Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ままごと

2010/06/22 02:00:45
最終更新
サイズ
3.12KB
ページ数
1

分類タグ


昼過ぎの命蓮寺の縁側は、呆けるには十分過ぎる程平和だった。
生欠伸を噛み殺して、村紗は手に持っていた饅頭を一口かじる。
咀嚼してからお茶で流し込むと、なぁ、と隣に座っていたナズーリンが顎で前を向くよう示してきた。

「どうしたのよ」
「いや、彼女よくやるなぁと思って」
「あー……一輪さ、元が真面目なのよ。あの格好だって、前に寺にいた時に聖の手伝いするとか言って着たもんだし」
「妖怪なのにか」
「妖怪なのにね」

二つの視線の先では、一輪と雲山が人里の子供たちにたかられながら営業用の笑顔を振りまいている。
全部で六人程だろうか。十にも満たない年くらいの子供たちは、雲山をつついてみたり一輪の服の裾を引っ張ったりとせわしない。

「何を話してるのかね、彼ら」
「さぁ?さすがに聞こえないや」
「おねえちゃーん、雲乗せてー」
「……順番だから待っててねー」
「ねーねー、この雲落ちたりしない?」
「大丈夫よ、はい泣かない泣かない」
「次は俺が乗るー!」
「はいはい焦らないの。あ、ちょっとごめん、待っててー」
「おねえちゃんどこ行くのー?」
「もう、厠よ厠。時間かかるから待っててね」
「わかった大きい方だ」
「やだ言わないでったら、ってナズーリン、一輪こっち来たんだけど」
「あれ、ひょっとして彼女怒ってないか?」

大股で歩み寄ってきた一輪は、村紗とナズーリンの真正面に仁王立ちになった。
笑顔は子供たちに向けていた時のままだったが、額に青筋が見えるそれは威嚇にも似ていた。
一輪は笑い顔を引きつらせながら、握った両手の拳を突き出してぐい、と村紗とナズーリンの額を押す。

「二人とも暇なら、見るからに忙しそうな仲間を手伝う気はないのかなぁ」
「いや、今ね、ナズーリンに探し物して貰ってて」
「そうそう、船長さんがどっかで財布落としたとかで、部下の報告待ちなんだよ」
「へーえ」

一度振り向いてから、そうだ、と呟いて一輪はくるりと振り返って饅頭が入った鉢を抱えていった。
仕方がないので村紗は残されたお茶をすする。飲みほしてしまい湯呑みが空になったら、ナズーリンが黙ってお茶を注いでくれた。
口は悪いのに、細かい気遣いは欠かさないのは習性なのか、それとも星と一緒にいたから身についた習慣なのかはわからない。

「あんたもさ、大概健気だよね。神様のとこ帰れなくなるよ」
「帰ろうと思うたびに御主人が物を失くすんだが、あれ何とかならないのか」

憮然とした顔を作っても、ナズーリンの口元は微かに笑っていた。
高い高い天から下りてきたのに地上の妖獣に惚れてしまって、神様の使いだった筈がこんな寺で妖怪の仲間入りまでしかけている。
単なる痴情だよと言ってナズーリンは笑うが、結果的にそれに救われた身としては手助けくらいしても悪くないと思う。
星もナズーリンもどう思っているかはわからないが。

「仕事は出来るんだから、あれでうっかりが無ければとは思うんだが」
「ん、まぁね」
「それとも船長さんは帰って欲しいのかい?」
「やだな、星が何かなくしても誰にも探せないじゃん」
「だろう?」

後ろから子供に抱きつかれて一輪が笑ったが、なぜか村紗はむずがゆくなって眼をそらした。
あの子供たちもいつかは聖を信仰してくれるだろうか。
お茶を飲みほして、急須にも残ってない事を確認してからことりとナズーリンが湯呑みを置いた。

「じゃあ、そろそろ手伝いに行こうか」
「だね、一輪怒ると怖いし」

いっちりーん、と叫んで手を振ったら、照れたように笑って一輪が手を振り返した。
この寺の住人らは歪すぎて突っ込みどころだらけな家族のようで、ままごとにも似たそれが水底にいた船幽霊にはむずがゆい。
けれど決して居心地が悪い訳でなく、きっとここにいるみんなもそうなのだろうと思う。
そうだといいな、と村紗は思った。
お久しぶりです。
DSで入道屋さんを知る→子供にたかられる一輪さん書きたい→あとムラいち書きたい→でもナズ星も好きなんだ……→あれ?
命蓮寺組もぼちぼちかけたらなぁ。

ではまた。読んでいただきありがとうございました。
タツアキ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
こんな寺がジャスティス
2.雲海削除
命蓮寺の雰囲気がよく出てると思います
聖とぬえも見たい!
3.奇声を発する程度の能力削除
良い命蓮寺でした!
4.名前が無い程度の能力削除
この3人の距離感は好きです