Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

にとり工房。

2010/05/20 22:23:18
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「これでよし、と。」


川辺に建てられた小屋に大きめの看板を取り付けたにとりは、額の汗を拭いながらそう言った。

『人間と妖怪は盟友』と語る彼女は、人間達と親しくなるアイディアはないかと悩んでいた。そして彼女が悩み抜いて思いついたのがコレ。


【壊れてしまった玩具、その他なんでも直します。にとり工房】


不恰好で大きな看板にデカデカと書かれた文字はかなり遠くからでもはっきりわかる。むしろ小屋の大きさに対して看板の比率が合ってない。しかし彼女は気にしない。

「天狗にもチラシを配るように頼んでおいたからお客さん来そうな気がする。よし、頑張るか!」

そう意気込んだにとりは空高く右腕を突き上げてから小屋の中へと姿を消した。



……しかし、にとりの意気込みとは裏腹にお客さんが来る気配はない。

すっかり待ち疲れたにとりは以前、スキマ妖怪に貰った【携帯電話】をいじって遊んでいた。
外の世界の道具はなんでも興味深い。同じくスキマ妖怪から貰った【ビデオデッキ】とやらも面白かった。幻想郷には無い技術で作られた物質の仕組みを調べることは、にとりにとって至福の時だった。


――コンコン。


「んぁ?」


――コンコン。


何かを叩く音。それも連続的に聞こえてきた。熱中していた携帯電話のことなど忘れてにとりはハッとする。その音は戸を叩く音だった。

「は、はひぃ!」

思わず声が裏返った……恥ずかしい。それでも自分を落ち着かせるように深呼吸してからお客さんを出迎えようと戸を開ける。

そこに立っていたのは銀髪メイドさんだった。


「ぅわっ!人間!!」

「……まぁ人間だけど、そこまで驚かなくてもいいんじゃないかしら?普通だったら私が驚く側よ。あなた妖怪でしょ?」

「ご、ごめん。あんまり人間に慣れてないもんで……。」

深呼吸して落ち着け、私。初めてのお客さんなんだからもっと気軽に……。

「ところで『なんでも直す』って書いてあるけど、本当かしら?」

「……え?あ、うん。玩具でもなんでも。直せそうな物なら何でもいいよ。」

「じゃあこれをお願いできるかしら?」

そう言ってメイドさんが渡してきたのは立派な懐中時計だった。
何よりも会話がすんなり出来た。私すげぇ。いや、このメイドさんが話し上手なのかな?……と、その話は置いといて。


耳を澄ましてみる。その手渡された懐中時計からは時計独特の規則正しいカチカチとした機械音は聞こえない。どうやら内部の歯車が外れてしまっているらしい。
この手の修理はお手の物で、にとりは『よし』と工具を取り出した。

「じゃあ早速直してみるよ。そんなに時間は掛からないと思うから、そこに座って待ってるか散歩でもしてて。」

そう言うとメイドさんは『お言葉に甘えさせて貰うわ。』と、私が指示した場所に座った。


……。………。…………。


(……ものすんごぃ作業し辛い。 )

懐中時計を修理するにとり。その近くでその様子を眺めるメイドさん。
そのジッと眺められる事どころか、人間そのものに慣れていないにとりは、完全に上がっていた。

「ねぇ。」

「は、はひぃ!?」

返事するだけなのにまた声が裏返ってしまった。

「あなたは玩具も直せる、と看板に書いているわね?それならもう1つお願いしたいものがあるのだけれど。」

「……へ?」

「無理かしら?」

「あ、いや。物によっては直せると思うよ。出来る限りだけど……。」


それなら良かった、と今まで無表情だったメイドさんが初めて笑った。
不覚にも少しカワイイと思ってしまった。イカン、私はそんな趣味はない……と、また話が逸れた。


メイドさんの話では、仕えている館の妹様がよく玩具を壊してしまうらしく、昨晩も玩具を壊してしまったそうだ。で、その玩具をにとりに直して欲しいとの事。

初めてのお客さんだからサービスしたいと意気込んでいたにとりは、その仕事を快く引き受けた。するとメイドさんは今から壊れた玩具を持ってくると小屋から出て行ってしまった。

「はぁ~・・・・・・これで集中して作業ができる。さて、修理修理~♪」



~♪~♪~♪~



――コンコン。
「持ってきたわ。」


懐中時計の修理も終わり、再び携帯電話をいじって遊んでいると、戸を叩く音と共にさっきのメイドさんの声が聞こえた。
にとりが戸を開けると、先ほどのメイドさんの他にチャイナ服?に似ているような服を着ている女の人が大きな黒包みの袋を持って立っていた。

「わざわざ運んでくれてありがとね、美鈴。」

「いえ、力仕事は得意なんで気にしないで下さい。と、荷物はどこに置けばいいですか?」

美鈴さん(でいいのか?)に、そう声を掛けられた。作業台に置くように指示すると重そうな荷物を担いで私の横を通り過ぎる。
通り過ぎた時、なんだか鉄臭い感じがしたが……機械関連の玩具だろうか?

「よいしょ。」

どちゃ。


え?……どちゃ??


「昨日妹様が壊してしまった玩具なのよ。直せないなら処分するから無理しなくてもいいわ。」

そんな言葉をかけられたにとりは、引きつった顔のまま恐る恐る黒包みの袋を開いた。




~♪~♪~♪~




――その日以来、不恰好な看板に赤字で『ナマモノはご遠慮下さい』という字が付け加えられていたとか。
【ナマモノダメ、絶対。】
そんな思いつきから書いてみました。

本当は妹様の玩具はヌイグルミのイメージ強いんですが……今回は【ナマモノ】ということで。
名前が出ていませんがメイドさんっていうのは、みなさんご存知【十六夜 咲夜】さんです。


誤字脱字のご指摘、アドバイス等あったらコメをお願いします↓↓

・・・・・・久しぶりに覗いたついでに編集。SSは絵を描くようになってからあまり書かなくなったもんなぁ。
UMA
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
まあ、予想は出来たよ。でも、その玩具は非常識なブツであると理解すべき。
2.名無し削除
オチは確かに読みやすい。けど結構面白かったかな。
3.奇声を発する程度の能力削除
おおう…私はオチは予想できなかった…
でも、面白かったです!
4.名前が無い程度の能力削除
ほのぼのかと思ったら微グロとな…

話はよかった!

後、現在幻想郷の郷が卿になってました。
5.名前が無い程度の能力削除
にとりと咲夜さんのほのぼのだと思って読み進めていた自分にこの落ちは心臓に悪かった!
でも驚いたことも含めて落ちまで楽しめたいいSSでした。