「お燐の好きな人って、さとり様?」
何の前触れもなくそんなことを聞いてくる奴がいた。誰がだって? おくうがさ。
地霊殿の庭園にて、仕事に一区切りつけて一休みしてたあたいの所に、いつも通り脳天気全開って感じの笑顔を浮かべたおくうがやってきた。大方、あたいと同じく仕事に区切りをつけて休憩にやってきたんだろうけど、おくうのことだから絶対とは言えないね。仕事のこと自体忘れてるとかさ。
そんなおくうが、あたいの隣に座って発した第一声が先の台詞だった。
「なんだい、おくう。いきなりガールズトークなんてらしくないね」
「がぁるずとぉく?」
「女の子らしい話ってことさ」
いつもはゆで卵のおいしい食べ方ぐらいしか話題の引き出しを持ってない(それだって何度も同じことを聞かされるから飽き飽きしてるけど)おくうにしては珍しい。そういうお年頃になったってことかな。あたいとそう変わらないと思うんだけどね。
「んー、そうだね。ご主人様ってことを抜きにしても、あたいはさとり様が好きだよ」
基本優しく、時に厳しくでちゃんとあたい達のことを想ってくれてるからね。そりゃ好きにもなるってもんさ。
「わたしもさとり様好き! でも、でもぉ」
いつもは考えなしなほどおしゃべりなおくうにしては、これまた珍しく言うべきかをどうか迷ってるらしい。でも、この子が悩むことって、大抵はくだらないかしょうもないことなんだよね。
「なにさ、他にも何か言いたそうだね。こっちまで気持ち悪くなるから、思い切って言っちゃいなって」
「うん、わかった。わたし、さとり様が好きって言ったけど、あのね、お燐のことも好きだよ」
おぅふっ。
「なんだい、それは。そんなことを改まって言われたら、照れくさくなって嫉妬妖怪のおねえさんに妬まれるじゃないか」
そういうとこも少しは考えて話してもらいたいね。言えって言ったのはあたいのほうだけどさ。まあ、ちっとも悪い気はしないけど。
「それでね、お燐は? お燐もわたしのこと好き?」
「だから、そんなこと改まって聞くようなことじゃないじゃないか」
本音を言えば、言われるのも照れくさいけど、自分が言うのはもっと照れちゃうね。もしかして、あたいの顔を灼熱地獄にする気かい?
「うにゅ……お燐はわたしのこと、嫌いなんだ……」
なんでそうなるかな。
「ばか、ばかばかばか。ばっかだねぇ、おくうは」
「うにゅうぅ……ばかだから、嫌いなの?」
「そこがばかだって言ってるのさ。あたいがいつ、どこで、どんな風に、あんたのことを嫌いって言った?」
「……覚えてない」
「違うね。それは覚えてないんじゃなくて、最初から聞いてないんだよ。あたいはあんたのことが嫌いだなんて、ひとっことも口にしちゃいない。だから記憶にないのさ」
まったくね。こんなこと、鳥頭以前の問題じゃないのさ。
「この際だから、おくう。他のことは忘れても、これだけはちゃんと覚えておくって約束してほしいんだ」
「うにゅ、なに?」
「いいかい。あたいはね、さとり様よりもこいし様よりも、勇儀さんよりもパルシィさんよりも、キスメちゃん、ヤマメちゃん、その他の地底に住む誰よりもだよ。おくう、霊烏路空が好きなんだ」
ついさっきまで照れくさいなんて思ってたけど、そもそもちゃんと伝わってないってなら話は別さ。あたいはやる時はやる猫だからね。
「う、うにゅぅ、さとり様よりも?」
「そうさ」
「こいし様よりも、勇儀さんよりも?」
「その通り。この地底の中だけじゃない、地上だって雲の上だってあの世にだって、あんたよりも好きな奴なんていない。あたいにとっての一番は、いつだっておくうさ!」
うーん、くさいね。死体みたいな腐臭が漂ってきそうだよ。これはあとでさとり様にからかわれるだろうなぁ。
「ううにゅううぅう……じゃ、じゃあ、あれ。私とお燐は、えと、えーとぉ」
「なんだい、なんだい」
「うにゅにゅにゅにゅ……、そー、そーぉ?」
そうそう? 二人で三国を制圧しようって誘いかい?
「そー?」
「そぉ、そーしそーあい?」
ああ、相思相愛か。うん、まあ、大体合ってるのかな。おくうのあたいに対する好きってのが同じぐらいってなら、ね。
「合ってるっちゃ合ってるけど、それはちょっと違ってそうなんだよね」
「うにゅう……よくわかんない」
「おくうにはちょいと難しかったかもね」
どっかで聞いた台詞を引用したってとこだろうしね。だったらさ。
「あたいたちのこと表すなら、もっと簡単で的確な言葉があるよ」
「うにゅ? それってなに?」
「んふふふ」
すぐには答えず、ちょっとした悪戯心で間を空けてみる。案の定、おくうは首を傾げてあたいを見つめてきた。
しばらくは、あたいもおくうのきょとんとした顔を眺めてたけど、焦らしすぎてそもそも何を待っていたかを忘れられてもなんだしね。意地悪もほどほどに、目の前の残酷なぐらい無邪気な鈍感娘に教えてやる。
今のあたいが言える、精一杯の想いを込めて。
「親友以上、恋人未満さ」
何の前触れもなくそんなことを聞いてくる奴がいた。誰がだって? おくうがさ。
地霊殿の庭園にて、仕事に一区切りつけて一休みしてたあたいの所に、いつも通り脳天気全開って感じの笑顔を浮かべたおくうがやってきた。大方、あたいと同じく仕事に区切りをつけて休憩にやってきたんだろうけど、おくうのことだから絶対とは言えないね。仕事のこと自体忘れてるとかさ。
そんなおくうが、あたいの隣に座って発した第一声が先の台詞だった。
「なんだい、おくう。いきなりガールズトークなんてらしくないね」
「がぁるずとぉく?」
「女の子らしい話ってことさ」
いつもはゆで卵のおいしい食べ方ぐらいしか話題の引き出しを持ってない(それだって何度も同じことを聞かされるから飽き飽きしてるけど)おくうにしては珍しい。そういうお年頃になったってことかな。あたいとそう変わらないと思うんだけどね。
「んー、そうだね。ご主人様ってことを抜きにしても、あたいはさとり様が好きだよ」
基本優しく、時に厳しくでちゃんとあたい達のことを想ってくれてるからね。そりゃ好きにもなるってもんさ。
「わたしもさとり様好き! でも、でもぉ」
いつもは考えなしなほどおしゃべりなおくうにしては、これまた珍しく言うべきかをどうか迷ってるらしい。でも、この子が悩むことって、大抵はくだらないかしょうもないことなんだよね。
「なにさ、他にも何か言いたそうだね。こっちまで気持ち悪くなるから、思い切って言っちゃいなって」
「うん、わかった。わたし、さとり様が好きって言ったけど、あのね、お燐のことも好きだよ」
おぅふっ。
「なんだい、それは。そんなことを改まって言われたら、照れくさくなって嫉妬妖怪のおねえさんに妬まれるじゃないか」
そういうとこも少しは考えて話してもらいたいね。言えって言ったのはあたいのほうだけどさ。まあ、ちっとも悪い気はしないけど。
「それでね、お燐は? お燐もわたしのこと好き?」
「だから、そんなこと改まって聞くようなことじゃないじゃないか」
本音を言えば、言われるのも照れくさいけど、自分が言うのはもっと照れちゃうね。もしかして、あたいの顔を灼熱地獄にする気かい?
「うにゅ……お燐はわたしのこと、嫌いなんだ……」
なんでそうなるかな。
「ばか、ばかばかばか。ばっかだねぇ、おくうは」
「うにゅうぅ……ばかだから、嫌いなの?」
「そこがばかだって言ってるのさ。あたいがいつ、どこで、どんな風に、あんたのことを嫌いって言った?」
「……覚えてない」
「違うね。それは覚えてないんじゃなくて、最初から聞いてないんだよ。あたいはあんたのことが嫌いだなんて、ひとっことも口にしちゃいない。だから記憶にないのさ」
まったくね。こんなこと、鳥頭以前の問題じゃないのさ。
「この際だから、おくう。他のことは忘れても、これだけはちゃんと覚えておくって約束してほしいんだ」
「うにゅ、なに?」
「いいかい。あたいはね、さとり様よりもこいし様よりも、勇儀さんよりもパルシィさんよりも、キスメちゃん、ヤマメちゃん、その他の地底に住む誰よりもだよ。おくう、霊烏路空が好きなんだ」
ついさっきまで照れくさいなんて思ってたけど、そもそもちゃんと伝わってないってなら話は別さ。あたいはやる時はやる猫だからね。
「う、うにゅぅ、さとり様よりも?」
「そうさ」
「こいし様よりも、勇儀さんよりも?」
「その通り。この地底の中だけじゃない、地上だって雲の上だってあの世にだって、あんたよりも好きな奴なんていない。あたいにとっての一番は、いつだっておくうさ!」
うーん、くさいね。死体みたいな腐臭が漂ってきそうだよ。これはあとでさとり様にからかわれるだろうなぁ。
「ううにゅううぅう……じゃ、じゃあ、あれ。私とお燐は、えと、えーとぉ」
「なんだい、なんだい」
「うにゅにゅにゅにゅ……、そー、そーぉ?」
そうそう? 二人で三国を制圧しようって誘いかい?
「そー?」
「そぉ、そーしそーあい?」
ああ、相思相愛か。うん、まあ、大体合ってるのかな。おくうのあたいに対する好きってのが同じぐらいってなら、ね。
「合ってるっちゃ合ってるけど、それはちょっと違ってそうなんだよね」
「うにゅう……よくわかんない」
「おくうにはちょいと難しかったかもね」
どっかで聞いた台詞を引用したってとこだろうしね。だったらさ。
「あたいたちのこと表すなら、もっと簡単で的確な言葉があるよ」
「うにゅ? それってなに?」
「んふふふ」
すぐには答えず、ちょっとした悪戯心で間を空けてみる。案の定、おくうは首を傾げてあたいを見つめてきた。
しばらくは、あたいもおくうのきょとんとした顔を眺めてたけど、焦らしすぎてそもそも何を待っていたかを忘れられてもなんだしね。意地悪もほどほどに、目の前の残酷なぐらい無邪気な鈍感娘に教えてやる。
今のあたいが言える、精一杯の想いを込めて。
「親友以上、恋人未満さ」
吹いたwwwww
もう恋人になっちゃえばいいじゃん。
ご冗談でしょう、お燐さん