タンスの前に立ち、
タンスの引き出しを開け、
タンスの中を覗き、
タンスの前で嘆息する。
またか。
◆
姉は私が好きだ。
そしてそれを表現する方法として、姉は日常的に私の下着を盗んでいく。
勿論私自身も姉が好きである以上、その行為を拒む気は毛頭ない。
しかしだからと言って無断で持って行くのは如何な物だろうか、と私は思うのである。
そんなことせずとも言えばくれてやるというのに、我が姉ながら不可思議な存在である。
なにせ元を正せば、私の下着を調達してきたのは姉であり、これらは元々姉の所有物だ。
当然ながら今は私のものであるし、その程度の理由で気軽に渡せる物では決してない。
しかし、下着を欲しがる相手は姉である。
姉が欲しいと言うなら、私は別にあげても構わないと考える。
求められるなら、気軽な気持ちで差し出してしまおう。
しかし、だからといって盗難行為が許せるかと言えば、そういう訳では決してない。
より正確に言ってしまえば、別段許しても問題はないのだが、勝手に持っていかれるのはやはり困ってしまう。
何故ならそれが姉の仕業なのか、姉でない他のなにかの仕業なのかの判別ができないからだ。
犯人が姉であるなら構わないが、姉以外の何かの犯行である場合、私は徹底的な物理手段で報復行為込みの略奪を行わなければならない。
私はそう心に決めているし、今までだってそうしてきた。
なんにせよ、犯人が姉であるか姉以外の何かであるかの確証が今のところ持てない以上、百聞は一見に如かずである。
ぐずぐず考えるよりは、さっさと姉に確認を取った方が遥かにはやい。
ならばひとまず我が姉を捜すのが解決への最短ルートであろう。
そうと決まれば善は急げである。
早速姉に問い質すべく、私は捜索に向かうのであった。
◆
「ごめんなさい、欲しかったんです」
いつも通りの自白。
それが姉の、遭遇直後の発言であった。
「もうやめてって言わなかったっけ」
「仕方ないじゃないですか。欲しかったんですもの」
「だったらせめて一声掛けて」
「掛けたらつまらないじゃない。後、あなた捕まらない」
「それはまぁ謝るけど」
「ほら、これでおあいこでしょ」
「いやいやそれとこれとは話が別」
「そういうものかしら」
「そういうものなんだってば」
流れるような会話は、常々繰り返された物であり、所謂テンプレという物である。
このテンプレをいつものように2分程度続け、私たちの会話は一段落する。
「で、今度は何してくれるの、お姉ちゃん」
「あなたは何をして欲しいのかしら」
姉の言葉に私は少し思案する。
私たちは行き着くところまで、それ以上もそれ以下も粗方やってしまったから、何かと聞かれても特に思いつかなかった。
こんな状態でいいのだろうか、と少しばかり思わなくもないが、そもそもそれは今更なことであり、気にした方が負けである。
「んー、……なにか思いつく?」
「それを聞いてるのは私なんですが」
「だよね、どうしよう?」
「だから私に聞かれてもとしか」
姉の言うことは一理ある。
だからといって私が何か思いつける訳では決してない。
勿論思い付かないからここで何も頼まないという選択肢も存在するが、それはつまらない愚の骨頂と言えるものだ。
折角の姉とのコミュニケーションなのだ。
それなりに楽しまなければ損であろう。
「んー」
だが幾ら考えども何も思い浮かばないし、欠片の発想も出てこない。
少し前ならやってないことも多かったからやることには困らなかったが、一通りやるとそうもいかない。
そろそろ別の知識を仕入れた方が……、と思考が逸れはじめた私の耳に、姉の声が届いた。
「そんなに悩むんでしたら、とりあえず遊びます?」
「いやいや、いつも遊んでるじゃん」
「…………確かにあれも、遊びと言えば遊びですね」
少しの間から姉が躊躇したのを感じる。
しかし、ちょっと行き過ぎてるかもしれないが、あれはどう思い返しても遊びである。
そんな姉の瑣末事より、私にとって姉への命令の方が遥かに重要度が高い。
なにかないかな……、と暫く悩めど、やっぱり何も思い付かなかった。
「うーあーうー…………あぁもう面倒くさい! とりえずあれだ! なんも思い付かないからお姉ちゃんの部屋行って決めよう!」
「…………私でどうにかするのは確定なんですか」
「元々そういうつもりだったんでしょうが」
「えぇまぁ、そうですけどね」
「なら手間も省けるし一石二鳥。とりあえずごー」
腕を振り上げ移動開始。
私の言葉に現状素直に従ってるのか、端から反抗する気がないのか判別出来ないが、姉は素直についてきた。
姉を連れて廊下を歩く。
そうして私たちは、姉の部屋まで滞りなく辿り着いた。
◆
「でも、本当どうしようかなぁ」
「まだ決まりませんか」
処変わって姉の部屋。
到着して暫く経つが、私は未だに決めかねていた。
「うん、まったくなにもね!」
「そんなに力強く言われても……私も暇じゃないんですけどねぇ」
「だったらそもそもあんなことしなければいいのに」
「そりゃぁもう暇だったので」
「言ってることさっきと違う」
そんな言葉を二人で交わし、お互い再び沈黙する。
姉への画期的な案は浮かばない。
いっそ原点回帰、とふと思ったが、そもそも原点って一体どこなのだろうか。
あれかそれともあれなのか……、いやいやきっと違う筈。
あれは人間どころか妖怪でもおいそれと試せない代物である。
それが原点な筈はきっとないのだ。
そうして思考の海に埋没する。
浮かんでは否定し否定しは浮かんで、ぐるぐるぐるぐると悩んでると、ふとどこからともなく欠伸が聞こえる。
それは勿論姉であり、顔を見るとどうやら相当におねむのようだ。
「んー、とりあえず、一緒に寝る?」
「……それがお願いで、良いんです?」
「まさか御冗談。お姉ちゃんが眠そうだから聞いただけ」
「ふむ…………でも、眠いのは確か……です。寝ても、いいなら……とりあえず、寝ましょう」
欠伸混じりの姉は、そのままベッドに寝転がりこちらを手招きする。
それに反抗するという選択肢もあるにはあるが、今日はそのまま従い、横に収まり、姉を軽く抱きしめる。
姉の匂いと、いつも抱きしめてるからだの柔らかさが心地いい。
耳に届く姉の寝息。
規則正しく刻まれるそれに、眠気が次第に誘われる。
「ん」
口から漏れる私の吐息。
意識が落ちる直前、姉に近寄り顔を寄せ、
「おやすみ、お姉ちゃん」
そしてそのまま意識が落ちた。
タンスの引き出しを開け、
タンスの中を覗き、
タンスの前で嘆息する。
またか。
◆
姉は私が好きだ。
そしてそれを表現する方法として、姉は日常的に私の下着を盗んでいく。
勿論私自身も姉が好きである以上、その行為を拒む気は毛頭ない。
しかしだからと言って無断で持って行くのは如何な物だろうか、と私は思うのである。
そんなことせずとも言えばくれてやるというのに、我が姉ながら不可思議な存在である。
なにせ元を正せば、私の下着を調達してきたのは姉であり、これらは元々姉の所有物だ。
当然ながら今は私のものであるし、その程度の理由で気軽に渡せる物では決してない。
しかし、下着を欲しがる相手は姉である。
姉が欲しいと言うなら、私は別にあげても構わないと考える。
求められるなら、気軽な気持ちで差し出してしまおう。
しかし、だからといって盗難行為が許せるかと言えば、そういう訳では決してない。
より正確に言ってしまえば、別段許しても問題はないのだが、勝手に持っていかれるのはやはり困ってしまう。
何故ならそれが姉の仕業なのか、姉でない他のなにかの仕業なのかの判別ができないからだ。
犯人が姉であるなら構わないが、姉以外の何かの犯行である場合、私は徹底的な物理手段で報復行為込みの略奪を行わなければならない。
私はそう心に決めているし、今までだってそうしてきた。
なんにせよ、犯人が姉であるか姉以外の何かであるかの確証が今のところ持てない以上、百聞は一見に如かずである。
ぐずぐず考えるよりは、さっさと姉に確認を取った方が遥かにはやい。
ならばひとまず我が姉を捜すのが解決への最短ルートであろう。
そうと決まれば善は急げである。
早速姉に問い質すべく、私は捜索に向かうのであった。
◆
「ごめんなさい、欲しかったんです」
いつも通りの自白。
それが姉の、遭遇直後の発言であった。
「もうやめてって言わなかったっけ」
「仕方ないじゃないですか。欲しかったんですもの」
「だったらせめて一声掛けて」
「掛けたらつまらないじゃない。後、あなた捕まらない」
「それはまぁ謝るけど」
「ほら、これでおあいこでしょ」
「いやいやそれとこれとは話が別」
「そういうものかしら」
「そういうものなんだってば」
流れるような会話は、常々繰り返された物であり、所謂テンプレという物である。
このテンプレをいつものように2分程度続け、私たちの会話は一段落する。
「で、今度は何してくれるの、お姉ちゃん」
「あなたは何をして欲しいのかしら」
姉の言葉に私は少し思案する。
私たちは行き着くところまで、それ以上もそれ以下も粗方やってしまったから、何かと聞かれても特に思いつかなかった。
こんな状態でいいのだろうか、と少しばかり思わなくもないが、そもそもそれは今更なことであり、気にした方が負けである。
「んー、……なにか思いつく?」
「それを聞いてるのは私なんですが」
「だよね、どうしよう?」
「だから私に聞かれてもとしか」
姉の言うことは一理ある。
だからといって私が何か思いつける訳では決してない。
勿論思い付かないからここで何も頼まないという選択肢も存在するが、それはつまらない愚の骨頂と言えるものだ。
折角の姉とのコミュニケーションなのだ。
それなりに楽しまなければ損であろう。
「んー」
だが幾ら考えども何も思い浮かばないし、欠片の発想も出てこない。
少し前ならやってないことも多かったからやることには困らなかったが、一通りやるとそうもいかない。
そろそろ別の知識を仕入れた方が……、と思考が逸れはじめた私の耳に、姉の声が届いた。
「そんなに悩むんでしたら、とりあえず遊びます?」
「いやいや、いつも遊んでるじゃん」
「…………確かにあれも、遊びと言えば遊びですね」
少しの間から姉が躊躇したのを感じる。
しかし、ちょっと行き過ぎてるかもしれないが、あれはどう思い返しても遊びである。
そんな姉の瑣末事より、私にとって姉への命令の方が遥かに重要度が高い。
なにかないかな……、と暫く悩めど、やっぱり何も思い付かなかった。
「うーあーうー…………あぁもう面倒くさい! とりえずあれだ! なんも思い付かないからお姉ちゃんの部屋行って決めよう!」
「…………私でどうにかするのは確定なんですか」
「元々そういうつもりだったんでしょうが」
「えぇまぁ、そうですけどね」
「なら手間も省けるし一石二鳥。とりあえずごー」
腕を振り上げ移動開始。
私の言葉に現状素直に従ってるのか、端から反抗する気がないのか判別出来ないが、姉は素直についてきた。
姉を連れて廊下を歩く。
そうして私たちは、姉の部屋まで滞りなく辿り着いた。
◆
「でも、本当どうしようかなぁ」
「まだ決まりませんか」
処変わって姉の部屋。
到着して暫く経つが、私は未だに決めかねていた。
「うん、まったくなにもね!」
「そんなに力強く言われても……私も暇じゃないんですけどねぇ」
「だったらそもそもあんなことしなければいいのに」
「そりゃぁもう暇だったので」
「言ってることさっきと違う」
そんな言葉を二人で交わし、お互い再び沈黙する。
姉への画期的な案は浮かばない。
いっそ原点回帰、とふと思ったが、そもそも原点って一体どこなのだろうか。
あれかそれともあれなのか……、いやいやきっと違う筈。
あれは人間どころか妖怪でもおいそれと試せない代物である。
それが原点な筈はきっとないのだ。
そうして思考の海に埋没する。
浮かんでは否定し否定しは浮かんで、ぐるぐるぐるぐると悩んでると、ふとどこからともなく欠伸が聞こえる。
それは勿論姉であり、顔を見るとどうやら相当におねむのようだ。
「んー、とりあえず、一緒に寝る?」
「……それがお願いで、良いんです?」
「まさか御冗談。お姉ちゃんが眠そうだから聞いただけ」
「ふむ…………でも、眠いのは確か……です。寝ても、いいなら……とりあえず、寝ましょう」
欠伸混じりの姉は、そのままベッドに寝転がりこちらを手招きする。
それに反抗するという選択肢もあるにはあるが、今日はそのまま従い、横に収まり、姉を軽く抱きしめる。
姉の匂いと、いつも抱きしめてるからだの柔らかさが心地いい。
耳に届く姉の寝息。
規則正しく刻まれるそれに、眠気が次第に誘われる。
「ん」
口から漏れる私の吐息。
意識が落ちる直前、姉に近寄り顔を寄せ、
「おやすみ、お姉ちゃん」
そしてそのまま意識が落ちた。
行き着くところって、いったいどこまでなんだろうねウフフ
素敵な姉妹でし……た?
でもこいしちゃん無意識少女なので、こうでもしないと会って話すこともままならないし
こいしちゃんもきっとそれが分かってるから許してるんですねわかります
>私たちは行き着くところまで、それ以上もそれ以下も粗方やってしまったから
くわしく
古明地姉妹のイチャイチャは最高だww
良い姉妹愛でした。
「あなたは何をして欲しいのかしら」
私たちは行き着くところまで、
「んー、とりあえず、一緒に寝る?」
あかん!血圧が!血圧が!
糖尿病確定のどきどきなSSでした!