「ふぅ、これで今日のノルマは終了かねぇ・・・」
此処は三途の河。生を終えた人間が是非曲直庁の元へ行く為に、必ず渡らなければならない場所である。
船頭の死神に船へ乗せてもらう事でこの河を渡ることができ、その先にある是非曲直庁で閻魔の判決を受ける事によって死後の人生が決まる仕組みになっている。
死神であり船頭でもある長身の少女、小野塚小町もちょうど仕事を終えた所のようだった。
「さて、四季様に報告してこようかって・・・おや?あんたはもしかして・・・」
彼女の視線の先には一体の霊魂。
見た目は他の霊魂と同じだが、死神である彼女には誰なのか判ったようだ。
「遂にあんたも来たのかい・・・。仕方ないね、今日に限り残業サービスだよ」
彼女は霊魂に船へ乗るよう促すと、霊魂はフヨフヨと船へ移動し始めた。
その様はまるで、空に浮かぶ雲のようだ。
「それじゃあ渡し賃の確認といこうか。まぁあんたのことだ、生きてた時とは逆で大金持ちなんだろう?」
渡し賃とは、死者が河を渡る時に船頭へ渡す六文銭の事である。
その枚数の多い程、是非曲直庁までの道のりが短くなるのだ。
「おおぅ・・・これはいくらなんでも多すぎじゃないかい?」
数え切れない程の六文銭を見て軽く呆れ笑いをしながら、彼女は懐から六文銭を2つ取り出す。
「ついでにこいつもプラスだよ。あたいと四季様の分さ・・・それじゃ、そろそろ行くかねぇ」
小町はそう言いながら船を漕ぎ始めた。
が、1分も経たぬ間に船は対岸に着いてしまう。
「なんだ、もう着いちまったのかい?あの黒白ですら3分掛かったのに、やっぱりあんたは凄いとしか言いようがないね!」
高らかに小町は笑う。
しかし、その満面の笑みも次第に憂いを込めた笑みへと変わっていく。
「さぁ早く行ってきな。・・・大丈夫、あんたなら軽く極楽浄土行きだろうさ」
そう言って小町は霊魂を送り出す。
霊魂はフヨフヨと是非曲直庁の方へと飛んで行く。
それを最後まで見送ると、小町は一言呟いた。
「これからは何事にも縛られずに楽しみな・・・博麗霊夢」
彼女の周りには赤い彼岸花が何も言わずに、咲き誇っていた。
あと孤独死だけは絶対避けたい!…出来れば笑って死にたいです。
渡し賃が多すぎるほどあるのに自ら追加する小町がいいですね。
六文銭って一枚の硬貨じゃなくて
一文硬貨六枚だから六文銭って言うですよー