え? なんですか文さん。
話があるんですか? 後にしていただけませんか? 私今哨戒日誌を書いている最中ですので。
緊急の話。なるほど。しかしなぜそれを私に? 大天狗様なり天魔様なりに伝えればよろしいではないですか。
はぁ、私個人に関する話だからですか。そうですか、分かりました。
それで、話というのは一体なんのことでしょう。
私の態度について? 私何かおかしいことしましたっけ?
……最近の私の態度が気に入らないって、それ文さんの主観純度100パーセントじゃないですか。
はい? 昔は「文様」と呼んで慕ってくれていたのに……って?
はぁ。
あのですね、文さん。時代は進むものなのです。今まで当たり前だったことがいつどんなときに何がきっかけで覆されるのかは誰にも分からないんですよ?
文さん、外には私達をモチーフにした遊び道具があるのは知ってますよね。売れないと言っても一応はジャーナリストですし。
売れないは余計。そうですか。
それはともかく、今年の卯月にその新作が出たんですよ。知ってますよね? 文さんが主役張ってるんですから。
「ダブルスポイラー ~ 東方文花帖」……。光栄なことに私もそれに出演させていただきまして。えぇ、ようやく私もスペルカードを持てた訳です。
そこで私への取材を終えた文さんがなんて言ったか覚えてますか? 覚えてませんよね。
『どうも顔を合わせると喧嘩になりやすいんですけど』、『こいつは大天狗様には従順なくせに、私達烏天狗を見下している節があるんですよねぇ』……。
この言葉で一体どれだけ外の世界の人たちが衝撃を受けたと思うんですか?
でもまぁそれでも私はその新しい設定に従うことはやぶさかではありません。
私の文さんに対する態度が変わったのだとしたらそのためです。私は文さんとは「顔を合わせたら喧嘩になりやすくて」、「烏天狗を見下している節のある」白狼天狗ですからね。
そういう訳ですから、これからはそういうドライな関係でいきましょうよ。仕事上でしか付き合いのない、そんな関係に。
従順な私と自由奔放な文さんの文椛はもうおしまいです。
それでは、日誌の続きを書かねばなりませんので。ここらで失礼させていただきます。
あぁ、そうそう。今度白黒の魔法使いなり紅白の巫女なりを匿っているのを見つけたら大天狗様に報告しますので。
千里先まで見通す眼が山を見張っているのを、くれぐれもお忘れなく。
………………
…………
……
「はっ、ドリームか……」
現実……これが現実……!
オロオロする文ちゃんが目に浮かぶ。
分かりやす