第3話
あの後、霊夢は神社に帰り、紫は俺に幻想郷の文化や歴史について簡単に教えた後、いつの間にか居なくなっていた。
「まあ、何かあったら神社に来なさい。お賽銭を入れてくれたら、お茶ぐらいは出してあげるわ。」
と、言って霊夢は飛んで行った。
霊夢が飛んだ時はかなり驚いた。後で霖之助に聞いたところ、幻想郷で空を飛ぶということはそう珍しいことではないらしい。
そして、幻想郷の主要人物達はそれぞれ「能力」と呼ばれるものを持っているそうだ。
霊夢の能力は「空を飛ぶ程度の能力」らしい。だから空を飛べるのか。
・・・唐突だが俺は結構視力がいい。霊夢はおれの斜め45度あたりを飛んでいて、俺はそれを下から見ている。
となると当然スカートの中も見えるわけで。
「・・・ドロワーズか」
「さてと、これからどうしようか。」
あの後、どこかから針が飛んできて右の耳たぶを貫通した。
・・・・首を傾けて避けていなければ鼻頭あたりに刺さっていただろう。久しぶりに冷や汗をかいた。
幻想郷の巫女は伊達ではないか。恐ろしいな。
しばらく幻想郷に滞在することに決まったが、当然のように住む場所はなく金もない。
「ひとつ提案がある。」
霖之助が言う。
「君がこちらに来た時に一緒に色々な道具も降ってきただろう?」
痛む耳たぶを抑えながら答える。
「ああ、俺の部屋にあったものだな。」
「あの道具達を、僕に売ってくれないか?」
・・・・ああ、そういえば古道具屋の店主だとか言ってたな。
「「香霖堂」は主に外の世界の商品を扱っているんだ。普段はある場所に落ちている道具を拾っているんだが、どれも状態があまり良くなくてね。」
幻想郷は忘れられたものが行き着く場所。そんな場所に落ちてくる外の道具は碌なものではないだろう。
壊れて捨てられたものであったり、曰くつきのものであったり。
「さっき少し見せてもらったが、あの道具達は非常に保存状態がいい。僕から見ればのどから手が出るほど欲しいものなんだ。・・・どうだい?」
「ふむ・・・」
紫の話を聞く限り、幻想郷には電気がないようだ。
部屋にあったものは殆どが電気を使って動くものなので、此処では使えないだろう。
「・・・・わかった。売らせてもらうよ。」
俺がそう言うと、霖之助は本当にうれしそうな顔をした。
「!!・・ではさっそく。」
そう言うと、道具がある場所へ走って行った。
・・・新しいおもちゃを買いに行く子供のようだ。
俺は苦笑しながら霖之助について行った。
「・・・全部でこれくらいだね。」
そう言って霖之助が渡してきた古い電卓にはかなりの額が映し出されていた。
「・・・随分高いな、正直予想外だ」
「どれも幻想郷では手に入りにくいものばかりだ。それくらいはするさ。」
霖之助はとても満足そうにしている。
・・・こいつも相当変わってるな。
「・・・全て現金にすると、かなり嵩張るな。」
あまり荷物は増やしたくないんだが・・
「なら、代金のいくらかは物々交換で支払う、というのはどうだい?」
「物々交換?」
「ああ、この店には服から武器まで一通り揃っている。君の役に立つものもあるかもしれないよ。」
「成程。」
妖怪のいる幻想郷に住むのだから護身のための武器か何かを買っておくべきか。
「そうだな、護身用の武器か何かが欲しい。見せてくれないか?」
「武器か、わかった。ついてきてくれ。」
霖之助について奥へ行くと倉庫のような所に着いた。
そこには、日本刀、槍、ナイフ、などといった武器が所狭しと置かれていた。
銃や何だかよくわからないものも置かれている。
「雅人は何か武術をやっているかい?」
「ああ、父から古武術を習っていた。武芸十八般、何でもござれだ。」
「古武術か。外の世界ではもうほとんど途絶えてしまったと聞いたが。」
「うちの爺さんは戦争へ行ってもしぶとく生き残ってな。何とか俺の代までやってこれたんだ。」
成程、と霖之助が頷く。
「じゃあ自由に見てくれてかまわないよ。気に入ったものがあったら僕に言ってくれ。」
「わかった。」
「霖之助、これはなんだ?」
指輪の様なものを手に取る。
「ああ、それは・・硬化の指輪だね。ルーン文字が刻まれていて、体を硬化させるマジックアイテムだ。」
「へえ・・なかなかよさそうだな。付けてみてもいいか?」
「ああ、構わないよ。」
指輪をはめてみたが何も起こらない。
・・・どうやって使うんだこれ?
「・・・霖之助」
「僕の能力は「道具の名前と用途がわかる程度の能力」だからね、使い方まではわからないんだ。」
「成程。まあ、使い方までわかったら強力すぎるかもしれないな。・・・一つ目はこの指輪にするよ。使い方は自分で何とかする。」
「そうか、まだ金額的には余裕がある、大抵のものなら大丈夫だ。」
わかった、と頷き武器探しを続けていく。
「お。」
日本刀が壁に立てかけられていた、柄は赤く、鞘は黒い。
全長80㎝、重さ900g、刀身の長さ2尺3寸5分といったところか。
手に取り鞘を抜く・・・軽い、というよりバランスがいい、どのようにも振ることが出来そうだ。
・・・・これにしよう。
「霖之助、この刀にするよ。」
「ん、どれだい。・・・成程、それか。」
心なしか霖之助の顔が険しくなったような気がした。
「どうした?」
「いや、その刀は所謂曰く付きでね。僕の能力でも名前が分からないんだ。」
「・・・名前がないのか?」
「いいや、名前はあるだろう。だが分からない。僕の能力で名前が分からないのはこの刀ぐらいだよ。」
ふむ、曰く付きか・・・・
「ちなみに、それを持ってきたのは紫だ。」
「え。」
・・・まともなものじゃないのは確かだな。
「あまりお勧めはしないが・・・」
「・・いや、これにする。気に入ったんだ。この刀。」
「そうか、わかった。君が言うのなら止めはしないよ。・・・だが、注意するに越したことはない。気を付けなよ。」
「ああ、ありがとう。」
護身用の道具も手に入れた、1か月ほどは食うに困らなくなるくらいのお金も残った。
大体の準備はできたかな。
ふと、窓から外を見ると、もう日は傾きかけ、空は赤く染まっていた。
「もうこんな時間か。夜の幻想郷は危険だ、今日は泊っていくといい。」
「いいのか?」
「ああ、構わないよ。そのかわり、外の世界の道具について色々と教えてくれ。」
「わかった、俺の知っていることでよければ。」
いろんな事があった1日だった。明日も頼めばここに泊めてくれるかもしれないが、いつまでも世話になるわけにはいかない。
どこか、働ける場所を探そう。住み込みで働けるところが理想だな。
・・・明日は今日よりも忙しい日になりそうだ。
あの後、霊夢は神社に帰り、紫は俺に幻想郷の文化や歴史について簡単に教えた後、いつの間にか居なくなっていた。
「まあ、何かあったら神社に来なさい。お賽銭を入れてくれたら、お茶ぐらいは出してあげるわ。」
と、言って霊夢は飛んで行った。
霊夢が飛んだ時はかなり驚いた。後で霖之助に聞いたところ、幻想郷で空を飛ぶということはそう珍しいことではないらしい。
そして、幻想郷の主要人物達はそれぞれ「能力」と呼ばれるものを持っているそうだ。
霊夢の能力は「空を飛ぶ程度の能力」らしい。だから空を飛べるのか。
・・・唐突だが俺は結構視力がいい。霊夢はおれの斜め45度あたりを飛んでいて、俺はそれを下から見ている。
となると当然スカートの中も見えるわけで。
「・・・ドロワーズか」
「さてと、これからどうしようか。」
あの後、どこかから針が飛んできて右の耳たぶを貫通した。
・・・・首を傾けて避けていなければ鼻頭あたりに刺さっていただろう。久しぶりに冷や汗をかいた。
幻想郷の巫女は伊達ではないか。恐ろしいな。
しばらく幻想郷に滞在することに決まったが、当然のように住む場所はなく金もない。
「ひとつ提案がある。」
霖之助が言う。
「君がこちらに来た時に一緒に色々な道具も降ってきただろう?」
痛む耳たぶを抑えながら答える。
「ああ、俺の部屋にあったものだな。」
「あの道具達を、僕に売ってくれないか?」
・・・・ああ、そういえば古道具屋の店主だとか言ってたな。
「「香霖堂」は主に外の世界の商品を扱っているんだ。普段はある場所に落ちている道具を拾っているんだが、どれも状態があまり良くなくてね。」
幻想郷は忘れられたものが行き着く場所。そんな場所に落ちてくる外の道具は碌なものではないだろう。
壊れて捨てられたものであったり、曰くつきのものであったり。
「さっき少し見せてもらったが、あの道具達は非常に保存状態がいい。僕から見ればのどから手が出るほど欲しいものなんだ。・・・どうだい?」
「ふむ・・・」
紫の話を聞く限り、幻想郷には電気がないようだ。
部屋にあったものは殆どが電気を使って動くものなので、此処では使えないだろう。
「・・・・わかった。売らせてもらうよ。」
俺がそう言うと、霖之助は本当にうれしそうな顔をした。
「!!・・ではさっそく。」
そう言うと、道具がある場所へ走って行った。
・・・新しいおもちゃを買いに行く子供のようだ。
俺は苦笑しながら霖之助について行った。
「・・・全部でこれくらいだね。」
そう言って霖之助が渡してきた古い電卓にはかなりの額が映し出されていた。
「・・・随分高いな、正直予想外だ」
「どれも幻想郷では手に入りにくいものばかりだ。それくらいはするさ。」
霖之助はとても満足そうにしている。
・・・こいつも相当変わってるな。
「・・・全て現金にすると、かなり嵩張るな。」
あまり荷物は増やしたくないんだが・・
「なら、代金のいくらかは物々交換で支払う、というのはどうだい?」
「物々交換?」
「ああ、この店には服から武器まで一通り揃っている。君の役に立つものもあるかもしれないよ。」
「成程。」
妖怪のいる幻想郷に住むのだから護身のための武器か何かを買っておくべきか。
「そうだな、護身用の武器か何かが欲しい。見せてくれないか?」
「武器か、わかった。ついてきてくれ。」
霖之助について奥へ行くと倉庫のような所に着いた。
そこには、日本刀、槍、ナイフ、などといった武器が所狭しと置かれていた。
銃や何だかよくわからないものも置かれている。
「雅人は何か武術をやっているかい?」
「ああ、父から古武術を習っていた。武芸十八般、何でもござれだ。」
「古武術か。外の世界ではもうほとんど途絶えてしまったと聞いたが。」
「うちの爺さんは戦争へ行ってもしぶとく生き残ってな。何とか俺の代までやってこれたんだ。」
成程、と霖之助が頷く。
「じゃあ自由に見てくれてかまわないよ。気に入ったものがあったら僕に言ってくれ。」
「わかった。」
「霖之助、これはなんだ?」
指輪の様なものを手に取る。
「ああ、それは・・硬化の指輪だね。ルーン文字が刻まれていて、体を硬化させるマジックアイテムだ。」
「へえ・・なかなかよさそうだな。付けてみてもいいか?」
「ああ、構わないよ。」
指輪をはめてみたが何も起こらない。
・・・どうやって使うんだこれ?
「・・・霖之助」
「僕の能力は「道具の名前と用途がわかる程度の能力」だからね、使い方まではわからないんだ。」
「成程。まあ、使い方までわかったら強力すぎるかもしれないな。・・・一つ目はこの指輪にするよ。使い方は自分で何とかする。」
「そうか、まだ金額的には余裕がある、大抵のものなら大丈夫だ。」
わかった、と頷き武器探しを続けていく。
「お。」
日本刀が壁に立てかけられていた、柄は赤く、鞘は黒い。
全長80㎝、重さ900g、刀身の長さ2尺3寸5分といったところか。
手に取り鞘を抜く・・・軽い、というよりバランスがいい、どのようにも振ることが出来そうだ。
・・・・これにしよう。
「霖之助、この刀にするよ。」
「ん、どれだい。・・・成程、それか。」
心なしか霖之助の顔が険しくなったような気がした。
「どうした?」
「いや、その刀は所謂曰く付きでね。僕の能力でも名前が分からないんだ。」
「・・・名前がないのか?」
「いいや、名前はあるだろう。だが分からない。僕の能力で名前が分からないのはこの刀ぐらいだよ。」
ふむ、曰く付きか・・・・
「ちなみに、それを持ってきたのは紫だ。」
「え。」
・・・まともなものじゃないのは確かだな。
「あまりお勧めはしないが・・・」
「・・いや、これにする。気に入ったんだ。この刀。」
「そうか、わかった。君が言うのなら止めはしないよ。・・・だが、注意するに越したことはない。気を付けなよ。」
「ああ、ありがとう。」
護身用の道具も手に入れた、1か月ほどは食うに困らなくなるくらいのお金も残った。
大体の準備はできたかな。
ふと、窓から外を見ると、もう日は傾きかけ、空は赤く染まっていた。
「もうこんな時間か。夜の幻想郷は危険だ、今日は泊っていくといい。」
「いいのか?」
「ああ、構わないよ。そのかわり、外の世界の道具について色々と教えてくれ。」
「わかった、俺の知っていることでよければ。」
いろんな事があった1日だった。明日も頼めばここに泊めてくれるかもしれないが、いつまでも世話になるわけにはいかない。
どこか、働ける場所を探そう。住み込みで働けるところが理想だな。
・・・明日は今日よりも忙しい日になりそうだ。
>「・・・ドロワーズか」
心なしか寂しい気配を感じたwww
次の舞台は人里を希望しますw