「ねこになりたいです」
門前に座り込み、いつも通り昼食の咲夜お手製のサンドイッチ(三つ目)をもぐもぐと食べながら、美鈴はボソリと呟いた。
その横に並んで座っていた咲夜は、あまにも唐突な言葉に、一瞬聞き間違えたのかと思わず聞き返す。
「ねこ?」
「はい、ねこです」
振り返った咲夜に、美鈴は拳を顔にすり付けながら、にゃあと鳴きおどけてみせる。視線を宙にさまよわせたまま、言葉を続ける。
「ここで門番やってると、たまに、ふらふらしてる猫を見かけて。ぶちだったり、真っ黒だったり、いろいろなんですけど……みんな、自由でのーんびりしてるというか。そういうのって無意味にあこがれませんか?」
あ、別に門番がいやとか、そういうのじゃあないんですよ、と美鈴があわてて付け足す。
へらへらと笑ってる横顔を見て、いつものんびりしているくせに、と内心思いながら、首を振った。
「興味ないわ。 自由であるという事は、同時に孤独であるという事よ。そんな物に魅力を感じないもの」
厳しい語調で咲夜は言う。美鈴と会話する際、咲夜はあまり自分の言葉に注意を払わない。その必要がないからだ。
美鈴は、そうですねぇ、と特に何とも思ってなさそうな返事をして、本日四つ目のサンドイッチに手を伸ばす。
どうやら、本気でねこになろうと思っているわけではないらしく、ただの戯言だったようだ。
未だ一つ目の半分ほど残っているサンドイッチをかじりながら、咲夜は以前から思っていたことを今このタイミングで言おうか言うまいか迷い、結局言うことにして、大きな口でサンドイッチに噛みついている美鈴を見上げた。
「美鈴」
「むぐ?」
「たまにはネコになってみない?」
「……む、」
咀嚼していた顎が止まり、咲夜の方を振り向く。目が丸くなって、数度瞬き、そして。
咲夜の言葉の真意にようやく気づくと、口腔内のものを飲みこみ、ほんの少し顔を赤くして、気の抜けた笑顔を向けた。
「私にはあっちのほうがあってるので」
「……そう」
その笑顔を正面から見ることができずに、咲夜は美鈴以上に頬を染めて、サンドイッチに噛みついた。
いや、「明日から自由よ」って言われて門番クビになるのかとヒヤヒヤしてましたww
租借×
咀嚼○
かな…食事中の文だったので。
詳しく聞かせてもらおうか(・∀・)ニヤニヤ
美鈴がネコも良いと思うんだがねー。