美しい、まるで人形のように美しい、宝石のような瞳をした美しい少女がいた。
まずひと目その姿を見たとき、場違いな派手な衣装の上に空気の読めていない奴だと思ったものである。
だがその後姿を見かけるようになり、認識を改めた。
やたらめったら派手な服だなと思ったが、それはそいつの回りにいる連中が単色系の若干地味な衣装を着ているということもあってだった。ブロンドで、少々ウェーブのかかったお洒落な髪形と合わせて見てみるとなかなかにマッチしている姿をしている。
鮮やかな服を着ること自体には罪はないが、本人も鮮やかな格好に負けず劣らず飾らないといけない。そういう意味では彼女の姿は文句がない。
つまり、彼女の外見はかなり極まっている。
「おい咲夜、なにぼーっとしてる?」
「え?」
今までかけられたことがない声で私の名前が呼ばれた。
じろーっとアリスのことを眺めていた私の様子が気になったのか、背後から声をかけてきたのは八雲の式、藍というやつだった。
「お前さっきから全然飲んでないじゃないか」
「まぁね」
「ああ、普通の人間は二日連続で酒を飲めないんだったな」
そういわれれば昨日も宴会だったな…
別に私はドカドカ酒を飲んだりしないし、最悪時間を止めて酔いを醒ませばいい話だ。
「ま、お前は時間さえ止めればいい話か」
「まぁ…」
人に言われると面白くないな。
「で、お前はあの人形遣いに興味があるのか?」
「よくわかったわね」
「二日目だからな」
呆れたように笑い、藍は私の隣に腰を降ろした。
こいつが一人で私の傍にきたこと自体が結構珍しい、主人のことはいいのかと思ったが、霊夢と話し込んでいるようだ。
「人は気がある人物にはとことん甘くなるものらしいな」
「甘くなる?ああ、貢いだりとか」
「そうだな、物をくれて気を引いたり、近くにいようとして存在を相手に認知してもらおうとしたり」
「ああ、そりゃあするでしょうね」
「なんでそう回りくどいことをするんだ?」
なんでときたか。確かにこいつのようにそういうことに無縁な奴からしたら不思議な話かもしれないが、人間は照れたり臆病になったりする生き物だ。あまり自分に自信があるように振舞うこともしたがらない。
だからまず自分が何か特別であることを、相手のほうから知ってもらう為に控えめにアピールをすることが多い。
「自分はこれができて、あれもできて、貴女に興味を持ってもらうに相応しい奴だってアピールするのは簡単じゃないわよ」
「だが、嘘じゃないだろう」
「嘘じゃないけど相手はすごいと思うとは限らないわ、例えば藍、貴女だったらどういう風にアピールする?」
「……」
意外な質問だったのか、首を何度か傾けて、んーと唸った。
そしておもむろに私の両手を取って、私の目をガン見してきた。
「私は、九尾の妖怪だ、力も強くて、部下もいる……お前のことを守ってやる自信はある」
一度も目を逸らさず、真剣な顔つきでそんなことを言われると、流石の私も思うところがないでもない。
ゆっくりと私の両手を離し、体を前に向けた。
「……こんなところか?正直よくわからん」
「貴女男らしすぎるのよ、なんで力自慢しかできないの」
「いいじゃないか、その様子なら多少効果があったようだしな」
確かに、実際藍に言われたらときめかない奴はいないだろう。
私は残念ながら、返事はNOだが。
「ま、ともかくそういうストレートな告白はできればしたくないのよ」
「わからんな」
「恥ずかしいのよ、有り体に言うとね」
「恥ずかしい、か」
長所を積極的にアピールすることが恥ずかしいというのは、相手に気を使っているという意味ももちろんある。
あんまり自分がなんでもできるとアピールされても相手も鬱陶しく思うだろう、さりげなく伝えるのが大事なんだ。
「面倒だな、人間は…だから見ていて面白いのかもしれないが」
「面白いばっかりじゃないでしょ、貴女は人間が好きなの?」
「さぁ、どうだろう」
手元の酒が切れたのか、藍は立ち上がった。
「少なくとも、お前のように物事を恐ろしく広い視野で見れる人間は嫌いじゃない」
「それはどうも」
そういい残して、藍は立ち去っていった。なんとも変わった奴だ、だが変わっているだけではなくその分力も強い。
知り合っておいて間違いはなさそうだ。
一人になって落ち着いていると、気がつくと私の横に誰かが立っていた。
そいつは私が定期的に見つめていたアリスで、流石に私も少々焦った。
「久しぶりね、咲夜」
「ええ、そうね」
「隣いいかしら?」
「ええ」
私に何か用事があったのか?ちょっと前までこいつの話をしていたわけだから、少し緊張しないこともないな。
「久しぶりっていうか、会って話すのは二度目?」
「そうじゃない?」
「そう……で、さっき、八雲藍と話してたけど」
「え?…ええ」
「仲良いの?」
見られてたのか、あいつとまともに話したのはこれが初めてだ。
「今日初めて話したのよ」
「そうなの…にしてはちょっと、親密そうだったけど」
何か親密そうにしている見える素振りがあったか……
正直あまり記憶に無いが、アリスの目には何か写っていたらしい。
「気のせいじゃない?」
「……そう」
表情を落として、少し俯き加減で酒を煽っているアリス。
なにやら、思いつめてることがあるのか?
「いや、別にあいつと仲良くしてたから、どうってわけでもないのよ…?」
「…そう」
もしかして……アリス、藍に気があるな?
そういうわけなら納得だ、仲良くしていたように見えた私のところにきたのもわかる。
となると厄介だな…最悪の場合、藍はライバルになる可能性があるというわけだ。
「あんたも変わり者ね」
「え、何が?」
「別に」
焦りが表情に出やすいのか、顔に汗を浮かべて視線を泳がせている。
その横顔もかなり麗しい姿だ、自信満々に浮くの上等な格好をして、平然としているなかなか図太い神経からは想像できない清楚さを感じさせる。
「……あの、咲夜」
「ん?」
「貴女って人間よね?」
「見りゃわかるでしょ」
「いやなんていうか、やたら垢抜けてるからさ」
「…まぁ」
それは、よく言われる。
「…あの」
「ん?」
「貴女……その、面白そうだから、今度お茶でもどう?」
「別にいいわよ」
「そう、じゃあ…また今度、貴女の屋敷に伺うわ」
「ええ」
そういうと、割とあっさりとあいつは隣から去っていった。
つまりはあれだ、藍と仲良くしたいからさっきまで仲良くしていた自分と接触して情報を聞き出そうとしているのか。
皮肉な話だけど、まぁいい……あいつとゆっくり話しができる機会を得ただけで儲け物というところか。
お嬢様が飽き始めているのが見えたので、今日はこのくらいで引き上げるとする。
それにしても……隣に座ったアリスはやはり人形以上に美しかったな。ちょっと良い匂いもしたし。
熱を帯びた視線で私のことを見た瞬間があったが、思わず目を逸らしてしまった。
直視できない眩しすぎる美しさだった。
私ももうちょっと素直に話をすればよかったな。意識するとどうもぶっきらぼうな話方になってしまう。
当面は、藍の動きに注目するか…
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まずひと目その姿を見たとき、場違いな派手な衣装の上に空気の読めていない奴だと思ったものである。
だがその後姿を見かけるようになり、認識を改めた。
やたらめったら派手な服だなと思ったが、それはそいつの回りにいる連中が単色系の若干地味な衣装を着ているということもあってだった。ブロンドで、少々ウェーブのかかったお洒落な髪形と合わせて見てみるとなかなかにマッチしている姿をしている。
鮮やかな服を着ること自体には罪はないが、本人も鮮やかな格好に負けず劣らず飾らないといけない。そういう意味では彼女の姿は文句がない。
つまり、彼女の外見はかなり極まっている。
「おい咲夜、なにぼーっとしてる?」
「え?」
今までかけられたことがない声で私の名前が呼ばれた。
じろーっとアリスのことを眺めていた私の様子が気になったのか、背後から声をかけてきたのは八雲の式、藍というやつだった。
「お前さっきから全然飲んでないじゃないか」
「まぁね」
「ああ、普通の人間は二日連続で酒を飲めないんだったな」
そういわれれば昨日も宴会だったな…
別に私はドカドカ酒を飲んだりしないし、最悪時間を止めて酔いを醒ませばいい話だ。
「ま、お前は時間さえ止めればいい話か」
「まぁ…」
人に言われると面白くないな。
「で、お前はあの人形遣いに興味があるのか?」
「よくわかったわね」
「二日目だからな」
呆れたように笑い、藍は私の隣に腰を降ろした。
こいつが一人で私の傍にきたこと自体が結構珍しい、主人のことはいいのかと思ったが、霊夢と話し込んでいるようだ。
「人は気がある人物にはとことん甘くなるものらしいな」
「甘くなる?ああ、貢いだりとか」
「そうだな、物をくれて気を引いたり、近くにいようとして存在を相手に認知してもらおうとしたり」
「ああ、そりゃあするでしょうね」
「なんでそう回りくどいことをするんだ?」
なんでときたか。確かにこいつのようにそういうことに無縁な奴からしたら不思議な話かもしれないが、人間は照れたり臆病になったりする生き物だ。あまり自分に自信があるように振舞うこともしたがらない。
だからまず自分が何か特別であることを、相手のほうから知ってもらう為に控えめにアピールをすることが多い。
「自分はこれができて、あれもできて、貴女に興味を持ってもらうに相応しい奴だってアピールするのは簡単じゃないわよ」
「だが、嘘じゃないだろう」
「嘘じゃないけど相手はすごいと思うとは限らないわ、例えば藍、貴女だったらどういう風にアピールする?」
「……」
意外な質問だったのか、首を何度か傾けて、んーと唸った。
そしておもむろに私の両手を取って、私の目をガン見してきた。
「私は、九尾の妖怪だ、力も強くて、部下もいる……お前のことを守ってやる自信はある」
一度も目を逸らさず、真剣な顔つきでそんなことを言われると、流石の私も思うところがないでもない。
ゆっくりと私の両手を離し、体を前に向けた。
「……こんなところか?正直よくわからん」
「貴女男らしすぎるのよ、なんで力自慢しかできないの」
「いいじゃないか、その様子なら多少効果があったようだしな」
確かに、実際藍に言われたらときめかない奴はいないだろう。
私は残念ながら、返事はNOだが。
「ま、ともかくそういうストレートな告白はできればしたくないのよ」
「わからんな」
「恥ずかしいのよ、有り体に言うとね」
「恥ずかしい、か」
長所を積極的にアピールすることが恥ずかしいというのは、相手に気を使っているという意味ももちろんある。
あんまり自分がなんでもできるとアピールされても相手も鬱陶しく思うだろう、さりげなく伝えるのが大事なんだ。
「面倒だな、人間は…だから見ていて面白いのかもしれないが」
「面白いばっかりじゃないでしょ、貴女は人間が好きなの?」
「さぁ、どうだろう」
手元の酒が切れたのか、藍は立ち上がった。
「少なくとも、お前のように物事を恐ろしく広い視野で見れる人間は嫌いじゃない」
「それはどうも」
そういい残して、藍は立ち去っていった。なんとも変わった奴だ、だが変わっているだけではなくその分力も強い。
知り合っておいて間違いはなさそうだ。
一人になって落ち着いていると、気がつくと私の横に誰かが立っていた。
そいつは私が定期的に見つめていたアリスで、流石に私も少々焦った。
「久しぶりね、咲夜」
「ええ、そうね」
「隣いいかしら?」
「ええ」
私に何か用事があったのか?ちょっと前までこいつの話をしていたわけだから、少し緊張しないこともないな。
「久しぶりっていうか、会って話すのは二度目?」
「そうじゃない?」
「そう……で、さっき、八雲藍と話してたけど」
「え?…ええ」
「仲良いの?」
見られてたのか、あいつとまともに話したのはこれが初めてだ。
「今日初めて話したのよ」
「そうなの…にしてはちょっと、親密そうだったけど」
何か親密そうにしている見える素振りがあったか……
正直あまり記憶に無いが、アリスの目には何か写っていたらしい。
「気のせいじゃない?」
「……そう」
表情を落として、少し俯き加減で酒を煽っているアリス。
なにやら、思いつめてることがあるのか?
「いや、別にあいつと仲良くしてたから、どうってわけでもないのよ…?」
「…そう」
もしかして……アリス、藍に気があるな?
そういうわけなら納得だ、仲良くしていたように見えた私のところにきたのもわかる。
となると厄介だな…最悪の場合、藍はライバルになる可能性があるというわけだ。
「あんたも変わり者ね」
「え、何が?」
「別に」
焦りが表情に出やすいのか、顔に汗を浮かべて視線を泳がせている。
その横顔もかなり麗しい姿だ、自信満々に浮くの上等な格好をして、平然としているなかなか図太い神経からは想像できない清楚さを感じさせる。
「……あの、咲夜」
「ん?」
「貴女って人間よね?」
「見りゃわかるでしょ」
「いやなんていうか、やたら垢抜けてるからさ」
「…まぁ」
それは、よく言われる。
「…あの」
「ん?」
「貴女……その、面白そうだから、今度お茶でもどう?」
「別にいいわよ」
「そう、じゃあ…また今度、貴女の屋敷に伺うわ」
「ええ」
そういうと、割とあっさりとあいつは隣から去っていった。
つまりはあれだ、藍と仲良くしたいからさっきまで仲良くしていた自分と接触して情報を聞き出そうとしているのか。
皮肉な話だけど、まぁいい……あいつとゆっくり話しができる機会を得ただけで儲け物というところか。
お嬢様が飽き始めているのが見えたので、今日はこのくらいで引き上げるとする。
それにしても……隣に座ったアリスはやはり人形以上に美しかったな。ちょっと良い匂いもしたし。
熱を帯びた視線で私のことを見た瞬間があったが、思わず目を逸らしてしまった。
直視できない眩しすぎる美しさだった。
私ももうちょっと素直に話をすればよかったな。意識するとどうもぶっきらぼうな話方になってしまう。
当面は、藍の動きに注目するか…
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>貴女に興味を持ってもらうに相応しい奴だってアピールする そんな咲夜さんを私は見たい
ワンチャンス>諦めたらそこで試合しゅ(ry