湖の氷精は今日も闘う。
夏の暑い日差しの中で向こうからやってくる冷気が一つ。
「勝負だっ!めーりん!」
スペルカードを手に意気込むチルノを横目に見て、内心ため息をついて立ち上がる。
魔理沙が来なくなったと思えば今度はチルノが勝負を仕掛けてくるようになった。正直、面倒なことこの上ない。
「また?前回闘ったときから十日も経ってないけど」
「うっさい!あたい前より強くなってるんだから、あんまりなめてると痛い目みる、よっ!!」
顔のすぐ横を氷の礫が掠めていく。手加減しすぎると本当に痛い目を見そうだ。
「はいはい。それじゃあ始めますか」
腰を落とし、気を練って私は氷精と対峙した。
結果はやはり、と言うべきか私の圧勝であった。
前よりもチルノが強くなっていたのは明らかだったが。
「っ……うぅ」
「どうしてそこまで強さにこだわるの?妖精としては十分な強さじゃない」
彼女は答えない。ただ拳を握り締めて俯いていた。
「チルノ?」
「……だって」
「うん?」
「だってあたい、魔理沙と約束したんだ。あたいが魔理沙と同じくらい強くなったらまた勝負するって!」
そうか、最近のチルノの強さへの執着はそういうことだったのか。
「…でも」
魔理沙は、もう。
「だから…めーりんに勝って、このお屋敷の吸血鬼にも勝てたらきっと…きっとっ、魔理沙は会いに来てくれるんだ!」
俯いた瞳から落ちた涙は、地面へたどり着く前に氷のつぶとなって風に乗り、運ばれていく。その涙を見送って、私は思い出していた。
度々、館に来ては迷惑をかけていた魔法使いがいたことを。
吸血鬼に仕え、時を操る能力を持った人間がいたことを。
彼女たちがいなくなってからいくつの夏を迎えただろうか。
「そっか」
彼女はまだ待っているのだ。魔法使いが奇跡の魔法を使うその時を。
「ねえ、チルノ」
「なに?」
「私も…また、門の前で寝てたらナイフが飛んでくるかなぁ?」
「…くるよ、きっと。メイド長真面目だもん。最近めーりんがちゃんと門番してるから、会いに来れないんだよ」
私の瞳からも涙が一筋流れる。落ちた一滴の雫は、結晶になることもなく地面に吸い込まれていった。
涙を拭いて私は笑う。
「私は寝てるだけでいいけど、チルノはもっと強くならないとね」
「…うんっ」
チルノの眼にも、もう涙は無かった。
「めーりん。魔理沙は強かった?」
「そりゃあ妹様を倒しちゃうくらいだからね。ちゃんと特訓しないと追いつけないわよ?」
私の言葉を聞いたチルノは明るく笑う。
「へーきへーき!すぐ強くなるよ!だってあたい、さいきょーだからね!」
湖の氷精は今日も闘う。
紅い館の門番を味方につけて。
星に届けと、今日も闘う。
「なあ、お前生まれ変わりって信じるか?」
「さあどうかしらね。普通じゃありえないけれど、ここは幻想郷だもの」
「じゃあ、もし生まれ変わったら何をする?」
「居眠りしてる門番にナイフを投げるわね。……そういうあなたは?」
「んー。お前んとこに本を借りに行くぜ。あぁ、でも途中の湖に邪魔な奴がいるから倒していくかな」
「そう」
しかし、互いの言葉を聞いて、互いに思っていた。
生まれ変わってその人にあったのならば、まず最初にその人を抱きしめるくせに、と。
氷精と門番の闘いが終わる日は案外近いのかもしれない。
夏の暑い日差しの中で向こうからやってくる冷気が一つ。
「勝負だっ!めーりん!」
スペルカードを手に意気込むチルノを横目に見て、内心ため息をついて立ち上がる。
魔理沙が来なくなったと思えば今度はチルノが勝負を仕掛けてくるようになった。正直、面倒なことこの上ない。
「また?前回闘ったときから十日も経ってないけど」
「うっさい!あたい前より強くなってるんだから、あんまりなめてると痛い目みる、よっ!!」
顔のすぐ横を氷の礫が掠めていく。手加減しすぎると本当に痛い目を見そうだ。
「はいはい。それじゃあ始めますか」
腰を落とし、気を練って私は氷精と対峙した。
結果はやはり、と言うべきか私の圧勝であった。
前よりもチルノが強くなっていたのは明らかだったが。
「っ……うぅ」
「どうしてそこまで強さにこだわるの?妖精としては十分な強さじゃない」
彼女は答えない。ただ拳を握り締めて俯いていた。
「チルノ?」
「……だって」
「うん?」
「だってあたい、魔理沙と約束したんだ。あたいが魔理沙と同じくらい強くなったらまた勝負するって!」
そうか、最近のチルノの強さへの執着はそういうことだったのか。
「…でも」
魔理沙は、もう。
「だから…めーりんに勝って、このお屋敷の吸血鬼にも勝てたらきっと…きっとっ、魔理沙は会いに来てくれるんだ!」
俯いた瞳から落ちた涙は、地面へたどり着く前に氷のつぶとなって風に乗り、運ばれていく。その涙を見送って、私は思い出していた。
度々、館に来ては迷惑をかけていた魔法使いがいたことを。
吸血鬼に仕え、時を操る能力を持った人間がいたことを。
彼女たちがいなくなってからいくつの夏を迎えただろうか。
「そっか」
彼女はまだ待っているのだ。魔法使いが奇跡の魔法を使うその時を。
「ねえ、チルノ」
「なに?」
「私も…また、門の前で寝てたらナイフが飛んでくるかなぁ?」
「…くるよ、きっと。メイド長真面目だもん。最近めーりんがちゃんと門番してるから、会いに来れないんだよ」
私の瞳からも涙が一筋流れる。落ちた一滴の雫は、結晶になることもなく地面に吸い込まれていった。
涙を拭いて私は笑う。
「私は寝てるだけでいいけど、チルノはもっと強くならないとね」
「…うんっ」
チルノの眼にも、もう涙は無かった。
「めーりん。魔理沙は強かった?」
「そりゃあ妹様を倒しちゃうくらいだからね。ちゃんと特訓しないと追いつけないわよ?」
私の言葉を聞いたチルノは明るく笑う。
「へーきへーき!すぐ強くなるよ!だってあたい、さいきょーだからね!」
湖の氷精は今日も闘う。
紅い館の門番を味方につけて。
星に届けと、今日も闘う。
「なあ、お前生まれ変わりって信じるか?」
「さあどうかしらね。普通じゃありえないけれど、ここは幻想郷だもの」
「じゃあ、もし生まれ変わったら何をする?」
「居眠りしてる門番にナイフを投げるわね。……そういうあなたは?」
「んー。お前んとこに本を借りに行くぜ。あぁ、でも途中の湖に邪魔な奴がいるから倒していくかな」
「そう」
しかし、互いの言葉を聞いて、互いに思っていた。
生まれ変わってその人にあったのならば、まず最初にその人を抱きしめるくせに、と。
氷精と門番の闘いが終わる日は案外近いのかもしれない。
とっても素晴らしかったです!!!
それもアリさ! 初投稿でこれはグッジョブ
>奇声を発する程度の能力 様
その日までチルノと美鈴には頑張ってもらいましょう。
>2 様
幻想郷ですもんね(・ω・)!
>3 様
長い話も書けるよう精進していきたいです。
短いながらも、いい文章でした。
廻り廻ってあなたのもとへ!
コメントありがとうございました。