※この話は、ジェネリック作品集61、『ネズミの○○』の設定を引き継いでおります。
side:ナズーリン
私と付き合い始めてからご主人は変わった。
以前より気がずっと強くなったように思う。
いやいや、これは決して悪い意味で言っているのではないのだよ?
そう……ご主人は以前にも増して積極的になった。
こ、こう言えば良いのかな?
兎に角その──より魅力的になったのは間違いないのだ。
最初の頃は手を繋ぐだけでも顔を真っ赤にしていたご主人。
私のネズミたちよりもよっぽど小動物のように見えてしまうくらい震えていたのに……。
今では、ほら。
私の顎を捉えるその手は優しく、だけどしっかりと私を掴んで離さない。
ちょっと前のご主人では考えられないほど強い光を持ったその瞳には自信が溢れているようだ。
そんなご主人は悠然と微笑みながら私の耳元でそっと呟いた──
side:寅丸星
彼女と付き合い始めて、やっと私は本当の彼女を知る事になりました。
とても優秀で、いつでも私を助けてくれた彼女……正直、私は彼女に頼りきっていました。
優秀なのは彼女が強いからで、それが当たり前のように感じていたのです。
でもその認識は間違っていた。
何時だって彼女は何かに怯えていて……そんな自分を私に気付かれまいと自信たっぷりに振舞っていただけなんです。
なんて健気な事でしょう……。
それも全て私の為──自惚れなんかじゃなくて、それは紛れもない事実。
私は、こんなにも小さな彼女の両肩にとんでもない重荷を課していたのです。
だけどこれからは違います。
彼女を守るのは恋人である私の役目ですから!
これだけは他の誰にも譲れませんっ!
今だって、ほら。
不安に瞳を潤ませた彼女を安心させようと、そっと手で顎を支えて。
若干上目遣いになった彼女の耳元で私はそっと囁きます──
「愛してます……ナズーリン。」
side:ナズーリン
これまでの私はこの人に頼られる存在でありたいと思っていたし……そう、自分に義務付けてきたつもりだった。
そして、それこそが私の誇りなんだと思うようになっていた……。
でも……私の助けなんて必要ないくらい貴女は強くなって。
私は……この人に甘えてもいいのだろうか?
強くなっていく貴女とは引き換えに、一方の私は弱い自分が曝け出されていく様だった。
それがどうしようもなく不安で……。
だけどご主人の温かな眼差しはそんな私の矮小な心まで包み込んでくれるようで……。
徐々に近付いてくるその凛々しい顔に見惚れてしまった私はもう、優秀であろうとした部下などでは無くなっていた。
そう……私は見つけたのだ。
変わっていく二人、変わってしまった関係の中で確かに変わらないもの。
それは──
side:寅丸星
不思議なほど今の私は自信で溢れています。
それはきっと今まで背中を押してくれていた彼女が、これからはすぐ隣に居てくれるからでしょう。
私がこうして変われたのは全て貴女のお陰ですよ、ナズーリン。
貴女が今日まで私を導いてくれたのです……貴女が居てくれたから強くなりたいと私は思えるようになったのです。
まだ、気付きませんか?
それはずっと私が貴女を愛していたという証拠。
恋人になる前から、貴女に告白をされる前から……ずっとずっと、私は貴女を愛していたんです。
この紛れも無い私の愛をどうか貴女に受け止めて欲しくて……。
だから貴女にキスをするときは決まって囁くことにしています。
私が愛しているのは、世界でただ一人、貴女だけだということが伝わるように……。
今も不安に苛まれている貴女を救う術はこれしかないと私は信じています。
それはきっと──
「…………私も…………です。星……さま。」
──貴女への愛だと思うから。
星をさま付けで呼ぶ乙女ナズーリンにリードする星様が素晴らしすぎます!
でもよく考えたらちゅっちゅ作家と言いつつもちゅっちゅしてないんじゃないですか?
いや、そんなことは関係ないほど百合百合しい二人をありがとうございました!
あ、よかったら私の前作のこいさとちゅっちゅは師匠に捧げますww