「星……貴方、自分が何をしたかわかっているの?」
「す、すいません。私が自分の仕事が忙しいせいで、なかなか寺の仕事を手伝えず、いつも一輪に任せきりでしたので、
せめてこのくらいはと思ったのですが……」
「それで、気を利かせてくれた貴方は私が後で洗おうと籠に入れておいた私の服を、私の代わりに洗ってくれたのよね」
さっきまで酷い剣幕だった一輪の顔は一瞬とてもにこやかな笑顔へと変わった。
それを見た星はぱーっとした顔で答えた。
「はい、私がやりました!」
「うっかり爪を出したまま洗ってくれたおかげで、私の服が全部このざまよ!歯を食い縛りなさい、星!」
「そんな!あの笑顔で私を騙して痛いっ!」
星が一輪を非難し終わる前に雲山の拳によって星は宙へと浮かんでいた。
自業自得なので、側で見ていたナズーリンも「反省をしたまえ、ご主人様」と庇う気すらないようだ。
「まったく、どうするのよ、この服。全部ボロボロじゃない。ネズミ、貴方のところで何とかしなさいよね」
「ご主人様の不徳の致すところだから仕方がないな。代わりの服は私が探してこよう」
そうこうしているうちに、一輪の怒声と星の悲鳴を聞きつけて他の仲間が集まってきた。
「一輪の服が全てなくなってしまっただなんて本当なの?一輪、服がなければ裸でいればいいじゃない」
「雲山!」
水蜜が宙へと浮かんだ。
「私の力でモザイク処理してあげようか。にひひ」
「雲山!」
ぬえが宙へと浮かんだ。
「困ったわね。知り合いの服飾屋に頼んでも、新しい服ができるまで五日はかかると思うわ」
「ありがとうございます、姐さん。代わりの服はネズミに用意させますので、五日でしたら余裕で待てますわ」
「そう?それなら、ナズーリン、一輪の服をお願いしますね」
「一つ心当たりがある。任せてくれ」
*
一日目
*
「で、任せた結果が、どうしてこの服なのかしら。ネズミ」
「異変の時に知り合った道具屋がいてね。彼が代わりの服を用意してくれることになったんだが、
さすがに今日すぐには難しいらしくてね。彼がいつも仕立ててあげているらしい、この巫女の服をいただいてきたというわけさ」
「よりにもよって、あの巫女の服~?」
一輪が着ているのは博麗の巫女が普段着ているあの巫女服である。
巫女特有の赤と白のコントラストに、霊夢独自の脇から袖の部分が切り離されている改造巫女服だ。
さすがにリボンは恥ずかしくて着けなかったようだが、一輪の頭にはいつもの頭巾がなく、普段は隠れている髪が全て見えていた。
「あら、可愛いわ。山の神社の巫女にも負けないわね」
「や、やめてください、姐さん」
「これは……参拝の方も増えるかもしれません」
「だからっ、星も、そんなにジロジロ見ないでよ……」
きゅん。
二人の胸に小さなときめきの音が聞こえた。
これが「萌え」というものなのか……!
「私、いつも通り、境内を掃除してきますね!」
一輪は真っ赤な顔をして箒を持って行ってしまった。
*
「いち姉ちゃん、巫女になったの?」
「おやぁ、命蓮寺は神社にでも鞍替えしたのかね」
「すいません、写真一枚いいですか」
「今日はたまたまこの服を着ているだけよ。
いいえ、命蓮寺はこれからも仏門一筋ですから。
天狗は帰れ」
いつもなら境内で真っ先に参拝客に挨拶をしている一輪だが、今日はみんなの視線が一輪に集まっている。
その視線を浴びて、一輪は恥ずかしそうに顔を少し背け、「お、おはようございます……」と挨拶をするのだった。
きゅん。
参拝客の胸に小さなとき(
「一輪」
「水蜜。どうしたの、私に何か……」
「やっぱり服の下には何も着けていないの?」
ぶっ!!
全員がいっせいに吹き出した。
水蜜は空に吹き飛んだ。
水蜜は今の一瞬で一輪の姿を写真に収め逃げ出そうとしている天狗に目線を送ると
「その写真、後でください」と目で合図を送り、
「任せてください」と天狗は目で返した。
ああ、これで悔いはない……。
あやうく成仏しそうになった。
*
二日目
*
「ネズミ~?」
「どうしたんだい?その服は吸血鬼の館の女中が着る服だそうだよ。君がやっていることにピッタリじゃないか」
ちなみに水蜜は既に鼻血を流しながら死んでいた。いや、もう死んでいるけど。
「それにしても、このメイド服とかいうの、腰布の丈が……」
「それはスカートというのさ。館の主人の趣味らしいよ」
「エロ吸血鬼め!」
地面に倒れたまま下から一輪のスカートの中を見ようとした水蜜はその代償に顔を踏んづけられた。
幸せそうな顔で死ぬ水蜜をぬえがつんつんしていると、「み、水た」という声が聞こえたが、
全てを言い終える前に二発目の蹴りで彼女の意識は閉ざされた。
土に指で書かれたダイイングメッセージには「ぱんつ」とただ書いてあるのみだった。
*
三日目
*
「ネズミ、説明」
「永遠亭の兎が着ている服だそうだ。要望通り、昨日の服よりは露出が少ないだろう」
「それにしても、この首に巻いている布だったり、重ね着している上着もちょっときついわね」
思わず一輪が上のブレザーを脱ぐと、彼女の白蓮よりは小さいが確かに豊満な胸がブラウスを押し上げ、
できた谷間にネクタイを挟んでいる部分が見事に強調されている。
水蜜にはもう我慢ならなかった。否、我慢などできるはずがないのだ、最初から!
「一輪!」
「水蜜、って貴方もどうしたのよ、その服」
水蜜はいつものセーラー服に下はスカートを着けている。その姿もまさしく一輪と同じ女子●生だった。
「一輪、私と一緒に里の寺子屋に通いましょう!」
「えっ、ちょっと、どうしたのよ、突然」
「私が一輪を脱がせた方がいい?それとも一輪が私を脱がす?」
「待ちなさい……!こんな昼間から、しかもみんなの見ている前なんて……」
鼻息荒く迫る水蜜に押されて一輪は反撃できずにいた。
ちなみにナズーリンは星の、白蓮はぬえの両眼を塞いで事の成り行きを見守っている。
「ナズーリン、どうしたんですか?何も見えませんよ」という星の声と
「聖達だけズルいわよ!私も見たい~」というぬえの声だけが空しく響いていた。
「『ひじり様が見ている』から大丈夫よ、一輪」
「うるさい!!」
どうしようかと横でオロオロしていた雲山を使って一輪は全力で水蜜を殴り飛ばした。
水蜜は薄れゆく意識の中で一輪の脱ぎかけの制服姿を心のアルバムの1ページに深くしまうのであった。
*
四日目
*
「……」
「地底の鬼が着ている服だよ。君も見覚えがあるんじゃないか?」
「私の記憶では腰から下は少し透けたスカートのはずなんだけど」
「生憎とそちらは入手が困難らしくてね。だが、問題はない。そのブルマというものは最近、幻想入りしたものらしく、
店主に調べてもらったところ、その鬼の服とセットで着る服だそうなんだよ」
現在、一輪が着ている服。
体操服とブルマ。
水蜜は(
*
五日目
*
「今日でようやくあの変な服たちともお別れね」
「変な服とは失礼だな。私がせっかく用意してやったというのに」
「黙れ。なら、お前が着てみろ」
「断る」
睨み合う一輪とナズーリンの間に白蓮が割って入ってきた。
「はいはい、喧嘩はいけません。ナズーリン、今日までありがとうございました」
「いえ、聖。全ては私のご主人様のせいですから」
「本当にそうよね……」
ジト目で横を見る一輪の目線の先で星がすまなそうにシュンとして反省していた。
その姿を見ていたら、もう許してもいいかなと一輪には思えてきた。
星の横には全身を縄で縛られている水蜜がいた。
「またあの服に戻るだなんて」「もっといろんな服を着た一輪が見たい」と口は塞がれているが目で語っていた。
縄を解こうと必死にジタバタしている水蜜を、少し離れたところでドン引きした目でぬえが見ていた。
その姿を見ていたら、まだ許すわけにはいかないなと一輪には思えてきた。
「それでは、一輪。新しい服ですよ」
「ありがとうございます、姐さん。早速……え」
白蓮が一輪に渡した服は
ゴスロリ服だった。
「私の思った通りね。似合うわ、一輪」
「え、あの……姐さん?」
何かの間違いだと服を全て身につけてみた一輪だったが、何の間違いもなかった。
黒と白をメインとしたフリフリでビラビラのブラウスにスカート。
頭には同じくフリフリでビラビラのヘッドドレス。
靴にソックスに手袋と完璧に揃っている。
「姐さん……他には服は……?」
「たくさんあるわよ。服屋の方に頑張ってもらって、いろいろなデザインのゴスロリ服を作っていただきました」
「そう、ですか……」
そんなに嬉しそうな顔をされたらもう何も言えなかった。
ぷつりと意識の線が途切れ、倒れそうになった一輪を水蜜が受け止める。
一輪の姿を見て、我慢できずに縄を引き千切ったのだ。
水蜜にお姫様抱っこをされ運ばれるゴスロリ姿の一輪にはもう抵抗する力も存在しなかった。
「もう好きにして」
この日、命蓮寺に流行のファッションリーダーが誕生した。
他に着る服もない為、一輪はしばらくゴスロリ服を着ざるをえなかった。
その姿があちこちで話題を呼び、幻想郷に空前のゴシック&ロリータブームが到来したのだ。
「うふふ……まさに夜の王である吸血鬼に相応しい服装ね」
「お嬢様、最高にお似合いでございます」
「どうかしら、妹紅。私、似合ってる?」
「む……殺し合いの場になんて服を着てくるのよ。燃やせないでしょ」
「さとり様、本当にお似合いですよ~」
「うん、さとり様、かわいい」
「そ、そうかしら。でも、少し恥ずかしいわね……」
このブームの発展に協力した、ゴスロリ服を製作した服飾屋を兼業している人形使いのアリス氏はこう語っている。
「私の知り合いの巫女と魔法使いにゴスロリ服を着せるのが私の夢だ」と。
最後に、このブームに懐疑的である香霖堂の店主から一言。
「まだブルマは負けてはいない」
「す、すいません。私が自分の仕事が忙しいせいで、なかなか寺の仕事を手伝えず、いつも一輪に任せきりでしたので、
せめてこのくらいはと思ったのですが……」
「それで、気を利かせてくれた貴方は私が後で洗おうと籠に入れておいた私の服を、私の代わりに洗ってくれたのよね」
さっきまで酷い剣幕だった一輪の顔は一瞬とてもにこやかな笑顔へと変わった。
それを見た星はぱーっとした顔で答えた。
「はい、私がやりました!」
「うっかり爪を出したまま洗ってくれたおかげで、私の服が全部このざまよ!歯を食い縛りなさい、星!」
「そんな!あの笑顔で私を騙して痛いっ!」
星が一輪を非難し終わる前に雲山の拳によって星は宙へと浮かんでいた。
自業自得なので、側で見ていたナズーリンも「反省をしたまえ、ご主人様」と庇う気すらないようだ。
「まったく、どうするのよ、この服。全部ボロボロじゃない。ネズミ、貴方のところで何とかしなさいよね」
「ご主人様の不徳の致すところだから仕方がないな。代わりの服は私が探してこよう」
そうこうしているうちに、一輪の怒声と星の悲鳴を聞きつけて他の仲間が集まってきた。
「一輪の服が全てなくなってしまっただなんて本当なの?一輪、服がなければ裸でいればいいじゃない」
「雲山!」
水蜜が宙へと浮かんだ。
「私の力でモザイク処理してあげようか。にひひ」
「雲山!」
ぬえが宙へと浮かんだ。
「困ったわね。知り合いの服飾屋に頼んでも、新しい服ができるまで五日はかかると思うわ」
「ありがとうございます、姐さん。代わりの服はネズミに用意させますので、五日でしたら余裕で待てますわ」
「そう?それなら、ナズーリン、一輪の服をお願いしますね」
「一つ心当たりがある。任せてくれ」
*
一日目
*
「で、任せた結果が、どうしてこの服なのかしら。ネズミ」
「異変の時に知り合った道具屋がいてね。彼が代わりの服を用意してくれることになったんだが、
さすがに今日すぐには難しいらしくてね。彼がいつも仕立ててあげているらしい、この巫女の服をいただいてきたというわけさ」
「よりにもよって、あの巫女の服~?」
一輪が着ているのは博麗の巫女が普段着ているあの巫女服である。
巫女特有の赤と白のコントラストに、霊夢独自の脇から袖の部分が切り離されている改造巫女服だ。
さすがにリボンは恥ずかしくて着けなかったようだが、一輪の頭にはいつもの頭巾がなく、普段は隠れている髪が全て見えていた。
「あら、可愛いわ。山の神社の巫女にも負けないわね」
「や、やめてください、姐さん」
「これは……参拝の方も増えるかもしれません」
「だからっ、星も、そんなにジロジロ見ないでよ……」
きゅん。
二人の胸に小さなときめきの音が聞こえた。
これが「萌え」というものなのか……!
「私、いつも通り、境内を掃除してきますね!」
一輪は真っ赤な顔をして箒を持って行ってしまった。
*
「いち姉ちゃん、巫女になったの?」
「おやぁ、命蓮寺は神社にでも鞍替えしたのかね」
「すいません、写真一枚いいですか」
「今日はたまたまこの服を着ているだけよ。
いいえ、命蓮寺はこれからも仏門一筋ですから。
天狗は帰れ」
いつもなら境内で真っ先に参拝客に挨拶をしている一輪だが、今日はみんなの視線が一輪に集まっている。
その視線を浴びて、一輪は恥ずかしそうに顔を少し背け、「お、おはようございます……」と挨拶をするのだった。
きゅん。
参拝客の胸に小さなとき(
「一輪」
「水蜜。どうしたの、私に何か……」
「やっぱり服の下には何も着けていないの?」
ぶっ!!
全員がいっせいに吹き出した。
水蜜は空に吹き飛んだ。
水蜜は今の一瞬で一輪の姿を写真に収め逃げ出そうとしている天狗に目線を送ると
「その写真、後でください」と目で合図を送り、
「任せてください」と天狗は目で返した。
ああ、これで悔いはない……。
あやうく成仏しそうになった。
*
二日目
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「ネズミ~?」
「どうしたんだい?その服は吸血鬼の館の女中が着る服だそうだよ。君がやっていることにピッタリじゃないか」
ちなみに水蜜は既に鼻血を流しながら死んでいた。いや、もう死んでいるけど。
「それにしても、このメイド服とかいうの、腰布の丈が……」
「それはスカートというのさ。館の主人の趣味らしいよ」
「エロ吸血鬼め!」
地面に倒れたまま下から一輪のスカートの中を見ようとした水蜜はその代償に顔を踏んづけられた。
幸せそうな顔で死ぬ水蜜をぬえがつんつんしていると、「み、水た」という声が聞こえたが、
全てを言い終える前に二発目の蹴りで彼女の意識は閉ざされた。
土に指で書かれたダイイングメッセージには「ぱんつ」とただ書いてあるのみだった。
*
三日目
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「ネズミ、説明」
「永遠亭の兎が着ている服だそうだ。要望通り、昨日の服よりは露出が少ないだろう」
「それにしても、この首に巻いている布だったり、重ね着している上着もちょっときついわね」
思わず一輪が上のブレザーを脱ぐと、彼女の白蓮よりは小さいが確かに豊満な胸がブラウスを押し上げ、
できた谷間にネクタイを挟んでいる部分が見事に強調されている。
水蜜にはもう我慢ならなかった。否、我慢などできるはずがないのだ、最初から!
「一輪!」
「水蜜、って貴方もどうしたのよ、その服」
水蜜はいつものセーラー服に下はスカートを着けている。その姿もまさしく一輪と同じ女子●生だった。
「一輪、私と一緒に里の寺子屋に通いましょう!」
「えっ、ちょっと、どうしたのよ、突然」
「私が一輪を脱がせた方がいい?それとも一輪が私を脱がす?」
「待ちなさい……!こんな昼間から、しかもみんなの見ている前なんて……」
鼻息荒く迫る水蜜に押されて一輪は反撃できずにいた。
ちなみにナズーリンは星の、白蓮はぬえの両眼を塞いで事の成り行きを見守っている。
「ナズーリン、どうしたんですか?何も見えませんよ」という星の声と
「聖達だけズルいわよ!私も見たい~」というぬえの声だけが空しく響いていた。
「『ひじり様が見ている』から大丈夫よ、一輪」
「うるさい!!」
どうしようかと横でオロオロしていた雲山を使って一輪は全力で水蜜を殴り飛ばした。
水蜜は薄れゆく意識の中で一輪の脱ぎかけの制服姿を心のアルバムの1ページに深くしまうのであった。
*
四日目
*
「……」
「地底の鬼が着ている服だよ。君も見覚えがあるんじゃないか?」
「私の記憶では腰から下は少し透けたスカートのはずなんだけど」
「生憎とそちらは入手が困難らしくてね。だが、問題はない。そのブルマというものは最近、幻想入りしたものらしく、
店主に調べてもらったところ、その鬼の服とセットで着る服だそうなんだよ」
現在、一輪が着ている服。
体操服とブルマ。
水蜜は(
*
五日目
*
「今日でようやくあの変な服たちともお別れね」
「変な服とは失礼だな。私がせっかく用意してやったというのに」
「黙れ。なら、お前が着てみろ」
「断る」
睨み合う一輪とナズーリンの間に白蓮が割って入ってきた。
「はいはい、喧嘩はいけません。ナズーリン、今日までありがとうございました」
「いえ、聖。全ては私のご主人様のせいですから」
「本当にそうよね……」
ジト目で横を見る一輪の目線の先で星がすまなそうにシュンとして反省していた。
その姿を見ていたら、もう許してもいいかなと一輪には思えてきた。
星の横には全身を縄で縛られている水蜜がいた。
「またあの服に戻るだなんて」「もっといろんな服を着た一輪が見たい」と口は塞がれているが目で語っていた。
縄を解こうと必死にジタバタしている水蜜を、少し離れたところでドン引きした目でぬえが見ていた。
その姿を見ていたら、まだ許すわけにはいかないなと一輪には思えてきた。
「それでは、一輪。新しい服ですよ」
「ありがとうございます、姐さん。早速……え」
白蓮が一輪に渡した服は
ゴスロリ服だった。
「私の思った通りね。似合うわ、一輪」
「え、あの……姐さん?」
何かの間違いだと服を全て身につけてみた一輪だったが、何の間違いもなかった。
黒と白をメインとしたフリフリでビラビラのブラウスにスカート。
頭には同じくフリフリでビラビラのヘッドドレス。
靴にソックスに手袋と完璧に揃っている。
「姐さん……他には服は……?」
「たくさんあるわよ。服屋の方に頑張ってもらって、いろいろなデザインのゴスロリ服を作っていただきました」
「そう、ですか……」
そんなに嬉しそうな顔をされたらもう何も言えなかった。
ぷつりと意識の線が途切れ、倒れそうになった一輪を水蜜が受け止める。
一輪の姿を見て、我慢できずに縄を引き千切ったのだ。
水蜜にお姫様抱っこをされ運ばれるゴスロリ姿の一輪にはもう抵抗する力も存在しなかった。
「もう好きにして」
この日、命蓮寺に流行のファッションリーダーが誕生した。
他に着る服もない為、一輪はしばらくゴスロリ服を着ざるをえなかった。
その姿があちこちで話題を呼び、幻想郷に空前のゴシック&ロリータブームが到来したのだ。
「うふふ……まさに夜の王である吸血鬼に相応しい服装ね」
「お嬢様、最高にお似合いでございます」
「どうかしら、妹紅。私、似合ってる?」
「む……殺し合いの場になんて服を着てくるのよ。燃やせないでしょ」
「さとり様、本当にお似合いですよ~」
「うん、さとり様、かわいい」
「そ、そうかしら。でも、少し恥ずかしいわね……」
このブームの発展に協力した、ゴスロリ服を製作した服飾屋を兼業している人形使いのアリス氏はこう語っている。
「私の知り合いの巫女と魔法使いにゴスロリ服を着せるのが私の夢だ」と。
最後に、このブームに懐疑的である香霖堂の店主から一言。
「まだブルマは負けてはいない」
星ちゃんよくやった。