Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

はる

2010/06/02 07:04:49
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ごぅんごぅん

雷鳴が轟き、大木をなぎ倒すかのような暴風が吹き荒れている。

そんな中、荒野の中心で対峙する二つの影があった。

一人は相手を精一杯睨みつけており、もう一人はそれを見下すかのようにして嘲笑っている。

耐え切れなくなったのか、一人が声をあげる。

「やいレティ。今はもう春ですよ!!冬はさっさと帰るですよ!!」

対するレティは余裕綽々といった様子である。

「あら~?あなた一体どなたかしら~?存在感薄すぎて忘れてしまったわ~。」

「むき~!!もう許せないですよ。勝負するですよー!!。」

「弱いものいじめは好きじゃないのだけど、あなたが弱すぎるのが悪いのだから仕方ないわよねぇ。」

お互いに殺気を放ち、そして、春の妖精リリーはレティへと飛びかかっていった。

「春を取り戻すですよー!!」

「ふん、やってみろッ!!この、レティに対してーーーッ!!」

















所変わってマーガトロイド邸

「ううう、寒ーい。」

最近、5月とは思えないほど寒い日が続いている。冬物は全て仕舞ってしまったので防寒対策もできない。

ベッドの中でもぞもぞしながら薄い毛布を被りかまくら状態になる。

「上海お湯沸かしてー。蓬莱は着替えをお願い。」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

二体の人形に指示を出し、ベッドに居ながら朝の準備を整えていく。人形遣いの特権である。

しばらくして、蓬莱が着替えを持ってきてくれる。私の事を気遣ってくれたのか、厚手のものを選んできて

くれたみたいだ。

「ありがと、蓬莱。」

「ホラーイ」

お礼を言って頭を撫でてあげる。


とりあえず着替えようか。とはいっても寒いのでベッドの中でもぞりもぞりと服を着替える。

「シャンハーイ」

私が着替えている間にお湯が沸いたらしい。上海の頭も撫でてあげて、ベッドから這い出した。

朝食を食べながら独り言をつぶやく。

「まったく、パクパク・・・なんでこうも寒いのかしらね?モグモグ・・・また亡霊の仕業かしら。

それにしては違和感がなさすぎるけど。パクパク・・・そう、おかしくはあるのだけれど、異変という感じじゃないのよね。

感覚は鋭敏な方だし、人形達の周辺調査でも変調はなかった。ゴクゴク・・・一体どうなっているのかしら。」



朝食を終えて、寒さの原因を解決するべく今日の予定を立てることにする。

「神社の巫女に相談してみようかしらね。期待は出来ないけど、なにもしないよりかは幾分かはましになるはず。」

そう考え、交渉用にお菓子を携えて家を出る。

ぴゅー ぴゅー

外では北風が吹いており、飛ぶことが嫌になるほどだ。太陽は昇っているのに照らされる暖かさは伝わってこない。

腕をたたみ、人形達で風を防ぎながら飛ぶことにする。俗に言う蓑虫形体である。

魔法の森をふよふよと飛んでいると、

「・・・・・・」

なにかの声が聞こえてきた。

気になったので声の聞こえた方角へと進行方向を変える。

しばらくすると、また声が聞こえてきた。今度は先ほどよりもはっきりと声が聞こえる。

「・・・はるですよぅ、はるなんですよぅ。」

さらに近づいてみると、春の妖精であるリリーがうずくまって泣いていた。

「どうしたの?」

声をかけると、こちらを見上げるやいなや私に抱きついてきた。

「うぇええええん。」

「ちょ、ちょっと、一体どうしたのよ。」

そう聞いてもリリーは泣くばかりで話が出来ない。このままでは埒があかないので泣きじゃくるリリーを家まで連れて帰ることにした。

春の妖精であるリリーが泣いていることは、この気象と何かの関係があるのかもしれない。


家に着き、泣きじゃくるリリーをなだめながらお菓子やら紅茶やらを与えていると、やがて落ち着きを

取り戻したのか、両手を広げ、笑顔でこちらに挨拶をしてきた。

「春ですよー。」

「シャンハイデスヨー」

「ホウライデスヨー」

「リリーですよー。」

人形たちと挨拶を交わし合っている。そろそろ質問をしてみようかしら。

「ねぇ、あなたはどうして泣いていたの。」

そう聞くと、リリーは両手をだらりと下げ、しゅんとなってしまった。

「冬が強いですよ。」

「冬が強いとどうなるの?」

「冬になるですよ。春は来ないですよ。」

なるほど、単純明快である。

「つまり、あなたが冬に負けてしまったから寒い日が続いているという事なのね?」

しゅん

あ、さらにしゅんとさせてしまった。

「私は役立たずです。」

「そ、そんなことないわよ。ほら、お菓子でも食べて元気をだして。」

「私にはお菓子を食べる資格なんてないです。」

さっきまで食べてたじゃない。・・・まぁ、言わないけど。

ここは上海と蓬莱に頑張ってもらおう。目線で合図を送る。すると、人形達はリリーの傍に飛んで行き、

肩をポンポンと叩いて、励ましの言葉を送った。

「ゲンキダセヨ」

「スギカフントバサナイデヨ」

「びぇえええええん。」

泣き出してしまった、再びリリーが私に抱きついてくる。

「・・・わ、私は季節の中で春が一番好きよ。大好き。」

人形たちのフォローをするために泣き出してしまったリリーを抱きしめて撫でてやる。

「冬がどのぐらい強いのかはわからないけど、私も協力するから一緒に頑張ってみましょうよ。」

「・・・ありがとですよ。」

なんとか泣き止んだか、このまま寒いのも嫌だし、協力してさっさと春にしてもらおう。

「それで、その冬とやらにはどこに行けば会えるのかしら?」

「荒野で決闘をするですよ!!」

先ほどまで泣いていたリリーの瞳が燃えている。妖精というのは変わり身が早いものなのだろうか。

・・・荒野で決闘ねぇ。まぁいいか。

「私について来るですよー。」

そう言って家を飛び出したリリーの後を追うことにする。


・・・・・・


「ここですよー。」

そして着いたのは無人の荒野・・・ではなく、色とりどりの花が咲くお花畑であった。

「どうして花が咲いているです?」

不思議そうな表情でリリーが尋ねる。

「さぁ?」

「不思議ですよー。」

そもそもこの場所に連れて来たのはあなたじゃない、というか、何か嫌な予感がする。

私の第六感がここから離れろと言っている。

「先に進んでみるですよー。」

ああ、待って、少し待ってよ。きっとあなたは場所を間違えてしまったのよ。こんな綺麗なお花畑で

決闘なんてしてはいけないわ。早くここから離れましょうよ。

そんなことを言う間もなく、リリーは飛んでいってしまった。

「・・・」

「イッテアゲナヨ」

「ニゲタホウガイイヨ」

上海と蓬莱が天使と悪魔のようなことを言っている。

「嫌な予感はするけど、あの子を放っては置けないわ。」

どうせ逃げても置いてきたことを後悔するのだ。自分の性格は分かっている。

「リリー。少し待ちなさいよー。」

私は覚悟を決めて春の妖精を追いかけることにしたのだった。










先を行くリリーが立ち止まったので、その場所まで近づくと、そこには二つの影があった。

一つは冬の妖精の、レティといっただろうか。地面に倒れており、顔を足蹴にされている。

もう一つは嫌な予感の通り、もんぺ妖怪の幽香であった。笑いながら、既に意識を失っているであろうレティを蹴り続けている。

幽香さんマジ恐いです。

・・・冬は倒されたみたいだし、見つからないうちに帰ったほうがいいんじゃないかしら。

「あなた何してるですよー?」

待ってよリリーさん・・・

「うん?誰よあなた。」

「私は春の妖精のリリーですよー。」

「そう、私は幽香よ。こいつが調子に乗って冬を終わらせようとしないから少し教育してあげてたのよ。」

「そうだったですかー。レティを倒してくれてありがとですよー。」

「ふふ、どういたしまして。」

・・・なんだか仲良くなっているみたいだ。二人の邪魔をするのも悪いし、私は帰ろうか。

「アリスー。この人が冬を倒してくれたですよー。早く来るですよー。」

・・・・・・

「あらぁ?誰かと思ったら、『私の』アリスじゃない。」

後悔してもいいからリリーのことは忘れてしまうべきだった。そう思ってももう遅い。だって私の体はすでに

植物の蔓か何かでぐるぐる巻きにされてしまっているのだから。

「うぅぅ、自分の甘さが恨めしい。」

「私はあなたの甘いところが大好きよ。」

「アリスは甘いですか?」

「ええ、とっても甘いわよ。」

「そうなのかーですよー。」

無駄とは知りつつも、一応お願いをする。

「・・・この蔓を解いてくれないかしら。」

「それはだめよ。冬を倒してあげたんだから報酬をもらわなきゃ。」

「・・・リリーからもらえばいいじゃない。」

「この子には春を運んでもらうもの。報酬としては十分だわ。」

「・・・上海と蓬莱がいるから、それじゃだめかしら。」

「いないじゃないの。」

「え?」

まわりを見ると、私のそばに居るはずの上海と蓬莱がいない。

・・・帰ったらジャンクにしてやる。

「リリー?あなたは早く春を運んできてよ。冬はもうたくさんだわ。」

「わかったですよー。行ってくるですよー。」

そういうとリリーは素早く飛び立っていった。

待って、行かないで。明らかに状況おかしいじゃない。

私を置いてかないでー。・・・ちくしょー、帰ったらお前もジャンクにしてやるー。

「さて・・・」

「ひぃっ!」

「うふふ、そんなに怯えなくてもやさしく食べてあげるから、安心して食べられなさいっ!!」

「うにゃあああああ!!」


















乙女の嬌声が花畑に響き、

遠くからは「はるですよー。」という陽気な声が聞こえている。














コメント



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!?
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はるですね。
6.名前が無い程度の能力削除
^p^
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ご苦労様です
9.名前が無い程度の能力削除
頭が春デスヨー
10.奇声を発する程度の能力削除
ハルデスヨー
11.椿削除
はるですよー
12.名前が無い程度の能力削除
リリー「春を売りますよー(ニヤリ」
リリー、恐ろしい娘! そして幽アリのその後をkwsk
13.名前が無い程度の能力削除
まさかの幽アリwww
14.名前が無い程度の能力削除
さすがの幽アリ