低血圧のおねえちゃんは、寝起き不機嫌。
だから、
「――ひどい」
起きたそばからこれだ。
まるで二日酔いでもしたみたいな顔して、隣にいる私を睨みつけて。
なんなんだろうね、この仕打ちは。
せっかく起きるまで待ってたげたっていうのにね。
このシーツ、汗とかで湿ってるし、あんまりいたくないんだけど。
おねえちゃんの寝顔が可愛いからつい、長居しちゃったりして。
なのに起きぬけがこれじゃ、さっきから補給してたおねえちゃん分がすっからかんになっちゃう。
「おはよ」
「ひどいわこいし」
きゅ、とシーツを胸元まで引き上げて。
私から少し距離をとって、じっと見つめられる。
そりゃ、真っ赤な顔とかかっちかちに固まった背中とか、可愛いけど。
でもいきなり私にひどい、なんて言ってくるって、どういうことだろうね?
それはこっちの台詞だっての。
「服着せなかったこと? シーツ換えなかったこと?」
「違います!」
くわっ。
そんな擬音が似合いそうだった。
特段おかしいところはない。
朝だから寝ぐせがついてるのは普通だし、口の端に涎の跡があるのも可愛げがあったり。
しいていうならそのじと目なんだけど、不機嫌なんだから仕方ないことかな、と妥協。
わたしもたぶん、似たようなもんだし。
何かやったっけなあと思いだそうとするけど、あんまり前のことを覚えておくのは苦手なんだった。
大人しく謝っておねえちゃんに聞こうかな、と思ったけど、おねえちゃんのほうが何かを言いたそうにしていたから、先にそれを聞くことにした。
「あ、あんな。とつぜん、いきなり」
たどたどしいおねえちゃんの言葉をそこまで聞いて。
「あ」
わたしが何やっちゃったのか、なんとなくわかっちゃった。
というか、そもそもなんで今まで気づかなかったのか。
「……ごめん、おねえちゃん」
ぺこり、と頭を下げる。
本当に申し訳ないことをしました、反省。
好きだからなんて理由が通らない事はわかってるし、そんなことをして覚えてないなんて言ったらどうなることか。
全部無意識っていうのも結構、罪深いコトなんだね。
「謝っても遅いです!
――――けど、その。顔、あげて」
「ううん、おねえちゃんに悪いことしちゃったもん。ちゃんと許してくれるまで謝る」
「あ、ぅ……怒るに怒れないじゃないですか。
いつもみたいなふてぶてしさはどうしたんですか」
別にふてぶてしいわけじゃないけど、反論はこのさい呑みこもう。
今回は全面的に私が悪いわけだし。
おねえちゃんになにやってんだろ……なんて、珍しく後悔してたりするし。
自分でなった無意識に、ちょっと怒ってるなんて、まるで私じゃないみたい。
「……もう。あなたがそうだと、調子が狂う」
「だって、私が悪いんだし」
「そうよ、こいしが悪いの。
……いつもふらっと出て行ってはふらっと帰ってくるし、いつも私のことなんか気にしてないと思ってたら、いきなりこんなことするし」
ああ。
気にしてるつもりだったのに、おねえちゃんの目にはそう見えてたんだ。
ちゃんと帰ってるつもりだったけど、結局おねえちゃんに心配かけてたんだ。
誰にも見えないっていうのは、困らせちゃうことがいっぱいあるんだな、なんて再認識。
……ごめんね、と。
心の中で、他のことも謝っておく。
「私は、こいしがわからない」
「……うん」
だって。
そう生きてきたんだもの。
誰にもわかられなければ、孤独も怖くないって。
そう思って、ずっと今まで心を閉ざしてきたんだもの。
「だから―――その、怖いの」
どこにいるのか。
何を思っているのか。
何をしているのか。
そんなことを考えて、眠れないことだってあるの。
おねえちゃんの告白は、とてもさみしそうだった。
自分はいつも一人なんだって決めつけて生きてきたから。
私がついててあげないとって思ったのに、こんなにも不安にさせてしまっていたなんて。
「うん、ごめんね」
わたしたちは、孤独だった。
昔も今も、一緒にいたはずなのに。
心を開けばわたしたちはひとつになって、心を閉ざせばひとりになって。
いつだってさみしかった。
誰かがいてほしかった。
ふたりに、なれなかったから。
「気まぐれでもいいから、ひとりぼっちにしないで」
「うん」
心を見る力を残して生きたおねえちゃんは、とてもさみしがり屋。
だからわたしがそばにいてあげないと。
お燐やおくうに任せておけないし、わたしがちゃんと面倒見てあげなきゃいけないよね。
「こうやって、一緒にいるとね、とってもあったかいから」
頬から首、肩。腕を通って、指先。
息を吹きかけるように鎖骨から、脇腹をなぞる。
癇癪を起していたおねえちゃんが、別人みたいに優しい顔になった。
おねえちゃんは、私がわからない。わたしの心が読めない。
そのことが嬉しくて、私も同じようにお姉ちゃんに触る。
教えてあげなきゃいけない。
私がおねえちゃんをどう思ってるのか。
そうやって、言葉とかそうでないものとか、いっぱい積み上げて。
前より、もっと、仲良くなるんだ。
そう思うと、なんだか、胸がどきどきして、
「おねえちゃん!」
気付いた時には、襲いかかっていた。
「ひゃ、こいし、ちょっと?!」
ああもう。
そんな顔したら、我慢がきかなくなっちゃった。
ベッドにおねえちゃんを抑えつけて、ふふっとわらって。
「先に謝っとくね」
ぺろ、と舌を出して、小さく。
「ごめん」
首元で、誘うように呟いた。
「……昨日も、同じことを言いましたね」
「そうかな?」
はぁとため息をついて、こちらを見つめて。
まるで見慣れましたとでもいうみたいに、呆れた声を放った。
すきにしてください。
こいしを、もっとおしえてください。
告白するみたいに、たどたどしいけれど。
確かにおねえちゃんは、わたしに呆れてたんだなって思った。
だって、こんなに近いんだから。
わたしのどきどきだって、伝わってるよね。
こんなこと言ってて、ばくばく鳴ってるんだから。
きっと、おねえちゃんは呆れてるにきまってる。
「ん。今日は、ずっと一緒にいるよ」
いっぱい、いっぱい。
わたしを、教えてあげる。
良いじゃないですか無限ループ
朝チュン最高です朝チュン
ではここらで一発『次作が怖い』
うーん、たまらない
俺も言おう『次作が怖い』次作が出たら死んでしまいそうだ。絶対出すなよ?!
確かに『次回作が怖い』
糖分過剰摂取なんかで死にたくはない
古明地姉妹のちゅっちゅはやはりいいな!
いい朝チュンだぜ……
あえて言おう
『次回作が怖い』と
いいな!!!
わっふr