どうして人(妖怪?)は暇な時にどうでもいいことを考えるんだろう。
「ねえ、一輪」
「なぁに?」
胡坐の私と背中合わせで正座をしている一輪は、洗濯物を畳みながら私の話を聞いてくれる。
昔から私達はよくこうしていることが多かった。
きっとこの背中合わせの状態ならお互いがお互いの背後を守れるし、背中から伝わる熱越しに相手の安否もわかる。
何より一緒にいて赤くなっている私の顔を見られなくてすむからだ。
「私と一輪が今と違う関係だったら、どうなっていたかな」
「どうもなっていないわよ」
時間潰しの私の疑問に時間潰さずに答えないでください。
「例えば、私と一輪が姉妹だったらどう?」
「変わらないわね。私にとっては貴方もぬえも星も手間のかかる妹達みたいなものよ」
「星もですか……」
星はお姉ちゃんぶってるけど、妹達によくフォローされている長女みたいな位置づけですか。
一輪が妹なのに面倒見が良くて、長女の代わりにお姉ちゃんをやっている次女で、私が三女。
ぬえは精神年齢が低いし、私より絶対に下だから四女で、末っ子の癖にシニカルぶってるナズーリンが五女、と。
そして聖がみんなのお母さんで、雲山は……お父さん?
ごめんなさい、石を投げないでください。
「じゃあ、私と一輪が親子」
「貴方のご飯を作って、貴方の部屋を掃除して、貴方が夜に昔のことを思い出して眠れない時に、一緒に寝てあげているのは誰?」
「いつもご面倒をおかけしてます(背中越しに土下座)」
そういえば一輪は赤子の世話が上手かった。
参拝客の赤ん坊が泣き出した時も、雲山に面白い動きをさせながらあやしていたっけ。
聖とは違う母性を感じさせているのかな……。
「姐さんこそ、私にとっては母みたいな存在ではあるわね。私が姐さんのお役に立ちたいと言った時にいろいろ教えてくれのも姐さんだったわ」
「それって、つまり私の位置からするとおばあむぐ」
「もう一度死ぬか成仏することになるわよ」
いきなり雲山の手に顔を塞がれていた。
今、雲山は外の見回りをしているはずだから、これは体の一部を遠隔操作してやったのね。
大雑把な私と違って器用ですこと……。
「あのね、水蜜」
「うん」
「さっきまでの貴方の疑問は貴方と私が家族だったらという仮定のものだけど、」
「そうですね」
「逆に聞くけど、貴方と私は今まで家族じゃなかったの?」
「え……」
そうだった。
一輪だけじゃない。私にとっては最早命蓮寺そのものが私の家族みたいなものなんだ。
私の本当の父も、母も、家族もとっくに死んでいなくなってしまって、顔すら思い出すことも出来ないけれど、
私を生んで大事にしてくれた人達の存在はきっと忘れない。
だから、私が死んだ後に。
生きていた時の私よりも長い時間を、千年の時を、私の横に居続けてくれた人が、私を待ち続けてくれた人達が、
私の家族じゃないはずがなかったんだ。
「貴方の仮定は全て意味がないものなのよ。何故なら、私と貴方は、
仲間で味方で同志で同僚で友達で親友で戦友で盟友で姉妹で親子で家族で先輩で後輩で相棒で相方なんですから」
……そうか。
私と一輪の関係は『私と一輪』でしかないんだね。
それは決して変わらないということだから、一輪はすぐに『どうにもならない』って答えを出すことができたのね。
けど、今の解答は私の正解には足りないですよ。
「それだけいっぱいあるなら、『恋人』って関係を入れても良かったんじゃない」
冗談交じりの私の言葉に、一輪は溜息混じりに答えてくれた。
「何を言っているのよ。私と貴方なんて、もう長年連れ添った『夫婦』みたいなものでしょ?」
彼女にとって、それは当たり前のことだったらしい。
本当にこの座り方をしていて良かった。
今の私の顔は、きっと誰にも見せられないほど真っ赤になっているはずだから。
そして、私からは見えないけれど、
きっとこの背中の向こうにいる子も、私と同じように顔を赤くして俯いているはずだから。
顔の熱さはわからないけれど、体の熱さは背中から伝わってきた。
「ねえ、一輪」
「なぁに?」
胡坐の私と背中合わせで正座をしている一輪は、洗濯物を畳みながら私の話を聞いてくれる。
昔から私達はよくこうしていることが多かった。
きっとこの背中合わせの状態ならお互いがお互いの背後を守れるし、背中から伝わる熱越しに相手の安否もわかる。
何より一緒にいて赤くなっている私の顔を見られなくてすむからだ。
「私と一輪が今と違う関係だったら、どうなっていたかな」
「どうもなっていないわよ」
時間潰しの私の疑問に時間潰さずに答えないでください。
「例えば、私と一輪が姉妹だったらどう?」
「変わらないわね。私にとっては貴方もぬえも星も手間のかかる妹達みたいなものよ」
「星もですか……」
星はお姉ちゃんぶってるけど、妹達によくフォローされている長女みたいな位置づけですか。
一輪が妹なのに面倒見が良くて、長女の代わりにお姉ちゃんをやっている次女で、私が三女。
ぬえは精神年齢が低いし、私より絶対に下だから四女で、末っ子の癖にシニカルぶってるナズーリンが五女、と。
そして聖がみんなのお母さんで、雲山は……お父さん?
ごめんなさい、石を投げないでください。
「じゃあ、私と一輪が親子」
「貴方のご飯を作って、貴方の部屋を掃除して、貴方が夜に昔のことを思い出して眠れない時に、一緒に寝てあげているのは誰?」
「いつもご面倒をおかけしてます(背中越しに土下座)」
そういえば一輪は赤子の世話が上手かった。
参拝客の赤ん坊が泣き出した時も、雲山に面白い動きをさせながらあやしていたっけ。
聖とは違う母性を感じさせているのかな……。
「姐さんこそ、私にとっては母みたいな存在ではあるわね。私が姐さんのお役に立ちたいと言った時にいろいろ教えてくれのも姐さんだったわ」
「それって、つまり私の位置からするとおばあむぐ」
「もう一度死ぬか成仏することになるわよ」
いきなり雲山の手に顔を塞がれていた。
今、雲山は外の見回りをしているはずだから、これは体の一部を遠隔操作してやったのね。
大雑把な私と違って器用ですこと……。
「あのね、水蜜」
「うん」
「さっきまでの貴方の疑問は貴方と私が家族だったらという仮定のものだけど、」
「そうですね」
「逆に聞くけど、貴方と私は今まで家族じゃなかったの?」
「え……」
そうだった。
一輪だけじゃない。私にとっては最早命蓮寺そのものが私の家族みたいなものなんだ。
私の本当の父も、母も、家族もとっくに死んでいなくなってしまって、顔すら思い出すことも出来ないけれど、
私を生んで大事にしてくれた人達の存在はきっと忘れない。
だから、私が死んだ後に。
生きていた時の私よりも長い時間を、千年の時を、私の横に居続けてくれた人が、私を待ち続けてくれた人達が、
私の家族じゃないはずがなかったんだ。
「貴方の仮定は全て意味がないものなのよ。何故なら、私と貴方は、
仲間で味方で同志で同僚で友達で親友で戦友で盟友で姉妹で親子で家族で先輩で後輩で相棒で相方なんですから」
……そうか。
私と一輪の関係は『私と一輪』でしかないんだね。
それは決して変わらないということだから、一輪はすぐに『どうにもならない』って答えを出すことができたのね。
けど、今の解答は私の正解には足りないですよ。
「それだけいっぱいあるなら、『恋人』って関係を入れても良かったんじゃない」
冗談交じりの私の言葉に、一輪は溜息混じりに答えてくれた。
「何を言っているのよ。私と貴方なんて、もう長年連れ添った『夫婦』みたいなものでしょ?」
彼女にとって、それは当たり前のことだったらしい。
本当にこの座り方をしていて良かった。
今の私の顔は、きっと誰にも見せられないほど真っ赤になっているはずだから。
そして、私からは見えないけれど、
きっとこの背中の向こうにいる子も、私と同じように顔を赤くして俯いているはずだから。
顔の熱さはわからないけれど、体の熱さは背中から伝わってきた。
この二人の関係は本当に素晴らしいですな!
…甘い………だと…
このほの甘さがいつものレベル。雲海さんのムラいちっぷりには頭が下がります。
雲海さんの今後の挑戦に期待が膨らむばかりである