Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想郷天下一武道会_最終話

2010/06/12 04:15:44
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 さあ、ついにやって参りました準決勝!
 今回もあなたにラブリーな声で実況をお届けするのは私、射命丸文です!いたた・・・ちょっと!空き缶を投げたのは誰ですか!!


 今までの経緯なんて忘れちゃったよ、なんて言う困ったさん達はこちらへアクセス!!

 大会ルール説明と一回戦序盤:
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1270841173&log=61

 一回戦第五試合目以降:
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1272657221&log=63

 二回戦:
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1273344565&log=64

 三回戦:
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1275163074&log=65

(前書き的作者の声:本作品では過去に張っておいた伏線が発端となってちょっとした事件が起こります。過去の作品を見ていない方はもちろん、一回戦から読んでいただいている方も、斜め読みで良いので過去のあらすじを復習する事をお薦めします)


 準決勝は永琳選手VS妖夢選手、紫選手VS咲夜選手という、言っちゃあ何ですが消化試合カードで構成されています。
 しかし。しかし!!本大会は今まで実力の差を覆した試合をいくつも経験しています!

 アリス選手がレミリア選手を敗って三回戦へ出場、紫選手と好勝負を繰り広げました。
 霊夢選手がミスティア選手に敗れるなんて、誰が予想したでしょう。
 ここにいる妖夢選手本人も、一回戦でフランドール選手を敗った戦績があります。

 幻想郷でこんな事を言うのも変ですが、この大会には魔物が棲んでいます!
 実力通りに実力者が勝つとは限らない、それが無常!!

 それでは見せていただきましょう!



 準決勝第一試合!八意永琳選手VS魂魄妖夢選手です!!

「三回戦ではあなたの主に世話になったわ。お礼にこの試合であなたに稽古をつけてあげる」
「霊力ではとても叶わない。太刀筋も見切られる公算が大きい。速さでも・・・本当に本気を出されたら多分負ける。私が勝つには・・・」

 妖夢選手が勝つ道筋を何とか探そうとしていますが、果たして?


 妖夢選手二度目の逆転劇を見せてくれるのか!試合開始です!

 ん?妖夢選手が無形の位から動きません。何かの作戦でしょうか?

「どうしたの?構えなさい。もう試合は始まっているのよ」
「あ・・・はい、すみません」

 おりょ、永琳選手に指摘されると慌てて柄に手をかけました。
 ただ単にぼーっとしていただけの様です。未熟ですねぇ。


「奇襲が通用する相手とも思えない。半霊を使った分身もどきは一回戦で使ってしまった。何か・・・何か他に策は・・・」

 妖夢選手はこの期に及んで作戦を考え続けている様です。それくらい事前に考えておいてくださいよ。

「考えていましたよ。三回戦が終わってからずっと。でもまだ見つからないんです」
「あなたね・・・」

 お、永琳選手がいつまで経っても思い切りのつかない妖夢選手にしびれを切らして一矢放ちました。
 いくら何でもそんな真正面からの普通の攻撃に当たるわけ・・・

「うわっ!?」

 え、あぶなっ!
 何の変哲もない普通の矢ですが、ぼけーっとしていた妖夢選手はぎりぎりでこれを回避!


「いい加減になさい。頭を使って解決できる事なんて、世の中にそう多くないのよ。これはあなたの主の受け売りだけどね」

 ここで永琳選手から喝が入ります!そりゃそうでしょう!
 続いて妖夢選手に向かって走り出した!これはさすがに考えている場合じゃありません!

「くっ」

 妖夢選手がようやく白楼剣を抜いてこれに応戦!永琳選手の振るう弓を絶妙に裁きます!
 この辺はさすがに妖夢選手の方が手慣れているか!

「弓を裁くことはできても、反撃に転ずればかならずその隙をつかれてしまう。どうすれば・・・」
「ふざけないで!」

 おっと永琳選手ここで足の長さを活かしての蹴り!
 弓の筋に集中していた妖夢選手、これに対応できず腹部にダメージ!
 意外と堪えたようでがくっと膝を落とします!


「一戦交えている最中に考え事だなんて、相手に対する侮辱よ!もっと戦いに集中なさい!」
「それでは・・・普通に戦っていたのでは、あなたに勝つことができません・・・」
「・・・呆れた、私に勝つつもりでいたの?その実力では無理よ。そんなの諦めて、胸を借りるつもりで来なさい」

「諦める?・・・駄目です。お師匠様が残した教えの一つに、『何事も諦めるな』というのがあります。相手が自分より強いからと言って、諦める訳にはいきません」
「あらそう。あなたのお師匠様はあなたに『戦いに集中しなさい』とは言わなかったの?」
「それは・・・集中することの大事さはいつも・・・」

「あなたが今やっているのは諦めない事ではない。目の前の戦いを疎かにしているだけよ。あなたのお師匠様が今のあなたを見たら、何て言うと思う?」

「お師匠様が今ここにいたら?・・・お師匠様がここにいたら・・・そうだ、お師匠様なら・・・」


 ん、妖夢選手が楼観剣を抜きました。


「『真実は斬って知れ』と言います」


 速い!!!

 いきなり覚悟が決まったのか、妖夢選手ががむしゃらな攻撃モードへと移行!
 あまりの変化の早さに対応できず、永琳選手はひとまず防戦です!

 それにしてもいつもの妖夢選手では考えられない大振り、これではすぐに反撃をもらってしまうのでは?

「・・・」

 しかし永琳選手はなかなか手を出さない!ひたすら妖夢選手の太刀筋を見てかわしています!


「まずは合格。少し試すわよ?」

 お、ついに永琳選手が妖夢選手の大振りの隙を見て弓を横薙ぎに振りました!
 さっきから隙だらけの攻撃ばかりしていた妖夢選手の側頭部を容易に捉えます!!


 ・・・が、残像です!初めて見ました!こんなの漫画やSSとかの世界だけの現象だと思っていましたが、現実に見られるとは!!

 で、その妖夢選手は永琳選手の背後を取っています!何を繰り出すか!

「スペルカード、断迷剣『迷津慈航斬』!」

 ここでスペルカードを使っての大技です!
 大量の霊力をつぎ込まれた楼観剣の刀身が、圧倒的な攻撃力を以て永琳選手の背中を狙います!
 永琳選手は咄嗟に身を翻しました!

 楼観剣の放つ霊気の渦が永琳選手を飲み込んだ!
 永琳選手の防御は間に合っているのか!

 霊気が霧のように晴れていきます。永琳選手は・・・


 いない!?

 まさか蒸発した訳ではないでしょう、どこに行ったのでしょうか!?

「どうやら迷いは吹っ切れたようね。それでいいのよ。でも今の一撃は動きが緩慢すぎるわ。それでは私は捉えられない」

 上だーっ!!


 妖夢選手の背後からの攻撃を防ぐでもなく、あの刹那を見切って上空へ回避していました!
 たっぷりと霊気を込めた矢をつがえて前方上空から妖夢選手を狙っています!

「スペルカード、断霊剣『成仏得脱斬』!」
「なっ!?」

 妖夢選手は永琳選手の動きを読んでいたのか!?
 不意の事態にも慌てる様子を見せず、二本の剣を交差させて上空へ桜色の霊気を射出!
 永琳選手もこの反撃は予想外だった模様です!捉えたか!?

「小癪な!」

 妖夢選手へ向けて構えていた矢を、身を翻して後方へ発射!反動で前方へ移動しました!
 これは三回戦で幽々子選手のスペルカードを回避した手段!偶然の産物から既に自分の技へと昇華させています!

 ですがその後は隙だらけ!妖夢選手が飛び上がって空中の永琳選手を斬り上げます!
 さすがにこれは避けきれない!ついに永琳選手が背中に一撃もらってしまいました!!

 それ以上は互いに手を出さず、両者着地します!


「ちょっと、背中を斬るなんて酷いじゃない。どうせなら向こう傷をつけてよ、格好がつかないわ」

 あー、背中の傷は敵から逃げようとして斬られた傷ですからね。
 ちなみに私は顔だけには傷をつけて欲しくないタイプです。いたた・・・ちょっと!空き缶を投げたのは誰ですか!!顔だけはやめてくださいよ!?うわっ、追撃が・・・。

 と、おバカな事を言っている間、試合は進んでいなかったようです。
 茶番が終わるのを待っていてくれた・・・なんて事はないですよね。
 妖夢選手がじっと楼観剣の刀身を見つめています。

「斬れた・・・私が、永琳さんを・・・」

 ああ、勝算のない相手を一度でも斬れた事に感動してるんですね。でも今は試合中ですよ。

「あ、はい。斬ります!」


 え、何もそんなに突然・・・妖夢選手、私の言葉をきっかけにまた猛攻を開始!
 相変わらず大振りな太刀筋で、全て見切られています!
 ですがさっきもこの隙に攻撃を挟もうとしたところからの反撃が凄まじかっただけに、永琳選手もそう簡単には手を出さないでしょう!

「・・・良くないわね」

 お?しかし永琳選手、大きく弓を振りかぶって反撃の体勢です!

「いまだ!スペルカード、空観剣『六根清浄斬』!」

 出ました!!妖夢選手のカウンタースペルカード!
 相手の攻撃をいなして、その勢いを利用して体勢を崩させ、好き放題斬撃を刻み込む超大技です!!
 永琳選手が振り下ろす弓を、妖夢選手が構えた白楼剣でいなします・・・が!?


 弓だけが白楼剣に宙高く打ち上げられました!
 またも永琳選手がいません!
 やはり速さだけを取っても妖夢選手の上を行っています!!

「私に一撃入れた事で、調子に乗りすぎたわね。勝つことは人を止める。負けることは人を進める。あなたの為に、あなたにはそろそろ負けを知ってもらいましょう」

 その永琳選手は妖夢選手の背後だ!!妖夢選手の胴を掴んで飛び上がりました!!

「何を・・・」
「一回戦で小鬼が見せてくれた技よ。馬鹿力で叩きつけるだけの簡単そうな技だったから、多分私でもできるでしょ」

 これは萃香選手のスペルカード、鬼符「大江山悉皆殺し」ですか!?
 一度受けただけの技を見よう見まねで再現しています!!
 何と恐ろしい人でしょう、これではおちおち技も見せられません!

 萃香選手ほどの馬鹿力はないでしょうが、永琳選手が妖夢選手を高所から床に叩きつけます!
 一回!二回!!そして大きく飛び上がって・・・三回目も綺麗に決まったぁ!!!

 妖夢選手ダウン!これは勝負あったようです!!


「魂魄妖夢、戦闘不能とみなし敗北!何でも勢いだけで解決しようとする態度はお説教です!」


「『真実は斬って知れ』。いい言葉ね、大切にしなさい。その真意はそういう意味ではないのでしょうけどね」
「前も小鬼にそう言われたのですが・・・ではどういう意味で言ったと?」
「それは自分で考えなさい。お師匠様も、あなたが最初はそういう意味で捉える事を期待してその教えを授けたはずよ。あなたが成長する度にその意味が変わる・・・本当に奥の深い言葉だわ」
「は、はい・・・」

 逆転勝利こそなりませんでしたが、実力差の割にはいい勝負をしてくれたと思います!
 準決勝第一試合を制して決勝戦への切符を手に入れたのは八意永琳選手です!!

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 準決勝の二試合目は八雲紫選手VS十六夜咲夜選手!!
 一回戦から慧音選手、小町選手、パチュリー選手という顔ぶれを何とか敗ってきた咲夜選手、ここで最大の壁を迎えます!
 しかし準決勝まで登り詰めたこの状況、おいそれと負けてしまうにはあまりにももったいない!
 咲夜選手、何か勝算はありますか?

「勝算?なくはありませんが、皮算用程度ね」
「あら、楽しいこと言ってくれるのね」

 お、これは少し期待させてもらいましょう!


 紫選手の境界を操る能力に、咲夜選手の時間を操る能力は打ち勝つことができるのか!試合開始です!

「とりあえず、少し実験させてもらいます」

 先攻は咲夜選手です。天井に向かって投網のようにナイフを投げつけました。
 ナイフが天井で跳ね返って紫選手へとその向きを変えます。

「これが何?何かの布石かしら?」

 見え透いた攻撃に勘繰りながらも紫選手が自らの頭上に早速スキマを開きました。
 咲夜選手が放ったナイフは吸い込まれるようにその中へ入っていきます。

 本当にこれが何だと言うのでしょう?

「思った通りだわ。試す価値はありそうね」

 ???
 咲夜選手がたったあれだけのやり取りで何かを掴んだようです。
 一体何の実験だったのでしょうか?


「さぁ、これからが本番よ」

 何だかよく分かりませんが実験終了の様です!
 咲夜選手がいつものように消えました!

 そして現れたのは紫選手の前方上空!
 ナイフの束を高速でまとめ投げです!
 だが紫選手はまたスキマを開いて難なくこれを排除!

 っと、既に咲夜選手の姿がありません!
 今度は紫選手の後ろだ!
 ナイフを一旦床に反射させる軌道で投げつけますが、もちろんこれもスキマの中へ!
 それも気にせず咲夜選手はまたワープして行きます!


 ・・・これが咲夜選手の作戦でしょうか?
 さっきからワープとナイフ投げを繰り返しています。
 ある時は直線的に、またある時は床や天井の反射を経由して紫選手を狙っていますが、果たしてその意図は?

 一方、紫選手はスキマを開いてそれらナイフの全てを異空間へ吐き出させています・・・が、その姿に何か違和感を憶えているのは私だけでしょうか?


 ・・・あ!分かりました!!

 紫選手の表情が真剣味を帯びています!!
 今までの試合ではずっと余裕の万年微笑を浮かべながらあしらうように戦っていた紫選手が、準決勝に来て初めてちょっとだけ真面目な顔を見せました!!
 一体何があったと言うのでしょう!?


「いたっ」

 おっとー!!
 咲夜選手のナイフがついに紫選手に刺さりました!!
 紫選手、自慢のスキマはどうしたのか!?

「面倒くさい投げ方をするのね」
「最初に私がナイフを投げた時、あなたはその軌道を目で確認してからスキマを開いた。それを見て確信したわ。あなたが無敵のスーパー神様妖怪じゃないってね」
「何よ、そのダサい肩書きは」
「私が言いたいのは、あなたも五感に頼っているという事です。常にあなたの死角に立つ事を心懸けながら、音を出したり出さなかったり、とにかくあなたの五感を混乱させる事に専念したのよ」

 これは意外、紫選手もしっかりナイフの軌道を見切らないとスキマに導入できない様です!
 それを見抜いた咲夜選手、幻惑的な作戦で見事紫選手のスキマを抜いて攻撃する事に成功!


「そう。あなたなりに考えたのね。でも勝算と呼ぶにはあまりにも希薄な計算じゃないかしら?」

 紫選手が印を結び始めました。結界を形成する気です!
 しかもこの時間のかけ方はちょっぴり本気の結界ですよ!
 結界に守られてしまっては死角もかかしもありません、咲夜選手のナイフでは到底破れない代物になるでしょう!
 咲夜選手、ナイフを投げて紫選手の邪魔に入ります!

 が、一歩遅かった!!
 咲夜選手のナイフが形成されたばかりの結界に封じられて落ちていきます!
 紫選手は鉄壁の結界に包まれてしまった!!
 さぁこうなってはナイフでは手も足も出ません!どうする咲夜選手!!

 ・・・あれ?咲夜選手?


「この時を待っていたのよ」
「?」

 あーっ!咲夜選手、ナイフで結界妨害のポーズをしつつも、ちゃっかり自分は結界の内部に入り込んでいます!!
 結界形成の瞬間に時間を止めて入り込んだのでしょう!
 恐るべし時間を操る能力、まさに何でもあり!!

「あなたのスキマはさして脅威ではない。本当に押さえなくてはならないのは、あなたの結界展開能力。これを張られたら、私のナイフでは破りようがないわ。でも今のあなたは、殻をもがれたカタツムリ。・・・この試合、勝たせてもらうわよ。スペルカード、傷魂『ソウルスカルプチュア』!」

 咲夜選手がこの機を逃さず一気に勝負に出ました!!
 今までの試合の多くで決め技としてきた、至近距離からのナイフ乱撃!
 しかもこれは咲夜選手の持つナイフ乱撃技の中では最上位の攻撃力を誇るスペルカードです!
 これで紫選手からダウンを奪うことができるか!?



「あなたね・・・」

 だめだーっ!!
 紫選手には傷一つついていません!!

「多重結界って知らないの?結界を一枚抜けただけで喜んじゃって、可愛いとこあるじゃない。でもね、『スキマが脅威じゃない』なんて、百年早いわ。スペルカード、幻巣『飛行虫ネスト』」
「しまっ・・・」

 紫選手、スキマが脅威じゃないと言われてちょっとカチンと来たのか嫌みっぽくスキマをふんだんに使ったスペルカードで至近距離から反撃!
 すでに結界の内部に入り込んでしまっている咲夜選手、逃げ場を失い弾幕を真正面から全てもらってダウン!!


「十六夜咲夜、戦闘不能と見なし敗北!完全完全と自信過剰な態度はお説教です!」

 今回も紫選手相手に逆転勝利を収める選手は現れず!
 傍目には惜しそうに見えたのですが、やはりそこには大きな実力差の溝が走っている様です!

 準決勝第二試合は八雲紫選手の勝利!大方の予想通り決勝戦へ進出です!!
 結局、準決勝の二つの試合は両方とも実力者が勝ち進む結果となり、逆転劇はありませんでした。
 ですが私は、決して諦めることなく良い試合を見せてくれた妖夢選手と咲夜選手にも惜しみない拍手を送りたいと思います!

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 さぁ皆様、大変長らくお待たせいたしました。
 ついにこの時がやって参りました。

 幻想郷で一番可愛いのはこの私!では幻想郷で一番強いのは誰なのか!!いだっ!!!つつつ・・・ちょっと!投げるならせめて空き缶にして下さい!中身入ったままとか何考えてるんですか!!
 何気ないお茶目な発言に突っかかって来るんだから、やんなっちゃう・・・おーいた。
 もう、いちいち進行を妨げないでもらえます?えっと、何でしたっけ・・・?

 そう、そうです!決勝戦です!!
 まるで一日で行われたとは思えないほど長き戦いの締めくくり!
 幻想郷最強の名を戴き、己の願いを叶えるのは一体どちらか!!

 一回戦から並みいる強豪達を退けてきた八意永琳選手か!!
 その反則級の強さで全ての敵を一笑に付すが如く下してきた八雲紫選手か!!

「私は優勝する。例えあなたがどれだけ強かろうとも」
「ふふ、あなたは頭が良すぎて酷なほど分かってしまうのね。私に勝つのがどれだけ困難か」

 試合前から永琳選手に少し気合い負けの感がありますが、その頭脳が勝利への道筋を算出していない訳がない!


 ここに集まった全ての名勝負を締めくくっていただきましょう!決勝戦、試合開始です!!

「いきなり手の内は見せないわ。まずは・・・」


 永琳選手がまず矢を放って先制攻撃!紫選手は今まで通り一歩も動かずスキマを開きます!
 そんな事を言っている間に永琳選手は既に紫選手の背後に回り込んで弓を引き絞っている!
 間髪入れずもう一矢放ってまた移動!

 ・・・ってこれはまさかさっきの準決勝で咲夜選手が取ったのと同じ作戦では??

「有効な手段があると分かっているなら、まずはそこから攻める。切り札を使い始めるのはその後よ」


 えー?永琳選手それでいいんですかー?つまんなーい!
 紫選手相手にもそう簡単には本気を出さない永琳選手、さきほどの咲夜選手同様、矢を放っては移動を繰り返しています!

「蒼蠅驥尾に付して千里を致す。二番煎じは楽して成功できるけど、やってる本人は蠅並なのよ」

 気のせいか紫選手、さっきより余裕のあるスキマ裁きで永琳選手の攻撃を防いでいます。

「咲夜がうまくいったのは時間を止めて移動していたから。でもあなたは単に素速く移動しているだけ。簡単に目で追えるわ」

 ほら永琳選手、もうそれ見切られてますよ!
 出し惜しみしてないでもっと真面目に戦って下さいよ!


「私は最初から大真面目よ。ここで最後・・・」

 ほえ?永琳選手が懐から小瓶を取り出して中の液体を足下に一滴垂らしました。
 何してるんですか?

「知ってる?あなた月の都ではかなり煙たがられているのよ。穢れた地上の者共を、その『スキマ』とやらを使って月に送り出した厄介者」
「懐かしいわね。千年以上も前の話よ」
「その事件の後、再び穢れた者が侵入してくるのを嫌った月の都では、あなたの能力についての研究を始めた。その研究内容については又聞きでしか知らないけど、千年以上続けているのに成果は芳しくないみたいね」
「そう。それは嬉しいわね。で、何が言いたいの?」
「私は伝え聞いたその研究内容に興味を持った。そして永い地上暮らしの中、暇に任せて一人で研究を重ねていたのよ。ついには月の研究を上回り、一つの成果を挙げた。それが今垂らした薬」

 ん、永琳選手が床に手をついて何やら詠唱しだしました。


 おおおおお、これは!?
 リング上全体が青白く輝き始めました!
 床に描かれているのは魔法陣!いつの間に描いたのでしょう!

「さっき。四方から矢を放ちながら、少しずつ必要な場所にこの薬を垂らして魔法陣を描いたのよ。わざわざ動き回ったのはその為。そうでなければ私が地上人の小娘の真似事なんてする訳ないでしょ」

 で、ですよね!私信じてました!

 さあこれから何が起きるのでしょうか!?
 リング上の光が徐々に・・・弱くなって・・・?
 あれ?もう終わりですか?何も起きていないように見えます。
 まさか失敗なんて事はないですよね。

「さあ?成功か失敗か、少し試してみましょう。この薬の初めての臨床試験、うまくいくかしらね」


 え、臨床試験って・・・永琳選手がまた弓を構えて矢を放ちました!
 今更真正面からの射撃、こんなもの簡単にスキマの中へ・・・

「つっ・・・!」

 え!?紫選手、スキマを開かずにそのまま矢を受けてしまいました!!
 これが永琳選手の魔法陣の効果でしょうか?一体何が起きたのでしょう!?

「どうやら、臨床試験は成功のようね」
「なるほどね。味なマネしてくれるじゃないの・・・」

 え?え?何ですか?実況にも分かるようにちゃんと説明して下さい!

「私が今使ったのは、名付けて『時空間縫合の法』。あなた如きに原理を説明しても分からないだろうから結果だけ言うと、このリング上のどこにもスキマを開けなくしたのよ」

 「あなた如き」って・・・むきーっ!でも実況的には確かにその方がありがたいんですけどね。
 んで、スキマを開けなくした!?そんな事ができるんですか?

「ええ、できているみたいね。さっきからどうやってもスキマが開けない」
「スキマはおろか、境界を操る能力は何も使えないわ。結界一つとっても大幅に強度が落ちるはず」

 ・・・すごい!すごいです、これは紫選手の戦闘力がぐんとダウン!!
 勝負が分からなくなりました!!


「あなたと対峙する際、一番怖いのはその境界を操る能力。仮にどんなに押せたとしても、あなたがその気になれば私と私以外の境界を消してしまうことで、私という存在を空間に溶かすこともできる。この状態になって初めて勝算が生まれるのよ」
「もう御託は結構よ。私が強いかあなたが強いか、たけくらべをすればいいんでしょ。無粋なのは嫌いなんだけどね」

 おやおや紫選手、能力を封じられて少しご機嫌斜めですか?

「何もそこまで短絡的にならなくてもいいのに。・・・でもいいわ、それもあなたなりの『焦り』なのかも知れない」


 さぁ最終試合、最終局面の火蓋が切って落とされました!
 永琳選手の策にかかってスキマを使えなくなった紫選手、ここで幻想郷の大妖怪としての真価が試されます!!

 永琳選手はいつものように弓を構えて矢をつがえ、霊力を込め始めました!
 一方紫選手は扇子を取り出しました!こちらも扇子を媒体として妖力をつぎ込んでいるようです。

 両選手ぐんぐんと力を溜め込んでおります。


 これは・・・両者凄まじい力です!まだ溜め続けている最中で放たれてもいないのに、会場には霊気と妖気の風が吹き始めています!
 こんな大きな二つの力が正面からぶつかりあって大丈夫なのでしょうか!?

 力に自信のない妖怪さん達は観客席から避難して下さい!
 審判さん、一旦この実況席に入って下さい!
 霊夢選手、客席に結界を張ってあげて下さい!
 他にも他人を守るだけの余裕がある方はご協力お願いします!

 ・・・嵐が来ますよ!!


「そろそろ私の霊気ほぼ全てをこの矢に託し終わったけれど・・・もう放ってもいいかしら?」
「私に聞くの?好きになさい」
「そう?では遠慮なく。勝負・・・!!」

 放ったぁーっ!!
 もはやリング上の半分を埋め尽くす程の青白い霊気に包まれた矢が、真っ直ぐに紫選手へ向かって発射されました!!
 紫選手も扇子を前方に振りかざして、溜め込んだ紺色の妖気を一気に放出!!こちらもリング上のもう半分を埋め尽くしています!!
 二つの巨大な力が今、リングの中央でぶつかりました!!

 まぶしい!!この幻想郷でも滅多にお目にかかれない程のとてつもない力が、二つも揃って、しかもそれらがぶつかって反発しあっています!
 遡れば幻想郷天下一武道会と言っても、最初からこの二人が戦えばそれで優勝は決まっていたのかも知れません!
 大会の存在意義すら否定する、規格外のぶつかり合いを制するのはどちらなのか!!
 現状では全く互角!!両者の気の境目がリングのちょうど中央にくっきりと現れています!!

「まだよ!」

 あーっと!!
 紫選手が妖気をさらに追加しました!まだ力を残していたというのでしょうか!!
 いずれにせよ、これは矢を霊力媒体とした永琳選手にはできない芸当!矢は既に放たれて永琳選手の手を離れています!!

 当然の結果として永琳選手の矢が押し返され始めた!!
 少しずつですが、確実に紫選手の妖気が永琳選手の霊気を押していきます!!

 もうリングの七~八割が紫選手の放った紺色の妖気で覆われています!
 さすがの永琳選手もこれは万事休すか!!


「頃合いね」


 ・・・え!?

 これは負けを認めたに等しい行動か!?
 永琳選手、この土壇場で空中へ逃走しました!!
 紫選手の妖気はいなされる形で場外へ飛び出し、壁面を跡形もなく破壊!!
 思わず背筋が凍りつく程の破壊力です!!

 とりあえずこれで力のぶつかり合いは終わりました。
 皆さん、無事ですか?


 さて永琳選手、今の回避は降参ということですか?

「降参?どうしてそうなるの?私は相手が放った弾幕をかわしただけよ」

 え、ちょっと!今のをただの弾幕と言い張るんですか?

「忘れたの?二回戦で姫が説明して下さったでしょう。私はまず相手の力を消耗させる戦略を基本スタンスとしているのよ。膨大な相手の妖気を一気に消費させるにはあの方法が一番手っ取り早かった。」

 ちょっと待って下さい、話を整理させて下さい。
 じゃあ、じゃあ、最初から紫選手に妖気を空撃ちさせるつもりで今の力比べをしたんですか?

「まあ、端的に言えばそういう事ね」

 えー!!私も、観客も、リスナーの皆さんも、みんなこれが最後の力のぶつかり合いだと思って、熱い想いで見届けていたんですよ!
 それに、そのために永琳選手も極限まで霊気を消耗してしまっては意味がないのでは?

「もちろん、それなりの代償にはなるわね。でもそのために勝算を失くすような事を、私はしない」


 むむむ・・・。
 とにかく、永琳選手が袖から紙の包みを取り出しました。中身は粉薬の様です。

「これは優曇華という名の植物の根っこをすり下ろした粉末よ。これを甘酒に溶かして薄めたものが『国士無双の薬』。粉末のまま服用すると、また面白い効果が得られるのよ。用法用量を守れない娘にはとても渡せない代物だけどね」

 永琳選手がその謎の粉薬を躊躇もなく一気に口へ流し込みました。

 おおおおお!!
 さっき霊力を使い切ったはずの永琳選手に力が戻っていくのが私からでも分かります!
 これが粉薬の力!恐るべし東洋医学の神秘!!


「私のスキマを封じた時といい、正面からぶつかる振りして自分は奥の手を持っておいたり・・・あなたって策士と言うよりは、意外と老獪なのね」
「姫のご命令を忠実にこなす為により確実な方法があるのに、それを体面だの信頼だのを気にして使わない程、私は器用ではないのよ。・・・でも、後三分」
「三分?」
「今飲んだ薬の副作用よ。飲んですぐに強力な力を得られる代償として、三分後に私は全ての力を失って気絶する。その時あなたが負けていなかったら、私の負けよ」

 おっとここで永琳選手が衝撃のカミングアウト!!
 紫選手は三分逃げ回ればそれで優勝を手にできます!!
 永琳選手、ここで最後の賭けに出ました!!

「へぇ、面白い薬ね」
「そうね。だからおしゃべりはここまで。もう一分くらい経っているかも知れないわ」

 しかし紫選手は先ほどの張り合いで妖力の大半を使い果たしてしまったと思われます!
 スキマも封じられたこの試合で、永琳選手の全力での猛攻を三分間もしのぎきることができるのか!!


「・・・行くわよ」

 永琳選手が踏み込んで一気に距離を詰めました!
 もう矢を絡めて追い込むようなまだるっこしい戦いはしません!
 今の力の差を最大限に活かした接近戦で、紫選手を叩き伏せるか、場外へ追いやるか、いずれにせよ三分で勝負をつけなくてはならない!

 まず弓を斜めに振り上げる!紫選手体を斜に傾けてかわしました!
 次に弓の振り上げから一回転して横に薙ぎ払い!これも屈んでかわした!
 そこで永琳選手がいつの間にか左の掌底に溜めていた霊気を、屈んだ紫選手の顔面にお見舞いします!
 弓の挙動に目を取られていた紫選手は咄嗟に扇子でこれをガードするも、防ぎきるだけの妖力が足りない!
 衝撃を抑えきれず吹っ飛ばされました!

 これは危なかった、着地したのはリングの端ぎりぎり!あわや場外負けです!


 私の感覚では現在恐らく一分半程度が経過していると思われます!
 しかし紫選手は既にリング端まで追いつめられてしまった!
 やはり全力を取り戻した永琳選手の猛追を三分間も防ぎきるのは、妖力を使い果たした紫選手には難しいのか!

 それに紫選手といえば千年以上も前から幻想郷に君臨する古参の妖怪、いわばオバサン!
 私のようなピチピチギャルならともかく、体力にも限界があります!いたた・・・ちょっと!空き缶を投げたのは誰ですか!!
 クライマックスなんですから私の言葉尻なんか気にしてないで試合に集中してくださいよ!


「・・・・・・」
「この期に及んでよそ見だなんて、諦めが入ったのかしら?」

 永琳選手がリング端の紫選手に向かってとどめの突進!
 もう逃げ場もありません、ここで試合は終局か!?


「・・・スペルカード、廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!!」


「なッ・・・!?」


 そんなバカな!!!

 紫選手が封印されているはずのスキマを開いて巨大な電車を召還!!
 不意をつかれた永琳選手は足を止めることができずそのまま電車に撥ねられてしまいました!!!
 三分以内に攻めきる事だけを意識していた永琳選手、まさか反撃を受けるとは夢にも思っていなかったでしょう!!
 無力に宙を舞う永琳選手、これは勝負ありました!!!

「八意永琳、戦闘不能と見なし敗北!あなたの忠誠心は見上げたものですが、そのために視野が狭くなる嫌いがあります。お説教です!」


 でも何で?スキマは封印されていたはずでは!?

「あなたのおかげよ」

 へ?私ですか?

「この張りつめた局面でのあなたのふざけた発言にイラッとした私は、思わずスキマから空き缶を落とした。封印されている事も忘れてね。それで気付いたのよ。この魔法陣・・・すなわちリングの外ならスキマを開ける事に」

 そうか!!紫選手がスキマを開けないのはそのリング上に描かれた魔法陣の上だけ!
 裏を返せば紫選手本人が魔法陣の中にいてもその外には好きなだけスキマを開ける!!
 それを利用して場外にスキマを開いて電車を呼び出したんですね!!!

 ・・・って、空き缶を投げたのはあなただったんですかあああああ!!!


「姫、申し訳ありません・・・しくじってしまいました・・・」
「許さないわよ。私の命令に背くなんて」
「・・・。申し訳・・・」
「罰として、これからも私に仕え続けなさい。永遠に。優勝で叶えられた願いではなく、あなたの意志で」
「姫・・・・・・畏まりました・・・」

 輝夜選手に抱きかかえられたまま、永琳選手が自ら飲んだ薬の副作用で眠りにつきます。
 振り返れば永琳選手には一回戦から数々の名勝負を見せていただきました。
 今はゆっくりとお休みください、良い試合をありがとうございました!

 決勝戦は、様々の策に翻弄されながらも最後の最後でまさかの大逆転、結局はその実力を見せつけた八雲紫選手の勝利です!!

******************************

 これを以て、第一回幻想郷天下一武道会の優勝者は、八雲紫選手に決・・・


「ちょっと待ったー!!」


 ちょっ、誰ですか!!
 こんな申し分のない優勝者に待ったをかけるのは!!


「私はまだ負けてないぜ!!」


 「負けてない・・・『ぜ』」?そんな事を言うのは!!

 霧雨魔理沙選手!!

 箒に乗って入場口から乱入です!!


 何なんですか今更!!
 負けてないって、あなた第二話できっちり負けたじゃないですか!!

「負けたって、何で?」

 何でって、えっと・・・そう、紫選手のスキマで場外に出されて!!

「場外に出たらそれで場外負けなのか?」

 当たり前でしょう!!第一話で解説したでしょ!このルールブックにもしっかり、「30m四方のリングの外に体の一部が接触」って・・・あ・・・。

「私がリングの外に接触したところを誰か見たのか?」

 そ、それは・・・。

「断言してもいい。私は魔法の森に追い出されてから、ただの一度も、どこにも何にも触れずにここまで帰って来た。さとりを連れてきてウソ発見してもいいぜ」

 えっと・・・えっと・・・審判さん、どうしましょう・・・。

「・・・今回の事は、霧雨魔理沙が場外に着地した事を確認していないのに審判を下した私に責があります。ここは、第一回戦の八雲紫VS霧雨魔理沙の試合がまだ終わっていないと見なし、再戦する事を許可します。勝った方を優勝としましょう」

 えええええ、審判さんちょっとそれはいくら何でもやりすぎとちゃいまっかあああ!!

「え、ちょっと待て。それはおかしいだろ」

 そ、そうですよね!いくら魔理沙選手でもおかしいって思いますよね!

「私がまだ負けていないのに、試合が終わったと思って紫はリングから降りたんだろ?それなら私の勝ちじゃんか」

 おいちょっとお前調子乗んなああああああ!!!

「こら、図に乗らないの!本来ならリングからあれだけ長時間離れていたんですから戦闘不能と見なしてもいいんですよ!」

 そう!そうですよ戦闘不能です!!


「ほー、そうとるのか。じゃあ仮に戦闘不能だったとして、実際にお前はあの試合で私がなぜ敗北したとジャッジしたんだっけ?」
「場外に着地したと思われるため敗北と・・・」
「でも本当は戦闘不能のため敗北だって言いたいんだろ?」
「そうです」
「敗因のジャッジを間違えたのか?」
「そ、それは敗因が何であろうとその後の展開に差し支・・・」
「ま・ち・が・え・た・の・か?」
「ま・・・間違えました」
「ふぅん」

「・・・何ですか」
「別に。私が場外に接触したところを見てもいないのに、場外に接触したと断言しちゃったんだよな?」
「はい・・・」
「でも私は場外に接触なんてしてないぜ?」
「それはさっき聞きました!」
「私に対して何か言いたい事はないのか?」
「ありません!」
「ふぅん」

「私を非難するつもりですか」
「とんでもない。ところで前に私が嘘つきだって言って説教してきた事があったよな」
「はい。あなたの嘘つきは目に余るものがあります」
「でも今日はお前が、みんなの目の前で、ウソの判定を言っちゃったんだよな?」
「う、ウソとは人聞きの悪い!」
「じゃあ本当なのか?」
「それはその・・・真実でない事を言うのと、嘘をつくのとは違います」
「ふぅん」

「一体何が言いたいんですか」
「いや、特に何も。公明正大だっけか?」
「はい」
「ふぅん」


「だああああもう、鬱陶しい!!!八雲紫、場外に着地したため一回戦で敗北!以降、霧雨魔理沙の代理として本大会を勝ち抜いたため、霧雨魔理沙の優勝とします!これで文句ないですか!!」

 ちょ、ちょっと待って下さい、落ち着いて下さい!!!第一、紫選手がそれで納得するわけ・・・

「別に私は構わないわよ。決勝戦はそれなりに楽しめたし、他人に願ってまでわざわざ叶えたい願いもないしね」
「やりぃ、楽して優勝したぜ!これが勝ち組ってやつだな」

 そんなぁ!
 何だか今までの試合がばかばかしく思えてきました・・・一体あの数々の熱戦は何だったんでしょうか・・・。



 大変遺憾ではありますが、第一回幻想郷天下一武道会の優勝者は、霧雨魔理沙選手に決定です!!

「よーし、私が幻想郷で最強だぜ!やっぱりスペルカードはパワーだな、うん」

 ぐぬぬぬ、私は参加していないというのにこの異常な悔しさは何なのでしょう!


 そして、とっても釈然としませんが大会ルールなので、魔理沙選手の願いが叶ってしまう事になります。
 聞きたくもないですが、実況の最後の仕事として魔理沙選手が叶えたい願いを聞いてみましょう!
 魔理沙選手、一体何を願うんですか?

「おっと、そこまで考えてなかったぜ。困ったな・・・何か楽しい事が起こってくれればいいんだけどな」

 はあ?それが願いですか?もっと具体的にしておかないと後悔するかも知れませんよ?

「そうか?じゃあ、そうだな・・・大会参加者全員の願いを叶えてくれ」

 ・・・。

 はああああああああああああ!?
 ついに滅茶苦茶言い出しましたね!?

「そうそう、滅茶苦茶な事が起こって楽しそうじゃんか。私は博愛主義者だぜ」

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 皆様、私の今の気持ちはお察しいただけるでしょうか!!
 いえ、きっと皆様も同じお気持ちだと思います!!
 数多の名勝負を繰り広げたこの幻想郷天下一武道会が、最後の最後で普通の魔法使いにかき回されてしまいました!!
 そしてその願いたるや、今後も幻想郷をかき回すことになるでしょう!!

 ですが、私は諦めません!!
 未だに予定すらありませんが、第二回幻想郷天下一武道会が開催された暁には、必ずや真の強者が優勝を勝ち取る事と固く信じております!!
 またその時にお会いしましょう、さようなら!!!

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 エンディングへ続く
 魔理沙は大変なものを盗んでいきました。大会の優勝です。


 というわけで、約二ヶ月にわたる連載の末、優勝したのは魔理沙でした。皆さん、予想は当たっていましたか?

 と言っても、回を追う毎に読者の減っていったこの尻すぼみシリーズのことなので、ここまで読んで下さっている方は一人もいないかも知れません・・・。
 我慢してここまで読んだあなたは天然記念物ものです。記念に何かコメントを残していって下さいね。


 魔理沙の優勝はだいぶ前から予定しており、そのために一回戦で魔理沙とぶつかった紫が実質的に優勝する必要がありました。
 本当を言うと三回戦の紫VSアリス戦で、アリスを勝たせたかったんです。
 そうすれば準決勝と決勝でさらに二つ人格が増えて、「七色の人形遣い」が誕生していたのですが・・・。

 あと、最後に優勝を賭けて魔理沙VS紫の再戦というシナリオも考えていました。
 結構最近までそのつもりだったのですが、永琳VS紫を書き終えた時点でやめました。
 永琳VS紫は自分なりに割と満足の行く仕上がりに出来たと思っていて、この後に魔理沙VS紫をくっつけても盛り上がらないと判断したからです。
 それくらいだったら、おまけ的に「優勝者」の肩書きだけ魔理沙にすり替わった方がマシだろうと。

 決勝まで永琳を残したのは、紫が魔理沙と対戦するとしたらその時に紫が疲弊している必要があったからです。
 でなきゃ非想天則に出ていない、書きにくいキャラをいつまでも勝ち続けさせません・・・。
 少なくともスキマがある以上魔理沙に勝ち目はないと思っていて、スキマを封印できるとすれば永琳くらいだろうと考えてこのような決勝戦カードになりました。
 魔理沙優勝を決める前までは、決勝戦は幽々子VS紫の友人対決のつもりだったんですけどね。


 さて、最後まで読んで下さった奇特な方の為に、「エンディング」としてもう一作品用意しましたので、この後に連続投稿します。
 大会終了後の幻想郷の様子を描いたので、原作東方STGのエンディングを見ているつもりで読んで下されば幸いです。
 サントラ持ってる人は、「暮色蒼然」でも聞きながら読んで下さい。


  大会の軌跡

 一回戦

八意永琳○-×伊吹萃香 蓬莱山輝夜○-×藤原妹紅 橙×-○チルノ 風見幽香×-○西行寺幽々子
フランドール・スカーレット×-○魂魄妖夢 メディスン・メランコリー×-○因幡てゐ リリカ・プリズムリバー○-×リリーホワイト 紅美鈴×-○鈴仙・優曇華院・イナバ
霧雨魔理沙×?-○?八雲紫 八雲藍○-×ルナサ・プリズムリバー メルラン・プリズムリバー×-○アリス・マーガトロイド レミリア・スカーレット○-×リグル・ナイトバグ
ルーミア×-○小野塚小町 上白沢慧音×-○十六夜咲夜 博麗霊夢×-○ミスティア・ローレライ レティ・ホワイトロック×-○パチュリー・ノーレッジ


 二回戦

八意永琳○-×蓬莱山輝夜 チルノ×-○西行寺幽々子 魂魄妖夢○-×因幡てゐ リリカ・プリズムリバー×-○鈴仙・優曇華院・イナバ
八雲紫○-×八雲藍 アリス・マーガトロイド○-×レミリア・スカーレット 小野塚小町×-○十六夜咲夜 ミスティア・ローレライ×-○パチュリー・ノーレッジ


 三回戦

八意永琳○-×西行寺幽々子 魂魄妖夢○-×鈴仙・優曇華院・イナバ 八雲紫○-×アリス・マーガトロイド 十六夜咲夜○-×パチュリー・ノーレッジ


 準決勝

八意永琳○-×魂魄妖夢 八雲紫○-×十六夜咲夜


 決勝

八意永琳×-○八雲紫


 我ながらよくこれだけ書いたな・・・。省略した試合を除けば全28戦。登場キャラ32人。そそわSSの中でも屈指の登場キャラ数ではないでしょうか?
 面白さを維持できなかったのが残念。
 第一話のコメントで「最後まで書くことに意義がある」的な事を言ってもらえたので、質より量でここまで走れました。
 その方に限らず、コメントを頂いた全ての方、誠にありがとうございました。
アデリーペンギン
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
完走お疲れさまでした。
そういえば永琳って薬効かない気がしたな・・なんて。
でも面白かったです。やり遂げることはいいことだ。
2.名前が無い程度の能力削除
魔理沙の優勝はいいですね、意外で面白かったです
でも紫さんすごいですっていう二次創作の展開はもう飽きましたよ
そろそろ原作描写との乖離が甚だしくなって来てますよね、こういうの
スキマだって、そんなになんでもできる能力でもなさそうですけどね
3.奇声を発する程度の能力削除
お疲れ様でした!
4.ぺ・四潤削除
な、何だってー!! こんな予想当たるか!!
過去作を読み返してきた。確かにその通りだった。
成り行きで書いたのでなく最初からそのつもりで書いていて最後までやり遂げたことを評価します。
文ちゃんの何処からともなく入るツッコミが好きでした。あれゆかりんだったのかww
ともかくお疲れ様でした!