鳥が鳴き始めるほどの早朝
人里から少し離れた川の傍にある少女の姿があった
「準備はこれでよし……っと」
少女がそう言って魚籠を用意すると
着ていた服のスカートを少し捲ってその足を川の底につけた
「っく~……やっぱり冷たい!」
季節は既に春を過ぎていたが、流石に水を足につけるには早すぎる
人の身にはその水はあまりにも冷たすぎるのだが
その少女には関係の無い事だった
「でも、そろそろ御仕事始めないとね」
その少女、ミスティア・ローレライはそう言って
今日の夜に出す屋台の八目鰻を取りに向かった
身を切るような冷たい水の中にある簗を取りに向かう事は
たとえ大の大人でもかなりの重労働である
「あたっ!?……くぅ……太ももに噛み付かれた」
そして、水以外にも八目鰻に噛み付かれる事もあるのだ
「う~なぎ~うなぎ~♪な~にみ~て~♪は~ね~る~♪」
そんな過酷な作業をミスティアは陽気に歌いながら行う
彼女の屋台の看板メニューである
良質な八目鰻がなければ御店を開く事が出来ないからだ
・・・
「大量大量♪」
日が昇り御昼にはまだ早いけど、川の水も少し温かくなってきた頃
ミスティアの魚籠の中には大量の八目鰻が入っていた
それを手に取り、ミスティアは自分の住処に戻る
「さて、選別選別っと」
ミスティアがそう言って魚籠の中に居る八目鰻を別け始める
「ん~……料理に出来るのはこの位かな?」
その中で形の揃った大きさの物を取り分け
後に残った物は再び魚籠の中に戻す
形の揃った物しか御店には出さない
だから良い八目鰻が手に入らなかった時は
申し訳ないが八目鰻を遠慮してもらうか屋台を臨時休業をする事にしている
だが、だからこそ彼女が作る八目鰻屋台には人が集まるのだ
・・・
「今日は形の良い中ぐらいのが入ってるんだよね……」
良質で形の良い八目鰻を見て今日はどんな料理が出来るかを考える
大きめの物が入っていたら蒲焼以外にも
ぶつ切りにして醤油と出汁の濃い目の汁ですき焼き風に煮込む物も考える
中くらいのもので形が良い物があれば、それは蒲焼にして御飯にかける
小さな物は佃煮にする事も考える
「……よし、今日は八目鰻の白焼きにしよう」
その時に合う物を料理する事が大切なのだ
・・・
「……これでよし!」
日が昇り終えた夕方近く
料理を決めたミスティアが調理場で磨いだ包丁で鰻をさばき始める
良質の八目鰻を生かす為にきちんと手入れされた包丁で綺麗に捌かれる
「よし、うまく出来た」
良質な八目鰻を身と骨や肝の部分に別けられる
身の部分は蒲焼になるのは当たり前だが
骨と肝をミンチにして焼けば一品料理が出来る
天然物の八目鰻と言う物に捨てる所はないのだ
「ちゅんちゅん!私の手にした八目鰻に……捨てる所なんて殆ど無い!……なんちゃって」
ミスティアが包丁と串を両手に持って
ポーズを取ると言う御茶目な所も見せてくれつつ
屋台を開く為の下ごしらえが進んでいく
・・・
夕方になってきた頃、少しの仮眠を取ったミスティアが
仕事着である割烹着を着て屋台に向かう
通称『女将みすちー』である
「ちゅんちゅん!いらっしゃいませ♪」
そして、八目鰻料理の最後の工程に入る
「ちゅん、蒲焼だね♪今から焼くから一曲聞いて貰うね?」
下ごしらえをした八目鰻……これに焼きを入れるのだ
上質の炭で火力を調節して焦げないように焼いていく
ただそれだけの事だが、それには根気と経験が要る
「あ~の鳥は~まだ~うまく~飛べ~ない~♪け~ど~♪」
曲を歌いながらも、八目鰻を焦がさないようにしっかりと焼いて良く
「いつか~は~風を~きって~しる~♪」
良く見れば女将ミスチーの額や首筋には薄っすら汗がかかっているが
それが料理に落ちないよう御客見えないようにそっと拭く
喉元の汗は少しだけ胸元落ちるが、料理にはかかることは無いのでこの際無視する
「き~える~ひこうき~ぐも~♪おいかけて、おい~かけて~♪」
そして、何処で手に入れたのかはわからないが
秘伝のタレを焼いている八目鰻の蒲焼に塗っていく
数滴程、炭火の上に落ちたタレが更に食欲を増させる良い匂いに変わる
そして、ついに出来上がった極上の八目鰻……
それに最後のシメが加わる
「ちゅんちゅん!お待たせしました~八目鰻の蒲焼できたよ~♪」
額に薄っすらと汗をかいた女将が笑顔で手渡してくれる事である
これらの仕事に対して、我々がやれる事は少ない
まずは美味しそうな料理を暖かい内に食べる事と
「ちゅんちゅん……ねぇ?美味しい?」
作ってくれた女将に対して一言『美味しかった』と告げるだけなのだから
脇役さんのおかみすちーだーーー!
ミスティアの国歌聞きたい
八目鰻食べたい
感想は以上の三行。脇役さんのミスティアはほんとにいいですね
そして後書きの最後ww
ASE!
よし、その胸元に落ちた汗を我がふき取ってあげよう。
素敵な歌をいつも聞かせてくれる御礼だ気にするな。さぁさぁさぁさぁ!
やっぱり脇役さんの作品はいいなぁ!
>その時に会う物を料理する→合う
女将みすちー!おかみすみー!脇役さんのおかみすみーだ!
>3氏
その権利私に(ry
あの、先日脇役さんの作品が大好きすぎて
ある小説を元にネットで声活動をしている仲間と掛け合いを収録させて頂いたのですが……
公開を希望する場合、どこにご連絡すればよろしいでしょうか? (ノ_・、)
>1様
今後とも八目鰻の屋台と女将ミスチーを宜しくお願いします
>2様
満足していただけたのならミスチーも喜んでいるでしょう
……な、なんですか?この八目鰻は渡しませんよ!?
>3様
断わる!どうしてもと言うのなら私を倒してからにしてもらおうか
>こじろー様
待て待て!その役目は私が……(鳥目
>風蜂様
国崎最高ー!
私の作品が気に入って貰えてよかったです
>6様
鳥の詩……思いっきり間違えてましたOTL
女将ミスチーは可愛いですよね?もっと増えてもらいたいです
>奇声を発する程度の能力様
完全復活はまだまだです、仕事が終ってからすぐ寝るというような生活ですので…
後、その権利は(ry
>8様
最高と言って貰って、ミスチーも喜んで歌っているようです
脇役の作品でしたらどうぞ、御自由に公開してください
もし公開なさったのなら、その時の脇役の最新作品のコメ欄に一報入れて下れば
次の作品を書く原動力になりますのでお願いします