神社の石段を昇れば桜の木。
桜の樹とは桜の花の美しさに比べて象徴的に醜いものだ。
ましてや雨にぬれた時には、まったくそれは泥と土に相当するのだった。
魔理沙はこれを見て慄いた。
自分の心情を映しているから醜いのではないかと思ったのだ。
魔理沙の心を埋め尽くすのは正に絶大な悲しみだった。
それと大きな絶望だった。
霊夢は何も言わなかった。
彼女に何も答えなかった。
かける言葉を持たなかったのだ。
何故なら博麗霊夢は、恋をした事がなかったのだから。
レミリア・スカーレットは、自室で酒を飲んでいた。
ライムジュースとジンを半分ずつで割る、特製のギムレットを一息で空けると、再び酒を注いだ。
グラスに注がれた、酒の香りを味わいグラスを持ち唇に当てるレミリア・スカーレット
いざ酒を流しこもうとした所、自室のドアを叩く音が飛び込んでくる
「なに?開いているわよ」
レミリアは扉を一瞥すると、紅い月を見上げた。
見るもの全てを魅了する紅い月は、いつもよりも数段美しく見えた。
「私よ、霊夢よ」
来客は意外な人物であった、レミリアは少々驚いたが彼女を正面に見据えた。
「こんな晩に私に用件があるとは、どういうことかしら?」
「レミリア、貴方に話したいことがあるの」
霊夢はレミリアに近寄ると、体と体が触れ合うまでの距離まで近づいたのだ。
「それで要件とは一体?」
夜も更けたころの館の応接間に3人の影が。
軟らかなソファに腰かけた霊夢が咲夜に差し出された粗茶を一番に啜る。
「それで? まさかこんな時間にお茶を飲みに来ただけではないでしょう?」
「えぇ、お茶を飲みに来たのよ、それと少しのお話を、ね」
紅茶のカップをテーブルの上に置き、息を大きくすった後目の前の吸血鬼にこう言った。
「あのね、恋ってどうやってするものなの?レミリア」
その言葉を引き金にレミリアの顔が熟れた林檎のように真っ赤に染まった。
「…ば、恋ってなによ。そんなの吸血鬼の私に聞いてどうするのよ。」
博麗霊夢はどの妖怪に対しても均等に接していた、誰が特別。なんて付き合い方もしなかった。
どんな相手でも同じ態度、賢者や亡霊の姫に何度か誘惑されたりしているが特に受け止めていなかった。
そんな彼女が目の前で紅茶を飲み、私に「恋ってどうやってしたらいいの?」だ
「フフッ」
ちょっと笑うとレミリアは、ばちんと指を鳴らして言った。
「冗談はここまでにしましょう、フランドール。門番もそこまでザルじゃあないわよ」
霊夢の像から赤と白の線がほどけおちて、金髪の少女が現出する。
「貴方自分を想う人を泣かせておいて」
レミリアの語気は穏やかでありながら、まるで紅色の狼煙のように、修羅の怪火を纏っていた。
「雨の中に放り出しておいて私まで……」
幻想郷の全天が昼間のように明るくなると、少し遅れて低いトーンの雷鳴が鳴った。
「そんな悪趣味な趣向でからかうつもり?」
ここにきて対坐するフランドールに幼女の雰囲気は無かった。代わりに齢495の吸血鬼にふさわしい、妖艶なオウラが有った。
レミリアは、テーブルの上に有るシガレットケースから葉巻を一つ取り出し、シガーカッターで先端を切り落とした。
「点数をつけるなら七点、というところか」
「十点満点中?」
「百点満点中」
手の平から燃え上がる火で葉巻の先端を炙り、煙を口に含む。
「恋なんていうものは、この煙が揺れるのと同じものだ」
そう言って、レミリアは紫煙を吐き出した。
「けほっ…ちょっと煙いわ…」
「あら、ごめんなさい」
葉巻を灰皿に置くレミリア
地獄の業火の如く燃え盛っていた炎は消え失せ、元の漆黒へと戻った。
フランは煙があまり好きでは無いことを知っていたのだが、少し大人ぶってみただけだ。
しかし、それはいたずらに彼女を怒らせる結果となるとは誰も知りえなかった。
「お姉さま、私が煙が嫌いなの知っているでしょう?」
「ええ、知っているわ」
「嫌いって分かっていて何故そうするの?嫌がらせなの?」
「それで? 私は貴方のせいで至高の時間が台無しだわ」
レミリアは大きなため息をつくと、席を立った。
その後ろでフランは手をギュッと握り締め、レミリアの後姿を睨みつけていた。
「姉妹喧嘩の途中、よろしいかしら?」
こほんとわざとらしい咳を一つ。姉妹の睨みあいに仲裁を入れる霊夢。
「あら、門番がザルじゃないと言ったのを訂正するわ。」
レミリアは右手を握り、咲夜に合図を送った。
「そうですね。やはりお仕置きが必要でしたね…」
ドアから出て行く咲夜。
部屋に残された三人
「で、霊夢、私たちの喧嘩を仲裁するなんてどういうつもり。」
「別に仲裁するなんて言ってないわ」
「じゃあどうして割り込むのよ。霊夢のバカ。」
霊夢は懐から何かを探しており。見つかったらしく袖から出たものをレミリアに渡した。
「その妹が私にくれたものよ。」
レミリアの手に渡されたのは小さな判子だった。
レミリアが朱肉を取り出し紙に判子を押すと、そこには小さく赤く、かすれた文字で。『お姉様、これからもよろしく、』
と、
その日からレミリアはタバコを吸うのをやめた。
姉は大好きだけど恋というものを知らないフランが魔理沙を振ったって話?
言葉や助詞が重なるのは推敲不足でしょ
終始雰囲気は良いけど
テンションを維持できれば良作になったかもしれないと考えると惜しいばかりです
後書きも面白かったです。