始めに一匹、兎が迷い込んできた。
にんじんをあげて、食べさせてやった。
半日ほど経って、礼も言わずに兎は立ち去っていた。
数日して裏山に入ったら、兎がいた。
動きもせず、冷たくなっていた。
土に葬って、さようなら。
次に一匹、兎を見つけて拾った。
にんじんをあげて、食べさせてやった。
少しばかり時が経って、昼寝したら居なくなっていた。
しばらくして月に行ったら、兎がいた。
それなりに元気にしていた。
言葉を交わして、さようなら。
3度目に一匹、兎がやってきた。
にんじんを振舞って、食べさせてやった。
一時経って、陰陽玉共々居なくなっていた。
しばらくして竹林に入ると、兎がいた。
こっぴどく叱られていた。
お灸をすえて、さようなら。
4度目は一匹、別の兎が謝りにやってきた。
にんじんを振舞って、食べさせてやった。
短く語らい、明日は家でねと兎は帰っていった。
1日経って招かれ竹林に入ると、兎がいた。
とても元気そうだった。
ご馳走になって、さようなら。
5回目に一匹、兎がしどろもどろとやってきた。
にんじんがなかったから、食べさせてやれなかった。
長く語らい、明日もまたねと兎は帰っていった。
1日が待てずに追いかけると、兎がいた。
瞳も頬も真っ赤だった。
今日までの二人に、さようなら。
最後に一匹、兎が急いでやってきた。
にんじんはあったけれど、食べさせてやれなかった。
1日中語らって、それでも兎はずっといた。
1日2日と経っても、傍には兎が居た。
泣き顔はとても似合わなかった。
瞳を閉じて。
さようなら。
とっても良かったです。
10頁にも満たない、小さな絵本に…