紅魔館についてですか?よく取材に行きますよ。
門番の話?
そうですね……。私いつも不思議に思うのですが……。
どうしてこの門番は何回メイド長に叱られたとしても
何回ナイフが脳天に刺さろうとも
勤務中の昼寝をやめようとしないのか、と。
普通なら、2、3回くらい叱られれば直りますよね。というか、直そうとしますよね。
マゾなのかとも思いましたが、どこぞの天人のように電流流されて「い、いくぅぅぅ~~~」とか白目むきながら言っているわけでもありませんし。
という訳で、直接聞いてみるのが早いと思い、取材してみたのですが、
本人は笑顔で返すだけなんですよ。
これは何かある!鴉天狗としての、ブン屋としての勘がそう告げましたね。そう思った私の行動力は通常の3倍ですよ。いや、赤くはありませんが。
張り込みと称してのストーk……ゲフンゲフン、いいえ、これは取材です。ただ承認を取っていないだけです。
一日取材(無許可)をすることにしまして、あ、もちろんパンと牛乳は持って行きました。張り込みの定番ですからね。
朝の4時、主の吸血鬼が眠る頃から門番の仕事が始まります。
早い!と思われるかもしれませんが、私達鴉天狗も朝刊を配るのに3時起きとか普通ですからね。おっと、話がそれました。
欠伸を2回、ぶらぶらと身体を慣らすように軽い運動をしながら門の前に立っています。
まだ寝る気配は見せないですね、まあここで寝ていたらまず仕事として成り立たないのですが。
門番が立ち始めて2時間くらいした頃でしょうか。動きがありました。
支給された食事を摂った後、伸びをしたかと思うと、いきなり右の拳を左の掌に合わせて礼をして構えました。ええ、そうです。いかにも中国らしい拳法の構えです。
思わず声が出そうになりましたね。
一瞬私の存在に気がついたのかと少々びくつきましたが、どうやらそうではなかったようです。
ああ、違います。声が出そうになったというのはそのことではなくて、
彼女の肢体です。
滑らかな肌、
鍛えぬかれた、それでいて無駄が無く、目立たない筋肉の線、
人間の短い数十年という短い寿命では到達しえない境地、
私、同じ妖怪かと、思わず疑ってしまいました。
それほどまでに、美しい。
生唾が勝手に降りましたよ。
……と、そこで私は奇妙な事に気がつきました。
構えた先には誰の姿も見えないのです。
ですが、先程からこの門番は、なんというのでしょう、殺気というか、「今から殺り合う」というような感じの雰囲気を纏っているのです。
型?シャドー?空拳??
様々な憶測が飛び交いましたが、
どれも外れました。
門番が、前に出て、下段蹴りっ……痛そうです。
何故、「痛そう」と私は思ったのか。
彼女は本当に蹴ったのです。空を。何もない空間を、確かに。
すぐに、後ろへ引きながら、上段と中段を同時にガード、そして相手の腕……でしょうか、を取り、
小手返し。これは見た事がありました。綺麗にきまりました。
すぐさま踏み付けの追い打ちをしますが……避けられました。地面がへこんでいます。えげつないですね。
そして起き上がった相手が……蹴りですね、咄嗟に防ぎましたが、身体が浮きました。顎から首が吹っ飛ぶルートでしたね。
え、さっきから誰と戦っているのかって?
聞いて驚かないで下さい。
館の主のレミリア・スカーレットです。
分かります。あなたがおっしゃられたい事はよく分かります。
朝一番の、それも日の射す屋外で、レミリア・スカーレットは戦っていたのです。
門番が戦っている内に、レミリアの腕が、脚が、胴が、輪郭が、羽までもが……
忠実に、寸分違い無く、何も無い場所に形創られていったのです……!
あなたは、無意識というのをご存知ですか?
地底の妖怪……ああ、あれは……今はいいです。関係なくはありませんが、例えば、こんな話があります。
目に見えないように、綿棒を相手の手に押し付け、「今煙草を押し付けている」
というと、相手はその手に火傷を負うという。
全く不可解ですが、実際に起こり得る事です。
その無意識を極限まで、高め、
極限まで自分に厳しく、
極限まで、普段メイド長に向けて使われている妄想力を使って形を創る事により、究極の仮想相手が登場する……!
私も最初は目を疑いました。
ですが、見れば見る程、そこにレミリア・スカーレットが存在するのです。
互いに構え直し、レミリアが跳ぶように距離を詰める、
レミリアの爪のラッシュを受け、腕に血の滲む傷を作りながらも受けきり、
一瞬の隙をつき、肘っ!胸に入りました。上手いっ!いや、別に胸が無いとかつるぺただから衝撃が緩和されなさそうだなとは思ってはいませんよ。ええ。
ですが、向こうはその応酬に右膝蹴りをかましてきました。
門番がよろけました。
あ、と思った時には、門番は壁に打ち付けられていました。
そのまま、4、5回壁に頭を向けて、紅い髪を握られ、レンガ造りの壁に打ちつけられる。絶対痛いです、これ。
見ているこっちが涙ぐみそうになりました。
これで終わりかと思いましたが、流石、力は弱くとも妖怪です。
空いている右腕に力を溜めていたのでしょう。
高速の裏拳がレミリアの顔面に。
思わず私も膝をすくめて悶絶しそうになりました、手加減無しです。
そのまますくんだ脚を下段蹴りで払い浮かし、
浮かんだ相手が空中にいるところで
回し蹴り!
綺麗なまでに決まりました。
シャドーなら、自己鍛練なら、普通そこで終わりですが、この門番はとにかく自分に厳しいらしく、
レミリア本人らしく空中で受け身をとります。
そのまま地面を右手と両足で蹴って門番に跳びかかり、門番が右手をとって、投げ返……。
いや、先にレミリアの右足で蹴り上げが入りました。
顎に間違いなく入りました。腕を取られる事を読んでいましたね、向こうも。上手いフェイントです。
脳が揺れましたね、あれは。私知っているのですが、顎に衝撃をもらうと高確率で脳震盪を起こして気絶するんですよ。
決まった。多分十人が見ていたら十人がそう思うでしょう。
ぐら、と門番がよろめき、上体を反らせ、脚を踏ん張り……え?
腕に相手を抱え……え?え??
確か、サイドスクリュースローと言う技でした。
驚きましたよ、確か外の世界で、レスリングと言う格闘技の技まで使えるのですから。
そのまま、門番は倒れました。
相打ち……いや、違いましたね
本物とやり合ったら、恐らくどちらかの原型が留めなくなるまで続く。
気付いたら、口の中が渇いていました。
唾を作る事を身体が忘れていたのです。
……以上の事に所要した時間、きっかり180秒。
たった3分間の出来事で、このような攻防が行われたのです。
え?
……何故、新聞の記事にしないのかって?
はあ、……記事になりませんよ。あんなの。
誰がこんな話を信じるというんですか。
何も無いはずの場所に、
吸血鬼が立っていたなどと……。
それに、
門番にとっては日常の出来事にしか過ぎないのですから。
門番の話?
そうですね……。私いつも不思議に思うのですが……。
どうしてこの門番は何回メイド長に叱られたとしても
何回ナイフが脳天に刺さろうとも
勤務中の昼寝をやめようとしないのか、と。
普通なら、2、3回くらい叱られれば直りますよね。というか、直そうとしますよね。
マゾなのかとも思いましたが、どこぞの天人のように電流流されて「い、いくぅぅぅ~~~」とか白目むきながら言っているわけでもありませんし。
という訳で、直接聞いてみるのが早いと思い、取材してみたのですが、
本人は笑顔で返すだけなんですよ。
これは何かある!鴉天狗としての、ブン屋としての勘がそう告げましたね。そう思った私の行動力は通常の3倍ですよ。いや、赤くはありませんが。
張り込みと称してのストーk……ゲフンゲフン、いいえ、これは取材です。ただ承認を取っていないだけです。
一日取材(無許可)をすることにしまして、あ、もちろんパンと牛乳は持って行きました。張り込みの定番ですからね。
朝の4時、主の吸血鬼が眠る頃から門番の仕事が始まります。
早い!と思われるかもしれませんが、私達鴉天狗も朝刊を配るのに3時起きとか普通ですからね。おっと、話がそれました。
欠伸を2回、ぶらぶらと身体を慣らすように軽い運動をしながら門の前に立っています。
まだ寝る気配は見せないですね、まあここで寝ていたらまず仕事として成り立たないのですが。
門番が立ち始めて2時間くらいした頃でしょうか。動きがありました。
支給された食事を摂った後、伸びをしたかと思うと、いきなり右の拳を左の掌に合わせて礼をして構えました。ええ、そうです。いかにも中国らしい拳法の構えです。
思わず声が出そうになりましたね。
一瞬私の存在に気がついたのかと少々びくつきましたが、どうやらそうではなかったようです。
ああ、違います。声が出そうになったというのはそのことではなくて、
彼女の肢体です。
滑らかな肌、
鍛えぬかれた、それでいて無駄が無く、目立たない筋肉の線、
人間の短い数十年という短い寿命では到達しえない境地、
私、同じ妖怪かと、思わず疑ってしまいました。
それほどまでに、美しい。
生唾が勝手に降りましたよ。
……と、そこで私は奇妙な事に気がつきました。
構えた先には誰の姿も見えないのです。
ですが、先程からこの門番は、なんというのでしょう、殺気というか、「今から殺り合う」というような感じの雰囲気を纏っているのです。
型?シャドー?空拳??
様々な憶測が飛び交いましたが、
どれも外れました。
門番が、前に出て、下段蹴りっ……痛そうです。
何故、「痛そう」と私は思ったのか。
彼女は本当に蹴ったのです。空を。何もない空間を、確かに。
すぐに、後ろへ引きながら、上段と中段を同時にガード、そして相手の腕……でしょうか、を取り、
小手返し。これは見た事がありました。綺麗にきまりました。
すぐさま踏み付けの追い打ちをしますが……避けられました。地面がへこんでいます。えげつないですね。
そして起き上がった相手が……蹴りですね、咄嗟に防ぎましたが、身体が浮きました。顎から首が吹っ飛ぶルートでしたね。
え、さっきから誰と戦っているのかって?
聞いて驚かないで下さい。
館の主のレミリア・スカーレットです。
分かります。あなたがおっしゃられたい事はよく分かります。
朝一番の、それも日の射す屋外で、レミリア・スカーレットは戦っていたのです。
門番が戦っている内に、レミリアの腕が、脚が、胴が、輪郭が、羽までもが……
忠実に、寸分違い無く、何も無い場所に形創られていったのです……!
あなたは、無意識というのをご存知ですか?
地底の妖怪……ああ、あれは……今はいいです。関係なくはありませんが、例えば、こんな話があります。
目に見えないように、綿棒を相手の手に押し付け、「今煙草を押し付けている」
というと、相手はその手に火傷を負うという。
全く不可解ですが、実際に起こり得る事です。
その無意識を極限まで、高め、
極限まで自分に厳しく、
極限まで、普段メイド長に向けて使われている妄想力を使って形を創る事により、究極の仮想相手が登場する……!
私も最初は目を疑いました。
ですが、見れば見る程、そこにレミリア・スカーレットが存在するのです。
互いに構え直し、レミリアが跳ぶように距離を詰める、
レミリアの爪のラッシュを受け、腕に血の滲む傷を作りながらも受けきり、
一瞬の隙をつき、肘っ!胸に入りました。上手いっ!いや、別に胸が無いとかつるぺただから衝撃が緩和されなさそうだなとは思ってはいませんよ。ええ。
ですが、向こうはその応酬に右膝蹴りをかましてきました。
門番がよろけました。
あ、と思った時には、門番は壁に打ち付けられていました。
そのまま、4、5回壁に頭を向けて、紅い髪を握られ、レンガ造りの壁に打ちつけられる。絶対痛いです、これ。
見ているこっちが涙ぐみそうになりました。
これで終わりかと思いましたが、流石、力は弱くとも妖怪です。
空いている右腕に力を溜めていたのでしょう。
高速の裏拳がレミリアの顔面に。
思わず私も膝をすくめて悶絶しそうになりました、手加減無しです。
そのまますくんだ脚を下段蹴りで払い浮かし、
浮かんだ相手が空中にいるところで
回し蹴り!
綺麗なまでに決まりました。
シャドーなら、自己鍛練なら、普通そこで終わりですが、この門番はとにかく自分に厳しいらしく、
レミリア本人らしく空中で受け身をとります。
そのまま地面を右手と両足で蹴って門番に跳びかかり、門番が右手をとって、投げ返……。
いや、先にレミリアの右足で蹴り上げが入りました。
顎に間違いなく入りました。腕を取られる事を読んでいましたね、向こうも。上手いフェイントです。
脳が揺れましたね、あれは。私知っているのですが、顎に衝撃をもらうと高確率で脳震盪を起こして気絶するんですよ。
決まった。多分十人が見ていたら十人がそう思うでしょう。
ぐら、と門番がよろめき、上体を反らせ、脚を踏ん張り……え?
腕に相手を抱え……え?え??
確か、サイドスクリュースローと言う技でした。
驚きましたよ、確か外の世界で、レスリングと言う格闘技の技まで使えるのですから。
そのまま、門番は倒れました。
相打ち……いや、違いましたね
本物とやり合ったら、恐らくどちらかの原型が留めなくなるまで続く。
気付いたら、口の中が渇いていました。
唾を作る事を身体が忘れていたのです。
……以上の事に所要した時間、きっかり180秒。
たった3分間の出来事で、このような攻防が行われたのです。
え?
……何故、新聞の記事にしないのかって?
はあ、……記事になりませんよ。あんなの。
誰がこんな話を信じるというんですか。
何も無いはずの場所に、
吸血鬼が立っていたなどと……。
それに、
門番にとっては日常の出来事にしか過ぎないのですから。
つまりお嬢様はアイアン・●イケルや巨大カマキリと同類なんだな、ウン。
カッコよかった! 後半だけ見たらwww
ところで俺も妄想力高まるとナズーリンと取っ組み合いのバトルしてるときがあるんだ。