博麗の巫女ほどタケノコご飯を作ることに特化した人間はいない。
晩春から初夏にかけて、そんな話を古参妖怪から聞くことができる。
噂によると、先代の巫女が山の大天狗にタケノコご飯を振舞ったことがあるらしい。
そのタケノコご飯を一口食べた大天狗は「ユリイカ! ユリイカ!」と叫びながら服を脱ぎ捨て、目にも留まらぬヨチヨチ歩きで地平線の彼方に消えていったと言う。
失踪した大天狗は後日、河童のふりかけ工場の中にて、おかかふりかけの袋に包装された状態で見つかったそうだ。
それ以来、先代の作ったタケノコご飯を口にしようとした猛者はいない。
幼い妖怪は、親から「悪いことをする子は博麗のタケノコご飯よ」と言い聞かされ、震え上がったのだとか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
閑話休題、話を現代に戻すことにしよう。
霊夢は非常に憂鬱であった。
たまには、と里の付近まで妖怪退治に出かけたところ、里の人から山のようなタケノコを報酬としてもらってしまったのだ。
無論、タケノコが美味しいこの季節にそのタケノコを貰ったのだから、霊夢は喜んだ。
馬車に数台分のタケノコをもらい受け、神社に持ち帰ると思う存分タケノコ料理に舌鼓を打った。
タケノコご飯も山のように作ったし、新しいレシピの開発も行った。
そして3日目になって、ようやく霊夢は大切なことに気づいた。
(あ、これ食べきれないな)
既に、物置に入りきれない量のタケノコが生活スペースを圧迫している。
普段布団を入れている押し入れも、タケノコに全て明け渡してしまった。
それでも収納しきれないタケノコが、あっちの床やこっちの廊下に転がっている。
そして今日、さらに厄介なことが起こりはじめた。
「霊夢、私の布団がタケノコ臭いんだけど」
魅魔が文句を言いだしたのだ。
普段、猫型ロボットのように押し入れで寝泊まりしている彼女が不機嫌なのも無理はない。
その安眠スペースにはタケノコがびっしりと充満していて、彼女の寝どこは事実上侵略者に占拠されてしまったのだから。
「あんたねぇ、そう言うなら少しくらい消費の方を手伝いなさいよ」
「無理、もうタケノコには飽きた。ああ、たまにはサーモンの赤ワイン蒸しが食べたいねぇ」
と、食べたこともない難題を言いだす始末。
霊夢は困り果てていた。
次に誰か来たら無理にでもおすそわけして数を減らす、そう心に決めたのだった。
その矢先
「おーい、霊夢ぅ。お茶飲みに来たぜ」
魔理沙がやってきた。
彼女はいつものように、あたかも自宅にいるかのように堂々と神社に入ると、堂々と座り、堂々と茶菓子をつまみ始めた。
「あんたねぇ、少しは私のことも考えなさいよ」
といつも通りの文句を言いつつ、霊夢は腹の中でタイミングをうかがっていた。
勿論、タケノコを押しつけるタイミングである。失敗すれば逃げられかねない。
まあ精々、籠に1つくらい持って帰ってもらえば成功だろう。
そう読んで、スッと茶菓子を差し出した。
「いやいや、おまえに毎日茶を出してもらってるばかりじゃ私も悪いと思ってな。外に土産を置いてきた、きっと驚くぜ」
魔理沙は得意げに言いながらお茶をすすった。
一方、霊夢はそれを見て言葉を失った。
タケノコだ。
タケノコが籠に5個、その数は数えたくもない。
「竹林に言ったら活きのいいのがたくさんとれてな。私1人で食べきるのもアレだし、魅魔様もタケノコ好きだ、おすそわけだぜ」
輝く日光を浴び『私を食べて』とアピールするタケノコの山5個を見て、霊夢は茫然と立ちすくんでいた。
魅魔も最初は同じくどうしたものかと額に手を当てていたが、急に思い立ったように
「魔理沙、ここに寝なさい」
と、自分は正座して膝を差し出した。
「およ? なんか分からないけど、お言葉に甘えて」
魔理沙がその膝の上に頭を乗せると、
「違う! こうだッ」
魅魔は魔理沙を掴み上げ、自分の膝の上に魔理沙の腹を乗せた。
そして、体勢的に突き出した尻めがけて
「み、魅魔様!?」
「間が悪すぎる! 喝ッ」
近くに転がっていたタケノコを手に取ると、その無垢な尻めがけてタケノコドライバーをお見舞いしたのであった。
わぉぉぉぉん、と普段聞き慣れない魔理沙の声が境内に響いた。
増えたタケノコの数:籠5つ。
減ったタケノコの数:タケノコドライバー×1。
屋内タケノコ充填率:12%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「増えたわね」
「ああ、見事に増えたね」
浴室がタケノコに占拠された。
魔理沙は縁側で、尻にタケノコが刺さったまま天日干しにされている。
「あんた、弟子にどういう教育してたのよ」
「私は放任主義者だから」
悪びれる様子もなく、魅魔は茶をすすっていた。
そこへ
「霊夢さーん」
と聞き覚えのある声。早苗であった。
見れば、両手に何も持たず。これは絶好のチャンス、霊夢はそう思った。
魔理沙の時のように、タケノコを持ちこまれては元も子もないからだ。
「ああ、いらっしゃい。早速だけどあんた──」
「霊夢さん、とうとうできました、できたんですよ!」
霊夢の話を遮ってまで、早苗は一方的に喋った。かなり興奮気味の様子である。
「……できたって、何がよ?」
「よくぞ聞いてくださいました。初夏にのみ許される宴会芸、私の新しい奇跡の力です!」
早苗はそう言うと庭の中央に立ち、
「1回しかできないので、よく見ていてくださいよ! えいっ」
と天に向かって星型の陣を描く。
すると、どうしたことだろう、平坦な庭に次々とタケノコが生えてきたではないか。
それも1本2本ではなく、庭が一面タケノコ畑である。
「奇跡の力も発揮できて、しかも美味しく食べられる! 一石二鳥、素晴らしいと思いませんか?」
霊夢はしばらく庭一面のタケノコを、ひきつった笑みで眺めていたが、
「早苗、ここに寝なさい」
と、自分は縁側に正座して膝を差し出した。
「あら、膝枕ですか?」
「違う違う、ここにお腹を乗せるのよ」
「こうですか?」
早苗が指示通りの体勢をとったところで、霊夢は近くに転がっていたタケノコを手に取ると
「れ、霊夢さん?」
「なにが一石二鳥よ、喝!」
増えたタケノコの数:8本/㎡。
減ったタケノコの数:タケノコドライバー×1。
屋内タケノコ充填率:40%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうするのよ、これ……」
「こうなると、もう食べ物には見えないね」
「立派な侵略者よ」
浴室に続き、厨房もタケノコに占拠された。
早苗は縁側で、尻にタケノコが刺さったまま魔理沙の隣で天日干しにされている。
「何はともあれ、次に来た奴には絶対持って帰ってもらうわよ」
「そうだね、でないと私の神社が潰れかねない」
「いつからあんたの神社になったのよ」
「私がここに住むと決めたその日から」
相変わらず勝手な悪霊である。
するとそこへ、一陣の風と共に
「どうもー、文々。新聞の射命丸ですー」
文がやってきた。
「ああ、ちょうどいいところにいい奴が来たわ」
「いやー、昨日見た夢の中で霊夢さんが新聞取ってくれましてねぇ、ならば現実でも如何です?」
「あんたタケノコ好きよね、この場で嫌いとは言わせないわよ」
「契約期間なんですが、3か月と半年と1年と千年がありますがどうします?」
「うちのタケノコ貰って行きなさいよ、1割あげるから」
「千年契約ですね、分かりましたー。明日からお届けしますね?」
「と言うか、山の妖怪たちで食べれば大した量じゃないでしょ? 全部持っていきなさいよ」
「あー、今はキャンペーン期間中ということで、契約してくれた方にプレゼントしてるんですよ」
「運搬手段は任せるから、籠なり桶なり好きに使って」
「プレゼントはなんと、旬のタケノコ! それも大オマケして籠に10個!」
「……ほぅ?」
霊夢、殺気を放つ。
文、飛び立つ。
「じゃあ新聞は明日からお届けするんで、庭の隅に置いてあるタケノコ受け取ってくださいねー!」
「待ちなさい! タケノコも新聞もいらないわよ!」
「あー聞こえないー、何も聞こえませんー」
「この、これでも喰らえッ」
霊夢は傍のタケノコを1つ手に取ると、マッハ1で投げ放った。
タケノコは誤らず逃げる文のドロワーズに、吸い込まれるように飛んでいき──
「きゃうあッ!?」
増えたタケノコの数:籠10個。
減ったタケノコの数:空飛ぶタケノコドライバー×1。
屋内タケノコ充填率:55%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここまで来ると笑うしかないわね」
「私にはもう笑えないよ」
浴室と厨房に続き、玄関や縁側までタケノコに占拠された。
神社の半分以上がタケノコエリアと化してしまったのだ。
魔理沙はそろそろ陰干し、早苗はまだ天日干し。
場所がなかったので文は足を縛って天井につるすことにした。ドロワもろ見えである。
「とにかく、問題はこの密度よ。せめて仮の場所でもいいから置き場が欲しいわ」
「置き場ねぇ。そんな簡単に見つかれば今頃苦労してないよ」
「それはそうだけど……、魔理沙の家にでも詰め込もうかしら」
「たぶん押しつけ合いのイタチごっこになると思う。そもそも魔理沙の家、ここから遠いし疲れるから嫌」
「うぐぅ」
霊夢が頭を抱えたちょうどそのとき
「うわぁ……、凄いタケノコだね」
先ほどから騒がしい神社の様子を見に、エレンがやってきた。
「そうなのよ、さっきからどいつもこいつも……」
霊夢はそこで言うのをやめた。
そう、エレンだ。こいつの営む店はどういうわけか博麗神社の境内にある。
近距離、おおらかな人柄、ついでに忘れっぽい、イッツパーフェクト!
「エレン、あんたに折り入って頼みがあるんだけど」
「ほぇ?」
「うちのタケノコ預かってくれない? この辺りの全部」
「こ、こんなにたくさんうちに入らないよ!」
「じゃあ入るだけ」
「え、でもうちは魔法屋だし、そういうのは……」
「ありがとう、エレン! 魅魔、やるわよ!」
「よし来た!」
「え? ……え?」
エレンがおどおどしている間に、2人の行動は非常に迅速に行われた。
魅魔は桶で部屋の中からタケノコをかきだし、霊夢はそれを一輪車でエレンの店に流し込んだ。
神社に比べれば小さなエレンの店であったし、商品がたくさん陳列してあったが、それを差し引いても十分な収納スペース。
これ以上は無理だなと2人が中断した頃には、あれほど山のようにあったタケノコがごっそりなくなっていた。
「これ、うちに入れるのかなぁ」
はち切れんばかりに膨張してしまった家を見て、エレンはドアノブを握ることすらためらった。
「ああ、お腹すいたらいくらでも食べていいわよ。友だちにあげてもいいからね」
霊夢は満足げに神社に帰って行った。
増えたタケノコの数:増えてなーい。
減ったタケノコの数:魔法の店1つ分。
屋内タケノコ充填率:20%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
神社に帰ると、る~ことが山のようにタケノコを背負って帰ってきたところだった。
「ご主人様! 見てください、この活きのいいタケノコ! 今年は大豊作ですよ!」
霊夢は黙って、優しい頬笑みを浮かべながら鉛筆くらいに細く削ったタケノコ2本をる~ことの鼻に挿した。
増えたタケノコの数:元の黙阿弥。
減ったタケノコの数:1本(ここから2本に削りました。エコロジー(笑))。
屋内タケノコ充填率:66%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「魅魔、あの時の感動は何だったのかしら」
「忘れよう、霊夢。人生、忘れた方がいいことの方が多い」
「そうね、忘れましょう何もかも」
浴室と厨房、玄関や縁側。その全てが悪のタケノコ帝国に占拠されてしまった。
早苗は尻をさすりながら帰ってしまった。
魔理沙は誤ってエレンの魔法の店にタケノコを詰め込む時、タケノコの中に混入した模様。
る~ことにはタケノコを鼻に挿したまま庭にいる黒アリの数を数える作業を命じた。
文にいたっては「反省しません、反省しません」とうわ言のように呟いている。
「魅魔、私ね、決めたんだ。生まれ変わったら河童になって全自動タケノコ消費機を造るって」
「おーい、帰ってこーい」
「ふふ、ふふふふふふふふ」
「……重症だねこりゃ」
目がうつろな霊夢。魅魔が頭を叩くが反応なし。
そこへ、
「なになに? さっきから何か楽しそうな事やってるけど何が何なの?」
遅れた野次馬、カナがふらりと現れた。
「んー、霊夢が終わった。人間的に」
「およおよ、巫女さんが御臨終? 南無~」
手を合わせるカナ。だがここで、
「こら、勝手に死んだことにするな」
霊夢が近くに在ったタケノコを投げた。
だがカナはひょいと避ける。
「おぉっとだまし討ち? でもそんな弾幕には当たらないわよ」
「む、言ったわね?」
「ああ言ったとも、当てられるものなら当ててみなさいよ」
べーっと舌を出し挑発するカナに対し、霊夢はタケノコを構えた。
その途端、誰もいないはずの庭の方から猛スピードでタケノコが飛んできて、
「あうぁッ!?」
霊夢の方ばかりに注意していたカナに命中、そのままカナは地平線の向こうまで飛んで行った。
魅魔と霊夢が振り向くと、庭には5mを越える巨大なタケノコが居座っていた。
よく見れば、キャタピラと砲台まで装備している、なんという近代的なタケノコだろう。
「ふふ、ここで会ったが年貢の納め時! 今すぐ陰陽玉をあたいに差し出すか、もしくはこのタケノコ戦車の餌食になるなのです!」
タケノコが喋った。
「……タケノコが、喋った?」
「タケノコじゃないのです、戦車技師の里香なのです! ええい、いくなのです!」
砲台から撃ちだされる、時速160kmはあろうかという豪速タケノコ。
霊夢はひらりと避けたが、タケノコは神社の壁にめり込んだ。
「流石は博麗の巫女、しかしこれは避けられるかな!?」
豪速タケノコマシンガン。夢幻姉妹もびっくりの発狂っぷりである。
「さあさあ、無駄な抵抗はやめてこのタケノコ戦車の餌食になってくださいなのです!」
「生憎、うちはもう──」
弾幕という戦場に送られたことが、霊夢の弾幕本能を呼び覚ました。
飛び交う無数の高速タケノコの中から最も速度の遅いタケノコを見つけ、全身全霊でキャッチした。
「馬鹿な、あたいのタケノコマグナムを素手で受け取っただと!?」
「うちはもうタケノコは間に会ってるのよ!」
戦車めがけてタケノコを投げ返す霊夢。
霊夢が投げたタケノコは、狙いを一寸も外すことなくタケノコ戦車の砲台の中に撃ち込まれた。
瞬間、弾づまりによる大爆発。
「ま、またやられたなのですぅ~、ぐっすし」
里香もまた爆風にあおられて、大量のタケノコをまき散らしながら地平線の彼方へと消えて行った。
「全く、うちの神社にはまともな奴は来ないのかしら」
霊夢は一息ついて庭を見渡した。
そこら一帯、最後に里香がまき散らした弾薬用のタケノコが散乱していた。
増えたタケノコの数:アハハ、アハハハハハハ
減ったタケノコの数:よく考えると、全然減ってない。
屋内タケノコ充填率:97%
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「魅魔、狭い、もっとそっち詰めて」
「無理だね、こっちももうスペースがない」
もう居間以外の部屋は全てタケノコで埋め尽くされてしまった。
居間もまた、床一面タケノコで足の踏み場もない。
それでもる~ことは呑気にアリを数えているし、文は「バーゲンセール、ハーゲンダッツ」としきりに呟いている。
「まさかうちの神社がタケノコに潰される日が来るとは夢にも思ってなかったわ」
「何もまた潰れると決まったわけじゃあるまいし」
「じゃあ何か打開策でもあるの?」
「いや、正直ない」
「なら決まりね。もう数分後には次のおすそわけが来て、うちの神社はタケノコでいっぱいになるわ。いや、もう来るころかも」
霊夢の勘は割と当たる。それは魅魔も認めるところである。
その霊夢がそう言うのだからその時は近いのかもしれない、そういう考えがふと魅魔の中をよぎった時、
「霊夢、お邪魔するわよ~」
唐突に空間が避け、紫が現れた。
「実はね、藍がたくさんタケノコもらってきて食べきれないから、おすそわけ……に……」
紫は思わず言葉を詰まらせた。
霊夢と魅魔が、尋常ではない光を目に宿し、こちらを見ているのである。
「魅魔、頼むわよ」
「大丈夫、考えてることは同じだ」
2人の口元がにやりと歪む。
特に霊夢に関しては、今までに見ないまがまがしさだ。
紫は思わず、
「な、なんだか取り込み中だから私は帰るわね」
とスキマを閉めかけたは、そこを魅魔が押さえる。
「おぉっと、ここまで来たからには簡単には帰さないよ。 霊夢!」
「よし、しばらくそのまま押さえておいてよ!」
霊夢は籠を手に取りタケノコを一杯入れると、それをスキマの中に放り込んだ。
「ちょっと、霊夢、うちだってタケノコは余ってるのよ!?」
「その中は広いから問題ないでしょう? さあ、じゃんじゃん行くわよ」
魅魔が無理やりスキマをこじ開け、霊夢がそこにタケノコを投入する。
紫も押し返そうとするが、それは魅魔が許さない。
気がつけば神社にあったタケノコの半分がスキマに消えた。
「霊夢、もう限界! もう入らないって!」
「そんなこと言わずに、まだまだ大量にあるのよ? ねえ、魅魔」
「そう。ほら、こんな太くて立派なタケノコもあるし、食べ応えがあるんじゃない?」
「……らめぇ」
死闘から2時間、とうとう全てのタケノコがスキマに消えた。
きっと紫は顔が広いから知り合い同士で仲良く消費してくれるだろう、霊夢はそう祈りながらスキマを閉めたのであった。
増えたタケノコの数:阻止!
減ったタケノコの数:全部!
屋内タケノコ充填率:0%(祝)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜が来た。
いつの間にか文までどこかにいなくなってしまっていた。
タケノコがすっかりなくなり、少し閑散としてしまったものの、やはりこちらの方が落ち着く。
霊夢は茶をすすりながらそう思ったのであった。
「やっと、タケノコのない食卓になったね」
魅魔もまた、嬉しそうであった。
このまま全てが万事解決するかのように思われた。
そう、奴の襲来があるまでは
「れーむーっ」
泥酔ロリボイスと共に萃香が上がりこんできた。
別にそんなこと自体は日常茶飯事、今更霊夢は気にしない。
「霊夢。タケノコご飯作ってよ、タケノコご飯」
「生憎、うちにはもうタケノコはないわよ」
「……え? ないの?」
「ないの」
「3日前は山のようにあったじゃない! あれ全部食べちゃったの!?」
「まあ似たようなものよ」
澄ました顔で霊夢が言うと、萃香は不機嫌そうに頬をふくらませ、うっすら涙を浮かべ
「……霊夢のタケノコご飯、食べたい」
「また来年ね」
「今すぐ食べたい」
「でももうタケノコがないから」
それを聞くや否や、萃香は縁側に飛び出した。
そして両手を掲げ
「幻想郷中のタケノコよ、博麗神社に集えー!」
そこから全ては速かった。
全ての窓や玄関から大量のタケノコが雪崩れこみ、あっというまに霊夢はタケノコに埋もれてしまった。
なんとか這いだし窓の外を見ると、次々とタケノコが神社に向かって飛んでくるではないか。
さらには、魔法の店にあったマジックアイテムと超反応し、巨大化した魔理沙が屋根を突き破って暴れまわっているではないか。
助けを求めに差し出した手に
「霊夢さん、フライングで第一号お届けにまいりました!」
文は新聞を渡すと、遠い空に旅立ってしまった。
そして神社はとうとう倒壊した。
そしてとうとうタケノコは霊夢の意識の中にまで潜入しはじめた。
もう頭がタケノコのことしか考えられなくなりつつある、思考能力が失われ始めた証。
遠のく意識の中で、最後に霊夢は
「ご主人様、数え終わりました! 10万とんで5321匹でございます!」
と、意気揚々にる~ことが叫び声を挙げたのが聞こえた気がしたが、そんな些細なことはどうでもよかったのであった。
増えたタケノコの数:幻想郷。
神社にいたアリの数:105321匹。
屋内タケノコ充填率:Game Over.
こういうギャグ書けるようになりたいものです…。
和む
庭に生えたたけのこが一番怖い。
放っておくとあっという間に育って地下茎で広がって、神社の床下も突き破って、数年後には周囲一帯が竹林になる。とか考えてしまった。
新旧キャラがみんなほのぼのしていて面白かったです
旧作が馴染んでて良かったですw
コメントありがとうございます。
ついでに、うちにあるタケノコも貰ってください!
>1
ありがとうございます。
貴公もいいセンスを持っていると思いますよ。
>2
旧作キャラSSはもっと流行るべきと思うなのです。
なのです。
>3
一家に1本タケノコの時代ですねw
>4
何だかんだ言っても、この人の心はまだまだ子供だと思います。
>5
ありがとうございます。
新旧含めて神社にいそうな方々や頻繁に訪れそうな方々を総動員してみましたw
>6
ありがとうございます。
お燐や明羅さんや怪綺談アリスを出せなかったのがちょっぴり悔しかったり。
>7
常識にも建築学にも植物学にも囚われない早苗さん。
早めに根を掘り起こす必要がありますねw
>8
新旧ミックスって、浪漫があると思うのです。
また機会があったらやってみたいものです。
>9
呼んだら霊だらけになっちゃいますよw、魅魔様やカナもいるのにw
たまに、彼女たちはまだ神社にいるのだろうかとか考えます。