「あー、くそ」
魔法の森の端。
草むらに四つん這いになっていた魔理沙は、そのままぺたんと座り込んで、ばりばりと髪をかき毟る。
朝からこうして粘っていたところ、先ほどから、雨まで降りはじめた。湿った地面に触れて作業をしていた手についた泥が金髪を汚していく。乱暴な扱いで、サイドで三つ編みにした髪も乱れてしまう。
もちろん汚れているのは髪の毛と手だけではない。黒白のエプロンドレスもドロワーズも濡れているし、泥まみれになっている。
それはキノコだの薬草だのを採集する時は、いつものことだ。雨が降っているからこそ見つけられるものもある。
ほくほくして家に帰ったあと、鏡を見て驚くことも多かった。
普段はまったく気にならないそれが、今はとても煩わしくて仕方がない。
「なんでないんだよ、もう」
今の季節ならば、ここに生えているはずの薬草が見つからない。
朝、雨がやんでからずっと探しているのにも関わらず、気配すらないのだ。もう昼時も過ぎているため、身体は空腹を訴えている。
しかし、その薬草が見つからなければ、研究の続きをすることができない。
魔理沙は苛立ちの混じったため息をつく。
もはやライフワークともなっている魔法の研究。毎日、研究に明け暮れてより面白い、よりすごい魔法を使えるように、努力を重ねている。
昨日もその一環として、図書館から本をかっぱらってきた。二週間前にはパチュリーが、一週間前にはアリスが、そろって夢中になって読んでいたものだ。
アリスが読み終えてからは、二人揃ってその内容について議論を交わしていた。新しく入荷されたものの中では一級の魔道書らしい。
ならば、魔理沙が読まないわけにはいかないだろう。
そう考えて、盗んできたのはよかったのだけれど、いざ家に帰ってその本を開いてみれば、そこに載っている内容はひどく難解で魔理沙の理解を超えていた。
百年魔女のパチュリー、魔界出身のアリス。絶対的な知識量も、経験の差もよく分かっている。所詮、まだ十年と少ししか生きていない魔理沙では太刀打ちできない境地があるのも分かっている。
けれど、それが悔しい。
だからこそ、くさくさした気持ちを乗り越えて、とりあえず実験をしてみようと考えたのだ。しかし、決定的に重要な材料が見つからない。
他のものだったら、なんとか代用がきくのだけれど、こればかりはそうもいかない。
アリスやパチュリーなら、かつて採集したストックがあるかもしれない。あるいは理解できない点について質問すれば、それなり以上に説明してくれるだろう。
けれど、そうして相談してしまえば、魔理沙が理解できなかったことが、ばれてしまう。それはなんとなく悔しいし、癪に障る。
あの本を持っていったのは、きっと把握されている。これまでの経験上、図書館に向かえば、魔理沙の見解を求めてくるに違いないのだ。それはまずい。
「どうしたもんかなぁ」
途方にくれて、ぼんやりとあたりを見回す。けれど、やはり目的のものは見つからない。
「こらっ、てゐ!」
「あははっ、こっちだよー」
不意に、聞き覚えのある少女の声。少し大人っぽい怒りのこもった声と、ころころと甘やかな声。覆い茂る木々の向こう側に見えるひらりと揺れる薄桃色のワンピース。肩のあたりで切りそろえられた癖っ毛に柔らかそうな真っ白な耳をした少女の姿。
「あ、てゐ」
永遠亭のてゐだ。軽やかに笑いながら駆けるてゐの後ろを、鈴仙が追いかけている。アリスの家に置き薬の配達だろうか。魔理沙は置き薬を利用していないけれど、アリスは永遠亭とそれなりに親しい付き合いをしているらしく、たまにこうして二人が来るのを見かけることがある。
「ん……?」
ぱちり、と頭の中にピースがはまったような感覚。
魔理沙の頭の中に思いつきもしなかった選択肢が思い浮かぶ。
「そうだ! 永遠亭、永琳の奴なら持ってるかも!」
ぱんっと手を叩いて、魔理沙はにやりと不敵に笑う。停滞しかけた研究が進みそうな気配に、心が沸き立つのを感じた。
いても立ってもいられないとばかりに、すぐそばに放ってあった箒をまたいで、飛びあがる。その表情は心の底から楽しそうな、きらきらと輝いたものだった。
「ついてないなあ……」
大きな木の幹に身を寄せるようにして、早苗は大きくため息をつく。いつも通りの青と白の特徴的な巫女服に、両手で野菜や卵の詰まった布袋を抱えて、立ちつくしている。
恨めしげな瞳で眺めるのは、突然降りだした雨。通り雨なのか、薄灰色をした雲から勢いよくざあざあと音を立てている。バケツをひっくり返したような、と言えば言いすぎになるけれど、少なくとも学校のプールのシャワーよりは勢いがある。
週に一度の食料の仕入れに人里を訪れた帰り道に雨に降られた早苗は、手に入れたばかりのそれらが濡れてしまうことを嫌って、木の傍によって雨宿りをしているのだった。乾麺など濡れたら困るものもある。
幸い今は五月。木々は若々しい葉を茂らせていて、こうして木の傍に寄り添っていれば、ほとんど濡れることはない。
「はあ……」
いつになったらこの雨は止むのだろう。そう考えて早苗は落ち込んだ気持ちになる。
そもそも、今日は朝からついていなかった。
目覚まし時計をセットし忘れて、危うく寝坊をしそうになってしまったとか、神社の掃き掃除をしていたら風に舞った砂埃が目に入ったとか、ちょっと前髪を切りすぎてしまったこととか。
“向こう”にいたころなら、ちょうど五月病にかかる季節。こちらではゴールデンウィークなんて存在しないから、五月病にかかるはずもないのだけれど、今日の早苗はどうにも調子が出ない。こう天気が悪くて湿気が多いと自然と気持ちは下を向いていく。
「あーあ」
もう何度目になるか分からないため息を吐き出す。二酸化炭素と一緒に、このもやもやした気持ちも吐き出してしまえればいいのに。
「帰りたいな……」
不意に口をついて出た言葉。帰りたいと願う場所は、一体どこなのだろう。
幻想郷での生活にはすっかり満足しているけれど、こうして気持ちが落ち込んでいる時には向こうのことを思い出すこともある。
マックの微妙にしんなりしたポテトが食べたい、サーティーワンのストロベリーチーズケーキが食べたい。ジャンキーなものが食べたい。カラオケにも行きたいし、ウィンドウショッピングもしたい。
あんまり深刻なそれではなくて、即物的なホームシックである。どちらかと言えば、テスト前に遊びたくなるようなそういう感じ。
早苗も風祝であるとはいえ、普通の女の子でもあるから、そういうものが恋しくなることだってある。
ため息混じりにいつ止むか、いつ止むかとあたりを眺めていると。
「あれは、てゐ?」
早苗にとっては見覚えのある黄色いレインコートに身を包んだてゐが、かけていく。身体は完全防備なのにもかかわらず、相変わらず素足であるせいで、妙な格好になってしまっている。
雨の中を子どものように楽しそうに駆け抜けるてゐはあっという間に早苗の視界から姿を消してしまった。あっけに取られていると、ぜぇぜぇと息を切らせた鈴仙が赤い傘をさしながら走ってくる。
「あ、早苗、てゐ見なかった?」
きょろきょろと辺りを見回していた鈴仙は、木の下にいる早苗に気がつくと、そう問いかけてきた。仮にも元軍人であるにも関わらずすっかり息が上がってしまっているあたり、相当長いこと追いかけっこを続けていることが窺われる。
「てゐなら、あっちの方へ行きましたけど」
「あっちね、ありがとう!」
早苗の言葉を聞くと、鈴仙は再び走り出す。長い不思議な色の髪をなびかせて、赤い傘をさしているせいで走りにくそうではあったけれど、流石に兎だけあって、そのスピードは早い。
笑ってはいけないと思うけれど、そんな追いかけっこをずっと続けてきた様子が何とも猫とネズミのアニメを思い出させて、早苗はくすりと笑ってしまう。
それだけのことなのだけれど、早苗の気持ちは少しだけ前を向く。
「あ、雨が……」
気がつけば、雨はやんでいて。雲の切れ間からは、眩しい日差しと透きとおった青空が見える。
それはなんだか気持ちがよくて。早苗はその明るさに目を細めた。
「まったく……」
荒れ果てた屋敷の中、手にした箒に寄りかかるようにして、咲夜は疲れたため息をつく。
いくら完璧で瀟洒を誇る咲夜にだって、疲れることはある。いくら有能であると言っても、こう毎日毎日無駄な仕事ばかり増やされてはため息の一つや二つしかたがない。
昨日の魔理沙による襲撃。その前日に咲夜が説教をしたのが効いたのか、珍しく美鈴が善戦していた。しかし、それは同時に放たれる弾幕を避け続けることが出来たということで、美鈴に当たらなかった弾幕がどこへ飛んでいくかと言えば、門そのものなのだ。
そのせいで、いつも以上に被弾した門は今散々な有様だった。
曲がりなりにも努力の結果である以上、責めるわけにもいかない。
図書館に行くよりも前に、たまたまロビー付近で遊んでいたフランドールと出くわした魔理沙はいつものように弾幕ごっこを敢行。ここのところ、研究で相手をしてもらえなかったフランドールがいつも以上に大はしゃぎした結果、屋敷内までひどい有様だった。
さらに、外出先から帰ってきたレミリアがそれを見て、激怒。フランドールとレミリアによる激しい弾幕が繰り広げられ、それが終わったのが今朝のこと。
いつもならば、美鈴と協力して片付けをするのだけれど。美鈴は、レミリアに叱られて派手に拗ねているフランドールの相手をするために、地下室へと向かってしまった。
ならば、誰が片付けるのか。
咲夜である。妖精メイドは使えないし、こういう時それなりの手伝いをしてくれる小悪魔は季節の変わり目で風邪をひいて寝込んでいるパチュリーにつきっきりで、今回に限っては助けにならない。
否、それらはいいのだ。それがメイド長たる咲夜の使命なのだから。
それよりも、咲夜をくさらせている出来事は他にある。
本当ならば、今日は博麗神社にレミリアに付き添っていく予定だったのだ。
従者たるもの、いつでも影のように主人に寄り添っていなければならないのに。
片付けが大変だろうと、気を使って、レミリアは一人で出かけてしまったのだ。
時間を止めれば、すぐ終わりますから、と言いたかったけれど、そういうわけにもいかない。いくら咲夜が有能とは言え、一人で巨大なシャンデリアを運び出すことも、倒れた銅像を立て直すことは物理的に不可能なのだから。
「お嬢様……」
ひとりで家にとり残されたお留守番中の子どものように心もとない気分。
もうそんな子どもではないけれど、気分が盛り上がらないのは仕方がない。毎日、ほとんど傍にいるのだ。
絶対に口には出さない、人前ではそんな素振りを見せないけれど、要するに咲夜は寂しくてしかたがないのである。
「ごめんくださーい」
「はい?」
それでも、レミリアが帰ってくるまでにはいつも通りの紅魔館に戻さなければいけないと作業を続けていた咲夜の耳に聞きなれない声が届く。
来客の予定はあっただろうか。時間を止めて玄関に向かえば、そこにはブレザーに身を包んだ兎耳の少女、鈴仙がいた。
「こんにちは、咲夜。パチュリーから頼まれていた薬を持って来たんだけど」
「ああ、ありがとう。場所は分かるわよね?」
「うん、結構来てるからね」
二人は軽く微笑みあう。あまり知られていないが、鈴仙と咲夜はそれなりに仲が良い。
組織の中で、実質同じようなポジションについているためか、時間に余裕がある時には雑談をしたりすることもある。
「……って、どうしたのよ、てゐは」
「あー……」
紅魔館に足を踏み入れた鈴仙の背中にはレミリアのそれに少しだけ似た桃色のワンピースの少女が背負われている。ぐっすり眠っているのか、瞳は閉じられ、規則的な呼吸の音はひそやかだ。咲夜は口の端の涎に気づいたけれど、あえて言わないことにする。
鈴仙と同じように兎の耳を生やしたその少女を咲夜は知っている。
「どうもはしゃぎ過ぎて疲れたみたいで寝ちゃったんだよね」
「大変ね」
「本当よ。さんざん追いかけっこしたんだから」
はあ、とため息をつく鈴仙を笑顔で見送った咲夜は、ふと玄関を見回した。
「あら?」
そこに見つけた小さな包み。霊夢への土産として、レミリアが前々から用意していたものだ。今朝の混乱のせいで忘れて行ってしまったらしい。
それを見た咲夜の頬にいたずらっぽい笑顔が浮かんだ。
「これは届けに行かなくちゃいけないわよね」
仕事を放り出すわけにはいかないけれど、主人のために、優先するべきことが他にできてしまったのなら、追いかけざるを得ない。
一応、そのことを美鈴に伝えるためにくるりと地下室へと向かう咲夜。その足取りは先ほどからは考えられないほど、軽やかだった。
「はー……」
ずずっ、と音を立てて霊夢はお茶をすする。いつもと同じ場所に腰かけて、いつもと同じ湯呑みで、いつもと同じ風景を眺めている。
一度雨が降ったせいで、今日は箒での掃き掃除をすることもない。
のんびりと、お茶を啜っているだけでいい。
今日は珍しくも神社に妖怪も人間も誰も訪れてこない。まあ、もともと、人間は魔理沙だの咲夜だのどちらかといえば人外寄りの奴らを除けば、ほとんど訪れないのだけれど。
すっかり居候染みてきた萃香は勇儀だのなんだのと地霊殿での宴会に誘われて出かけて行った。霊夢もきなよ、と誘われたけれど、断った。焼き肉パーティーと言えば聞こえはいいけれど、その肉が何の生き物のものかを考えれば当然か。当然、燐や空もそちらに駆り出されている。
また、この季節には冬眠から覚めたばかりの紫が訪れてくることも多い。しかし、そもそも彼女は神出鬼没。霊夢が来てほしくない時には来ても、来てほしいと思う時には来ないような、ひねくれ者だ。
結界を緩めれば来ることも分かっているけれど、別にそこまでして呼ぶ必要もない。
一番の常連である魔理沙はここのところ、研究だなんだと忙しそうにしていて、来るには来るのだけれど、あまり長い時間滞在することもない。大方、今日もまだしばらく来ないだろう。
他にもレミリアだの、妖精だの、文だの、呼んでもいないのに神社に溜まっている妖怪はたくさんいる。けれど、今日は誰も来ない。
いつも、やたら賑やかな奴らばかりが集っているせいか、霊夢一人の神社は普通の神社らしく静かで。風に木々が揺れる音、雨のしずくが落ちる音、小鳥やなにかが鳴く声がやたらと耳についた。
「んー……、まあ、静かでいいわね」
ぽつりと呟いて、再びずずっとお茶を啜る。
自分の声さえも、あたりに響く。静けさの中に溶けてしまう。
別にそれが悪いというわけではないけれど、なんとなく落ち着かないというか。
もう夕暮れも近い。そろそろ、神社の中に入って夕食の支度でも始めなければいけないのだけれど、どうも間延びした気持ちはそのままで、立ちあがる気にはならなかった。
不意に、がさっと、木々が揺れる。神社を囲むように存在している林の中。
そちらに目を向ければ、薄桃色のワンピースを身にまとったてゐが悪戯っぽく笑っている。
「そんなとこで何してんのよ」
「別にー」
幼い相貌が、生意気そうなにやりとした笑みを形作る。いたずら兎、詐欺兎と言われる彼女らしい、不敵な笑顔だ。
はあ、とため息をついた霊夢が声をかければ、てゐはあっという間に走り去ってしまった。意味が分からない。
「なにかとんでもないいたずらでも仕込んだんじゃないでしょうね」
そう考えた霊夢は立ち上がって、きょろきょろとあたりを見回すけれど、特にこれといった異常は見受けられない。
まあ、妖怪が何を考えているかなんか分からないし、気にするだけ無駄だということぐらい経験則で分かっている。
腰に手を当てて、もう一度だけため息。立ち上がったついでだ。もう夕食の支度を始めようと、霊夢が靴を脱ぎはじめた時。
「霊夢! 見てくれよ、これ!」
びゅんっと風を切る音とともに現れたのは魔理沙だった。
いつものように明るい自信ありげな声で、なにかが入った瓶を霊夢の方へとつきだしてくる。
「何よ、それ」
「聞いて驚け、これはだなぁ」
霊夢の呆れたような問いかけにも瞳をきらきらと輝かせた魔理沙は怯むことはない。
むしろ、嬉々として瓶の中に入った薬の説明をし始める。
新しい魔法が完成するたびに魔理沙は逐一霊夢にそれを見せにくる。正直、説明されても何がすごくて、どういう効能があるかなど分からないのだけれど。
けれど、そうして興奮した様子の魔理沙を見ているのは、嫌いではない。
「霊夢!」
「レミリアじゃない、咲夜まで」
長い階段を上って来たのか、後ろに日傘をさした咲夜を控えさせ、いつも通り自信満々に胸を張って現れたのはレミリア。
ふふ、と微笑む咲夜はなぜだかいつもよりも充実した表情を浮かべている。
「来たわ」
「いや、来たわって言われても」
「ふふ、お嬢様」
「もう、咲夜、いつまで笑ってるのよ」
くすくすと笑う咲夜にレミリアは顔を赤くして突っかかる。
咲夜の手には小さな包みと雨に濡れた日傘が一本。咲夜を置いて一人で出かけたはいいけれど、突然の雨に日傘では対応ができなかったのだ。
雨宿りをしていたところで、日傘が乾くのを待っていたところ、忘れものを届けにきた咲夜と合流したというわけである。
「霊夢さん! あ、咲夜さんと魔理沙も来てたんですか?」
「おー、早苗!」
「ちょっとしたお菓子とか、色々作ってたら、作り過ぎちゃって。よかったらみんなで食べましょう」
「へえ? なんだか珍しいお菓子ね」
「はい、向こうで食べてたのを参考に作ってみたんです」
早苗の持ったバスケットを覗きこんだ咲夜は楽しそうに微笑む。ほのかに香る美味しそうな香りに霊夢も興味がそそられる。
「霊夢! ただいまー」
「萃香? 早いじゃない、どうしたのよ」
「へへ、ちょっとねー。ほら、お土産」
「あら、いい奴じゃない」
いつも以上にへべれけになった萃香が抱えられるだけの酒瓶を抱えて、どこからともなく現れる。へらへらと笑いながら差し出された酒瓶を見て、霊夢は瞳を輝かせる。
「霊夢さーん、お台所借りますね」
「ほら、魔理沙も手伝いなさい」
「えー」
あっという間に咲夜や早苗の手によって、宴会の支度が整えられる。
まるで、先ほどまでの静けさが嘘のような、にぎやかさ。
これがいつも通りの神社。
何やら、レミリアにからかわれている様子の萃香。取っ組み合いでほとんどじゃれ合っている二人を眺めながら、霊夢は再びいつもの場所に腰掛ける。
場所を提供しているのだ。支度ぐらいは任せたって罰は当たるまい。
「ああもう、騒がしいんだから」
「なんて、本当は嬉しいくせに」
いつも通りのあきれ顔で呟く霊夢に応えたのは紫。霊夢の真横、隙間から顔を出している。おかしそうに口元に手を当てて、胡散臭く微笑んでいる。
にまにまとした笑い顔がやたら、腹立たしくて、霊夢はじと目で紫を睨みつける。
「何よ」
「いいえ。ただ、今日は珍しいものが見れたのよ」
「だから、何なのよ」
「お気になさらず。私も参加してもいいかしら?」
「勝手にすれば」
ぷいっとそっぽを向いて、呆れたように呟く霊夢。
けれど、その口元に楽しそうな笑みが浮かんでいるのを、紫は決して見逃すことはなかった。
「霊夢ー、運ぶの手伝ってくれよ」
「ああ、はいはい」
たっと、駆け出す霊夢。今日の宴会も、嫌になるぐらい賑やかで楽しいものになるに違いない。
その後ろ姿を見守る妖怪三人は、そっと微笑みあったのだった。
てゐはとっても良い子!
幸せ兔はこうでなくちゃ。
さすが人を幸せにする程度の能力の持ち主!
起こった顔→怒った顔
てゐは、がめつくても切符はいい
そんなイメージ
てゐは良い子
てゐはさりげなく本気出す子
それと、鈴仙かわいい
そんなものが無くとも、不意に気がついて実感できる程度の小さな幸せで十分なのだと感じますね。
みんなの幸せそうな様子を見ることなんですかね。これはいい無限ループ。