今日は朝から天気が悪かった。朝、門に就いた時から、曇っている空は今にも雨が降り出しそうな天気で。
長年の門番の経験から、今日は午後から大雨が降る。そう私は思った。
そして、昼食を食べ終わり、シフト上他の子と交代する時間だから、仕事の引継ぎをして交代する。
少し関係ない雑談をしながら、心の中で、今日は大雨が午後から降る。その事で同情していたら……雨が降ってきた。
「降ってきましたね。それでは、すいませんが後はよろしくお願いします」
「はい、任せてください。ちゃんと、傘にレインコートを持ってきてますから大丈夫です」
そう言って、笑ってくれている彼女に感謝と申し訳ない気持ちを抱きながら自分の部屋に戻る。
傘なんか持ってきてなくて、濡れるのは嫌だから急いで部屋に戻る。
門番隊の宿舎は、有事の際に動きやすいよう外に設置されてある。
別館といってもおかしくないくらい大きくて、本館とも繋がっているから特に不便も無い。
――宿舎に着く。流石に、中に入るまでに少し雨に濡れて冷えたので、自室に戻ったらシャワーでも浴びよう。と、そう考えていたら部屋に着く。
その後に何しようかを考えながら、ドアを開けたら――
「はい。門番お疲れ様。雨に濡れて冷えたと思ったから、紅茶を入れといたわよ」
何故か、咲夜さんがいた。
色々と、突っ込みたいところがあるが……取り敢えず、抑える事にした。
紅茶を受け取り、机に置いてタオルで体を拭く。咲夜さんは入り口の所で紅茶を飲んでる。
「ありがとうございます……ところで、なんでここにいるんですか? 仕事と、お嬢様はいいんですか」
「ん? 大丈夫よ。仕事なら、午前中に掃除なんかは全部終わらせたから。後は、夕食の用意くらいしかないわよ。
それと、お嬢様なら昨日一人で裏門から、神社に宴会に行ったから大丈夫よ。
なんでも、珍しくチルノが来るとかで一人で行ったわ。雨が降ってきたし、今日はもう帰ってこないだろうから大丈夫よ」
チルノちゃんが宴会に来てるのなら仕方ないですね。
掃除なんかの仕事を朝で終わらせてきた……最近、二人とも仕事が忙しくてゆっくりできなかったから、偶には二人っきりでいたくなって来たんでしょうか?
そんな事を思ってると、粗方乾いたので紅茶を取りベットに腰掛けてゆっくり飲む……冷えた体が温まる。
「にしても、相変わらず殺風景ね。この部屋にあるのはベットと机、食器棚と食料関係の保存庫。後は衣類と小物を入れるクローゼットくらい」
「やっぱりお気に召しませんか? 必要ないものは持たない主義なので」
昔、旅人だったので、必要ないものは持たない癖みたいなものがついている。
実際、着飾ったり、見栄を張るような豪華な家具を置くのは性に合わない。
「ん~~そうね、昔からこの部屋を見てたから、私はこっちの方が落ち着くわよ」
「そうですか。ありがとうございます」
なんとなく嬉しくなって、お礼を言う。咲夜さんも嬉しそうに笑ってくれてる。
何かを話そうか考えていると――
――ガチャリと音がして私はベットに寝かされ……咲夜さんに押し倒されてた。
突然の事に思考が追いつかない。少し、冷静に考える。こんな事できるのは咲夜さんだけだ。
そして、鍵をかけられ何故か体に力が入らず、その咲夜さんに押し倒されてる……つまり――
「はい。これで貴女は動けない。
美鈴が悪いのよ。私が我慢してるのに、あんなに綺麗に笑って私を見たら我慢なんてできなくなるじゃない」
「あの~無駄とは思いつつ聞きますが――逃げてもいいですか?」
「悪いけど、逃げられないわよ。さっきの紅茶に少し効目の遅い筋弛緩剤を混ぜといたから。
それと、この部屋の空間を操ったから、この部屋から出るには普通の美鈴でも一週間はかかるわよ。
にしても、私の誘いから逃げるだなんて……どうやらお仕置きが必要みたいね」
体から嫌な汗が止まらない。顔も引きつった笑みを浮かべてるのが自分でも解る。
さっきまでの時間を思い出す……私が悪いのか?
せめてもの最後の抵抗に、睨むような表情で咲夜さんを見て言葉を述べる。
「お願いですから手加減してくださいよ。後、痛いのは嫌ですからね」
「楽しみましょう美鈴。安心していいわよ痛いような事はしないし、嫌がるような事もしない
でも、手加減なんてしないわよ。貴方への愛は加減なんてできないわ」
この状態でこれ以上の抵抗なんてできない。
なにか諦めに似た境地に入りながら――
「仕方ないわね。ムードも大切だから最初はキスからね
本当は全力で私の愛を見せたいけど――ンッ……」
――唇を重ねられ、口を割られる。口の中に舌が侵入してくるのを受け入れて……
「プハッ……ちょっと、咲夜さんやっぱり待ちましょう――ホラッもしかしたら紫さんに頼んでお嬢様が帰ってくるかもしれませんし……
だから、咲夜さん――えっ、ちょっと待ってくださいそんな――」
――全てを諦めた。
―――――……
――咲夜がいない。
事の始まりは、食後の紅茶を入れてもらってお代わりをしようと思ったら――咲夜がいなかった。
仕方ないので、自分で注いで咲夜が来るのを待ってたが……来なかった。
咲夜を探しに館内を歩いたが、地下にも部屋にも食堂にも宿舎にもいない。
美鈴の部屋にいると思っていってみたが、鍵がかかってて、音が一切しなかったし人の気配も無かった。
ノックしても誰もでなかったから、咲夜はいないだろう……流石に私が探してると思えば反応位あるはずだ。
部屋に戻ってる事を期待したけど、居なかった。
残った図書館に行って、親友のパチェに尋ねる。
「ねえ、パチェ。咲夜みなかった?」
「咲夜なら見て無いわよ。どうかしたの?」
「紅茶を注いでもらって、気づいたら居なかった」
「そう。大方、何か急用でも思い出したんじゃない? 何かを取りにいくのを忘れてたとか。
――後、チルノが図書館に来てるわよ」
「チルノが来てるの? そっちを先に言ってよパチェ。
チルノ~――」
チルノが居るから、咲夜の事なんて忘れてしまって――
「咲夜がいなくて、今日の美鈴のシフトは休み――まさか……いや、無いわね」
パチュリーの最後の呟きも聞こえなかった。