「あー…」
私は力が抜けきった体を門に背を預け、胡乱な眼で空を見上げた。
生気の無い身体とは対照的にどこまでも晴れ渡り雲ひとつなかった。
何故、ここまで弱っているのかといえば、
「お腹すいた…」
極めてシンプルな理由だった。
シンプル故どうすることも出来ない。
「今日で三日目だっけ…」
どうしてこんなことになったのかと言えば、それもまたシンプルである。
お嬢様の前で咲夜さんを押し倒した(悪気はない)
ついでに胸の位置に手が当たった(偶然である)
お嬢様にしこたま笑われた(仕方ないね)
顔を真っ赤にした咲夜さんに食事抜き三日を言い渡された(なんてこったい)
「あー…。けど、咲夜さん可愛かったなあ…」
顔真っ赤にして、子供みたいに怒鳴って。
昔は『美鈴お姉ちゃん』って呼んでたのに、今はすっかり大人になって…。
そんなことを考えていてもお腹は減る。
数えるのやめた空腹の音がなった。
「寝よう…」
睡眠で空腹を紛らわせることにしよう。
後十時間くらいなら持つ…はずだ。
そう自分を納得させ目を閉じる。
そのとき足音が近づいてきたことに気がついた。
この歩き方は…
「咲夜さん?」
「えっと、その…」
普段とは違いはっきりしない様子だった。
視線は泳ぎ曖昧な態度だったが、決心したようにこちらを見る。
そして、
「ごめんなさい」
「ふぇっ?」
突然謝られた。
謝られるようなことをした覚えはないのだが。
私は深々と頭を下げる咲夜さんを呆然と見ることしか出来なかった。
「カッとなって食事抜きなんて言って、ごめんなさい」
「あ、そのことですか…」
「…怒ってる?」
恐る恐る訊ねる咲夜さんがおかしくて、吹き出してしまう。
それが不満だったのか、少し不機嫌な声を出す咲夜さん。
「何が可笑しいの?」
「あ、いえ、別に気にしてませんよ」
「え…」
「悪気はなかったですけどね、してしまったことは事実ですし」
だから気にしてませんよ。
そう言うと咲夜さんは力なく肩を落とす。
「はあ…。悩んでた私が馬鹿みたいじゃない」
「昔から意地っ張りでしたからね、咲夜さん」
「そうだったかしら。あまり憶えてないわ」
咲夜さんが差し出した手を私は掴み立ち上がる。
「お詫びしないとね。何かして欲しいことはある?」
「して欲しいこと…」
食事…はいつでもできる。
こんな機会は滅多に無いのだから普段はできないようなこと…。
悪戯心がむくむくと湧き上がってきた。
ニヤつく顔を抑えて私は言う。
「それじゃあ」
「何かしら」
「昔みたいに『美鈴お姉ちゃん』って呼んでください」
「え」
意味がわからないという顔をする咲夜さん。
が、一瞬で顔が赤くなる。
「で、できるわけ」
「自分から言ったじゃないですか。して欲しいことって」
「う~」
真っ赤な顔で俯き唸り声を上げる。
意地っ張りな所は子供のときから変わらない。
自分で言った以上『できない』とは言えないだろう。
しばらく顔を俯かせたままだったが、消えそうな小さな声で
「め、美鈴お姉ちゃん…」
囁くように言って、顔を赤くしたまま走り去った。
私は力が抜けきった体を門に背を預け、胡乱な眼で空を見上げた。
生気の無い身体とは対照的にどこまでも晴れ渡り雲ひとつなかった。
何故、ここまで弱っているのかといえば、
「お腹すいた…」
極めてシンプルな理由だった。
シンプル故どうすることも出来ない。
「今日で三日目だっけ…」
どうしてこんなことになったのかと言えば、それもまたシンプルである。
お嬢様の前で咲夜さんを押し倒した(悪気はない)
ついでに胸の位置に手が当たった(偶然である)
お嬢様にしこたま笑われた(仕方ないね)
顔を真っ赤にした咲夜さんに食事抜き三日を言い渡された(なんてこったい)
「あー…。けど、咲夜さん可愛かったなあ…」
顔真っ赤にして、子供みたいに怒鳴って。
昔は『美鈴お姉ちゃん』って呼んでたのに、今はすっかり大人になって…。
そんなことを考えていてもお腹は減る。
数えるのやめた空腹の音がなった。
「寝よう…」
睡眠で空腹を紛らわせることにしよう。
後十時間くらいなら持つ…はずだ。
そう自分を納得させ目を閉じる。
そのとき足音が近づいてきたことに気がついた。
この歩き方は…
「咲夜さん?」
「えっと、その…」
普段とは違いはっきりしない様子だった。
視線は泳ぎ曖昧な態度だったが、決心したようにこちらを見る。
そして、
「ごめんなさい」
「ふぇっ?」
突然謝られた。
謝られるようなことをした覚えはないのだが。
私は深々と頭を下げる咲夜さんを呆然と見ることしか出来なかった。
「カッとなって食事抜きなんて言って、ごめんなさい」
「あ、そのことですか…」
「…怒ってる?」
恐る恐る訊ねる咲夜さんがおかしくて、吹き出してしまう。
それが不満だったのか、少し不機嫌な声を出す咲夜さん。
「何が可笑しいの?」
「あ、いえ、別に気にしてませんよ」
「え…」
「悪気はなかったですけどね、してしまったことは事実ですし」
だから気にしてませんよ。
そう言うと咲夜さんは力なく肩を落とす。
「はあ…。悩んでた私が馬鹿みたいじゃない」
「昔から意地っ張りでしたからね、咲夜さん」
「そうだったかしら。あまり憶えてないわ」
咲夜さんが差し出した手を私は掴み立ち上がる。
「お詫びしないとね。何かして欲しいことはある?」
「して欲しいこと…」
食事…はいつでもできる。
こんな機会は滅多に無いのだから普段はできないようなこと…。
悪戯心がむくむくと湧き上がってきた。
ニヤつく顔を抑えて私は言う。
「それじゃあ」
「何かしら」
「昔みたいに『美鈴お姉ちゃん』って呼んでください」
「え」
意味がわからないという顔をする咲夜さん。
が、一瞬で顔が赤くなる。
「で、できるわけ」
「自分から言ったじゃないですか。して欲しいことって」
「う~」
真っ赤な顔で俯き唸り声を上げる。
意地っ張りな所は子供のときから変わらない。
自分で言った以上『できない』とは言えないだろう。
しばらく顔を俯かせたままだったが、消えそうな小さな声で
「め、美鈴お姉ちゃん…」
囁くように言って、顔を赤くしたまま走り去った。
ん?いや、可愛い。