「鈴仙ー」
鈴仙が何をするでも無くぼーっとしているとてゐが部屋に入ってきた。
手には古ぼけたノートのようなものを持っている。
「あら、てゐ。どうしたの?」
かつて少女だった彼女は今や黒髪の美人兎へと成長した。
悪戯ばかりしていたのも今は昔。すっかりと落ち着きのある性格になっていた。
「てゐも成長したものね」
「鈴仙もね。昔は失敗ばっかりだったのに」
その言葉には苦笑いが出る。
失敗ばかりしていた私も、今や師匠に認められ永遠亭のNO3と言ってもいい立場だ。兎たちからの信頼も固いデキル女というものになった。
「そんなことより鈴仙。こんなの見つけたんだけど」
はい、と手渡されたノートを見やる。
表紙の字は掠れて読めなくなっていたが、中身は無事のようだ。
「なにかしら?」
パラパラとノートをめくっていく。
喪心『喪心創痣(ディスカーダー)』
狂気の瞳の力を宿した弾幕を放ち、相手の精神にダメージを与える。
その一撃は相手の魂すらも砕く。
散符『真実の月(インビジブルフルムーン)』
暗黒の力を持った『隠された真実の月』の力を使うことによって繰り出される大技。
相手の精神を一瞬で崩壊させる。
『幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)―LRE』
狂気の瞳の力を最大まで引き出すことで放たれる奥義。
そのあまりの威力は物理的な破壊を同時に引き起こすことになる。
使いすぎると失明の危険が伴う。
『空裂眼刺驚(スペースリパースティンギーアイズ)』
眼から圧縮された体液を発射し―――
「いやあああ!?」
ノートを放り投げ、弾幕を放ちズタズタにして、この世に存在しなかったことにする。
私は何も見なかった。
そうだこんなものは存在しなかったんだ。
こんな変な名前のスペルは使っていなかった。
そう、私は使っていなかった…!
「おー、いわゆる黒歴史ノートって奴?」
「て、てゐ!誰かに見せてないでしょうね!?」
てゐの肩を掴み、ガクガクと前後に揺する。
「あー、それ他の兎が見つけてきたんだよね」
怒涛の勢いでまくし立てていた鈴仙の動きが止まる。
その頬には汗がだらだらと流れていた。
「だから、見られているんじゃないかな」
「あ、あはは…」
ふらつく体を支えることも出来ず、そのまま倒れ込む。
もう、何も、見えない。
「お師匠様ー。鈴仙がうなされてるー」
「また薬間違えたのね。いつになったら治るのかしら」
側に転がっている胡蝶夢丸ナイトメアの瓶を見て、永琳はため息を付いた。
あと、大人びたてゐも可愛い!
作者さん、ごめん。
……でも、鈴仙の体液にならブチ抜かれてみたいかも(ボソッ
ってどんだけ時が経ったんだ?
と思ったら夢落ちか
鈴仙は自分が中二病だって心のどこかで感じている?
こんなありふれた厨二ネタに……!