Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

泣きたいくらい愛しいってこういうこと?

2010/06/19 08:28:46
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※ この話は、ジェネリック作品集64、『妹紅、輝夜に求婚すること。』からの続きとなっております。






 どうやら彼女は私の髪が大のお気に入りらしい。
 その証拠に、彼女はさっきからずっと私の髪を弄るのに余念が無い。


「輝夜……なんでお前の髪はこんなにも綺麗なんだろうな……。」


 私の耳元でそっと呟く妹紅……。 
 そのどこかうっとりとした妹紅の声を聞く度に、私は頭の芯が甘くしびれるのを覚えた。


「……んっ。」



 だって妹紅は背中から私を抱きしめているのだ。
 逃げ場なんて何処にもない──その優しい抱擁は、どんな重い鎖よりも私の心をきつく縛りつけているみたい。

 そう……さっきからずっと……。

 恋人の褒め殺しを私は耐えるようにして受け続けている。


「匂いも……ほら。こんなにも良い香りだ……。」


 顔を埋めるようにして私の髪に鼻を擦り付ける妹紅。
 その行為にくすぐったさを覚えた私は身を捩って逃れようとしたけど、首に回された妹紅の手がそれすらも許してくれない。
 結局、妹紅が満足するまで耐えるしかないのだと私は直ぐに覚った。
 
 暫くして、妹紅はやっと頭から離れたかと思うと、今度は頬がくっ付くぐらい顔を寄せてきた。


「…………輝夜。」

「ぁ……!」


 ただ一言。

 ただ一言、名前を呼ばれただけで狂おしいほどの感情が身体中を駆け巡った。
 我慢していたものが一気に溢れ出してしまう様な感覚……。
 そんな未知の感覚におもわず声を漏らしてしまった私を妹紅はくすくすと耳元で笑うのだった。


「なによぉ……。」

「べつに……くくくっ……可愛いなぁ、輝夜は。」


 恥ずかしがる私に構わず、妹紅はまたそんな事を言って笑う。
 こうやってからかわれるのだって、今の私にとっては幸せでしか無くて……。
 だけど一つだけ……そう、たった一つだけ現状に不満があった。

 それは──


「ずっとこうして……輝夜を見ていたくなるよ。」

「……私には、妹紅が見えないんだけど?」


 ──彼女の顔が見れないこと。

 確かに髪を褒められるのも、触られるのも嬉しいし気持ちいいけど……。
 折角喜んで貰えてるのに、私にはその様子を見ることもできない。
 いい加減、私にも貴女の顔を見せて欲しい。


「うん? そっかそっか。そんなにも私の顔が見たいのか?」


 僅かに声を弾ませる妹紅──何がそんなに嬉しいのかしら?
 それに妹紅の顔が見たいかって?
 そんなの決まってるじゃない。
 こっちは一体どれくらいお預けをくらってると思っているのよ。


「ほら、見たけれゃ見なよ。」


 そう言ってくっ付けてた頬を離した妹紅。
 ついでに首に回していた両手もそっと離れた。

 ……ちょっと名残惜しいけど、これで漸く妹紅の顔が見れる。

 そう思うと期待に胸が高鳴った。



「妹紅……?」



 だけど振り返った視線の先に彼女は居なかった。

 いいえ、居ないのではなく、見えないだけ。
 すぐ近くに彼女の存在が確かに感じられる。
 感じられるけど……肝心の姿が見えない。


「ほらほら、こっちだってば。」


 声のする方に、慌てて振り返る。

 だけどそこにも彼女の顔は無くって。
 代わりに、ふわっとした白く長い髪が一瞬だけ視界に映った。


「ざ~んねん。こっちだよ!」


 ……どうやら妹紅は遊んでいるようね。

 声を弾ませる彼女に、だけど私の胸は切なくなるばかり。


 ──どうして? どうして貴女は私の思いに気付いてくれないの?


 我が侭な想いがまた胸を締め付ける。
 そうじゃない……私はただ、貴女の顔が見たいだけ。
 居ても立ってもいられなくなった私は、思い切って身体ごと後ろを振り向いた。


「もう! 悪ふざけはよし──んっ!」



 ちゅっ。



 待っていたのは、待ち望んだ妹紅の顔だった。
 だけど近すぎて表情までは窺えない。



「はははっ、何怒ってんだよかぐ──輝夜?」



 キスのあと、漸く見られた彼女の顔は憎たらしいくらいの笑顔で……。
 それを見せ付けられた私は切なさが堰を切ったように、瞳から涙となって零れてきた。


「……ごめん。気付かなかった。」


 急にまじめな声になった妹紅はあやす様にして私の頬を優しく撫でてくれた。
 今度はちゃんと、正面から。


「……気付くのが遅いのよ、バカっ……!」


 止まらなくなった涙を拭いきれず、見かねた妹紅が肩を貸してくれて……。


 違うのよ……?
 私はただ、貴女の顔が見たかっただけなの。
 本当にそれだけだったのに……。


「ぐすっ……妹紅が、妹紅が悪いんだからねっ……!」
「…………ああ。私が悪かった。」


 私……どうして泣いてるんだろう?

 愛しい人の肩に顔を埋めながら私はそう思った。
 だってこんなのおかしいじゃない?
 私は今、すごく幸せなのに……泣く理由なんてもうどこにも無い筈なのに……。

 涙が止まる気配を見せてくれないので、また暫くは妹紅の顔を見るのはお預けのようだ。

 
 暇を持て余した永遠を生きるカップル達は、とりあえず毎日イチャついているに違いありません!
 と言いつつ、今回は無駄に輝夜を泣かせてしまいましたが……シチュエーションの一つとして受け入れて頂けたら幸いです。

 一応こんなんですが、ちゅっちゅシリーズ(?)の第四弾です!
 さてさて何時まで続くのか……自分でも分かりません(^_^;)

 本当に続けられるまで続けるつもりですので、迷惑で無ければ書かせてください。
 それでは、ヘルツでした。

>ぺ・四潤さん

 ご指摘ありがとうございます!
 神様組みのちゅっちゅ……まだ全くのノープランですが、出来れば書きたいと思っています!
 今しばらくお待ちくださいっ!
ヘルツ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
てるもこは永遠の輝き!
2.ぺ・四潤削除
迷惑だなんてとんでもない!
なんていうか熟成したカップルのようなしっとりとした雰囲気がまたいいですね。
褒め殺し合い。なんて素敵な殺し合いだろう。この殺し合いなら巻き込まれてみたい。

さあ、次は神様ちゅっちゅか!でもあの二人はちゅっちゅだけじゃ済まなそうだしなww
3.奇声を発する程度の能力削除
ちゅっちゅシリーズひゃっほい!
4.名前を忘れた程度の能力削除
いや、この2人もじゅうぶんに削除レベルに発展しそうな気配がw

すばらしいもこてるでした、ごちそうさm(糖分過多