満面の笑みを浮かべて咲夜が私の前にカップを置く。
「という訳で今日のお茶です」
「いやいや、どういう訳よ?」
私が首を捻るのも無理はないだろう。
なぜなら、テーブルの上に置かれたカップの中は空っぽだからだ。
「よくぞ聞いてくれました。取って置きなんですよ」
「もっとよくカップを見なさい。まだ棚かどこかに置きっぱなしになってると思うわ」
「なんと今日のはですね……」
子供の好きなお茶なんですよ。
そういって咲夜は胸を張る。
「え、何? どういうこと」
子供が喜ぶお茶と言われてもそう簡単に思い浮かびやしない。
甘みの強い味だということだろうか?
と、それ以前に……
「子供って……馬鹿にしてるの?」
「いえいえ、そんなつもりはありませんよ」
「もう、なんでもいいわ……」
時々訳の分からないことを言うのは咲夜の悪い癖だ。
どうにでもなれという投げやりな気持ちで空のカップを摘まむ。
取っ手に指を掛ける。
すると、ぐにっ、と変な感触がした。
「何これ? なんか異常にカップが柔らかいんだけど……」
「それゴムでできてるんですよ」
「ん、何? どういうこと?」
「これ、おもちゃなんですよ。地面に落とすと跳ねるんです」
そう言って咲夜は私の手からカップを取り上げると、地面に落とした。
重力に従い地面へと落ちたカップは音もなく跳ねた。
しかし、形状が丸ではないので、横へと飛んでいくのだった。
やれやれ、だ。
部屋の隅のほうへ転がったカップを拾いに行く咲夜の後姿を見てそう思った。
「どうですこれ? 面白いと思いませんか?」
「はいはい、面白い面白い……」
目の前にカップを押し付けてくる咲夜の手を払う。
咲夜が残念そうな顔をするが、それを無視して私は頬杖を付いた。
「それで、おもちゃってのは分かったから、もういいとして……肝心の紅茶はどうしたの?」
「あ、忘れてました」
私はおもちゃのカップを思いっきり床に投げつけた。
「という訳で今日のお茶です」
「いやいや、どういう訳よ?」
私が首を捻るのも無理はないだろう。
なぜなら、テーブルの上に置かれたカップの中は空っぽだからだ。
「よくぞ聞いてくれました。取って置きなんですよ」
「もっとよくカップを見なさい。まだ棚かどこかに置きっぱなしになってると思うわ」
「なんと今日のはですね……」
子供の好きなお茶なんですよ。
そういって咲夜は胸を張る。
「え、何? どういうこと」
子供が喜ぶお茶と言われてもそう簡単に思い浮かびやしない。
甘みの強い味だということだろうか?
と、それ以前に……
「子供って……馬鹿にしてるの?」
「いえいえ、そんなつもりはありませんよ」
「もう、なんでもいいわ……」
時々訳の分からないことを言うのは咲夜の悪い癖だ。
どうにでもなれという投げやりな気持ちで空のカップを摘まむ。
取っ手に指を掛ける。
すると、ぐにっ、と変な感触がした。
「何これ? なんか異常にカップが柔らかいんだけど……」
「それゴムでできてるんですよ」
「ん、何? どういうこと?」
「これ、おもちゃなんですよ。地面に落とすと跳ねるんです」
そう言って咲夜は私の手からカップを取り上げると、地面に落とした。
重力に従い地面へと落ちたカップは音もなく跳ねた。
しかし、形状が丸ではないので、横へと飛んでいくのだった。
やれやれ、だ。
部屋の隅のほうへ転がったカップを拾いに行く咲夜の後姿を見てそう思った。
「どうですこれ? 面白いと思いませんか?」
「はいはい、面白い面白い……」
目の前にカップを押し付けてくる咲夜の手を払う。
咲夜が残念そうな顔をするが、それを無視して私は頬杖を付いた。
「それで、おもちゃってのは分かったから、もういいとして……肝心の紅茶はどうしたの?」
「あ、忘れてました」
私はおもちゃのカップを思いっきり床に投げつけた。
でも子供みたいな咲夜さんがかわいいから許す。
案外、どこよりも平和なことをしてそう。