目が覚めると布団の中に妹が潜り込んでいた。こういうことはままある
から驚くことではないのだろうが。今の状況、妹の気持ちが分らない事
でもない……あぁいえ、違うか。妹に対して使うべき言葉ではなかった。
私の憶測でしかないが、彼女は温もりが欲しいのではないか。それで
私のベッドに。その肌の温もりが、同じ血を分けた姉妹として嬉しい。と
同時に、この温もりが常に側に無いのが少し寂しい。
妹はちょくちょく旅に出る。それは旅とはいえないほど近くをうろつき
まわってるだけの時もあるし、幻想郷を数周するほど歩きまわってる時
もある。どちらにしろ戻ってくるときには妹のベッドは冷え切ってしまって
いる。だから温もりを求めて私の横に。きっとそういうことなのだろう。
そういうことにしておきたい。
ときめく心のまま、妹の華奢な体を抱きしめる。ほんのりと高い体温。
寝息のたびにかすかに身体が振れる感覚。その髪から、薔薇の香りが
した。あぁ、この子はまたあそこへ立ち寄ったのか。
地底の薔薇園。妹がお気に入りの、それともただ無意識が導いている
のか、ともあれそこに妹はよく足を運ぶ。旅に出るときも、旅から帰るとき
もほぼ必ずそこに。気が向けば花の世話をして、そうでなくともその華の
香を楽しむため、妹はそこに。
華を慈しむ妹の笑みには、いつものうすっぺらいそれより深みというか、
色があるように思える。正直、薔薇に嫉妬したことさえあった……一度
それでパルスィに大笑いされたが。まぁ、今ではそれもまた愛すべき妹を
構成するひとつとして好きなのだが。そう思いつつその香りを、もっと
感じたいと細い身体を抱き寄せる。会えなかった時間を取り戻すように、
妹の香りを、もっと。
「ん……。ふぁ?」
「あ」
つい抱きしめる腕に力が入ってしまったのだろう。妹が目覚めてしまった
ようだ。寝に入ってすぐだったなら悪いことをした。とりあえず。
「おはようございます、こいし」
「んに……あれ、さとりお姉ちゃん? あ、ええと、おはよう」
目をしばたたかせながら挨拶を返す妹。その様に私は微笑を返す。
「あぁ……またお姉ちゃんのお布団で寝てたんだ、私」
「ええ。でも、構いません」
やはり妹は無意識にここに潜り込んだのだ。でももしかすると、それは
私の儚い願望でしかないが、妹も私が好きだから私の横を選んでくれる
のだろうか。だとすると、本当に、嬉しい。妹のふわりとした髪を撫でつつ
話しかける。
「また、薔薇園に寄ったんですね」
「え、あ、うん。分かるんだ」
「あなたの心が読めるからです……ふふ、嘘ですよ。あなたから薔薇の
香りがしましたから」
一瞬本気にしてきょとんとした顔もまたかわいらしい。冗談と分かって、
得心して頷く顔もまた。
「あぁ、そっか。薔薇を摘んできたんだけど、どこに置いたっけかな……」
こうして妹は時々自分のした事を覚えていないことがある。お空のような
忘れっぽさでなく、無意識な行動をしてしまうからだろう。そこがちょっと
危なっかしい。姉として、こんな力ない姉だけれど、守ってあげなければ
ならない。その思いが伝わればいいのだけれど。
見ると私の視線のすぐ前にある妹の指に少しばかりの切り傷。きっと
茨で傷つけてしまったのだろう。白魚など比べようもないくらい美しい、
透き通った指にあるそれらが、どうしようもなく痛々しい。
「こいし」
「なに? お姉ちゃ……ひゃ!?」
私は思わずその手をとり、そのかわいそうな指に優しく舌を這わす。
ちゃんと消毒してあげないと。
「ちょ、お姉ちゃん?」
「あむっ」
「ふえっ?!」
傷ついた一本一本の指先を咥え、丁寧に私の唾液をしみこませていく。
こんなことでしかあなたを守れないけど、せめてこれくらいはさせて。その
思いも一緒にしみこませていく。
しばし、むずかるような妹の声を聞きつつ、しっかりと消毒し終えて私は
言う。
「はい、これできっと傷の治りも良くなりますよ……少し、薔薇の味が
しました」
「お姉ちゃん……。もう、びっくりさせないでよ」
ほんのり頬を赤く染めた妹が、ちょっぴり抗議の意を込めた視線を投げ
かけてくる。その視線から逃げるように、妹を抱き寄せその薄い胸に顔を
預ける。鼓動が少しばかり早いのが分った。
「わ?!」
「ふふ……。ねぇ、こいし」
「な、なに?」
「心が読めないというのも、たまにはいいですね」
「……よくわかんない」
だってそうでしょう? あなたを驚かすことが出来るのだから。
妹を抱きしめれば、その柔らかな体温と、やさしい薔薇の香りが私を
包む。もう今日は仕事なんてしないでおこう。このまま妹に包まれて、
眠ってしまおう。それがいい。
「こいし……おやすみなさい……」
「え、ちょ、お、お姉ちゃー……ん。あぁ、寝ちゃったよ。……まぁ、いいや。
私も二度寝しよ」
おやすみなさい、愛しい妹よ。
から驚くことではないのだろうが。今の状況、妹の気持ちが分らない事
でもない……あぁいえ、違うか。妹に対して使うべき言葉ではなかった。
私の憶測でしかないが、彼女は温もりが欲しいのではないか。それで
私のベッドに。その肌の温もりが、同じ血を分けた姉妹として嬉しい。と
同時に、この温もりが常に側に無いのが少し寂しい。
妹はちょくちょく旅に出る。それは旅とはいえないほど近くをうろつき
まわってるだけの時もあるし、幻想郷を数周するほど歩きまわってる時
もある。どちらにしろ戻ってくるときには妹のベッドは冷え切ってしまって
いる。だから温もりを求めて私の横に。きっとそういうことなのだろう。
そういうことにしておきたい。
ときめく心のまま、妹の華奢な体を抱きしめる。ほんのりと高い体温。
寝息のたびにかすかに身体が振れる感覚。その髪から、薔薇の香りが
した。あぁ、この子はまたあそこへ立ち寄ったのか。
地底の薔薇園。妹がお気に入りの、それともただ無意識が導いている
のか、ともあれそこに妹はよく足を運ぶ。旅に出るときも、旅から帰るとき
もほぼ必ずそこに。気が向けば花の世話をして、そうでなくともその華の
香を楽しむため、妹はそこに。
華を慈しむ妹の笑みには、いつものうすっぺらいそれより深みというか、
色があるように思える。正直、薔薇に嫉妬したことさえあった……一度
それでパルスィに大笑いされたが。まぁ、今ではそれもまた愛すべき妹を
構成するひとつとして好きなのだが。そう思いつつその香りを、もっと
感じたいと細い身体を抱き寄せる。会えなかった時間を取り戻すように、
妹の香りを、もっと。
「ん……。ふぁ?」
「あ」
つい抱きしめる腕に力が入ってしまったのだろう。妹が目覚めてしまった
ようだ。寝に入ってすぐだったなら悪いことをした。とりあえず。
「おはようございます、こいし」
「んに……あれ、さとりお姉ちゃん? あ、ええと、おはよう」
目をしばたたかせながら挨拶を返す妹。その様に私は微笑を返す。
「あぁ……またお姉ちゃんのお布団で寝てたんだ、私」
「ええ。でも、構いません」
やはり妹は無意識にここに潜り込んだのだ。でももしかすると、それは
私の儚い願望でしかないが、妹も私が好きだから私の横を選んでくれる
のだろうか。だとすると、本当に、嬉しい。妹のふわりとした髪を撫でつつ
話しかける。
「また、薔薇園に寄ったんですね」
「え、あ、うん。分かるんだ」
「あなたの心が読めるからです……ふふ、嘘ですよ。あなたから薔薇の
香りがしましたから」
一瞬本気にしてきょとんとした顔もまたかわいらしい。冗談と分かって、
得心して頷く顔もまた。
「あぁ、そっか。薔薇を摘んできたんだけど、どこに置いたっけかな……」
こうして妹は時々自分のした事を覚えていないことがある。お空のような
忘れっぽさでなく、無意識な行動をしてしまうからだろう。そこがちょっと
危なっかしい。姉として、こんな力ない姉だけれど、守ってあげなければ
ならない。その思いが伝わればいいのだけれど。
見ると私の視線のすぐ前にある妹の指に少しばかりの切り傷。きっと
茨で傷つけてしまったのだろう。白魚など比べようもないくらい美しい、
透き通った指にあるそれらが、どうしようもなく痛々しい。
「こいし」
「なに? お姉ちゃ……ひゃ!?」
私は思わずその手をとり、そのかわいそうな指に優しく舌を這わす。
ちゃんと消毒してあげないと。
「ちょ、お姉ちゃん?」
「あむっ」
「ふえっ?!」
傷ついた一本一本の指先を咥え、丁寧に私の唾液をしみこませていく。
こんなことでしかあなたを守れないけど、せめてこれくらいはさせて。その
思いも一緒にしみこませていく。
しばし、むずかるような妹の声を聞きつつ、しっかりと消毒し終えて私は
言う。
「はい、これできっと傷の治りも良くなりますよ……少し、薔薇の味が
しました」
「お姉ちゃん……。もう、びっくりさせないでよ」
ほんのり頬を赤く染めた妹が、ちょっぴり抗議の意を込めた視線を投げ
かけてくる。その視線から逃げるように、妹を抱き寄せその薄い胸に顔を
預ける。鼓動が少しばかり早いのが分った。
「わ?!」
「ふふ……。ねぇ、こいし」
「な、なに?」
「心が読めないというのも、たまにはいいですね」
「……よくわかんない」
だってそうでしょう? あなたを驚かすことが出来るのだから。
妹を抱きしめれば、その柔らかな体温と、やさしい薔薇の香りが私を
包む。もう今日は仕事なんてしないでおこう。このまま妹に包まれて、
眠ってしまおう。それがいい。
「こいし……おやすみなさい……」
「え、ちょ、お、お姉ちゃー……ん。あぁ、寝ちゃったよ。……まぁ、いいや。
私も二度寝しよ」
おやすみなさい、愛しい妹よ。
いつか受け止めてくれるよ
実は恐ろしい話が潜んでいるんじゃあないかって思ってたんだよ。
予想の斜め上をイカれたよ……
脈絡ありませんがこいしには青いバラが似合う気がする。何となく。
なん…だと…
こめいじには指ちゅぱが合うと思うのです。
二人が互いの温もりで優しく眠れますように。
地霊殿の情報技術マジスゲェ
ああ、でもイイ黒さだ
ルイズコピペにしか見えねぇww
再び瞳を開いたときが怖いw
なるほど。これは綺麗なさとこいと汚いさとこいを同時に味わえるというわけですね。