゃん、何か食べたいものありますか?」
ぽやん、とした瞳が私を見上げる。
相変わらず返事はないので適当に作ることにした。
さとりはよく食べた。その小さい体のどこに入るのかと思うほどよく食べた。さとりは幼い体なのにどこか子供らしくないところがあって、実際の年齢をわかりにくくさせていたが、料理を目の前にするとあっという間に子供の顔になった。私の作る、お世辞にも上手とは言えない料理を、眼を輝かせて食べてくれた。
作る料理を次々と平らげてくれるその光景には一種感動すら覚えた。もちろんそれだけお腹がすいていたのだとも思ったが、誰かのために料理をつくるという経験の無かった私にとってそれはとても嬉しい光景で、ついつい自分の分もあげてしまった。
私は安心もした。正直、食事を食べてくれないことを一番恐れていたのだ。食べたがらない子に無理にでも栄養をとらせることほど、大変なことはない。
唯一難点として、さとりは箸が使えず食べるときは全て手づかみだったが、それはまあこれからおいおい教えていけばいいだろう。
最後に私の作ったケーキを(これもあまりよい見た目ではない)きれいに残さず胃におさめると、さとりは満足そうに息を漏らした。
食器を片付け、食後のお茶を煎れて私が戻ってくると、さとりはもう寝息を立てていた。行儀が悪い、マナーがなっていない。もし私がこの子の母親だったらそう言って叱ったかも知れない。しかし私はそれをしなかった。さとりが疲れているであろうことはよくわかっていたし、それを言うのがためらわれるほど、幼いこの覚り妖怪の寝顔は可愛かったからだ。
さとりの気ままな性格が伝染したのか、私もねむーくなってきた。私はめったに昼寝をしない。しても、一五分と決めて寝る。だが、今日はなんとなく、このままだらだらとさとりと一緒にお昼寝をしてもいいような気がした。
布団をしいて、さとりをお姫様抱っこで抱え寝かせてあげると、私もその隣に寝転がった。
さとりを抱えるようにして丸くなる。幼子はくうくうと寝息を立てている。
「……おやすみなさい、さとりちゃん」
そうして私も目をつぶった。
寝すぎた。
目覚めるともう夕方だった。いや、地底に夕方はないが、地上で言うそんな時間だった。むくりと体を起こす。頭がまだぼんやりする。さとりはと見ると相変わらずよく寝ていた。布団をかけ直してやる。
胸から腹の辺りに温かみが残っていた。人肌の温もりをそばに感じて眠るのはずいぶんと久しぶりのことだった。二人で寝た布団からは、遠い遠い甘い思い出のにおいがする。
「夕飯つくらないと」
起きて台所に向かった。
「んー」
さとりが眠そうに眼をこすりながらでてきた。私の野菜を刻む音で目を覚ましたらしい。しかし、さとりが寝ぼけ眼で半目になっているのに胸の瞳がギンギンに覚醒しているのはちょっと不気味だった。
「おはよう、さとりちゃん」
さとりはぼんやりとした顔を上げる。
「おはよう」
危うく包丁を取り落とすところだった。
「しゃべれるようになったの」
勢い込んで訊くと、さとりはぺこりとあたまを下げる。
「おかげさまで、元気になりました」
それから恥ずかしそうに付け加えた。
「ありがとう、ございました」
「それは、別にいいですけど」
膝を折って目線をさとりに合わせる。
「そう、元気になったのですか、よかった」
思わず笑顔になった。
さとりは私の笑顔を見ると、急にもじもじしだして視線をさまよわせる。顔を赤くして、恥ずかしそうにうつむいていく。
さとりのその反応はよくわからなかったが、私は先に気になっていたことを質問することにした。
「あなたはどうして私の家の近くで倒れていたんですか? あなたはどこの誰なのでしょう?」
さとりはつっかえつっかえ言葉を紡ぐ。寮の近くで倒れていたのは偶然らしい。何日もなにも食べずに放浪中の妹を探しているうちに力尽きたのだそうだ。
自分がどこの誰かと言う質問については、答えられなかった。
「どこの誰かわからないの? 名前は?」
沈黙。
「お父さんやお母さんは?」
沈黙。
空気が重くなったので話題を変えた。
「探している妹ちゃんは、見つかりそうだったの?」
さとりは首を振る。
地雷だった。
私がなんと言葉をかけようか探すうちに、今度はさとりが質問してきた。
「あの、わからないんだけど」
「はい」
「どうしてわたしを助けてくれたの?」
難しい質問だった。私はしばらく考え、そのまま答えた。
「なんとなく、ですかね」
「なんとなく?」
さとりは驚いたようだった。
「だってあなた、私の心が見えるのならわかっているはずでしょう」
「いや、そうだけど、いくら読んでもちゃんとした理由がわからなくて訊いてみたの。そしたら本当になんとなくなの?」
「ええ」
「なんで? わからない」
「べつに理由なんてたいした意味はありませんよ。いうなれば、さとりちゃんが私の家の前に倒れていたから、ですかね」
さとりは混乱しているようだった。私は彼女に尋ねる。
「じゃあ、とにかくさとりちゃんは、妹を探してこんなところまで来ちゃったわけですね」
コクンとうなずく。
「私としては、さとりちゃんが満足するまでか、きちんと一人で生きていけるまで、ここで一緒に暮らしてもいいと思っているのだけど、どうでしょう?」
さとりは戸惑っていた。
「なんで、そんな親切にしてくれるの」
「さっきも言ったとおり、特に理由はありませんが」
「うそよ」
「うそ、ついていますか?」
沈黙。第三の目が私を見つめる。
「……ううん」
「じゃあ、いいじゃないですか」
「…………本当に、ここにいてもいいの」
「ええ、好きなだけどうぞ」
さとりはなおも迷うようにもじもじしていたが、やがてあたまを縦に振った。
「わかった」
続けて。
「ありがとう」
「気にしないでください」
最後にもう一つ質問があった。
「さとりちゃん、食べたいものありますか?」
「………ハンバーグ」
さとりは洋食派らしかった。
金属と木がぶつかる音がする。
「……あっ」
床に落ちたスプーンは、カラカラと軽い音をたてる。
これで三度目だ。
さとりに行儀とマナーを教えることを、私は早速始めていた。
といってもいきなり厳しくはせず、まずは食べる前に手を洗うことと、スプーンとフォークを使うことから始めてみた。
しかしこれがなかなか難しいらしい。どうやらさとりは今まで一度も食器をつかうと言う生活をしたことが無いらしかった。顔立ちも纏う雰囲気も上品なのに、育ちは粗野らしい。さとりはスプーンを持って食べることにもなかなか慣れなかった。さとりの小さな手に大きいスプーンが余っているのもある。
どうしたものかと考えた。
「……困りましたね」
スプーンを持つさとりの手に、そっと自分の手を添えてみた。スプーンを一緒に持つ。
「あーん」
さとりが首を傾げる。
「あーーーん」
口を開けて、そうイメージで伝えると、さとりもわかってくれたらしかった。
「……ぁーん」
小さな唇に一口大に切ったハンバーグを入れる。
「んむ」
「どうですか?」
さとりは嬉しそうに頬張って、
「おいしい」
と言ってくれた。
「それはよかった。今のイメージで今度は一人でやってみてください」
「あーん」
「…………」
「あーーん」
「いや、だからねさとりちゃん、今度は自分で」
「あーーーーん」
「…………」
仕方なく、もう一度スプーンで掬ってやる。
「はい、あーん、これで最後ですよ」
しかしそのおかずを美味しそうに食べた後、さとりはまたも。
「あーーん」
「…………」
結局その日はさとりに全部食べさせてあげることになった。
夕食のあとはさとりと一緒にお風呂に入った。
「目をつむって」
「ん」
わしゃわしゃ。
「流しますよ。耳を押さえて」
ザバー―ッ。
「はい、それじゃあ先にお湯に入っていてください」
「うん」
洗い終わったさとりの髪をタオルでまとめて、浴槽に向けて送り出す。
さとりは湯船につかると気持ちよさそうにした。それを見ながら、私も自分の体を洗う。
「さとりちゃんの妹はどんな子なんですか?」
さとりはなにかを思い出すように宙を見る。
「とても、やさしい子です」
「やさしい子」
「うん」
お風呂場に湯気が白く立ち込めている。
「だれにでもやさしいの、それで、だれにも嫌われたくなくて、でもわたしたちには、『眼』があるからいっつも嫌われて。それで、いっつもどこかに逃げちゃうの」
だから、お姉ちゃんのわたしがいつも探してあげるの。さとりはそう言った。
「わたしたちの眼を見て、嫌わなかったのしきさまが初めて」
「きれいな眼ですよ。私は好きです」
体を流して湯船に浸かる。
「妹ちゃんが好きなんですね」
「うん、大好き。この世で一番大事だもの」
「いつもすぐに見つけられるんですか」
「わたしは、あの子のお姉ちゃんだから。なんとなく行きたいところとか、わかるし」
「早く、見つかるといいですね」
「うん」
「もう少し元気になったら、いっしょに探しに行きましょう」
「しきさま、一緒に探してくれる?」
「ええ、もちろん」
「ありがとう、ございます」
「気にしないで。さあ、のぼせる前に出ましょうか」
「うん」
髪を乾かしたり、紅茶を飲んだりしてだらだら過ごしていると、あっという間にさとりを寝かせる時間になった。
布団を敷き、パジャマに着替えさせ、歯磨きをする。
小さな布団からはみ出さないように、身を寄せ合って一緒に横になった。
「ん……ねむれないですか?」
「うん……」
しかし、さとりはなかなか寝つかなかった。
明らかに昼間寝すぎたせいだろう。
困った。
どうすればさとりは寝てくれるだろうか。
「うん、そうだ」
私はさとりの方を向く。
「なにか、お話でもしましょうか」
「うん、聞きたい」
「そうですか? じゃあ――」
といっても、すぐに思いつく童話もない。
これからは絵本も買ってこないといけないかも知れない。
いろいろ頭の中を探って、一番話しやすい話をすることにした。
「それじゃあ…………、むかーしむかしあるところに、お地蔵さまがいました」
昔見た人間の母親を真似て、声を出す。
「そのお地蔵さまはちょっと変わっていて、ほかに六体の兄弟がいました。けれど、そのお地蔵様には笠がありませんでした」
「……………………………………こうして、お爺さんとお婆さんは、お地蔵様の贈り物でたのしくお正月を迎えることができました。めでたしめでたし」
話を終えると、隣から寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃいましたか」
やわらかな、あどけない寝顔がそばにある。
「おやすみ、さとり」
その安らかな寝顔に安心しながら、私も静かに目を閉じた。
続きがみたいぜ、映さとほしいぜ。
GJ
続きがあるならば是非是非!
ただただ純粋に面白かったです!
この二人の組み合わせ好きだ!
つ、続きはないんですか?
するすると受け入れてしまう文章。すっと話の中に入っていけました。
幼女さとりさん可愛いよ
本当に素晴らしいです!!
あと子供なさとりちゃんが可愛くてびっくりしました。
しっかり者のイメージがあったけどこういうのもアリだなー。
続きがあるならぜひ!
いい話だなー
ぜひ続きを…
ええい、続きはまだかね!
宜しければ是非別のエピソードも読ませていただければ…!
そして続きももちろん気になりますw
この話見てるときに何度
部屋を転げ回ったことか......(笑)
⑨なコメントですみませんが、
ぜひとも続編お願い申し上げます
重ね重ね、お願いします!