前回の『4人でお茶会』の番外編的な位置づけです。でも、前回のは読まなくても理解できると思います。
まずは、自己紹介から。
初めまして。十六夜咲夜、と申します。
最初は衣食住を確保できればなんでも良いという理由で、ここ、紅魔館で働いていました。
しかし、月日が流れるにつれて、お嬢様のカリスマ性に惹かれ、私にも忠誠という言葉の意味が理解できるようになってまいりました。
しかし、紅魔館の妖精メイドは役立たず。私の仕事量にも限界が見え始め、お嬢様方の洗濯物を洗い損ねる事もしばしば。
そんなある日。
お嬢様は地霊のお客様2名を招いて、優雅なお茶会を開きました。
お嬢様の妹様も加わり、4名での親睦を深めるお茶会の準備が整います。
4人の微笑ましい光景を見つめながら、和やかなムードでお茶会はスタートしました。
お茶会の間、私は、些事を処理するために部屋の隅で控えていました。
ここで、あろう事かお客様の1人、こいし様が人目も憚らず、さとり様にキスをしました。
これを見た、お嬢様は負けじと妹様にキスをします。
その後も、2組の姉妹は競うように、激しくなっていったのです。
目の前に起きる甘美な世界。私とて、お嬢様にメイド長の肩書きを貰ったとはいえ、1人の女。身体が火照って来て参りました。
そこで、1つ、思い出しました。
今日はあの方と会う約束をしていたのでした。
急なお茶会で、断りの返事をし損ねていたのを忘れておりました。
私とした事が。
しかし、これは逆に好都合。あの方と私も、お嬢様方に負けないよう、LoveLoveChuっChuっといきましょう。
私は客間を後にし、私室 (余談ですが、メイドの中で私室を頂いたのは私だけで、少し、自慢。) へ向います。
空間を捩じり、私の部屋の前まで着きました。
そこで、ふと、今日のあの方は誰だったかな、と思いました。
しかし、考えるまでもなく開ければわかるという、私の合理主義な性格が答えをはじき出しました。
これが良くなかったのです。
ガチャッ
部屋には3人の人物。騒音。
「何で魔理沙がここに居るのよ!?咲夜に招待されたのは私よ!?」
「お、お前こそ何でここにいるんだよ!?私だって咲夜に招待されてここに来たんだぜ!?」
「お2人共、何かの間違いでしょう。咲夜さんに招待されたのは私です」
私とした事が。
今日はミスが多い。まったく、ついていない日です。
部屋の中に居るのはアリスさん、魔理沙さん、美鈴。
あんまり自慢できる事ではないですが、3人とも私の恋人であります。
悪く言うなら、私は3股をかけていたという事です。
部屋には不穏な空気が立ち込めていました。今にも弾幕合戦が始まりそうです。というより、既に壁には傷や穴があり、壮絶なバトルが繰り広げられていた後が鮮明に残っていました。
「あ、咲夜、遊びに来たわよ。はい、これクッキー焼いて来たから食べてね」
戦いのせいで、粉微塵でした。
「咲夜!ほら、これ、お前が欲しがってたブランド物のバッグ。香霖堂からパクッ・・・買ってきたぜ!」
戦いのせいで、粉微塵でした。
「咲夜さん。あなたに似合う花があったので摘んできました」
戦いのせいで、粉微塵でした。
いや、気持ちはありがたいのですが・・・
もう、先ほどまでの熱い気持ちは失せてしまいました。今はこの場をどうにかしないと。焦りは禁物。瀟洒に。冷静に。
「えっと・・・皆さんおそろいで・・・」
「それよりこれはどういう事?はっ・・・まさか咲夜・・・」
「3股を・・・」
「かけていたと言うのですか!?」
「いえ、そんな事は・・・」
上手い言い訳が見つかりません。見つかる訳がありません。
ああ・・・スケジュール帳を失くさなければこんな事にはならなかったのに・・・
しかし、私を置いて3人の言い争いが幕を切って落とされました。
「私は、誕生日にキスだってしてもらったのよ!?」
「はん!それぐらいだったら私だってしてもらったさ!!」
「私もです」
「何ですって!!」
「そもそも私が咲夜と最初に付き合い始めたのよ!あなた達はさっさと諦めなさい!」
「はあぁ!?何を言ってるんだこのラブドール遣いが!!私が最初に決まってるだろ!?」
「なんて言った!!このドロボー猫!!」
「お2人共、醜いです。私が一番咲夜さんと付き合いが長いにきまっているじゃありませんか」
「はああああ!??」
「はああああ!??」
「だいたい、あんたなんていつも門につっ立ってるだけの無能じゃないの!」
「そうだ!そうだ!そんな奴が咲夜につりあう訳ないぜ!!」
「それは流石に穏便な私でも怒りますよ??」
「いい度胸じゃない!!受けて立つわ!」
「ぼこぼこにしてやる!!」
「覚悟を決めてください!!」
「「「最後にたっていた奴が咲夜の恋人!!!」」」
面白くなって参りました。私的には面白くありませんが・・・。
これ以上壁やらなんかを壊されたりしたら、お嬢様の株が大暴落してしまうかもしれません。
さて、聡明な私はこの間にどうするべきか考えてました。
誰か一人に絞り、この場を収めなければ。今、どうするか決まったのです。
「3人共、やめなさい」
静かに言い放ちます。激しい肉弾戦が時を止めたように止まりました。
「私はあなた達が戦い、傷ついた姿など見たくないわ」
「咲夜・・・」
「・・・咲夜」
「咲夜さん・・・」
誰のせいだよ。という突っ込みはありません。雰囲気で押し流せばいいのです。
「アリス。あなたと居ると、頑張れる気持ちになる気がします。
魔理沙。あなたと居ると、とても楽しい気持ちになる気がします。
美鈴。あなたといると、本当の自分になれる気がします」
「咲夜・・・」
「・・・咲夜」
「咲夜さん・・・」
「4人で、仲良くしましょう?」
みんなちがって、みんないい。
4人は末永く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
わたしと小鳥とすずとですかwww
あ、咲夜さんマジ瀟洒